20200219参議院資源エネルギーに関する調査会 参考人質疑【確定稿】

令和二年二月十九日(水曜日)

資源エネルギーに関する調査会

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にもしっかり時間をお与えくださいまして、ありがとうございます。
原子力発電所問題につきまして、大きく三点お願いをしたいと思います。
まず、大前提ですが、私は、昨年の八月から参議院議員としてこちらに来させていただいておりますけれども、それまで、二〇〇六年から二〇一四年まで二期八年、滋賀県知事をしておりました。その当時、特に三・一一の福島の事故のとき、滋賀県知事としてこれは全くよそ事ではないと思いまして、知事として、また元々の科学、環境研究者としてもいろいろ研究をさせてもらいました。
具体的には、先ほど来問題になっております敦賀原発、あれは琵琶湖の最源流の余呉町中河内というところからたった十三キロです、たった十三キロです。そして、その水源が琵琶湖に入るわけです。それから、大飯原発、二〇一二年に三、四号機の再稼働が大問題になりました。大飯原発も県境から三十キロ、そして、大飯の原発から福井県庁に行くよりも滋賀県庁に来る方が近いというくらい近接をしております。たまたま県境があるので原発立地とは言われておりませんけれども、被害を受けるという意味では、私は、被害地元だということで、いろいろ政策もつくってまいりました。
その中で、まず一点目ですけれども、今日、通告させていただいております大飯原発についてお伺いいたします。
二〇一四年の五月二十一日に福井地裁が大飯原発の運転差止めを命じる判決を出されました。当時の裁判官の樋口英明さんの講演を直接に聞かせていただきました。そこでの樋口裁判長の判断は大変明快で分かりやすいものでした。つまり、大飯原発の耐震強度は一般住宅より脆弱で、大飯原発を再稼働することは危険極まりない、第二の福島事故を起こしかねない、国家としての賭けであるということでございました。
具体的な数値で見ますと、大飯原発一、二、三、四号機、昭和四十年代から五十年代に立地しておりますが、建設当時の耐震強度四百五ガルで、東日本大震災後、補強されて七百ガルとなりましたが、最新の再稼働申請時には、三、四号機、八百五十六ガルまで上げられたということです。
一方、昭和五十六年の耐震基準の変更を受けて、一般住宅の耐震強度は大きく強化をされております。我が国で記録された最大震度の地震、四千二十二ガルに耐えられるよう、ハウスメーカーの一般住宅は、これメーカーによっても違いますけれども、四千ガルを超える地震にも耐えられるよう耐震強度を上げております。そういえば、福島第一原発事故の直後、私は、余り直近までは行けなかったんですけれども、福島地域を見せていただいて、古い家屋はかなり地震で壊れていたんですけれども、新しい家屋はそのまま建っているということも見てまいりました。
つまり、住宅メーカーの耐震強度よりも原発自身の強度が低かったんじゃないのかということを一般市民としても疑問に思うわけですが、ここのところ質問ですけれども、一般のハウスメーカーの住宅と比べても桁違いに耐震性が低いと樋口裁判長が言われた大飯原発あるいは高浜原発を再稼働させてよいのかどうか、原子力発電所の耐震基準強化に向けた取組などを含めて更田委員長にお伺いをしたいと思います。

○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
まず、御質問の中にありました一般住宅における地震動、四千二十二ですとか四千ガルに耐えるようにという、これは住宅自体の揺れの際の値であって、住宅自体が揺れたときの加速度のことを指しております。一方、原子炉施設の敷地に大きな影響を与えると予想される地震動として策定する、いわゆる基準地震動というものは硬質地盤である解放基盤表面といったものにおける地震動を表しています。これは、両者は違うものですので、比較できないものであります。
何かを揺らしているときに、軟らかいものの上にあるものの加速度と底で揺すっているところの加速度というのは非常に大きく異なります。ですから、この二つの数値というのは比較できないものを比較しているということを申し上げたいと思います。

○嘉田由紀子君 それは多分科学的な説明なんでしょうけれども、私たちが一般市民として、それではこの震動の数値の意味が全然違うという判断になるんでしょうか。樋口裁判長の判断は全く間違っているということでしょうか。樋口裁判長は、地震大国の日本には北海道から沖縄まで原発を動かせるところはどこにもないと言っておりますけれども、その辺りのところ、比較できないものを比較して、数値が間違っている、司法として間違っていたという御意見と伺っていいですか。

