Facebook 2018年11月2日

滋賀県の流域治水条例による「浸水警戒区域」が甲賀市旧信楽町黄瀬地区で部分指定が決まりました。警戒区域指定は米原市村居田地区に次いで二か所目です。まだまだ長い目でみての働きかけが必要です。また治水投資も合理的な財源配分が必要です。税金配分に責任のある政治の役割と思います。11月2日。(2000文字、長いです、すみません)。

京都新聞の記事をアップさせてもらいます。これまでも紹介してきたように、自宅内での溺死被害を防ぐために、滋賀県では200年に一度という確率の大雨で3メートル以上の浸水が想定される地域を「警戒区域」として指定をして、住宅を改修する際の土地のかさ上げを必要とし(県からの費用助成あり)、新築時に居住者が避難できる空間の確保が求められます。

今回、倉敷市真備地区での51人の死者について詳しく報告してきましたが、自宅内での溺死というような被害が起きないよう、「現象後追い型」ではなく「事前対応型」とするための施策です。指定された甲賀市黄瀬地区は大戸川の中流部の川沿いにあたり、2013年の台風18号でも浸水被害をうけました。大戸川ダムが計画されている、その直上流部にある集落で、万一ダムができると余計に水はけが悪くなり浸水被害が拡大する恐れもある地域です。

ちょうどFBの「5年前、2013年11月1日」資料に、信楽町で流域治水条例の地元説明会にでむいた時の写真がありました。黄瀬地区の方もこられておられました。2013年の11月県議会に「流域治水推進条例案」を提案していた時です。過去記録が出てくるのはありがたいです。この時は、県下の各地で、知事自身が条例説明会を行いました。県議会や市長会での反対意見が強く、大変厳しい議論でしたが、こうして地元で説明会を受け入れてくれただけでも有難いと思いました。

地元の反対意見は大きく分けて二点です。一点は「県が河川改修をさぼっているから浸水するのだ。はやく河川改修をすすめてほしい」という点ともう一点は「土地の資産価値がさがる」という点です。一点目は県として毎年数十億円の河川改修や維持管理などに予算をいれていましたが、県管理の504河川、2000キロを超える長さの中で「アクションプラン(事業の優先度)」を決めて順番にすすめるしかありませんでした。また土地の資産価値は、安全性を高める方が高くなるはずだ、と説明をしました。

このような慎重意見もあり、今回の黄瀬地区の指定は警戒区域の全体ではなく、部分指定ですが、「一歩でも進むのはいいことだ」という委員もいれば「地区内で助成が受けられるエリアとそうでないエリアが分かれてしまう」ことを懸念する委員の意見もあります。ただ、ここまでもってくるのも大変なプロセスだったと思います。地元の役員の皆さんの議論、そこでの県職員の説明など、紛糾する場面が目にうかびます。ご苦労さまでした。

今回、真備地域の調査をさせてもらい、20名ほどの方にアンケートをお願いしました。そこで「この真備地区が水害常襲地であることを知っていましたか?」という質問に、5名の旧住民の方は知っている、と応えていましたが、15名の新住民の方の中で9名は「知らなかった」ということでした。6名は「知っていた」ということでした。

そのような意味では、「地先の安全度マップ」を家一軒毎に示して「自分の家は最悪どこまで浸水するのか」というリスクを知ってもらうことは有効だったと思います。その上で、「警戒区域指定は不要」という住民の皆さんの意思は尊重させてもらう必要があると思いますが、本当に孫子も含め未来永劫安心してこの場所に住み続けるためには、区域指定をして安全担保をしていただきたいと切に望みます。

実は、滋賀県内で警戒区域指定が必要な地区は50(約1800世帯)もあります。そのうちまだ2地区しかすすんでいない、ということは、このような政策実現かいかに時間がかかるか、という証ともいえます。

今後とも、市町の行政の皆さんとも協力しながら、何よりも当事者の住民の皆さんの理解が得られるよう、努力が必要と思います。またすでに危険性が分かっているのですから、区域指定なしに「住宅のかさ上げ」に補助金をいれる、という新たな方向をしめすことも次のステップと思います。今回の西日本豪雨でもみえてきたまさに「命にかかわる」課題です。県の補助金をいれても「ばらまき」という批判はあたらないと思います。

問題は財源です。県だけでなく、国でも「水防災意識社会」づくりを進めると言っているのですから、この方面の対処を考えてほしいと思います。滋賀県内50地区、1800戸に対して各戸に1000万円の補助金を出しても、合計180億円です。大戸川ダムひとつつくるだけで1000億円の投資を国は考えています。この金額の比較をして、速く、安く、命を守れるような合理的な水害対策を国の方も考えていただきたいと思います。

なお、同じ新聞のすぐ下に近畿2府4県と福井、三重県(近畿地方整備局管内)の「近畿地方治水大会」が大津市のびわ湖ホールであり、そこでは「大戸川ダムの早期着工の必要性」が守山市長(県河港・砂防協会会長)から出されたようです。同じ記事に「水防災意識社会」の構築もあります。

納税者から税金をあずかりそれを配分する政治家としては、合理的で未来世代が喜ぶ政策を進めてほしいと思います。必要性の低いダムに多額の税金を投資するような無駄遣いにならないよう「もったいない」精神を発揮してほしいと思います。

 

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