Facebook 2016年2月28日

「チームしが」主催、「大戸川ダム問題・緊急対話集会」速報。急な時間変更にもかかわらず30名以上の方が、「緊急集会」にご参加くださいました。2月28日。以下速報です。(長いです)

(1) 元淀川河川事務所長の宮本博司さんからは、「近畿地整へのエール」として2005年当時、国の河川局と地方整備局が徹夜の激論を何回も行い「どうしても大戸川ダムの必要性が説明できない」と主張し、国の河川局長も「中止やむなし」と判断をした、ということ。その経緯を思いおこしながら、「いくら本省からの強い指示があったとしても・・・大戸川ダムをどうしてもつくりたいという理不尽な圧力に対して踏ん張り、後ろめたい気持ちを払しょくして地域のために活き活きと仕事をしてくれることを願っている」という近畿地方整備局の後輩への熱きメッセージでした。意味的には「技術者魂を売るな!」というメッセージとも言えます。

(2) 嘉田は「大戸川ダムと滋賀県のかかわりー3府県知事合意を中心に」として、2005年7月に国から出された大戸川ダムの中止やむなしの判断に、当時の滋賀県知事が即座に国に建設要望に行ったこと、「環境こだわり県」と言いながら滋賀県から淀川水系流域委員会に出ていた私もふくめ地元委員からの意見を聴くことなしに政治的判断をしたことが2006年の滋賀県知事選挙に私が立候補したひとつの理由であることをはっきり伝えました。

そして2006年7月に知事に就任してから、「河川に水量をどれだけ閉じ込めるか」という水害対策ではなく「住民にとって被害を最小化する水害対策」として流域治水を提案してきた背景を過去40年間の地域水害調査から導き出した経過を説明しました。

また2008年・2009年と、京都府・大阪府知事と連携をしてきたのは、そもそも大戸川ダムは淀川の下流部に効果があるということで計画され、負担金も大阪56%、京都40%であり、ふたりの知事意見を聴くところから議論をかさね、2008年11月11日、「大戸川ダムの必要性は低い」という4府県知事意見(三重県もふくめ)を出した経過、そして国も2009年3月に「大戸川ダム凍結」という結論をだしており、その時と今、条件はほとんどかわっておらず、今、大戸川ダムの必要性を議論する段階ではないことを伝えました。

一方、2013年9月の18号台風で大戸川ダム計画予定地の直下である大津市田上では、河川があふれ水害被害が発生しました。この水害被害を少しでも減らしてほしいという地元住民の皆さんの願望は切実で、滋賀県としても早急に対応する必要があります。

すでに滋賀県として河川改修や堤防強化をすすめていますが、今後、京都府や大阪府がダム建設に同意をして負担金を払う条件ができるまで何十年(あるいはそれ以上)も待つのか、それともできるだけ早く、確実に、納税者への負担も少なく、水害被害軽減効果を発揮できる手法を選ぶのか、いずれにしろ「流域治水」は必須の手立てゆえ、滋賀県として田上地区の流域治水政策をすすめてほしい、と要望をださせてもらいました。

(3) 今本氏は、これまでの主張である、一定の水量を河川に閉じ込める「定量型治水」ではなく、被害を最小化できるように「非定量型治水」をすすめないと、温暖化などによるいわゆる「超過洪水」(想定を超える洪水)に対処できないことをまずまとめてくださいました。非定量型治水は流域治水とほぼ同じ意味です。

さて、そのような河川政策の基本哲学の転換が求められているなかで、今回の大戸川ダムは古典的な「定量型治水」からみても必要性が説明できない、ということを本来の河川工学者の知識を存分に発揮して説明くださいました。

基本的には、大戸川ダムの下流には天ケ瀬ダムがあり、その下に宇治川と木津川、桂川がまじわる三川合流地点があり、これまで国が主張してきた枚方地点での計画規模の洪水を抑えるために大戸川ダムが必要という論拠は、天ケ瀬ダムの二次放流の調節により対応可能であり、大戸川ダム建設は下流にとっては意味がないこと、を説明下さいました。

実はこの二次放流調節により対応可能であることを2008年当時発見したのは、滋賀県職員であり、「滋賀県職員の能力はすごい!」とおほめいただきました。当時の知事として私も誇らしく思いました。日本で最先端の、今求められる「特定水量を河川に閉じ込めるのではなく、命を守る住民目線の流域治水政策」を全国はじめて条例化(2014年3月)した滋賀県の実績は、県幹部はもちろんひとりずの河川技術者の力を結集したものであること、認めていただきました。

(4)4番目の演者は、京大防災研究所の竹門康弘さんです。「瀬田川・宇治川の生態系特性から大戸川ダムの環境影響を考える」が演題です。実は平成9年に河川法が改正され、それまでの治水、利水に環境保全が目的に加わった後、京大の防災研究所につくられた新しい教室の担当准教授でもあります。これまでダム建設と河川の生態系や環境保全についてのしっかりとして意見を聴く場がなかったので、今回のハイライトでもありました。

竹門さんのご主張はいくつもありますが、以下の点が大切と私は思いました。

1 ) 人為的なダムだけでなく、地形的・自然史的構造を大自然とした時に自然の貯留水域(琵琶湖、亀岡盆地など)に生き物がどう適応してきたのか、未解明の点が多い。特に琵琶湖のように40万年も今の湖盆を維持してきた琵琶湖・宇治川・大戸川をセットとしての河川生態系はその個性をもっともっと解明すべきこと。

特にプランクトン組成や水生昆虫などに大きな個性がみられ、生物多様性のホットスポット(生物多様性が高く人類による破壊にさらされている場所)がたくさんあるということ、その水系全体の中で、琵琶湖・宇治川・大戸川をセットとしての河川生態系とその個性をもっともっと解明すべきこと。

2 ) 特に大戸川がこれまで長い年月大量に運んできた土砂が下流の宇治川の水生動物の生息環境をつくっており、これがダムで止められると砂州が減るなど河川生態系への影響ははかりしれないことをご指摘くださいました。また今回は他地域のダム建設による生態系への影響モデルを大戸川ダムに適応した場合の、大戸川モデルで留意するべきことも示していただきました。

竹門さんの立場からも、治水安全度の評価軸を、「流化能力から被害軽減度へ転換すべき」とご指摘いただき、「防災から減災へ」という流れを防災研究所の研究者から聞かせていただいたのは示唆的でした(微笑)。

第二回目の緊急集会については、今後の流れをみて決めさせていただきます。皆さんのご意見をよろしく。

先頭に戻る