20230406国土交通委員会【確定稿】

令和五年四月六日(木曜日)

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
国民民主・新緑風会の嘉田由紀子でございます。質問の時間をお与えいただき、感謝申し上げます。
私、今回のこの法案、大変歓迎をして、そしてエールを送りたいと思っております。特に、ライフワークとして水害死者ゼロを目指し、流域治水政策を自治体で、また研究者として進めてきた立場から、よりきめ細かい、中心の一級河川だけではなくて、二級河川、あるいは山も含めて面的に水害予報を出すということは大変大事だと思っております。
まず最初に、球磨川水害のことを御紹介したいと思います。
二〇二〇年の七月四日ですが、東シナ海からの線状降水帯によりまして、数時間で五百ミリを超える豪雨、流域で五十名の溺死者被害が出てしまいました。熊本県が溺死者の個人情報を公開してくれましたので、何が生死を分けたのかという環境社会学者としての視点から、地元の皆さんと一緒に一人一人の溺死者の御自宅を訪問して、何時何分頃、どこから水が入ってきて、なぜ溺死をしてしまったのか、調査をしました。
そこで分かったことは、球磨川本流、これは国土交通省一級河川です、の水位情報や氾濫以前に、球磨川に流れ込む支川、町中水路が先にあふれる、資料一にありますけれども、万江川とか山田川、それで亡くなられた方が圧倒的に多いということを推測させていただきました。そして、この本流の上流部に例えば川辺川ダムを造っても、浸水面積は結果的に減らせるでしょうが、溺死者ゼロには持っていけないのではないのかという問題提起もさせていただきました。20230406【配布資料1】国土交通委員会
今日これで答弁を求めるわけではございませんが、今何が現場で、特に豪雨が増えているところで起きているかということを考えますと、今回、支川がどれだけの水位だったか、水量だったかという情報はこの球磨川水害ではほとんど住民に知らされていない、その連携ができていなかったんです。そこを今回のこの法案で、気象庁と国土交通省、それから都道府県が一緒に予報の高度化を図るということは大変歓迎をしております。
その前置きの上で、今まで既に質問がたくさん出ていますので、できるだけダブらないようにさせていただきます。
まず一点目ですが、この予報の高度化でどのような予報の充実ができるのかということをお願いしたいんですが、少し一般化をしまして、国土交通省さんでしょうか、一の一でございます、お願いいたします。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
近年、自然災害が頻発、激甚化しており、バックウオーター現象などによって本川と支川の合流地点における浸水被害の発生も多数起きているところでございます。
今般の改正につきましては、国土交通省が本川、支川一体の水位予測によって取得した予測水位情報、これを上流部や支川の洪水予報を行っている都道府県の求めに応じて提供する、こういう仕組みを構築するものでございます。これにより、都道府県が新たに洪水予報河川の指定を進めることが可能となり、バックウオーター現象も考慮した予測情報を活用し、洪水予報の早期発表を行うことにより、早めに避難行動を促すということが可能となるところでございます。
○嘉田由紀子君 実は二点目に避難行動にどう貢献できるかと質問をしようと思ったんですが、既に局長さん、時間的に早めに避難を促すことができると、これは大きな効果だと思います。
では、二点目に、予測モデルの有効性の強化ですけれども、現在は、従来の貯留関数法に基づいて進めてきた予測モデルに比べて、今回のモデル、どのように有効性が高まったと認識しておられるでしょうか。局長さん、お願いします。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
従来の貯留関数法に基づく水位予測では、基準地点などの流量観測が行われ、水位と流量の関係が把握できている水位観測所など、特定の地点のみの予測でございました。現在のモデルでは、流域を二百五十メートルメッシュで構成した分布型流出モデルを採用しており、きめ細かく流出量の予測が可能となっております。また、新たに河道のモデル、河川のモデルを導入して、河川の任意の地点における水位予測が可能となっております。加えまして、実際の観測水位データと整合するように計算で出てまいりました水位データを逐次最適化するデータ同化技術、これを導入することにより、より精度の高い予測が可能となってございます。
このように、現在の水位予測モデルを用いることで、よりきめ細かな防災対応あるいは避難の支援が可能となると認識しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
そのより詳細なというところで私が一貫して問題だと思っていたのは、森林とかあるいは土地利用の違いによってどういうふうな流出パターン、また水位、水量が変わるかということで、今回、気象庁さんのデータがより綿密に入ることでここが可能になるのではないかと思っております。
二の三ですが、流出計算における流出パラメーターで二十一種類の土地利用を考慮するとありますが、特に現場で問題なのは、森林の伐採や、あるいは森林の保水力が落ちている、このことをどういうふうにこの水位なり水量に反映できるか。二の三でございます。局長さん、お願いします。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
