2025年5月15日【法務委員会】確定稿

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。日本維新の会、嘉田由紀子でございます。
情報技術デジタル刑事法の問題については皆さんがしっかりやっていただいていますので、私は、今日、また改めて日本の子供の問題を取り上げさせていただきたいと思います。
昨日、ユニセフが発表しましたけれども、五年前に、日本の子供の健康度は世界でも最も高いんですが、精神的幸せ度が三十八か国中三十七位でした、五年前。それが、今度新しくデータが出たんですけれども、まだまだ低くて三十二位です。というところで、私は一貫してこの子供の幸せに関わる家族法の問題を取り上げてまいりましたけれども、一昨日五月十三日には、東京地裁で出された、親権は職分であると、人間としての本分であるということに関わって、憲法十三条で認められる人格権、幸福追求権であるということが東京高裁の判示、判定されました。
そこに関わって、今日は質問一として、学校行事への参加者の範囲設定について、文部科学省さんにまずお伺いします。
一昨日の答弁で、文部科学省の日向学習基盤審議官より、保護者を含めた学校行事への参加者の範囲をどのように設定するか、また、これは当該学校の判断に委ねられていると、そして学校は両親の意思を調整する立場にはないという御答弁をいただきましたが、この御答弁を見ますと、地方自治法第一条の二に指定される地方自治体の自立性を尊重されているということかもしれませんが、学校側が両親の調整しないという御答弁は、そのとおりと理解させていただいてよろしいですか。お願いいたします。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
一般論としてですが、保護者を含めた学校行事への参加者の範囲をどのように設定するかについては、当該学校の判断に委ねられるものと考えております。
その上で、学校行事への保護者の参加に関して親権者等の双方から矛盾した内容の意思が示されるような場合は、学校はそうした両者の意思を調整する立場にはないため、親権者等の双方で協議を行った上で、その結果を学校に伝えていただくことが望ましいと考えております。

○嘉田由紀子君

今日、二十五分の質問、質疑の中で、今の御回答がもう少し前向きになることを期待をいたしまして、次の質問に入らせていただきます。
二〇二四年二月二十二日の東京高裁の判決文では、親権は、非親権者が親として教育への関与を含めた子を養育監護する職分を否定するあるいは免除するものではないと。ですから、親権を持っていたとしても、専らこれは子の利益を図るためのものですから、子の利益に合致する非親権者の子に対する教育への関与を合理的な理由なく、例えば虐待であるとか、そういう合理的な理由なく制限する権限ではないとされました。そして、別居親が教育に関わることを同居親は妨げてはいけないということが明示されたんですけど、このことについてどうお考えでしょうか。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
御質問は民法の解釈に関わる内容となりますので、文部科学省から答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。
なお、学校行事などへの参加に関しては、実際に別居親と同居親の合意の状況が確認できた場合に卒業式への参加を認めている事例もあるものと承知しており、文部科学省としては、こうした事例を含め、学校現場の対応に資する事項の周知などに努めてまいりたいと考えております。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。実態としてはかなり多様でばらばらということでございます。
それは理解した上で、東京高裁の判決では、同居親が別居親を学校行事から排除する行為をDVという判断をしております。つまり、同居親から別居親への支配的行為と捉えられ、配偶者暴力が成立するという判断です。また一方で、同居親により子供が別居親と自由に関わる人格権を得られない場合には、これは支配、被支配関係として児童虐待と捉えられるとも東京高裁の判決では言っております。
つまり、このことは、同居親が別居親を排除する行為は法律上問題があり、昨年改正されました民法八百十七条の十二、これはまだ施行されておりません、来年の四月か五月でしょうか、それは法務省で決めていただくことですけれども、来年施行された後の民法八百十七条十二の父母間の人格尊重義務、協力義務及び子の人格尊重義務違反として親権喪失要因となり得ると思われますが、民事局長の見解をお願いいたします。

○政府参考人(竹内努君)

