10月15日 台風19号被害の背景と今後の対策案:その1

<台風19号被害の背景と今後の対策案:その1>14日夜までのNHKの集計によると、台風19号で、少なくとも58人が死亡、14人が行方不明となっています。浸水が広範囲に及ぶなか、各地で捜索活動が続けられており、水没家屋の中での溺死などの被害発見はさらに広がる恐れがあります。心が痛みます。被害に遭われた皆さまに心からお見舞い申し上げます。

また浸水被害などで途方に暮れておられる皆様が一日もはやく生活が再建できるように、政治と行政の責任は重いです。本日、安倍総理大臣が、台風19号を激甚災害に指定をする方向ということ、被災者の皆さんの支援にとっても大事な決断です。15日に予定されている参議院予算委員会でも急きょ、台風19号関連の質疑の時間を追加する、ということです。

今回の豪雨による被害背景と、滋賀県が進めて来た「流域治水推進条例」のようなソフト、ハード対策を進めることによる再発防止策について、現時点での意見を数回にわけてまとめてみます。長いです(2000文字)。9月14日。

台風19号で、東日本を中心に、37河川52ケ所で堤防が破堤、越水は200ケ所をこえた。氾濫や浸水がなぜ起きたのか?という疑問には、想定を超えた雨量が要因といえるでしょう。「観測史上最大」といわれるような記録的豪雨が100ケ所以上で起きたということですが、その要因としては温暖化の影響が指摘されています。温暖化の時代、観測史上最大豪雨は今後毎年のように起きるかもしれません。

観測史上最大のような豪雨が広範囲に降った場合でも洪水を抑え込むことができるダムや堤防整備などのハード整備が日本中くまなく完成しているわけではありません。ハード整備はかならず「計画規模」という想定雨量があり、観測史上最大のような規模はカバーできていません。「計画規模」を超えた場合には河川の氾濫や堤防の破堤が起きてしまうことは避けられません。ただ政治や行政責任者として「河川が溢れる場合がある」と宣言することは大変苦しいことです。

私自身、2006年に滋賀県知事に就任した直後から「どんな大雨でも枕を高くして眠れるように河川の中に豪雨を閉じ込めるのが河川管理者としての知事の仕事だ。その為にまずはダムをつくり河川改修を行え」と何度も何度も県議会で指摘されました。「いかなる豪雨でも川の中に閉じ込めて、住民が安心してくらせる地域づくり」は確かに理想です。しかし、この理想が今、ふたつの理由で実現できなくなっています。

理由は大きく分けて二点あります。ひとつは、温暖化による豪雨が増え、想定外が増えるという気象変動の理由だ。もうひとつは都市化の影響だ。それまで農地だった地域が住宅地に代わるととたん、地域から流れ出る水量は増える。またくねくねとまがっていた河川が、まっすぐにされ、護岸や水路がコンクリート化されたら下流には短時間に水が流れるようになる。「水が早く出てくる」と昔を知る古老は言う。

またそもそも日本のように山がちの地形で、降雨量が多くて、河川が多い地域では、水害が発生しやすい地形は昔からわかっていました。滋賀県では、瀧健太郎さん達が中心となり、河川整備がいくら進んでも、相対的に危険な場所は変わらないと断言します。溢れた水は低いところに集まるからです。「滋賀県開発行為に関する技術基準」に示した図はわかりやすいです。

今回の浸水被害地域の中から二か所紹介します。ひとつは、長野県の北陸新幹線の長野車両基地が水没し、120両もの車両が水没し巨額の被害をこうむってしまった事案です。赤沼という地名からして水域を想定させる地域はもともと、千曲川と浅川の合流点上流で、地形的にも危険な場所でした。昔から「水害常襲地」と地元の人は言い、ハザードマップでも4メートル以上の浸水が想定されています。

このハザードマップの被害を想定できていたら、台風が近づくなかで車両を避難させることはできたかもしれません。昔の話ですが、大雨が近づくと農家は牛たちを安全な高台に逃がしたということは各地で聞かせてもらいます。今回の被害から、次にむけて「BCP(Business Continuity Plan)」をつくってもらいたいです。

もうひとつは、埼玉県川越市の平屋建ての特別養護老人ホームと障害者施設です。川の近くにある障害者施設「初雁の家」や特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」の一帯が水没して、200人以上がかろうじて救出され、命を守れたということでした。ここも入間川と越辺川の合流地点で、川越市のハザードマップでは4メートル以上の浸水が想定されています。

実は滋賀県での条例では、ハザードマップは「地先の安全度マップ」と名付け、住民目線での「地先」という言葉と、ハザード(危険性)ではなく、住民にとっての安全度を確保する、という意味での名付けとしました。ただ、今のところ、「地先の安全度マップ」という名称はなかなかひろまりません(微笑)。

 

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