現在の水位予測モデルの流出計算においては、現状の土地利用状況というものを考慮しまして、二十一の種類に分類して、流出のパラメーターというものを設定しております。土地利用の変化がございましたらこの流出パラメーターの見直しということが必要でございますけれども、例えば大きな土地利用状況の変化ですとか、あるいは大きな出水後などに検証を行って、必要に応じて実施していこうというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 これは今後の期待というかお願いなんですが、例えば球磨川水害でも、森林の皆伐、全体を切ってしまう、この影響が大変大きいんですね。そのことは林野庁と一緒に流域治水の仕組みの中に入ろうとしておりますが、必ずしも現場でまだまだ有効な方向が見えていないので、ここは今後のお願いでございます。
そして、大きな三点目ですけど、気象データの利活用についてですが、既に様々なビジネスなどに気象データが有効に使われる、先ほど石井議員もおっしゃっておられました。国土交通省さんとしては気象ビジネス市場の創出を掲げておりますが、国民にどのようなメリットがあるでしょうか。あるいは、市場拡大に向けた課題、どう強化しているか。三の二でございます。お願いします。20230406【配布資料1】国土交通委員会
○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
気象データは様々な社会活動に関係しており、他のビジネスデータと組み合わせることなどにより幅広い産業において業務効率化や売上げ増加などが期待できることから、気象庁としても、気象データの利活用を通じた気象ビジネス市場の創出に取り組んでいるところです。
一方、気象ビジネスの拡大に関しては、産業界全体において、気象データの活用方法が知られていないことや気象データが利活用できる人材が不足しているといった課題があると認識しております。そのため、気象データ利活用に係る普及啓発を行うとともに、気象データとビジネスデータの双方の知識を持ち分析できる気象データアナリストを育成する取組を進めているところです。
今後とも、気象ビジネス市場の拡大に向けてしっかりと取り組んでまいります。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
ちょうど四月四日の日経新聞に、民間会社による気象情報の整備、精度向上で、災害対策システム市場、これは世界的規模だと、二〇三〇年には四十兆円を超えるという予測が出されております。地震、津波、水害など、災害大国の日本であるからこそ、社会的、技術的蓄積により国際的な貢献が可能と思います。これは、ビジネスだけではなくて、まさに命を救う、JICAなどを含めてですね、国際貢献も必要だと思います。
政府として、このような民間企業への後押しはどう進められるでしょうか。
○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
近年、甚大な災害の発生などを踏まえて防災対策の必要性は国際的にも高まっており、民間企業との連携の重要性が増していることも指摘されているところでございます。我が国は、自然災害を数多く経験し、過去に培った防災に関する技術や知見を有しており、気象庁では、例えば我が国の企業による気象レーダーの海外展開の支援などにより、関係機関と連携して進めておるところでございます。
今後も、我が国の技術や知見を活用し、民間企業の海外事業の後押しを含め、防災分野での国際貢献に取り組んでまいります。
○嘉田由紀子君 是非、ビジネスだけではなくて、国際貢献というところでお願いしたいと思います。
この後、後半、実は、支流と本流の関係で出てくる水害というところで、実は、長崎県の石木ダムについて少し御紹介させていただきます。
資料に、資料五としてお出ししておりますが、長崎県には、県管理の二級河川、川棚川というのがあります。その支流に石木川という小さい川があります。そこには、利水、治水目的の多目的ダム、石木ダム計画があります。20230406【配付資料5】国土交通委員会
今から五十一年前、一九七二年に予備調査が始まり、昭和五十年には事業に着手をしました。そして、平成九年には地権者団体の一部が合意をして三十数戸移転をしましたが、残り十三戸、十三世帯は事業そのものの必要性に納得できないということで移転を拒否して、既に十年以上、千五百日、連日の座込みをしております。実は、先日亡くなられた坂本龍一さんも、二〇一八年にはこの石木ダムの場所を訪れて、十三世帯の小さな公共が守れなかったら大きな公共をどういうふうに守るのかという問題提起もしていただいております。
しかし、二〇一九年には、十三世帯の土地、家屋が全て強制収用をされてしまいました。そして、つい三月末、長崎県は、収用された土地と私有地の境界が不明瞭で、手続を無視したまま、水路に土砂を入れる工事を始めました。水路、ちょうど農業をやっている方はお分かりだと思いますけど、三月、水路の土砂を上げてこれから水を流して田んぼをつくるという、そのタイミングで水路、土砂を入れた。大変暴力的なやり方だと思います。住民の方々はますます意識を硬化させて、これでは到底話合いに応じられないと強く抗議をしております。それが最新の情報です。
そこで、質問させていただきます。
五十年以上前に計画されたダムで、計画が残りながら盛り立て工事には入っていないダム、日本中に幾つくらいありますか。国営あるいは自治体営、どちらでも結構です。名前も含めて教えていただけたら幸いです。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