お答えいたします。
子の利益の観点から、父母の別居後や離婚後も父母が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であると考えております。
そこで、令和六年民法等の一部を改正する法律では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないこと等を明確化することとしております。
文部科学省から答弁されたとおり、御指摘の学校行事への参加者の範囲をどのように設定するかにつきましては当該学校において判断されることでありますが、父母双方から矛盾した内容の意思が示されるような場合は、学校はそうした両者の意思を調整する場にはないため、父母が、民法第八百十七条の十二の趣旨を踏まえ、子の利益の観点から適切に協議を行った上で、その結果を学校に伝えていただくことが望ましいと考えられます。
その上で、父母の一方が何らの理由なくそのような協議を拒んだり、学校行事から殊更に排除しようとしたりするような場合には、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されることがあり得ると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反すると評価された場合には、親権者の指定、変更の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。今の民事局長の答弁は大変重要です。
今回、民法改正された中で、八百十七条の十二にこの親の協力義務が入った、あるいは相互に人格尊重義務が入ったということが、たとえ父母別れても、父子、母子の関係をより言わば子供のために充実させるんだということを民法に書き込んでいただいた、ここは私ども大変評価しておりますので、来年施行された後、是非、大臣含めて、ここのところが肝であるということを是非社会的に広めていただきたいと思います。その広める一つのきっかけが、学校における親と子の関係性の改善だということでございます。
実は、実際に別居親を差別しないという取組が各地で起きております。現場は進んでいるんですということを紹介させていただきます。
例えば富山県のある事例ですが、子供が通う小学校のお便り、プリント、保護者向けの行事案内などは、父母双方に二通用意して、同居親に渡し、同居親側から別居親に渡すように促されています。もし同居親側から別居親に渡さない場合においては、学校から直接別居親に送付をされておりまして、発送などに掛かるコストは別居親が負担をしているということです。これ、ちょうど同じことが保育園でも運用されておりまして、役所の子育て課、保育園担当ですね、子育て課と教育委員会、小学校とが連携して意識の共有を図るようにしているということです。これは富山県のある市の事例です。
一方、愛知県のこれもある市の事例ですけれども、親権を離婚で失った別居親が、学校長、教頭に卒業式の参加交渉をしたところ、学校から、親なので当然子供の姿を見てほしいということで、卒業式に参加ができたと。参加ができた別居親も本当に喜び、お子さんも、お父さんが来てくれたと喜んでくれている。これ、双方にとっていいことですよね。排除することが必ずしも親子の幸せではないんだという、親の情として当たり前のことが今現場で、今まで排除されてきたということ、ここは是非、法務大臣、今回の民法改正の意味ということを、また副大臣含めて、うなずいていただいておりますので、理解をしていただき、これをできたら日本中に広めていただきたいと思います。
一方で、不幸な事例もあります。
埼玉県では、学校や園で別居親が差別扱いされたとして、三市において国家賠償請求事件が提訴され、戸田市では現在も係争が係属中です。その差別的扱いとは、例えば、夫婦間のいさかい等を理由に、学校が現場を確認したわけでもないのに、同居親の意見のみで学校行事から別居親が排除されてしまいました。
このような国家賠償請求事件は個別具体的に今後も発生する可能性があります。その責任は、学校長、つまり自治体にあると考えられますが、もう自然的親子権という判決文を鑑みますと、非親権者も教育権を有していると東京高等裁判所は見解を示したわけです。この片親を差別的に扱うと、あるいは教育権を阻害するということは、別居親あるいは非親権者が差別の責任を追及する場として、学校長、自治体にこの差別追及をしてくる可能性もあります。この辺り、文科省さん、どう考えるでしょうか。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
御指摘の判例に関する解釈につきましては、文部科学省から答弁することは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、公立の学校の対応に何らかの課題があると考える場合には、まずは当該学校の設置者である教育委員会に御相談いただくことになるものと考えられます。

