Facebook 2014年1月16日

長浜市、高時川上流部に計画されていた丹生ダムについて、国は「ダム建設を含む案は有利ではない」と事実上のダム計画撤退の方向を示しました。(長いです)

1月16日(木)。午後から大阪の近畿地方整備局へ。長浜市(旧余呉町)の高時川上流に計画されている丹生ダムについて、事業主体である国、水資源機構、関係地方公共団体が集まって検討する会合が開催されました。今日は、これまでの幹事会での議論をまとめる「総合的な判断」を示す大事な会合でした。

1968年(昭和43年)に国が予備調査を開始した高時川上流部の丹生ダム計画は、①京都・大阪・兵庫の利水 ②高時川の治水 ③流水の正常な機能の維持という3つの目的により始まりました。

水没予定地の地元(旧余呉町)では根強い反対がありましたが、苦渋の決断のもとダム建設を了解され、ダム水没予定地にお住まいの40戸の移転が1996年(平成8年)に完了しました。

しかし、経済成長も鈍り水需要も減り、①の目的である下流利水が徹底し、ダムの目的に新たに④異常渇水時の緊急水の補給、という項目が追加されました。

2001年(平成13年)に始まった淀川水系流域委員会では、新しい時代の河川政策を求め、「できるだけダムに頼らない治水」などの方針をたて、2005年(平成17年)7月には5ダムの方針を示しました。しかし、当時の滋賀県は、ダム建設推進の方針は変わりませんでした。

2006年(平成18年)の知事選挙で、嘉田は「県内で計画されている6つのダム建設計画について凍結します。(中略)治水については、ダム以外の方法(堤防強化、河川改修、森林保全、地域水防強化)、すなわち“流域(地域密着)型治水”により対応します」とマニフェストに示し、県民の皆さまとお約束しました。

その後、まる7年かけて、5つのダムについては「中止」「一旦中止」「凍結」となりましたが、最後に丹生ダムの方向が見えませんでした。

今日、事業主体の国は、近年の水利用状況や利水者の考え方が変化した結果、丹生ダム計画案は総合的に判断して「有利ではない」という判断を示しました。事実上の撤退案です。

1億5000万トンもの巨大多目的ダムが水没予定地域の移転が済んだ後、撤退案が示されるのは全国でも初めてです。今後、国の有識者会議などでの審議を経て最終決定されることとなります。

本日の会合には、地元藤井長浜市長はじめ、40年以上にわたり翻弄された地元ダム対策委員会の皆さんもお見えでした。地元の方々は本当に苦しい時間を過ごされたと、長浜市の藤井市長も語っておられました。「やるせない、無念である」とも述べられました。

藤井市長が代弁された地元の思いをしっかりと受け止め、私からも事業主体である国が責任を持って地元への丁寧な説明をいただくように、そしてダム中止決定となれば今後の対応策(特に放置された道路改修と、トチノキ巨木やブナ林・ユキツバキ群落などの貴重な水源森林植生の保全等)に責任を果たしてほしいとお願いしました。

治水対策としての、姉川・高時川の河川整備は、指定区間として河川管理を担っている滋賀県が行うものであり、の直轄事業としては現行制度上できないとの回答でしたが、県が河川整備を実施する場合は最大限の支援をしたいとお約束いただきました。

また丹生ダムを建設した場合の治水にかかわる滋賀県負担は、河川改修案に比べて二倍程度となる、と概算は示されていますが、より緻密な想定費用を示してほしい、とお願いしました。

これらのやりとりを踏まえ、本日の会議の場では、関係自治体すべてが、「国の検討結果は妥当」とし、反対意見は出ませんでした。

姉川・高時川の治水対策については、丹生ダム計画の方針が定まらない中で、県としても河川整備計画を策定できないままでいましたが、ダム撤退となれば、計画策定など速やかな整備に向け準備する必要があります。

流域治水条例(案)の地域指定にかかわる地元としてご心配いただいている虎姫地区の皆さんにも、県が責任をもって姉川・高時川の河川整備計画をすすめること、お約束できます。

今後、何よりも関係の地元の皆さんが納得いただけるよう、県としても国、長浜市との緊密な連携のもと、引き続き治水や環境保全などの河川政策に取り組んでまいります。

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