12月16日午後「八ツ場(やんば)あしたの会」が主催する東京でのシンポ「荒れる気候の時代に命を守る水害対策を考える」で講演をさせていただきました。滋賀県の流域治水条例の紹介を柱にソフト対策を嘉田が、河川の技術論と日本人の自然哲学に根差した治水論を大熊孝さんから、また八ツ場ダムの必要性への疑問や危険性などを嶋津輝之さんが講演し、最後に今後の治水政策についての討論となりました。12月18日。また長いです(1500文字)。
水道橋の「全水道会館」の会場は150名程でいっぱいでした。首都圏での会合は、関心層が厚いせいか、熱気があります。今回、岡山倉敷市の真備地域での水害裁判を準備している弁護士さんや、岡山からのTV局や東京の新聞社、出版社やマスコミ系の方も多く集まって下さいました。皆さんかなり、熱心に聴いてくださいました。また佐賀平野で流域治水の歴史を研究している佐藤悦子さんもかけつけて下さいました。国会議員では、大河原雅子さん、初鹿明博さんもご参加。懐かしい皆さんとお会いできてうれしかったです。
東京在住の作家の森まゆみさんからは、「暮らしの中の水」「一級河川になると川が遠くなる」「ダム津波」「自助、共助、公助」「危ないところには家を建てさせない」「江戸時代の技術を見捨てた」など、全て心に深く突き刺さりました、とのご感想をいただきました。
これまでこのFB上で紹介してきた倉敷市の真備の水害被害死者のことで新しい情報がはいりました。朝日新聞社が徹底して調べたデータでは、51人の死者のうち43名が自宅で溺死。そのうち42名が住宅1階で、1名が2階で発見。住宅1階で発見された42名のうち、21名は平屋、21名は二階建!つまり、滋賀県の流域治水条例で、被災者の視点から、最悪の場合3メートル以上浸水する家は「縦方向の避難」のために二階等をつくることを規定しましたが、二階があっても、寝たきりなどだと逃げられず溺死してしまう、という大変大きな課題が出てきました。もちろん、ある程度想定していましたが、特に「要援護者」の避難のためには、「隣近所で声かけ」「消防団が声かけ」という「声かけ避難」が必須で、いざという時に人力での避難体制づくりが必須であることがわかりました。
今回、ダム問題で集まった皆さんも、想定規模をこえる大洪水にはダムはあてにならない、それどころかかえって危険だ、ということはかなり共通認識になったと思います。私の講演でも、野村ダム直下の被害を紹介しながら、ダムが守ると言っている流域に暮らす一人ひとりの住民の立場から、自分の、自分たちの命を守る覚悟と方法を編み出すことが重要と「流域自治」「住民自治」を結論とさせていただきました。
この流れの中では、今回、「防災・災害ボランティア かわせみ」さんの谷岡康さんと稲垣一郎さんたちの活動を知りました。東京の密集地帯などでの水害死者を防ぐための方策として、「地区計画」をつくっている「防災・災害ボランティア かわせみ」さんの活動はまさに、流域治水での「そなえる」仕組みそのものです。「浸水危険区域」を「浸りDAS(HitariDAS)」として、その地図をもとに水防活動を徹底しようという活動です。名付けも見事です。
総合討論では、①滋賀県での流域治水検討委員会住民会議の構成員、人数、内容等、②流域治水と総合治水のちがい、③流域治水条例で、道路などの盛り土部分への配慮はなぜか、④避難所の環境の改善が必要、などの質問をいただきました。
今日の会合のまとめとして、嶋津さんが、①河川予算をダム事業から、河川改修(堤防強化、河道掘削)に、②滋賀県の流域治水のような土地利用誘導や建物規制がある条例を全国にひろめよう、と提案くださいました。