2025年5月12日【決算委員会】確定稿

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。
日本維新の会、嘉田由紀子でございます。お時間をいただき、ありがとうございます。
決算委員会というのは、言うまでもなく、ここ一、二年、特に今年度の行政執行の結果を判断するわけでございますけれども、日本維新の会では、司法制度改革を幾つか入れております。その一つに、冤罪根絶のため、参考人も含め全ての捜査において取調べの全面可視化ということ。それから二つ目には、公判前に裁判官や裁判員、世論の予断を生じさせている捜査機関や関係者による情報リークがないように。そして三つ目は、法務省の民事局長に裁判官を採用する慣行、これ判検交流と言いますけれども、これを見直しをして、そして国民に信頼される司法と行政の関係を構築するということを維新八策に入れているんですけれども、この中で、私、今日は二点について法務関係で質問させていただきます。
まずは、冤罪関係ですけれども、私も実は政治家をしていたので、政治家の冤罪というところには大変気を遣っておりました。そして、有名な例ですけれども、これは本会議でも紹介させていただきましたが、裁判官の不適切な取調べに関して数々の冤罪が発生しております。まあ、袴田事件などは世論の関心集めているんですけれども、政治的冤罪事件は意外とうやむやにされてしまいます。
振り返ってみますと、二〇〇六年の九月に元福島県知事の佐藤栄佐久さんが贈収賄容疑で逮捕されました。その裁判では、佐藤知事が隠蔽体質がひどい東京電力への不信感もあり、プルサーマルの原発導入に対して後ろ向きであったので、この知事は国家にとって不都合な人間だと検事が判断して逮捕されたという記録もあります。二〇〇六年です。
そして、二〇一二年までに東京地裁、高裁、それから最高裁まで行くんですが、最高裁での判決では、贈収賄の金額がゼロ、金額がゼロだけど贈収賄は有罪だということが確定した大変奇妙な裁判結果になったんですけれども、この佐藤栄佐久知事の裁判の経過は、「知事抹殺」という書籍に克明に書かれております。これが二〇〇九年なんです。
それで、実はその後、エネルギー研究の方たちなどが、佐藤栄佐久知事がここで冤罪で、まあ冤罪のようなと言わせていただきましょうか、逮捕されていなければ、地元の知事としてきちんと東京電力への言わば電源の確保とかいうことが指導できていたから、二〇一一年の福島第一原発の事故は起きなかったのではないかと、これはもちろん推測ですけれども、専門家はそういう判断さえしております。
ですから、この佐藤栄佐久知事の冤罪というのは、大変私は福島の原発事故の遠因にもなったと思っておりますけれども、残念ながらこの三月十九日に亡くなられてしまいました。私は、お通夜で佐藤栄佐久様の御仏前にお参りさせていただいたんですけれども、さぞかし無念だったと思います。
そういう中で、この政治家を冤罪に追い込んだ背景、国家としての意思が検事に投影されていたと指摘する研究者もいるんですけれども、そのことについて法務省さんはどう考えるでしょうか。同時に、最高裁判所さん、どうでしょうか。両方からの答弁をお願いいたします。

○国務大臣(鈴木馨祐君

まず、冤罪ということについて申し上げると、これ法令上の用語ではないということにおいて、法務省として、この冤罪ということの定義、そこについて特段の見解を有していないということ、まずこれは御理解をいただきたいと思います。
その上で、お尋ねの件でありますが、これ個別の事件における検察当局あるいは裁判所のそうした判断に関わるということで、私からその点について所感を申し述べることについては差し控えをさせていただきたいと思いますが、あくまで一般論でありますが、これは当然のことながら、犯人でない人を処罰すること、これはあってはならないということと考えております。まさにそういった中で、検察当局におきまして、適正な検査、公判活動の遂行、ここに努めていると承知をしております。
そういった中で、引き続き、適正な捜査、公判活動、まさに犯人でない人を犯人と処罰するということが断じて起こらないような、そういった適正な捜査、公判遂行に努めていく、そのことが肝要だと考えております。

○最高裁判所長官代理者(平城文啓君)

お答えいたします。
最高裁事務当局としては、個別事件に関することについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
その上で、一般論として申し上げますと、裁判所といたしましても、無実の人が有罪判決を受けるようなことは決してあってはならないというふうに考えております。
そのような事態が起きないように、裁判官としましては、個々の事件において、当事者の主張に耳を傾け、かつ当事者双方から提出された証拠を丁寧に吟味しながら適切に判断していくことが重要であると考えております。