国土交通省が所管する事業中のダム建設事業は、全国で、直轄、補助合わせて五十五事業ございます。そのうち、実施計画調査に着手してから五十年以上経過し、ダム本体工事に着手していない事業は、川辺川ダム建設事業となっております。
なお、御指摘の石木ダムにつきましては、ダム本体工事として、堤体打設に先駆けた堤体の上部からの基礎掘削、これを令和三年九月に着手しているところでございます。20230406【配付資料5】国土交通委員会
○嘉田由紀子君 時代が今大きく変わっておりますが、川辺川、そして石木、五十年以上前に計画されたのが残っているのは極めて異例だというふうな理解、今の数で理解させていただけると思います。
二点目の質問ですが、二〇一九年に長崎県が十三世帯の住民の農地、家屋など全ての土地を収用して、行政代執行を進めることも可能となりました。これまで、住民が耕作している土地や居住している家屋を強制収用して建設されたダムは日本中にありますか。これはある意味で、若い人は御存じないかもしれませんが、成田空港を造るときに三里塚で土地を強制収用して公共事業を進めた、それにも匹敵するほどの大きな課題だと思います。前例があるかどうか、教えてください。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
土地収用法に基づく行政代執行、これは、都道府県知事が各起業者の請求により行政代執行法に定める手続に従い実施するものでございます。
昭和六十一年以降のダム建設事業について、確認できる範囲においては、五件の行政代執行を実施した事例を把握しているところでございます。五件の行政代執行のうち、建物や工作物を代執行対象としたものは三件ございます。それらが耕作地にあったのか宅地にあったのかは不明でございます。また、現に居住している建物の行政代執行を行ったダム事業の事例は承知しておりません。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
畑や田んぼに野小屋があって、それを代執行するというのは影響は少ないですけど、居住している、現に居住している人たちの住居を言わば行政代執行する、これは本当に生活の基盤が壊されるわけです。そういう前例はないというのが局長の答弁だと思います。
つまり、石木ダムの事例は十三戸、そしてここには七歳から九十五歳までの方々が五十名、日々暮らしております。私も何度も何度も地元に行っておりますけれども、またそこから取れたお米も日々いただいております。暮らしを成り立たせ、里山として本当に美しいんです。しかも、蛍がもうらんまんとその小さな石木川から、しかもここは、シーボルトが江戸時代に、長崎、日本の淡水魚の代表としてライデン博物館に運んだ、そのシーボルトが運んだ淡水魚も今いっぱい生きております。まあ河川改修がされていないからなんですが。
実は、ここで災害が起きたということなんですけど、確かに平成二年には町が氾濫しているんですが、よく調べると、それは支川と内水氾濫が主でした。本川の氾濫はないわけではないですが、内水氾濫の逆水、さっき局長が言われたバックウオーターですね。それから、戦後、昭和二十三年にも被害があったんですけど、そのときは石木川と川棚川の下流で溺死者出ておりません。言わば土砂崩れとか、その上流なんです。つまり、川棚川は危ない危ないと、地元で、だからダムが必要だと喧伝されているんですが、支川と全体を見たときに、まさに流域治水の仕組みでいったときにダムの必要性は極めて少ないと。私自身は、地元、かなり徹底して調べて見ております。
ということで、最後に斉藤国土交通大臣に伺います。
公共事業は情にかない、理にかない、法にかなうべしと、昭和三十年代に言ったのは、蜂之巣城を作った室原知幸さんです。まさに、毎日座込みをし、そして七歳から九十五歳まで四世代で住んでいるここの暮らしを足下から壊す、そのような公共事業に対して、国が事業認定して国からの補助金も入っておりますが、県営です。そういうところで、斉藤大臣の御発言、難しいかと思いますが、御意見お願いいたします。
そして、あっ、どうぞ、お願いします。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 石木ダムにつきましては、事業主体の長崎県及び利水者である佐世保市において、過去の洪水や渇水の発生状況、また代替案の比較検討も含め、治水、利水両面の事業再評価がそれぞれ行われ、事業の継続がこの長崎県及び佐世保市において決定されているところです。
石木ダムの水没予定地に居住されていた六十七世帯のうち既に八割の方が移転されていますが、残り二割、十三世帯の方が土地収用法の裁決の明渡し期限が過ぎた以降も収用地内で生活されていることは承知しております。
長崎県においては、石木ダムは治水、利水両面から必要であることから、事業を円滑に進めるため地元住民の皆様方との関係を構築することが大切であるとの考えの下、説明会や戸別訪問、生活相談も数多く開催しており、御理解と御協力を得られるよう努力していくと伺っております。
国としては、引き続き、技術面、財政面から必要な支援をしっかりしていきたいと考えております。
○委員長(蓮舫君) 時間が参っております。
○嘉田由紀子君 はい。まとめさせていただきます。
立場上、そこまでしか言えないとは思いますが、そもそも行政代執行なり強制収用で公共事業を進めるということの手続などについては、また次回、より詳しく質問させていただきたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。

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