2024年3月22日 参国土交通委員会
○嘉田由紀子君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の嘉田由紀子でございます。
三月十一日の国土交通委員会での斉藤大臣の所信を受けて、今日は、国民の安全、安心の確保に関わる上水道行政と治水行政について、その長期的方針、あわせて、具体的には、今、長崎県の川棚町で進んでおります長崎県営の石木ダムについて伺います。
まず、国土のインフラ整備は、五十年、百年という大変長いタイムスパンを想定して投資をする必要があります。それゆえ、建設国債というのは、言うまでもなく六十年後の未来の子供たちからの借金を前提として投資をすると。公共投資の長期的方向ということを想定しているからです。
今、インフラ整備としてマクロ的に考慮すべきは、人口増大の高度経済成長期に広げてきた道路、上下水道など老朽化しているということです。その上、能登半島地震のような近年の地震、あるいは気候変動による災害の増大、その復旧回復、大変甚大でございます。その上、公共インフラを活用する人口はますます減少しております。言うまでもなく、日本の財政難は一向に改善されておりません。
今、日本の公共インフラの維持管理は四重苦。老朽化、災害多発、人口減少、そして財政難、この四重苦の中で、今日、午前中も塩田議員が質問なさっておられましたけれども、水道の耐震性について質問させていただきます。
能登半島地震では、水道被害、大変密度が高うございました。まだ避難所あるいは地元で水道が復旧せずに苦しんでおられる皆さん、本当に御同情申し上げます。
一キロ当たりの能登半島の被害箇所、二・六六か所と伺っております。東日本大震災でも最大被害だった宮城県の涌谷町では〇・三六、つまり七倍の被害密度ということになります。特に遠距離からの上下水道の復旧は時間が掛かってしまいます。私自身、水研究者として、遠い水に依存することの効率性とかはあるかもしれませんが、ますますそれは潜在的な危機が高まっているということでもあります。
日本の、一方、人口減少ですが、出生率一・二六では、七十六年後の二一〇〇年、決して遠くではありません、私の孫などもまだ二一〇〇年には元気でいるかもしれません、そういうときに、この都市部以上に農村部で大変インフラの維持管理が深刻でございます。水ジャーナリストの橋本淳司さんは、いよいよ水行政もダウンサイジング、橋本さんの言い方ですと、大きく広げた傘を小さく畳む必要があるだろうと言っておられます。
そのようなマクロな将来予測の下、今動いている公共事業についても事業の必要性の精査をして、見直しの仕組みづくりがますます必要ではないでしょうか。朝の予算の説明でも、国土交通大臣、時代の転換期だと言っておられました。
そういう中で、個別問題ですが、長崎県の石木ダム問題についてまず質問させていただきます。
全国での水道施設の耐震化率、全国での数値、それから長崎県の水道耐震化率、さらに、この石木ダムは佐世保市の水道水源として開発をされるということですが、佐世保市の耐震化率、どうなっているでしょうか。厚生労働省さんにお伺いします。
○政府参考人(鳥井陽一君) お答えいたします。
令和四年度末時点における基幹管路の耐震適合率につきましては、全国平均が四二・三%、長崎県が三三・四%、佐世保市が二五・一%となっております。また、浄水施設の耐震化率につきましては、全国平均が四三・四%、長崎県が二〇・六%、佐世保市が四五・九%となっております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
資料一として皆さんに長崎新聞の記事をお出ししておりますが、今、全国四二・三%、平均、長崎は三三、そして佐世保が二五と。実は、佐世保市水道は明治末期の当時の陸軍の水道施設を使っておりますので、全国的に見ても大変先駆的な水道です。明治時代です。それゆえ、今この耐震化率なり老朽化というのは佐世保では大変問題になっております。
