Facebook 2018年10月15日

「栃の木祭り報告」(その2)。びわ湖源流の高島市朽木中牧共有地のトチノキ巨木林訪問。崖をよじ登る。昔の人はこの険しい崖をトチノミを背負って降りて来たんだと感動。琵琶湖水源の一滴の水を口に含みまた感動。またちょっと長いです(スミマセン)。10月15日。

2010年に朽木地区でトチノキ巨木の伐採問題がおこり、それ以来、滋賀県として巨木保全の応援をしてきました。その保全トチノキの一部、中牧村の共有トチノキ林を訪問。九州大学の藤岡悠一郎さんたちの案内で、大宮神社の森から登り始める。案内の西川明夫さんいわく。「ここは神聖なお宮さんの森なので清らかな気持ちで入らせてもらうように!」。今回、私たちが山に入るため地元での理解を得るのにご苦労して下さったようです。ありがたいことです。

メンバーは大津の町から来た7歳の小学生から82歳のシニアまで多彩。また地元の西川さん、清水さんなど住民の方と藤岡さんのような研究者と、この多様性が保全活動の力です。神社横の杉木立の群生をぬけると、クヌギやホウの広葉樹帯にはいる。藤岡さんの植生説明など、わかりやすい。葉っぱが大きいホオノキと手の形のトチノキ、また常緑樹のユズリハの違いなどを説明してもらう。

谷筋から尾根筋へ。だんだんに足許が厳しくなり、ロープをはってもらっている道筋を這い上がる。私は久方ぶりの山登り、きつい!一歩足をふみはずと崖下へ!ここで落ちたら迷惑をかける、と必死に足許をかためながら登ること約1時間。それにしても、この尾根筋をかつては食用のトチノミを拾って背負って下ろした人たちの苦労はいかばかりだったか、そのご労苦に思いをはせる。

ようやくトチノキ巨木林にたどりつく。足許にはびわ湖源流の一筋の水が流れでている!思わず一口、口に含む。藤岡さんのトチノキの植物としての特色や保全活動の全体説明に加えて私の方からは、伐採後の滋賀県の保全政策について説明。谷筋をかこんで10組くらいのトチノキの巨木群。谷筋だけに、1本切られただけでいかに膨大な土壌流出の影響が大きいか、現場でみるとよくわかる。そして皆で記念写真。

トチノキだけの独立木に加えて、トチノキと自生のアシュウ杉の巨木がからみあったまさに「連理の枝」のように絡み合ったセット巨木もある。何百年と風雪に耐えた幹には小窓のような額縁枝もできている。思わず皆で観光地のような「顔だし記念写真!」。巨木の枝が又になったところにはナツエビネなどの植物も根付く。カエルやヘビも巨木に巣づいている。ウロなどに多くの生物の居場所を提供してくれているのがトチノキだ。

藤岡さんが、「あっつ、何か生き物が!」と叫ぶ。リスかな、と二匹の小動物に皆の目がそそがれる。どうもリスより小さい。「ムササビか!」。藤岡さん「ムササビは夜しか動かないはずなのに!」。しばらく彼らの動きを追いかけていると突然、トチの巨木から、杉の巨木へ、皆の頭の上をとんだ!!ムササビが自然の状態で飛ぶ姿、初めてみました!感動の場面。残念ながら写真はうつせず。

この共有林は、中牧村全体のもので、村人ならだれでも貴重なトチノミの採取ができた、という。ただし、よその村の人たちの採取は禁止されていた。実は昭和30年代の燃料革命の時代、炭焼き用のブナやナラなどがチップとして大量に伐採されたようですが、その時に一緒に切られたトチノキも多かったという。しかし、この中牧の共有トチノキのように共有林であるがゆえに残されたものも多かったようだ。また隣の古屋集落では個人所有のトチノキのほとんどは切られてしまったけれど、村の神木と呼ばれていた巨木は残されたという。

帰路は、意外と楽に大宮神社までおりてきました。そこでは西川明夫さんに大宮神社の言われなど、ご説明いただきました。この神社の氏子は能家、小入谷、生杉、中牧、古屋の氏子80軒の氏子で守る氏神さんという。(ちなみに我が家にある明治11年の『滋賀県物産誌』によるとこの5村の戸数は合計113軒ですから、想像するほど戸数が減っているとはいえないかもしれません)。

本堂を囲んで八幡さん、水神さん、など8つの神さまが合祀されている神社で最も古い記録は1549年ということ。「経堂」には大般若経も納められていた、ということで由緒は古いという。年間20日の神社行事があり、そこを代わり番で住民神主が守っている。本堂に菊のご紋があり、皇室とも何らかの関係があったのではないか、と西川さんは推測しておられます。針畑地域の文化的研究、これからまだまだ可能性がふかまりそうな予感を西川さんたちの活動から感じました。

自然の存在とみえるトチノキのような巨木も、純粋に自然のまま生きてきたのではありません。人びとの暮らしや地域社会の仕組みと深くかかわりながら数百年の命を生き続けてきたのです。昨日も申し上げました、ポイントは住民の皆さんの前向きの参画と科学者の研究の進展です。両者をつなぎ保全の主体となっている「巨木と水源の郷をまもる会」(小松明美代表)が主催の「栃の木祭り」。ご準備いただいた皆さまにあらためて深く感謝申し上げます。

昨日紹介した子どもたちの力強い太鼓披露といい、地元の皆さんのお宮さんを中心とした森保全といい、希望を持たせてくれた栃の木祭りでした。

 

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