10月6日米原で小泉純一郎元首相が「原発のない社会へ」力強い発信。「福島事故でわかった」「原発は安全ではない、高い、汚染された廃棄物を次世代につけまわす」「原発のない社会を日本人として目指そう!」「向上心の高い日本人ならできる」と力強いメッセージ。後半には井戸謙一弁護士による「未来政治塾」で、原発にかかわる司法が今危機的状況にあることを強く訴えていただきました。原発は反対運動ではなく、未来の安全社会をつくる「賛成運動」であること、皆で訴えていきましょう。10月7日。(また長いです:ゴメンナサイ)。
2018年10月6日(土)14時より、滋賀県米原市にある滋賀県立文化産業交流会館で「原発のない社会へ―小泉元首相の話を聞く集い」が開かれ、小泉純一郎元首相が「日本の歩むべき道」と題し講演。滋賀県の市民有志からなる実行委員会(委員長・井戸謙一弁護士)が主催。台風接近で天候が心配な中、会場いっぱいの1800人が集合。
まず井戸謙一実行委員長の開会の挨拶。原発は必要もないのに万が一のリスクを将来世代におしつける。世論調査では6~7割が「原発のない社会を求め、原発に反対」。これは政治的立場には関係ない。保守も革新も関係ない、所属する団体にかかわらず、幅ひろい支持をえている。今日10月6日を、滋賀県での原発をなくす運動の新たな「旅立ちの日」にしたいと力強く宣言。
小泉さんの主張はすでに広く知られていますが、今日の講演のポイントは3点あったと思います。ひとつは、政治の責任者として、なぜ原発ゼロを目指すのか、そのプロセスをわかりやすく自分の経験として自分の言葉で語ってくれたことです。原発の3点の問題。「安全」でないことは、福島事故の惨状を見て理解した。首相時代に安全と説明されてきたことがことごとく嘘だった。福島事故は明らかに天災ではなく「人災」と言い切りました。だから政治の責任が大きいと。「安い」もデータで見たら嘘、「クリーンエネルギー」も嘘。
二点目は、特にクリーンではないことの論証に廃棄物処理の問題に出口がないことを強調。フィンランドのオンカロ処分場を自分の目でみて実感した。何キロも深く掘った処分場、でもそこに収納できるのはたった二基分しかない。日本だけでも55基分の廃棄物処分、自治体はどこも手をあげない。どうやって処理するのか。10万年後の人類にどうやって「あけるな」という処理場入口のメッセージを伝えるのか?今の日本人同士、若い人たちの言葉さえ自分はわからない(ヤバイの使い方で笑いをとる)。
三点目は日本人の向上心に信頼をおいたら自然エネルギーを増やして原発をなくす変革ができるというメッセージです。明治維新直後、英国人「セルフ・ヘルプ」(自助)の話が日本人に強く受け入れられた。向上心をもって努力をして業を興すこと。向上心により自分の能力を高める。福沢諭吉の『学問のすすめ』も、身分で人を判断するのではなく学問をすすめ、自分の能力を高め、知性を高める。社会として成長していく。その精神があるから、日本はここまで発展してきた。(これは暗に今の原発推進政権が日本人の向上心を忘れているという批判と理解しました)。演題の通り「日本の歩むべき道」を示してくれました。
まるまる80分、原稿ひとつ見ることなく、ppt映像1枚なく、壇上のコップの水に口をつけることもなく、立ちっぱなしで見事な「小泉ぶし」でした。聞き惚れました。全く無償で、滋賀県までおこしいただき、心から感謝です。日本の歴史と人と自然を愛する「保守の真骨頂」をみせていただきました。
最後の挨拶は地元米原市の平尾道雄市長です。嘉田が提唱してきた「被害地元」という考え方を引用し滋賀県は原発問題の当事者であること。それゆえ、「今日という日は過去の全ての1日の積み重ねの結果であり、今日この日からの1日が、原発のない社会を実現するはじめの1日になるように行動していきましょう」「琵琶湖を守る滋賀県民運動にしていこう」と力強く締めくって下さいました。余韻の残る、力を結集する見事な挨拶でした。
この大きな大会を実行いただきました委員会の皆さま、井戸さま、村西さま、杉原さまはじめ17団体の事務局の皆さまに深く感謝申し上げます。
講演後は未来政治塾で、井戸謙一弁護士に「原発差止め訴訟の現状」の講演をいただきました。福島事故前の20件、事故後の36件の判決を分析したところ、最近になって「裁判官協議会」では「行政に先走って司法が判断するべきではない」という傾向が強まり、「判断回避」「新規制基準のほころびを糊塗して原発の運転を許容しようとする決定」が増えていることを指摘。なぜそうなるのか?最高裁はじめ裁判官の任命も安倍官邸からの影響が強く、決して三権分立になっていないという。これは日本社会のゆゆしき構造問題です。
ただ、希望があるとすると、原発の必要性が崩壊しているということが国民の目に見えてきていること。実は井戸さんは日本で初めて北陸電力の「志賀原発」の運転差止め判決を1999年にだされた裁判官です。井戸さんご自身もその時には「本当に原発が動かずに電気が足りるのか」という現実的判断をしたということです。私も知事時代に社会全体の安寧を願う立場から原発エネルギー供給がどうしても必要なのか、一番苦しむ点でした。
しかし今となってみると「原発がほとんどうごかなくても、電力は足りている」ということが過去7年間に証明されました。そのうえ安倍政権いわく「経済も順調」。原発の必要性はなく、代替エネルギーが地域経済も潤す。その世界的潮流をわかりやすく示しているのが河合弘之弁護士監督の『日本と再生』の映画です。滋賀県では2月17日に放映しました。また滋賀県のエネルギー政策でも、滋賀県地元の新しいエネルギームーブメントのビデオも25本つくりました。是非、両方とも見ていただきたいです。
今、原発政策をすすめるのは「安倍政権のメンツ」と「関連業界の利害」でしかありません。安倍政権のメンツと業界の利害に日本の未来、特に子どもたちの未来を破壊させない、「関西の命の湖」琵琶湖をお預かりしている滋賀県の責任です。原発の代わりはあるけれど、琵琶湖の代わりはありません!滋賀県民の未来づくり運動を、反対運動ではなく賛成運動として新たに!
長文におつきあいいただきありがとうございました。
(写真提供:野田武宏さん、中嶋洋一さん ありがとうございました)