○嘉田由紀子君

個別の事件にはお答えできない、想像していたとおりでございますけれども、実は、このことは日本の三権分立にも関わってくるということを二点目にお伺いしたいと思います。
今日、資料一として、皆様に、これ小学校六年生の社会科の教科書です。孫が使っていたのを借りてきました。そして、この中に、いかに三権分立を確保することが国の体制として重要かというふうに小学生にも説明をしているんですけれども。
実は今回、この決算委員会の中の一つの項目として、金融庁に出向中の裁判官によるインサイダー取引がありました。このことを、なぜ金融庁に裁判官が出向しているのと多くの国民の皆さんが疑問に思ったと思います。
裁判官が行政組織に出向する、判事が検事になり、そして、こういう人事システムが実は昭和二十年の初頭以降ずっと続いているんですけれども、政治家の間でもほとんど知られておりません。国民の間ではもっと知られていないんです。
日本中では裁判官約三千四百人ですけれども、毎年かなり多くの裁判官が各省庁に、法務官僚になり、あるいは検事として身分を変えて出向しています。国土交通省でしたら、例えば水害の国賠訴訟の担当法務役人として、また厚労省だったらば、例えば水俣病のような公害病の裁判の法務担当として出向しております。国賠の被告である国の代理人として、裁判官は国土交通省や厚労省など派遣先の省庁で行政実務を学ぶわけです。
果たして、このような構図で、住民が原告の水害訴訟やあるいは住民が原告の公害被害の訴訟というのが、住民の言わば思いや願いに即した判決が出せるのか。これはもう、私はずっと水害訴訟の現場にも寄り添ってまいりました。公害訴訟の現場にも環境学者として寄り添ってまいりました。ほぼ九九%、住民に勝ち目がないんだというこの背景が言わば判検交流に構造的にあるんだと思っております。
具体的にお願いしたいんですが、最新のデータで、令和六年度十二月時点での判検交流人事、各省庁別に何人おられるでしょうか。そして、それぞれがどのような職務を担っておられるのか、教えていただけますか。

○最高裁判所長官代理者(徳岡治君)

お答えを申し上げます。
令和六年十二月一日時点で行政省庁等に勤務している裁判官、これは百六十八人でございます。このうち、複数ございますので出向者数の多い省庁として挙げますと、法務省が百一人、外務省が十一人、金融庁が証券取引等監視委員会も含めまして十一人となっております。
それぞれの職務内容でございますが、出向に当たり、出向先の部署は当然ながら承知をしておりますけれども、それぞれの職務内容につきましては、裁判官の身分を離れて各行政省庁で勤務をしておりますので、出向者それぞれの具体的な職務内容は把握していないところでございます。

○嘉田由紀子君

具体的な職務は把握していらっしゃらないということなんですけれども、実は、私は法務省で、法務委員会で、言わば共同親権の問題を六十回質問してまいりました。子供にとって最善の利益というのは単独親権ではなくて共同親権だということで、そのときの担当者は皆裁判官だったんです。先ほど、法務省に百一人行っていらっしゃる。それで、例えば二〇一九年に出会った方が、法務省でその民事の担当で出会った方が裁判官になって、二、三年外におられてまた戻ってくるとか、あっ、こういう人事があるんだと。
それで、残念ながら、これはもう感想です、今ちょっと書籍をまとめていますけれども、今回の民法改正で、明治民法以来ようやく、離婚に直面した子供にとって父か母かどちらも失わないで済むんだという共同養育、共同親権というのが法案に入ったんです、民法八百十九条。ただし、その中身を見ると、裁判官による裁判官のための法案だと解釈せざるを得ないように、ある意味で中身がすかすかです。これまた法務委員会で明日も大臣に聞かせていただきますけれども、なぜこういうことが起きるのかというと、この判検交流が問題だと私は指摘をしております。そして、維新の会は、それこそもうかつてからこの問題を指摘しています。ほかの政党ではほとんど指摘していないということを申し上げたいと思います。
で、今回の金融庁出向中の裁判官によるインサイダー取引については今後制度をどう運用していこうとしているのか、その制度運用上の課題及び今後の制度見直しについて、今回の決算委員会の問題提起にもされているんですけど、そこについては法務大臣、いかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(徳岡治君)

お答え申し上げます。
インサイダー取引規制に抵触するような行為が決してあってはならないことでございます。株式等の取引により国民からの疑惑や不信を招くような行為は厳に慎むべきであることなどの周知を図るとともに、司法研修所において倫理に関する研修の一層の充実を図るなどの対策を講じているところでございます。また、出向予定者に対しては、出向前に株式の取引などで国民の疑惑や不信を招くことのないよう改めて注意喚起を行っているところでございます。
行政省庁への出向一般についてでございますけれども、裁判実務の経験があり法律に精通している人材としての裁判官の派遣を求める要望を踏まえまして、必要な協力をしてきたところでございます。また、裁判官が裁判所外部で多様な経験を積むということは、多様で豊かな知識、経験を備えた視野の広い裁判官を確保するために有意義であると考えているところでございます。
今後とも、行政省庁への出向につきましては適切に判断をしてまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君

