Facebook 2018年11月13日

憲法の本質をわかりやすく人形劇付きで語り伝える『檻の中のライオン』の楾(はんどう)大樹さんと、参加民主主義の手続きとして避けて通れない世界潮流となっている『国民投票』の今井一さん。おふたりの豪華な講師を迎えての未来政治塾。国会で憲法改正(改悪)問題が遡上にあがっている今、日本国民として避けて通れない問題に対して、自分の立ち位置を定め、人に伝えることができる意思形成をしてほしいという趣旨の会です。11月10日。(まだ長いです、3100文字です)。

来年選挙権をもつ高校生2年生の参加者、関さおりさんからの感想が秀逸です。まず紹介させてください(本人の承諾をいただいています)。

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憲法のお話がとてもわかりやすく、また「檻」がやぶられている実際の事実の説明にも納得がいきました。教科書で違憲のことについて扱った裁判がとり上げられていましたが、お話ししていただいたほど違憲の頻度が高く、それを裁判で問題にすることが難しいことは初めて知りました。森友学園の問題についても、新聞では大きくとり上げられていましたが何が悪いのかわかりませんでした。「第八九条の~という内容に反しているから」ということを、檻の話から引っ張った説明でとてもよくわかりました。
これまでは何となく憲法改正は良いことだとぼんやり思っていました。時代も変わってきているし、古いままじゃな、という風に改正案の内容を何も見ずに考えもせずに思っていました。でも今日、特に九条のところのお話を聞いて、今までの自分の考えに危機感を持ちました。たとえ良い指導者の人が統制するのだとしても、それを客観的な判断で止められないというのはとても危険なことと思います。今日聞いたお話をしっかり心に刻んで、来年選挙権をもつ者として、きちんと考えたいです。本当にありがとうございました。
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「檻」とYahoo検索でいれると「檻の中のライオン」が最初に表示されるほど、「檻ライオン」の考え方がひろまってきたのは楾(はんどう)大樹さんのおかげです。年間150日以上、日本国内を講演して歩いて下さっています。最近の日本国の国家の動きをみていますと、まさに「国家=ライオン」で、「檻=憲法」がやぶれかかっていることがよくわかります。

「集団的自衛権」が憲法違反だ、という論は、憲法九条で禁止されている「戦力」「交戦権」に違反している、つまり「檻の外」であることは大きな議論になっています。憲法学者の中でも反対論が多い集団的自衛権を無理やり「違憲ではない」と主張する現政権の姿勢に、まさに百獣の王ライオンの暴力性が露見しています。「自衛隊の存在が違憲でない」ならなぜ改めて憲法を変えて、自衛隊意義を書きこむ必要があるのでしょうか?支離滅裂です。

そもそも憲法改正の発議は、第九六条にあるように、「国会が発議」とあり、国会(立法府)、内閣(行政府)、最高裁(司法府)という「三権分立の大原則」からして、国民の代表である「国会の意思」からはじまるべきであるのに、行政府である内閣総理大臣が先導して国会をうごかそうとしている、その筋道からして原則がはずれています。しかし安倍さん自身は「私は立法府の長」と嘉田が知る限りでも二度も予算員会で公式に発言しているほど、三権分立がわかっていない。小学校の社会科の教科書の原則さえ理解していない総理大臣はまさに身勝手な猛獣ライオン。

関さおりさんが言っているように、なぜ森友学園問題が問題なのか?「安倍さんをきらいな野党がただ足をひっぱっているだけ。野党は反対ばかりしていて、経済も安定させていて仕事も増やしている安倍さんを支持する国民の思いがわかっていない」と言われています。楾さんの説明は明確です。森友問題は憲法違反ということ。憲法八九条には「公金その他公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して、これを支出し、又はその利用に供してはならない」。

私自身、知事時代に「公金とその他公の財産」の管理処分には本当に神経を使いました。県の幹部もその原則を確実に守ってくれていました。そして憲法を「尊重し擁護する義務を負ふ」のは、第九九条にあるように「公務員」です。自分は好き勝手をしていて、国民の義務と責任ばかりを強調するライオン=国家の体質自体が問題といえるでしょう。

楾さんの講演は口コミでひろがっていますが、やはり参加者は高齢の人が多いという。何よりも教育の場面で、子どもたちに憲法の本質を伝えたい、ということで、最近子どもむけの絵本も編集下さいました。私も、今度小学生の孫の机のうえに「そっとおいておきたい」と思います(微笑)。11月12日晩のNHKニュース。自民党の憲法改正案、「急ぐべきではない」という世論が70%近い。国民はみている!

さて、今井一さんは人生をかけて「住民投票」「国民投票」という参加民主主義の伝道者です。学校の授業で岩波書店の『住民投票―観客民主主義を超えて』という書物を目になさった方は多いと思います。私自身も2000年代初頭の京都精華大学での環境社会学の授業で今井さんの著書を参考文献にあげさせてもらいました。

近年、日本各地で急速な広がりを見せている住民投票。地域の重要な問題は自分たちで決めようと始まったその動きは、立ちふさがる壁をどう乗り越え、どのようにして実施にこぎつけたのか。新潟県の巻町の反原発運動を皮切りに住民投票の現場をくまなく歩いてきた著者が、みずからの手で政治を動かそうと奮闘してきた日本国内の人びとの声を伝えているのがこの名著です。

そして今井さんの見事なところは、全世界の住民投票、国民投票の現場を歩きまわり、その現場の人びとの息吹をとらえながら、比較政治社会的な視点をもって、書物にまとめ、その内容を自らの声で語り歩く伝道者であるところです。『国民投票の総て』ほど、包括的で地道な資料はありません。今回の未来政治塾での講演で、多くの塾生が、今井さんの行動力に圧倒されたと思います。

世界の政治の転換点の現場でのリアルな取材。たとえば、2016年6月にイギリスで行われた「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」では、現場にはいりこんで、TVや新聞でどのようなメッセージが流され、どのような討論がなされ、どのような国民判断がなされたのかを現場感覚の中でつかんでいます。特に賛成派と反対派が厳密に対等な条件でなされたTV討論の内容も紹介下さいました。

興味深いことに、最初に紹介した関さおりさんは、今高校の「英語デベイト部」にはいっていて、今井一さんが紹介くださったイギリスの国民投票時のデベイトを次の勉強教材につかう、と言ってくれました!英語を学ぶ事は語学手段を獲得するだけでなく、思想や価値観や政治の内実の学びにつながっています。

今井さんの主張は、日本ではいまだ国民投票が一度もなされていないが、憲法問題や原発問題では「国民投票に賛成」という意見が過半数を占めている(68%から73%という、2009年3月の朝日新聞の世論調査の結果)という社会意識が原点です。住民投票や国民投票は決して「左の人」「特殊な人」の意見には限られないということです。

できたら、安倍憲法改変案をめぐって、「賛成派」と「反対派」、同数で、TVデベイトできるような民主的な参加空間をマスメディアの中でつくってほしいですね。公職選挙法ではTV広報などに使える費用は制限されていますが、安倍さんがもくろむ憲法改正(改悪)とそれに続く国民投票では、マスコミへの費用投資は無制限が目論まれています。その場合、圧倒的な資金をもつ政権与党が有利です。

ここは冷静な議論の場を、国民意思でつくっていきたいですね。今からはじまる議論の場、まずは憲法全文をよんで、自民党改憲案をよんで、私たち自身の立ち位置を確かめていきたいですね。そして万一の時、というか国会発議に続く「国民投票」に備えましょう!

 

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