長崎県、万一災害が起きたら、今回能登半島でも半島型地震として大変復旧が難しい、それに離島型地震というのも長崎では加味されるのではないでしょうか。
実は昨年四月六日と六月六日にこの国土交通委員会でも取り上げました長崎県石木ダム建設の現状と課題、再度取り上げさせていただきます。
資料の二を御覧いただきたいんですが、ここで一九六〇年代、佐世保市の工業団地建設、そして同時に、佐世保砂漠と、長崎砂漠と言われるくらい大変な渇水がございました。一日二十四時間のうち二十時間水が止まるというようなことで、佐世保の皆さん苦労なさったと伺っております。
その当時、一九七五年にこの石木ダムが建設着手され、そして、資料二として出しておりますが、水道需要の変化、当時は十万トンほどあったんですが、今は七万トンまで減っております。そして、この資料二を見ていただきますと、急に水需要が上がるんですが、これは、ある意味で、ダムができたらこれだけ上がるということなんですが、実態としての水需要を表しているのではないんです。ダム建設を前提にして水需要を上げているという、ちょっと不可思議な図なんですが。
そしてまた、ここの下に、川棚川流域一一%、石木ダム建設。実はこの石木ダムは、川棚川の百年確率の治水に対してなんですが、流域面積一一%しかないということで、それだけ効果が小さいということです。この地図で、分かりにくいんですが、ここで佐世保の水源の石木ダムを造ったとして、佐世保市まで、測り方によるんですが、三十キロから四十キロこの水を運ぶという、そういう状態です。
この必要性に対して地元の川原地区の人たちは納得できず、二〇一九年には土地を強制収用され、そして住宅も強制収用され、それでも納得できないということで、建設反対の座込みを千八百日も続けております。
去年の六月六日に廣瀬局長さんの前の局長さんにお伺いしましたけれども、日本で、住まいやあるいは実際耕しているところ、住まいを強制収用されて造られたダムは今までないということです。ですから、それだけ深刻なダムの必要性があるのかと思いきや、そうではないということが地元の皆さんが納得できていないことでございます。
で、質問二ですが、厚生労働省さんに伺いますけど、佐世保市の水需要の増大予測、これは事業認定を厚生労働省さんがしているわけですから、この水需要予測の合理的な説明をお願いをできますか。
○政府参考人(鳥井陽一君) お答えいたします。
佐世保市は水道事業者として安定的な水の供給が求められておりまして、そのような中で、慢性的な水源不足を改善するために石木ダム建設事業に参画しておると承知をいたしております。
そこで、佐世保市でございますが、厚生労働省の定めます水道施設整備事業の評価実施要領に基づきまして、令和元年度に水需要予測の見直しを含む事業再評価を行っております。そこでの水需要予測におきましては、給水人口は減少傾向にあると予測をされている一方で、一人一日当たり使用水量が実績に基づく推測から増加傾向となることも踏まえ、生活用水の需要はおおむね横ばいで推移すると予測をしております。こうした生活用水の水需要予測に加えまして、業務・営業用水等の需要や他地区との送配水施設の統合による需要増等を勘案いたしまして、全体として緩やかな増加傾向となっております、なっているものと承知をいたしております。
○嘉田由紀子君 そのように事業評価として委員会で出されているんですが、この資料二のグラフを見ると、増加傾向どころかどおんと上がっているんですね。大変不可思議な図です。で、これが石木ダムの利水の一つの理由なんです。そして、このことに地元の皆さんは納得していない。
一方、利水も不可思議なんですが、治水も不可思議です。
資料三を皆さんに御準備しております。ちょっと五ページございますので、しかも、実はこの日程見ていただきますと、石木ダム本当に必要か、「清流をまもる 未来をまもる」集会実行委員会、二〇二四年三月二十三日、明日です。明日、京都大学の名誉教授の今本博健さんが、この水位計算による石木ダムの効果について検討して、地元で発表していただきます。それをあえて事前に今日の委員会に今本氏から提供いただきました。