○政府特別補佐人(更田豊志君) 私はその樋口委員長の御発言というのを承知をしておりませんけれども、もしその数値を挙げて、一般住宅の四千と大飯の解放基盤表面による基準地震動八百五十六を比較しての御発言であるとすれば、それは比較できないものを比較しているということになります。
しかしながら、この地震大国の日本には原発を動かせるところはどこにもないとおっしゃっている御意見そのものについては、私ども、コメントする立場にはございません。

○嘉田由紀子君 私は、その辺の科学的な背景、地震学でありませんのでこれ以上コメントできませんが、ただ、本当にあの地域で一般住宅が壊れなかった、これ、それこそ事故調でも、原発が問題だったのか地震が問題だったのか津波が問題だったのかということは今でも原因究明できておりませんけれども、一般住宅で新しい住宅がほとんど倒れていなかったところで原発が地震で倒れたとしたら、やはりその言わば耐震強度というものは問題にしなければならないと思っております。
これはコメントはよろしいんですけれども、実は、昭和四十年代に大飯原発が立地する、そのときの状況を地元で聞き取りをいたしました。
大飯原発、昭和四十年代初頭ですけれども、ちょうどあの頃、日本中で米余りになり、農業がどうなるかということで、実は大飯原発が立地しているところは隠れ田だったんです、地元の人たちにとっては。この後、米が作れなくなる、あるいは作っても売れなくなる、そうしたらあそこを何かに使おうということで、当時、かなり大きなゼネコンの副社長をしていた方が、じゃ、あの隠れ田を原発誘致したらどうかということを言って、そのときに地盤調査がきちんとなされていなかったということも伺っております。
ただ、これは当時のデータが、どこまで地盤調査をしてあそこに立地したのか、なかなかデータがないんですけど、この後、私自身も研究をさせていただきたいと思います。
さて、そういう中で、先ほど来、日本の安全基準は世界で最も高いと言われて、例えば、安倍総理、二〇一四年の一月二十四日の第百八十六回施政方針演説では、世界で最も厳しい安全基準と言っておりますけれども、この根拠はどういうところにあるんでしょうか、更田委員長にお願いいたします。

○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えいたします。
お答えに先立ちまして、先ほど私の発言の中で樋口委員長と申し上げてしまったようでありまして、これは樋口元裁判長の誤りでございますので、訂正をさせていただきます。
まず、新規制基準ですけれども、これは、これまでに明らかになった東京電力福島第一原子力発電所の教訓を踏まえ、IAEAや諸外国の規制基準も確認をしながら策定をしたものであります。プラントの安全対策について、その要求水準を高めたもので、いわゆる設備の安全対策に資したものであって、避難計画等は含まれてはおりません。
原子力規制委員会が守備範囲として見ているのはプラントの安全対策であって、避難計画の策定については、内閣府の原子力防災担当が自治体を支援しているところであります。

 