○嘉田由紀子君

またこれも最後の方で、クエスチョン・アンド・アンサーで充実していただきたいと思いますけれども。
少なくとも、東京高裁が示した判決文には、親権は、非親権者が親として教育への関与を含めた子を養育監護する職分を否定するものではない、あるいは免除するものでもないと。親権は専ら子の利益を図るためのものであるから、子の利益に合致する非親権者の子に対する教育への関与を合理的な理由なく制限する権限ではないとされております。別居親が教育に関わることを同居親が妨げてはいけないということが明示されました。
そして、この正当な理由なく妨害する同居親に権限を与えてしまう行為については、学校側が別居親を差別した行為として、高等裁判所までは違法行為であると示されております。そして、国家賠償請求事件の訴訟リスクまであると。埼玉の例ですね。
この訴訟リスクについても、文科省さん、どう思われますか。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
憲法と子供の養育監護の関係性に関する解釈につきましては、文部科学省から答弁することについては差し控えさせていただきたいと考えております。
一般論として申し上げれば、当然に学校現場において訴訟のリスクを抱えることは避けるべきであり、当事者等から適切な情報を学校に提供いただいた上で対応していくことが大切であると考えております。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。
私も、本当に学校現場の忙しさ、いじめも、そして引きこもりも大変増えているところで、先生方の御苦労はよくよく見ているんですけれども、だからこそ、正しく法律を施行しながら、子供と親がより幸せな関係性を維持できるよう、それをつくるのが今の、これからのクエスチョン・アンド・アンサーだろうと思いますので、そこはお願いしたいと思います。
公務員が平等的に行動すべきというのは、地方公務員法にも関わってまいります。地方公務員法十三条には、公務員は全国民を平等に扱わなければならないとあります。これに違反した場合には、六十条に規定される罰則規定に触れることさえ予想されます。具体的には、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金というリスクを教職員一人一人が負ってしまうと。こんな目には遭ってほしくないというのが私自身の現場を知る立場からでございます。
あわせて、三十二条には、地方公務員は法令や上司の職務上の命令に従う義務があるとも定められております。教職員の方々は、公立の学校ですね、法律にのっとって業務をして、さらに上司の命令に従うとありますが、こういった行為は教職員一人一人、個人個人に対しても罰則が適用されるリスクもあります。
ですから、別居親を排除するという教職員の差別行為については、例えば一年以下の懲役、五十万円以下の罰金というリスクも伴っておりまして、その行為は上司が命令したことによるとも判断されかねません。つまり、教育長や学校長、上に立つ皆様が別居親差別という行為を教職員にさせるということと捉えられ、懲役のリスクを伴う指示をしていることにもつながりかねません。
ここのところは、法務省さんではなく、ある意味で地方公務員法ですから総務省なんですが、総務省さんはこういうデータを持っていないと。つまり、罰金なりは裁判所が扱うからということで、内部の懲罰とかのデータはあるけれども、裁判についての記録はないということです。
そして、別居親差別を廃止している自治体の例、以下紹介させていただきます。私が確認している限りですが、神奈川県には厚木市、秦野市、綾瀬市、伊勢原市、寒川町、東京都では北区、練馬区、三鷹市、愛知県では東海市、愛西市、岐阜県大垣市、富山県氷見市、大阪府大東市など、多数子供の権利を守る施策を実行しております。
文部科学省としては、独自に、都道府県あるいは市区町村の教育委員会を経て、子供の家族状況や親の状況について、現場での学校の教育指導に使えるよう仕組みづくりを考えていただけないでしょうか。文部科学省さん、お願いします。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
学校行事などへの参加に関しては、先ほども御答弁させていただきましたが、実際に別居親と同居親の合意の状況が確認できた場合に卒業式への参加を認めている事例もあるものと承知をしております。
文部科学省としては、今般の民法改正への対応の一環として、改正法の施行後に学校現場にできるだけ混乱が生じることのないよう、制度改正による影響や、こうした事例も含めた別居親の対応の具体例など、各学校現場の対応に資する事項等について関係者への周知に努めてまいります。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。
家族法の改正は本当に広く関わっておりますので、それで、昨年の七月から民事局では、父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議、大変長いので覚えられないんですが、まあ連絡会議と言っています、連絡会議が開催されています。一月二十一日までの議事録は公開されておりますが、その後、四月二十二日にも連絡会議が開催されたということですが、議事録はまだ公開されておりません。そして、この中に、文部科学省さんはQアンドAの準備をしているということですが、どのような項目を入れようとしておられるでしょうか。準備状況を教えていただけるでしょうか。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
現在、今般の民法改正への対応の一環として、法務省を始めとした関係府省庁が連携して改正法に関する具体的なQアンドA形式の解説資料等の検討を進めているところですが、項目を含めその内容については、現在関係府省庁間において調整を行っているところであり、現在お答えできる状況にはないことを御理解いただければと存じます。