今本氏は、今まで二十年近く石木ダムに関わりながら、なかなか治水の必要性を否定するのは困難と言っておられましたけれども、二〇二一年八月に降った豪雨の流量予測から、河川水位の高さを推測する重要なパラメーターの一つである粗度係数、耳で聞いて分かりにくいんですけれども、川の流れやすさを推測するパラメーターなんですが、粗度係数が変わると石木ダムの必要性はなくなってしまうということです。
このパワーポイント八、二ページ目です。一、二、三、四、八にありますように、これまで石木ダムが必要だと長崎県が説明してきたときの粗度係数は、一九九〇年の豪雨による川棚川の粗度係数、百年に一度の豪雨のため。しかし、その後、二〇〇〇年代に川棚川は河川改修されております。河川改修されたら粗度係数が下がり流れやすくなりますから、川の水位は下がるわけです。
そして、この川棚川の河川改修による粗度係数の低下を反映しますと、パワーポイント十、次のページですけれども、パワーポイント十のように、石木ダムがなくても川棚川は百年に一度の豪雨でも氾濫しないという計算になりました。その証拠に、二〇二一年八月、百年に一度に匹敵する洪水がありました。私もそのときにこの洪水について、地元にはいなかったですけど、大分チェックをいたしました。川棚川、あふれませんでした。あっ、百年に一度通すんだと、当時、地元の皆さんも本当にびっくりしました。それがパワーポイントの十二です。
そして一方、国やあるいは長崎県は、温暖化による洪水規模が大きくなるので石木ダムが必要と一方で言っておられます。それがパワーポイントの十三です。確かに温暖化により豪雨が一・二倍、一・三倍になるということですが、実は、このパワーポイント十四見ていただきますと、石木ダムが役に立つ粗度係数というのは〇・八から一・〇の間だけ、つまり本当に狭いんです。そして、粗度係数が逆に低下すると、石木ダムがあっても計画高水位、あふれない。同時に、パワーポイント十六にありますように、これが一・四倍、一・五倍になりますと緊急放流が必要となりまして、余計に危険となります。
そのようなところから、これ明日また地元の皆さんにも意見を言っていただくことになると思いますけれども、今本名誉教授は、これほど必要性の低いダムをまだ建設するのか、しかも二百八十五億円、去年の六月にお伺いしました、既に二百億円ほど出費していますから、あと八十億円で本体工事に掛かれるのかということでございます。
いよいよ、斉藤大臣、ここは国も、上水道を一緒に統合化するわけですから、事業の再評価が必要ではないでしょうか。そして、流域治水という方法もあります。ですから、あえてダムを造らなくても流域治水でちゃんと対応できないでしょうかということを、私自身は、地元波佐見川、川棚川を、江戸時代からの水害対応の歴史を調べました。山の中にため池を造り、そして川沿いに森を造りしながら、御先祖様が二百五十年掛けて流域治水をこの川棚川、波佐見川では進めているんです。ですから、今こそ時代転換、国土交通大臣、ここは、長崎県の事業といっても、長崎県は事業評価を国のお墨付きでやっているんです。大臣としての御意見をお願いいたします。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 前回も御答弁させていただいたところでございますが、石木ダムの建設事業については、事業主体である長崎県において、政策評価法及び国土交通省が定めた手続にのっとり、直近では令和元年度に事業再評価を実施し、ダムの必要性、関連する水道事業との整合などを総合的に検討した上で、有識者委員会からの意見聴取も踏まえ、事業の継続を判断されたものと認識しております。
また、石木ダムに関連する水道事業につきましても、事業主体である佐世保市において、政策評価法及び厚生労働省が定めた手続にのっとり適切に事業再評価を実施した上で事業の継続を判断されたものと認識しております。
