Facebook 2015年5月29日

大阪都構想は何だったのか?橋下さんとはどういう政治家だったのか?(長いです)

(その2) 大阪市をつぶして五区に分割しても、あの大阪都構想制度では「二重行政」は解消されない。それどころか「三重行政化」を招きかねないと私は思います。橋下さんはそのことを気づいていたのでは?と推測します。

皆さんのご意見、ありがとうございます。24時間で700名を超える方から「いいね」をいただき、コメントも50件を超えました。それぞれにお考えが凝縮していて、それだけ社会的関心を高めたという意味で橋下さんの問題提起、発信力、実行力はすごいと思います。

ただ今回の住民投票、手法として橋下さんらしくありません。城間さんが具体的に紹介しているように、あの方の意思決定の基本は「選挙で選ばれた僕が決める」と圧倒的に強力なトップダウン型でした。教育委員会改革など典型でした。「納税者」という表現はよく私も耳にしましたが、「住民」も「市民」も彼の口から聞いたことはほとんどありませんでした。

今回、市議会と府議会で都構想の協議会が成立せず、二元代表制を無視して、議会をすっとばして直接住民投票にしました。議会議論も政策精査の協議会も両方をすっとばしてしまったので、都構想の制度的建て付けは穴だらけでした。

たとえば今回も住民投票の中心争点であった「二重行政の解消」です。大阪都構想に反対の自民、共産などは「二重行政はない」と言い切って反論しました。そして行政の仕組みの問題を「個人的な損得」「世代間対立」に矮小化し、郊外地域や高齢者の集票確保にはしりました。この単純な論法の問題は大きいと思います。今の財政難問題に何の回答も準備しておりません。

一方、確かに1990年代の湾岸開発での大型ビル建設で大阪府と大阪市が、建物の必要性や投資効果を十分に検証せずに争って二重投資をした、という問題はありました。「税金の無駄遣い」です。その負債支払いで、職員給与をカットして生み出したなけなしの税源を投入せざるを得なかったことを橋下さんも嘆いていました。

大阪市は政令市で府県並みの権限をもっているので開発計画をつくれます。それを改善するには府と市が、トップの知事・市長協議会をつくったりしてお互いの調整することで可能です。事実、京都府や京都市などはかなりうまく連携していると思います。

かといって今回の大阪都構想が二重行政の解消ができる仕組みにはなっていないのは大問題です。「三重行政」になりかねない。ただこのことを指摘するマスコミ、研究者がほとんどおられないのには驚きましたが、、、。制度的仕組みの理解度がす早い橋下さんのことですから、このことには気づいていたはず、と私は推測します。

ただ自分が言い出して社会を巻き込んでしまった大阪都構想。維新の党の原点政策を捨てるわけにはいかない。リーダーとして「二重行政解消」という争点を維持し、ここは目をつぶらざるを得なかったのでは?これも私の推測です。

具体的には、新たにつくる五区で担いきれない、今の大阪市が担っている120を超える行政施策が「事務組合」として残らざるを得なくなります。都構想には「効率性や公平性を担保するために」大阪市域で「事務組合」をつくるとありました。水道や国保や介護保険など、市町村行政にとってかなり根幹的な政策が120項目も「事務組合」となっているのには驚きです。

「事務組合」とは、複数の普通地方公共団体や特別区が、行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する組織で、地方自治法284条2項により設けられますが、水道は水道だけ、と個別政策の縦割りが基本で、横串の総合政策が工夫しにくい仕組みです。

さて、水にかかわってですが、2008年2月に橋下さんが大阪府知事に就任して直後から、琵琶湖・淀川の大戸川ダムや丹生ダムの建設凍結・中止問題などで連携・協力してきました。

その上下流のお付き合いの中で、橋下さんが、大阪府市の水道行政が二重行政だから統合する、と言っていたのは2010年頃で、それを争点にして市長と知事のダブル選挙をしかけました。2011年12月に橋下さんがダブル選挙に勝った直後に、「僕と松井さんが合意をしたら、水道行政は半日で合併できる」と言っていました。

私は橋下さんに、まさに老婆の老婆心ながら直接に説明しました。これは二重行政ではなく「役割分担であり、統合してもコスト削減にはならない」「水のような命にかかわる問題は歴史的経緯など配慮しないといけない」と。

大阪市は明治28年に近代水道行政組織として発足し、琵琶湖の水を淀川から取水をして水道の取水・浄水から各家庭への配分小売まで一貫してすすめてきました。

一方、大阪府営水道は昭和26年に、大阪市以外の大阪府下の市町村や工業地帯に浄化した水を供給する「卸売」組織として始まりました。特に昭和30年代以降は、都市化・工業化のなかで水需要が増え、琵琶湖からの取水を増やすために琵琶湖総合開発に参画をして、大阪市周辺の42市町を束ねて、淀川からの取水を増やす「卸売」として水道事業を強化しました。この大阪市と大阪府の水道事業は「役割分担」であり必ずしも二重行政ではない、と説明しました。

2013年には、大阪市議会で橋下市長が「二重行政」の解消を掲げて推し進めてきた府市の水道事業統合条例案が否決されました。否決されたのは、大阪市水道局と同市を除く府内42市町村でつくる大阪広域水道企業団を統合する条例案です。「二重行政」解消を徹底するなら、今回住民投票提案した制度に市営水道の合併を入れないといけません。それが大阪市域の「事務組合」として残っている!私は我が目を疑いました。橋下さん、どこまで本気で政策実現をしたかったの?!

高等教育機関としての大学についても、大阪府立大学と私立大学も二重行政と言っていました。しかし、これはそれぞれに大学の歴史的個性と強味があります。大阪市立大学は商学や医学などの背景があり、研究・実践の蓄積も大きいです。府立大学は農学系や理学系が強い。それゆえ、市民・府民にとっての選択肢を増やすことで必ずしも二重行政ではないでしょうと伝えました。

事務組合という組織の限界は言うまでもありません。たとえば国保の事務組合は、国保事務だけを扱うので、国保の医療費増大に歯止めをかけるための高齢者健康予防などの政策を組み込むことは極めてむずかしくなります。つまり大阪市としての国保政策ならば、健康維持や医療福祉と横串政策ができるのに、事務組合になると、まさに点のような個別政策しかできなくなり、税金の無駄遣いへの改善は極めて難しくなります。

24区を5区に合併をして住民自治を担う、大型の地域開発などは大阪府へ移管、という方針は、120もの事務組合が必要となる、という意味で決して二重行政の解消ではなく「三重行政化」です。

この辺りの、大阪都構想の政策の内実についての議論こそまず必要とおもいます。一見わかりやすいキャッチフレーズ政策の限界をいやというほど今回の大阪都構想住民投票では見せつけられたようです。皆さんのご意見どうでしょうか?

 

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