○嘉田由紀子君

一年たってお答えできる状況ではないと。あと一年というか、現場は、もう来年の四月から施行されるとしたら、それより数か月ほど前に、学校は先生方の配置は幹部ですともう一月に決めます。私自身も知事時代から人事については目配りをしてきましたので、一月には決める。そういうときに、四月以降何がどうなるのかということは、確実に一月までにこのQアンドA、詰めていただきたいと思います。
そして、この親子の交流を制限するような方向が出てしまいますと、教育委員会は教育長に対して優越権の濫用となる可能性がありますので、これを排除することとともに、教職員の人が一人ずつ安心して業務に打ち込むことができるよう、是非、文部科学省さん、QアンドAを作っていただきたいと思います。
私がガイドラインと言うと、文科省さんは、ガイドラインではありません、QアンドAですと繰り返し言われるんですが、何でガイドラインという言葉を嫌がるのかよく分かりません。審議官もどこまで御理解いただいているか分かりませんが、現場にとってはやっぱりガイドラインが欲しいんです。本当にここまで、親子関係あるいは子供の日々の行動は、親が突然離婚したりしたら大きく影響します。
これも以前から言っておりますが、保育園の先生方は意外と把握しています。というのは、お父さんが送ってこなくなった、どうしたのと言ったら、保育園の先生方は、もう子供さんの親の状況、かなり詳しく手に取るように知っているんですけど、小学校になると、途端、そこが切れてしまいますので、この辺り、やはり教育委員会として各都道府県また市区町村にガイドライン、QアンドAを確実に示していただきたいと思います。
これ、今のタイミングも含めて、いつぐらいまでにどういう内容でいけそうか、是非その覚悟を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(日向信和君)

お答えいたします。
先ほども御答弁させていただきましたが、現在、法務省を始めとした関係府省庁が連携をして改正法に関する具体的なQアンドA形式の解説資料等の検討を進めているところでございます。
文部科学省としましては、改正法の施行後に学校現場にできるだけ混乱が生じることのないよう、制度改正による影響や離婚後の別居親への対応の具体例を含む民法改正に関連した各現場の対応に資する事項等について、しっかりと関係者への周知に努めてまいりたいと考えております。
また、先生から具体的な公表時期についてもいろいろ御指摘もいただきましたが、現在、その公表時期、お示しすることは困難な状況ではございますが、先生の御意見は受け止めさせていただきたいと思います。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。
タイミング的には、繰り返しになりますが、やはり三学期が入る一月にはもう教育委員会の人事も始まりますので、そこまでには是非お願いしたいと思います。
そして、先ほど言いました、訴訟リスクとかって言いたくないんです、先生方は本当に頑張っていらっしゃるから。だけど、そういう目に遭わせないように、やはりガイドラインをきっちり作っていただけたらと思います。
最後にまとめの質問ですけれども、法務大臣、今も聞いていただきましたように、本当に、小中学校の先生方、公務員ですと地方公務員法違反まで問われるおそれがあります。そして、今日はこども家庭庁さんお呼びしていないんですけれども、子供の幸せ度というのはまさにこども家庭庁の大きな仕事でございます。そして、まさに省庁横断的な包括的な方向が求められていて、それに対して、民法改正をした当事者として、法務省、法務大臣さんにいろいろな問合せもあると思いますので、ここ、法務大臣さんとして省庁横断的な包括的なガイドラインを準備していくという御覚悟を是非お願いしたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

御指摘の民法の改正法でありますけれども、この円滑な施行、この観点から、学校教育の現場も含めて関係諸機関に対する周知、広報の重要性、これ極めて大事だと我々も認識をしております。
現在、先ほど質疑の中でも御指摘いただきましたが、関係府省庁等連絡会議におきまして関係の府省庁と意見交換を行っておりまして、今法案審議の過程で御質問いただいたそういった点を中心に具体的な場面を想定したQアンドA形式の解説資料の作成についての検討を行っているところであります。私どもとしても、ホームページの方に、QA形式の解説資料についても速やかに適切な方法で周知、広報を行っていく予定であります。
今委員御指摘のような形で、学校教育の現場においてもそうした様々な改正法の趣旨や内容、これがしっかりと御理解いただけるような内容となるように、私もしっかりと努めていきたいと考えております。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。実践で成果を示していただくことを期待をしております。
これで、私、時間来ましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。

先頭に戻る