「滋賀県をスポーツ王国に!」という理想の元、「びわスポキッズ」子どもむけ運動教室、7年間で約2万人の子どもと大学生リーダ2000人が参加。今日は現場訪問として、新緑美しい中、巡回指導の大津市仰木(おおぎ)幼稚園訪問。その後、産学共同ですすめてきた応援団の運営会議で研究成果などを発表。5月31日。(長いです)
全人生の神経系発達のうち約80%までが5歳までの子ども時代にすすむといいます(スキャモンの発達発育曲線にのっとった理論です)。その時期にどう遊び、どう運動したかが、その後の人生を健康に過ごすためにとても大切です。
そこでびわこ成蹊スポーツ大学では、8年前から、当時のサッカー指導教授の松田保先生などの「滋賀県をスポーツ王国に!」という理想の元、5歳までの年代を「スポンジエイジ」と名付け、①県内の幼稚園・保育園の巡回指導と、②多人数を対象とした地域フェスティバルというふたつの方法で子どもたちの運動遊び指導を系統的にはじめました。
今日の巡回指導では、仰木幼稚園と事前相談の上、ボール投げ遊びを中心としたプログラムで、4人の学生リーダーが14名の幼稚園児と思いっきり遊びました。矢守園長先生によると、今森光彦さんが発信してくれて、棚田で有名な仰木地区ですが、山歩きや田んぼ仕事などで子どもの足腰は比較的強いが、手首を使う遊び機会が少なく、それを補強するためボール遊びを企画してほしかった、ということ。
このように事前に巡回指導の園と相談しながらメニューづくりをします。それも単に「ボール投げ」ではなく、今回は「鬼さん退治」と「果物集め」という、子どもたちにわかりやすいストーリ性を持たせて、すり抜け走りをしながらボールを投げ、目的を達成する、というゲーム性を付与しています。
40分ほどのプログラムの中で最初、おずおずしていた子どもさんも、リーダのお兄ちゃんやお姉ちゃんたちと話をしながらボールを投げて走りまわり、最後にはかなり満足そうな表情でリーダたちとハイタッチをしてお別れをし、またの訪問を約束しました。今年あと数回、この幼稚園を訪問します。
でもどうしてもなじめない子どもさんもいます。今日はひとりの男の子が最初からなじめずに、教室のロッカーに隠れてしまい最後まで出てきませんでした。休日を2日ほどはさんでいたので、外からの訪問への心の準備ができていなかったのでうまくなじめなかった、と園長先生の話。
キッズリーダの本領発揮がこのような困難な事例です。後からの運営委員会会議でも報告されたのですが、ひとりずつの子どもたちの思いに寄り添い、声かけや肩触れなど、やさしい働きかけで存在を認めてやることでだんだんになじんでくるという。それでも場合によっては巡回指導の車をみると隠れてしまう子どもさんもいて、この仰木幼稚園でも2年ほどかけて、ようやくなじんでくれた子どもさんもいたという。その子は今年小学校にはいったという。
びわスポキッズプログラムでは、確かに2万人もの子どもさんの運動遊びを支援してきましたが、大切なのは、ひとりひとりのケースに深く寄り添い、運動ぎらいの子どもさんをだんだんに好きになってもらう、そのプロセスを発達心理学などでフォローしながらより一般的なプログラムとして昇華させて、社会にひろげていくことではないか、とちょうどこの日に開催された企業応援団の皆さんとの運営委員会会議で、学長責任者として私自身宣言させてもらいました。
それにしても仰木保育園は4・5歳児全体で14名。園庭には、野菜畑がつくられ、地元の高齢の方たちがボランティアで野菜づくりを助けてくれているということ。子どもたちは「ミニトマト」「なす」などそれぞれに担当をきめて、世話をしているということ。横の田んぼづくりにも参加しているという。うらやましい光景です。
また幼稚園に入園前のゼロ歳から3歳までの子どもさんをもつお母さんたちに「一時保育」の解放もしている場面にも出会いました。私自身、知事時代に専業的に子育てをしているお母さんたちの息抜きや育児相談の場として保育園や幼稚園の一時保育政策を県費100%という措置をして進めてきました。
ただ、一部の(“明治民法頭の男尊女卑の方たち””と今ならはっきり言わせていただきますが:微笑)県議会議員や市長さんからは「母親は専業で子育てすべし、一時保育に予算をいれる必要はない」と批判されましたが、こうして大津市では子育て重視の越直美市長のもと、一時保育が実現している現場に出会えて、うれしく思いました。
仰木幼稚園には、子育てを地域で担おうとする幼稚園の教員や、地域の高齢の皆さんの元気な笑顔と、比叡山延暦寺の里村としての1000年の棚田の歴史がかおる、すがすがしい風がさわやかに吹いていました。5月29日に訪問した今森さんの里山も幼稚園から見えました。