Facebook 2016年3月7日

週末に琵琶湖環境問題や環境教育に関するふたつの講演会・シンポジウムに参加しました。
3月5日、3月6日です。(いつもながら長いです:微笑)

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3月5日は龍谷大学里山学研究センター主催のシンポジウムです。主催者から、文化系・自然系、両方が参加できる学際研究をすすめるためのヒントがほしい、という要望をいただきました。特に琵琶湖の保全再生法が国の動きにもなり龍谷大学としても、今後の琵琶湖研究に貢献をしたい、ということでした。

そこで、「文理連携をめざす環境研究者の理想をいかに政策実践にむすびつけたのか?-琵琶湖研究40年、滋賀県知事8年の経験から」と題して、昭和56年(1981年)に琵琶湖研究所開設準備室の時代から、「科学知」を求める自然科学(物理・化学・生態学等)と、人文社会系(経済学・社会学・人類学)の出会い、特に地元居住者・生活者の立場から湖との関係の総体を「生活知」として追求してきた「生活環境主義」の誕生から紹介を始めました。

ただ、琵琶湖研究所時代には残念ながら、この「科学知」と「生活知」の出会いを意図的に「見える化」しにくく(圧倒的に科学知が優位な組織状況でした)、そこで1985年に琵琶湖博物館を提案し、1989年(平成元年)から琵琶湖博物館準備室で、住民参加のホタル・生活用水・水辺遊びなどの参加型調査を進める中で、文理連携型の琵琶湖博物館づくりにエネルギーを注いできたことなどを説明してきました。

また、昭和30年代の琵琶湖と人のかかわりの総体を、生物多様性が祭りや食文化、子どもたちの遊びなど、暮らしと近い自然を構成していたことを生活写真による「資料提示型インタビュー」で探りました。琵琶湖総合開発などで、上下水道化や農地の圃場整備などが進み、利便性・快適性が追求され、これら近代化は有難がられたと同時、「魚の姿がみえない、どこかさびしい」という声もきかれるようになりました。

そこで、2006年の知事就任後は、特に生物多様性と文化の多様性を住民参加で実現する方向を探ってきました。「田んぼにはコイやフナ、ナマズいっぱい産卵にあがった」という「うおじま」の記憶を、「魚のゆりかご水田」政策に展開し、また水源林を構成していたトチノキなどの巨木林も、「森林の生物多様性」政策とつないできました。トチノキについては、県立大学の野間さん、渡部さんたちとポスターセッションも行いました。

ただ、水田の魚も森林のトチノキも、近代的な要素主義の中での産業政策を主として担ってきた県政担当者には「邪魔者」にみえます。「田んぼは米をとるところです。魚を育てる場所ではありません」「森林政策はスギとヒノキが目的です。トチノキも切ってなんぼのものです。切らずに残すものではありません」という。そこで職員を説得しながら、まさに縦割り行政の「横串」を通す政策を実現してきました。そこでの基本的視点は「生活者目線」です。実は「ダムだけに頼らない流域治水」も、水害折り込み型の土地利用や避難体制をつくってきた地元生活者目線から学んだものです。

最後に、龍谷大学は、仏教思想や仏教文化の素地も深いことから、環境研究に必要な理工的な「ハードウェア」にプラスして、社会経済的な「ソフトウェア」を充実し、さらに環境にかかわる精神文化を豊かにする「ハートウェア」を追求してほしい、とお願いしました。

次に、昨年、2015年9月に公布・施行された「琵琶湖の保全及び再生に関す法律」を滋賀県の岡田英基さんが説明をして下さいました。「琵琶湖は国民的資産」と位置づけられた保全法は、1972年から25年間続いた琵琶湖総合開発による生態系破壊の影響を緩和し、その後の変化を受け入れ改善案を出す画期的かつ待望の法律です。今後、具体的な盛り込みが期待されます。

龍谷大学センタ―からの研究報告も楽しかったです。山中裕樹さんの「汲んだ水から生物調査」という研究は、川や湖の現場で汲んだバケツの水をDNA分析することで、そこに暮らす生存種が特定できる、ということ。現物の生き物採取なしにDNAだけで分析というのは近代的分析知の極致ですが、それを扱う山中さんがとっても人間的魅力にあふれていて納得しました。彼は滋賀県北部、旧高月町の余呉川付近でまさに魚つかみ遊びをして育ったということ。

宮浦冨保さんの「里山の食とエネルギー」、林珠乃さんの「琵琶湖水域圏の景観のみかた」も若手研究者の挑戦的な研究発表で、今後に期待です。

また第二部はポスターセッション。滋賀県立大学の野間さん、渡部さんが準備してくださったポスターの説明をし、今、所有権争いの裁判になっているトチノキの保全基金のお願いなどをしました。

第三部は琵琶湖を日本遺産にするところで尽力した滋賀県観光交流局の大崎康文さん、東近江市の山口美知子さん、県立大の秋山さんたちの報告をいただき、「人と水の共生にむけて」というディスカッションになりました。特に山口さんが紹介した東近江モデルは、最近出版された世界の持続的社会づくりでも紹介されていて内実のあるものです。しかもキーパーソンは「女性」がそれぞれに隠れている、大変底力がある報告でした。

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3月6日は、日本環境教育学会関西支部の大会で、基調講演「生物と文化の多様性から学ぶ地域の未来―琵琶湖・滋賀県の事例から」としての講演に加えて、「意思決定・合意形成と環境教育Ⅱ~市民と行政との協働の未来を考える~」でした。

前半は昨日の龍谷大学の講演とかなり重なりますので割愛しますが、強調した視点は、子どもたちに自然や環境のおもしろさを伝え、共に楽しむための工夫をいろいろ提案しました。特に琵琶湖博物館で展開した住民参加型調査を詳しく紹介しました。

今日のハイライトは、CASAの早川光俊さん、自然エネルギー市民の会代表の和田武さん、宝塚市地域エネルギー課課長の政処剛史さんの三名が展開した「自然エネルギーの普及・拡大のための市民・行政の協力」という点です。

特に今日和田さんが最新情報として紹介してくれたことですが、最近「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」の分析結果が公表され、再生可能エネルギー普及を推進することがマクロな経済成長に大きく貢献するということです。

具体的には、2030年に再生可能エネルギー比率を2010年の2倍にするケースと、今のままで化石燃料に頼るケースの経済効果を比較分析した結果、再生可能エネルギーを二倍にする、というモデルの方が、世界のGDPが1.1%(13億ドル相当)アップし 、健康や福祉等が3.7%改善され、244万人以上の雇用が生まれるなど、社会経済的メリットが大きいということです。

この報告書では、国別の効果についても分析しており、日本のGDPが+2.3%で、世界各国中で最高ということです。つまり、日本は、現在化石燃料の輸入などで外貨を大きく流出しているが、再生可能エネルギーを増やすことで、自前でエネルギー資源の活用が可能となり、経済成長や雇用創出の“のびしろ”が大きい、ということです。雇用は2倍以上に増加するという結果も得られています。

ということで、今日の後半の議論は、再生可能エネルギーの普及は、イデオロギーや理想でも何でもなく、まさに経済と雇用、地域振興の視点からも重要だ、ということで落ち着きました。

最後の皆で記念写真!主催者の皆さん、お疲れさまでした。お世話になりました。

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