○嘉田由紀子君 ただいまのように、プラントの安全性、機能だけで、もちろんその安全基準、大事なんですけど、住民からしたら、あるいは地元の自治体を預かる立場からしたら、地震に対する問題だけではなくて、そこに人が暮らしている、そして生き物も環境もあるわけですから、いわゆる深層防護レベル、健康や命や、そして未来への環境汚染を起こさないということが一番大事でございます。
そういう意味で、これは内閣府にお伺いしたいんですけれども、この深層防護レベル五で日本の今の避難体制含めて最も安全と、その備えがあると言えるでしょうか、お答えをお願いいたします。
○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
この大飯地域、今御指摘の地域でございますけれども、既に、各自治体の避難計画を含む緊急時対応が、関係省庁や自治体などが出席する地域協議会で原子力災害対策指針などに照らして具体的かつ合理的なものであることを確認して、総理を議長とする原子力防災会議で報告、了承されているということがございます。
また、緊急時対応が策定された後においてもより実効性のある計画となるよう、大飯発電所及び高浜発電所を対象に、国が関係自治体と一緒になって防災訓練を実施してきたところであります。
いずれにいたしましても、原子力災害への備えに終わりや完璧はないことから、こうした地域防災計画や避難計画の継続的な充実強化に努めることでこうした確実な避難などができるように対応していきたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 私、地元で避難訓練を具体的に指示をして、そして国ともやらせていただいた立場でもございますけれども、四つの点で隘路があると思っております。
一つは、情報共有です。SPEEDIデータは使わず、計測データによる避難指示をするということですけど、これが本当に住民の人たちに徹底できるのか。
二つ目は、避難計画の交通上の実効性です。地震だけではなく、それこそ大雪だったりいろいろなことがあり得ます。特に、この高島市というところは山の中で、道路が一本しかありません。去年の台風のときでもその道路が一本切れて、それで一週間ほど孤立するということもございました。ですから、この避難計画の交通上の実効性。
それから、ヨウ素剤の配布と服用手順の不透明性。ここも、地元ではふだんから置いておいてほしいという要望もあれば、いや、もう五キロ圏外だから、それは内閣府としては整備できないというような意見。
そして、四点目は、重大事故時の指揮系統の混乱です。原子力災害対策特別措置法では、国の対策本部が地元市町村に対して指示をすると。災害対策基本法では、国の指示ではなく、市町村の判断でということになっています。
この四点については、次回、お時間があるときに伺えたらと思っております。予告だけさせていただきます。今日は、それで、もう既に時間が全体の二十分迫っているので。
県民の皆さんにいろいろなアンケートなどをいたしますと、例えば、二〇一二年の五月、大飯の三、四号機の問題があったときに、県政モニターアンケートをさせていただきました。八〇・六%が再稼働すべきではないと。そして、その大きな理由は、言わば自分たちの健康と安全とともに、琵琶湖のことを気にしております。と申しますのは、言うまでもなく、琵琶湖下流一千四百五十万人、京都、大阪、兵庫までですね、一千四百五十万人の命の水源ですので、万一ここが汚されたら近畿全体に影響があるだろうということを、滋賀県民の皆さん、最も気にしていただいております。
というところで、県が実はシミュレーションをいたしました、二〇一一年から一二年にかけて、また生態系への影響は一三年にかけて、まずは大気汚染のシミュレーション、そして水質汚濁のシミュレーション、それから生態系影響へのシミュレーション。これは、本来はこんなに近いんですから国でやっていただきたかったんですけれども、立地地元ではないのでできないというので、滋賀県の環境科学研究センターにお願いをして、独自の予算でシミュレーションをいたしました。
その中で特に私たちが一番気にしているのは、水質汚濁の水道水取水の影響でございます。最悪の事態、福島並みの事態が起きますと、七日から十日間、水道水源として取り入れできない、百ベクレルを超えてしまうというようなデータが出ておりますけれども、こういうところで厚生労働省水道安全部の方としてはどういう見解をお持ちでしょうか、お願いいたします。

○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
このシミュレーションを前提といたしました場合、放射性ヨウ素の摂取制限に関する指標値を超過した水道水につきましては、例えば、風呂水や手洗いなどの生活用水として一時的に利用したとしても直ちに健康に影響が出ることを示すものではないことから、飲用水以外の水道水の利用は可能と考えております。
一方、飲用水につきましては、被災した水道事業者が他の水道事業者に応援を要請し、給水車等を用いた応急給水を実施するというスキームが公益社団法人日本水道協会において既に構築されていることから、厚生労働省といたしましても、地方公共団体や日本水道協会と緊密に連携を取り、適切に応急給水が実施されるよう対応することとなると思われます。
なお、ふだんから、災害時なども想定しつつ、予備水源を含め複数の水源やルートからの給水を可能にしておくなど、地域の実情に応じまして災害等にも強い水道を目指していくことも重要であると認識しておるところでございます。
以上です。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、もちろん給水車もあり、そしていろいろふだんから救援協定やっておりますけれども、近畿圏の一千四百五十万って大変な水源なんです。飲み水は一日二リットルから三リットル、これはボトルでとか、あるいは料理はということで、やはり、例えば、あの福島のときに金町浄水場が、東京で放射性物質の検出がされて大変な混乱が起きました。あれは、直接水源が全体汚染されるのではなくてもあれだけの混乱でしたので、実はこの後、数値的に、例えば一千四百五十万人の水源が七日から十日間止まった場合に、具体的に飲料水をどういうふうに供給できるのか、少し宿題を出させていただけませんでしょうか、どこからどういうふうに供給するのか。数値は私もそれなりに持っているんですけれども、今、日本中で出回っているボトル水を全部関西に集めても間に合わないというくらいの状態でございますので、そこは数値で押さえていただきたいと思います。
あわせて、実は、日本の水道行政はどんどんどんどん広域化して、そして地下水やあるいは井戸水などを放棄させるという方向にやってきました。ヨーロッパやアメリカでは、広域化ではなくて、地下水、井戸水をまずは重視して、そして表流水はできるだけ水道水源に使わないという方針をつくってきたんですけれども、そういう日本の、広域化して、そしてダム取水に頼るという、そのような水道行政の中で、本当にこの後、万一の事故が起きたときに、関西圏千四百五十万人の命の水源、供給できるのかということも、この後、研究をしていただけたらと思います。
もうお時間ですね。いろいろ申し上げましたけれども、これは飲み水、料理だけではなくて、近畿圏の経済、生活、全てに関わる大変重要な問題ですので、継続して研究いただけたらと思います。
以上です。

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