来年度、水道行政が国土交通省に移管された後は、ダム事業、水道事業の所管大臣として、各事業に関する事業評価制度が適切に運用されるよう引き続き取り組み、公共事業の効率性、透明性の確保に努めてまいりたいと思います。
○嘉田由紀子君 予想どおり、去年と同じ答弁でした。
いよいよ時代の転換点なんですよね、人口減少、災害多発、そして言わば老朽化。佐世保は、先ほどのデータにありました、二五%です、耐震化率。佐世保の市民の方たちは、そんな遠くからあえて水需要のグラフを人為的に上に上げずとも、まず耐震化しましょうよ。で、水漏れが多いんです。佐世保の水漏れ率は全国でも最も高い。
水道事業というのは、有収水量と同じ一〇〇提供しても、水漏れが多いと下手すると八〇とか九〇しか、残りは全部、財政、お金入らないんです。それを、水道の事業者は有収水率、これを、例えば日本はすごい高くて、滋賀県でも九五パーとか九八パーとか上げる努力をしているんです。ですから、佐世保市は言わば有価物の水を地下にだだ漏れさせて、そして耐震化率も低い、そういう水道行政の中で、あえて三十キロ、四十キロ遠くから水を持ってくるダムが必要ですか。
いよいよ、国土交通大臣に、もうこれ以上答弁求めません、去年と一緒だったということでがっかりしています。明日また地元で皆さんとお話をしたいんですが、資料四を提供させていただきます。
実は、谷川弥一元衆議院議員が略式起訴されて、それで辞任されました。この川棚川、石木ダムは谷川建設の地元なんです。地元でずうっといろいろ聞いていると、やっぱりダムの必要性よりも公共事業が欲しいんだという言葉を言います。先ほど三上えりさんも言っていらっしゃいました。私も知事をやっていましたので、公共事業必要です。特に農山村では、若い人が定着するのに、建設業に従事していただいて、そして、建設業に従事し、若い人がいてくださると、消防団員も確保できます。お祭りも、みこしをかく若い人が確保できるんです。何よりも、子供が生まれるんです。
ですから、私は、滋賀県内でも大きなダムを造ったときに、土木事業者の方に、あのダムでどれだけ地元にお金落ちましたか。で、知事として、実はその建設経費のどれだけが地元に落ちたのかということを土木の部長に計算するように言いました。ところが、土木の事業は何がどうなったかって透明性が低いので、あるダムを造ったときにどれだけ地元が潤ったかというデータは取れませんでした。でも、実感的に、やはり必要なんです。
ですから、谷川建設さんがいろいろ頑張った、そして地元で事業をしてこられたことは効果があったと思いますが、そのことが実は、もうちょっと敷衍しますと、利水事業は水道のコストに上乗せされるんです。ですけど、治水事業は負担者いないんです、税金なんです。これ、昭和二十四年のシャウプ勧告以降です。それまでは、私も、地元でずうっと土木の村の計算をした、で、土地所有者あるいは住宅所有者に治水の負担金がありました。昭和二十四年以降はないんです。ということは、治水事業は税金ですから、ですから、できるだけたくさん、政治的に陳情するだけで、そして票を集めるだけで事業が来るわけです。
こういうからくりも含めて、国土交通省さん、是非、この政治と金の問題、自民党さん頭痛めていらっしゃると思います、それは短期的なクリーンさ、透明性です。でも、それこそ土木の専門家がここまで計算をして、そして治水の必要性が低いという言わば自然界の真実を示し、そして、この水道事業の不必要性というのは誰が見ても分かりますね。この辺のところで、自然現象、社会現象の大切な原理を無視して、六十年後の子供にまで建設国債で言わば数百億円のダムを造るのか、これはもう政治のモラルです。私自身は政治のモラルだけ訴えさせていただきます。
この資料は特に答弁は求めませんが、是非ともこれは与野党一緒に、四重苦の中で日本国がどうやって次の子供たちに説明のできる公共事業を積み上げていくのか、是非とも国土交通大臣の、そして岸田総理の、今日おられませんけど、また予算委員会で機会があったら取り上げさせていただきますが、皆様の政治のモラルの回復、お願いしたいと思います。
時間になりました。失礼します。以上です。
▼当日使用資料