Facebook 2016年6月27日

「関西広域連合」の、関西二府四県の知事達が集まる意思決定機関でもある連合委員会で、「琵琶湖・淀川流域における課題と解決の方向性について~地域の個性を活かす流域ガバナンスの実現に向けて~」の中間報告会を開催。6月26日。(長いです、難しいかも?すみません)

この研究会顧問として参加し、治水・利水・文化・生態系保全などの上下流連携の面的施策に加えて、水辺のゴミ問題やトキ・コウノトリ再生など、住民・市民に見えやすい「生態系サービス」についての意見を表明しました。関係知事からは前向きな応援意見をいただき、今後の最終報告にむけて頑張る力をいただきました。

振り返ってみると、もう10年前、2006年7月に滋賀県知事に就任して発見したのは、行政組織の不自由さです。それまで河川・環境研究者として琵琶湖・淀川水系の上下流の協力連携をふまえた、流域住民にとって最適・最善の流域計画について、2001年以来「淀川水系流域委員会」などで自由闊達に議論をしていました。その思いを実現したいと願って2006年に知事選挙に挑戦をしたのに、いざ知事になったとたん、この理想の実現が極めて難しいということを発見しました。

つまり、滋賀県知事は滋賀県の領域を超えることを発言しにくい。下流の京都府は京都府知事が、大阪府は大阪府知事がそれぞれに個別に発言する。琵琶湖から瀬田川・宇治川・淀川と自然の水の流れはつながっているのに、全体最適を考える行政的母体がない。おのずと下流からは、上流への要望・陳情的な意見になる。河川の上下流はまさに「ライバル」という言葉が「RIVER」から出ているように構造的な利害対立関係にありました。

もちろん制度的には国の機関、つまり「国土交通省近畿地方整備局」が本来、上下流連携を調整する組織でした。しかし、近畿地方整備局も霞が関と同様の縦割りです。河川は河川、都市計画は都市計画、また農地は整備局ではなく、農水省の出先が担うことになります。霞が関行政の縦割り組織を地方でも踏襲しており、川の中と外をつないで、住民目線で最適な流域政策をつくる母体がないということも発見しました。

実は2000年の橋本内閣の時に「地方分権一括法」が成立した時から、中央集権ではなく地方分権(地域主権)という流れができていたのですが、自民党政権下ではその具体的展開は弱く、2009年の民主党政権発足の中で、ようやく「地域主権」の流れが国の政策の中枢に据えられました。そこで、民主党政権の発足に同調して、「関西のことは関西で決める」という理想のもと、「関西広域連合」が2010年の12月1日に発足するために、私自身も力を注いできました。

背景のひとつに、琵琶湖・淀川水系の流域ガバナンスの問題がありました。2006年の知事選挙で私は「6つのダムの凍結・中止」を公約にかかげました。そのうちのふたつのダムは、滋賀県内に立地しながら、受益は下流の京都・大阪・兵庫などである大戸川ダム、丹生ダムでした。この問題を焦点として、直接に知事同志で、ダム建設や流域管理の最適方向を定める対話を知事就任直後の2006年から山田京都府知事と、また2008年からは橋下大阪府知事(当時)、井戸兵庫県知事と進めてきました。

そのような上下流の知事同志が直接に対話・連携する中で、流域住民にとっても最適の政策方向がみえてくる、ということを「大戸川ダムの凍結」「丹生ダム建設再検討」という中で学んできました。それゆえ、関西広域連合の知事連携会議は、国の縦割りをこえて、関西という自治体連合が、住民にとっての最適・最善の政策を実現するために横串をさすことができる、地域連合でもありました。

今回の2016年流域ガバナンスの中間報告は、関西広域連合らしく、関係府県や市町の施策を結ぶための「共通のものさし(アセスメント)」による情報共有、各地域の流域の工夫や知恵をもちよる「経験の共有」、そこでの課題をみつけだして提案する「アジェンダ設定」、そして具体的な問題解決の方向をさぐる場づくりの「プラットフォームづくり」などを提案しております。

今日の報告書説明に対して、三日月滋賀県知事は、「水で生きる」「水でつながる」「水で栄える」関西らしい提言で歓迎する、今後の地域政策のなかで、「リスク・サービス・アセスメントという方向で力をいれていきたい」と表明しました。

山田京都府知事は、提案を実現するための関係者(ステークフォールダー)を巻き込むことができるプラットフォームづくりをどうするのか。また嘉田が提案をした(流域治水のような)構造的な地域問題と、ゴミ問題や生き物保全など、どちらの戦略を重視するのか、という質問もありました。

奈良県の荒井知事は、これまでのマネジメント、という視点をこえて、ガバナンス、という方向を示したことは大いに共感し、感動をもって受け止めた、今度の展開を期待したい、という意見をいただきました。

何よりも関西広域連合の連合長の、井戸兵庫県知事が今回の報告書づくりの提案者だったのですが、「2013年9月の18号台風で、琵琶湖の出口の洗堰を全閉して下流を守った、その動きをどうとらえるのか、という問題意識から始まったのがこの委員会であり、今後の施策展開に期待したい」という意思表明をいただきました。

見えにくい、関心を持ちにくい分野ですが、いざ大雨が降って自分たちが水害被災者になりかねない、そのような地域の人びとには是非とも関心をもってほしい分野です!^_^。

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