今まで総理大臣、岸田総理、それから石破総理、お二人に、また法務大臣にもこのことは尋ねてまいりましたけど、人事交流は大変実質的に有効であるという判断しかなされていないんですけど、この人事交流である意味で裏技を学んでいただくと、これは国民のためにならないんですね。その辺りのところで、この判検交流、三権分立の憲法違反ではないかという質問が例えばこの小学校の教科書を使っている子供たちから出されたときに、どう説明をしていただけるでしょうか。ここは法務大臣、お願いできますか。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

判検交流というか、そうしたものの意義ということについては先ほど最高裁判所の方からもあったとおりかと思っております。
その上で、三権分立でということで申し上げれば、法曹、これは裁判官、検察官あるいは弁護士、このいずれの立場におかれても、まさに法曹自体がその法という客観的な規律に従って活動を当然のことながらするということであろうと思います。そういった中で、それぞれの経験に裏打ちされた中で、しかしやはりそうした法の下で、その法律という客観的な規律に従っての活動をそれぞれの立場においてするということに尽きるんだと思いますし、まさにそうしたことで職責を全うする立場に、これは裁判官であろうが、これは検事、検察官であろうが弁護士であろうがということに尽きるんであろうと思います。
そういったことの中において、三権分立という観点から、例えばほかに出向し、そうした経験を積むことがそこに反するんではないか、そういったことの御指摘は当たらないんではないかと私どもとしては考えております。

○嘉田由紀子君

あえて諸外国との比較とは言いませんが、アメリカですと、五十州あって州ごとに違うんですけど、裁判官は例えば十年ごとに住民からの審査があったりあるいは議会からの審査があったり、日本の場合には、もちろん最高裁の判事は国民審査があるんですけど、日常的に裁判官を審査する仕組みがないんですね、日本には。ここのところが裁判官自身の自らの、まあ言い方は悪いかもしれませんが、出世やあるいは地位の向上というところで、政権与党と組んでいること、これが裁判官による自らの役割を果たしやすいんではないかと。ですから、住民の側で、例えば水俣病のあの不条理な裁判だって、あるいは水害の訴訟でも、なかなか裁判官がその苦しむ国民の側に立てないということ、これは事実として知っていただきたいと思います。指摘だけさせていただきます。
次に、厚労省関係ですけれども、今回の厚労省の決算委員会の課題の中に、医師の働き方改革がございます。残業時間でございますけれども、勤務医の二〇%は年九百六十時間を超える残業、三・六%はその二倍、千九百二十時間。
このデータでの男性医師、女性医師の違いはあるでしょうか。もし数値があったらお示しいただきたいと思います。また、日本中全体で平均値がない場合には、特定の職種あるいは特定領域でもよろしいので、男女差を示していただけますか。

○政府参考人(森光敬子君)

お答え申し上げます。
令和四年度に厚生労働科学研究費補助金により実施されました医師の勤務環境把握に関する研究におきまして、医師の労働時間に関する調査分析を行っております。
委員お尋ねの男性医師、女性医師それぞれの労働時間、これは、本調査の結果によりますと、常勤医師におきまして労働時間が週六十時間以上の割合が、男性医師の二二・四%、女性医師の一六・六%でございます。労働時間が週八十時間以上の割合、これは、男性医師の四%、女性医師の二・一%と報告をされていると承知しております。

○嘉田由紀子君

具体的な数値、ありがとうございます。
どうしても男性の方が長時間になりがちだということなんですけれども、私は特に産婦人科がかなり問題だろうと思っております。
実は、知事時代でも本当に産婦人科医師を確保するのが難しくて、まして、この働き方改革の中では、分娩を扱う病院ですと最低八人はお医者さんがいないといけないと、二人ずつ四クールないといけないということで、ちょっと人口の少ないところですともう分娩が扱えなくなるんですね。そんな問題がございまして、この産婦人科の領域で残業時間調査はあるでしょうか。この辺りの数字を示していただけたら有り難いです。

○政府参考人(森光敬子君)

お答え申し上げます。
先ほど答弁させていただきました研究班の調査結果に基づきますと、時間外・休日労働時間が年千八百六十時間を超える医師の割合、これを診療科別に見た調査がございます。それを見ますと、産婦人科医につきましては、平成二十八年度ですと二〇・五%の医師がその年千八百六十時間を超えております。それが令和四年度ですと五・九%と、これは減少傾向にあるというふうに承知をしておるところでございます。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。
そこに、産婦人科の中でも改善されているということですけど、他の科の数値はございませんでしたか。

○政府参考人(森光敬子君)

お答え申し上げます。
この調査におきましては診療科別に取っておりまして、特に、例えば医師の中でも最も多い診療科であります内科でございますと、平成二十八年度の調査では一〇・一%の、千八百六十時間を超える医師の割合は一〇・一%でございました。令和四年度になりますと、三・三%というふうになっております。また一方で、いわゆる外科でも特に忙しいとされる脳神経外科といったようなところですと、これは平成二十八年の調査はございませんので、令和元年の調査、これが一六・二%、令和四年の調査ですと九・九%というような調査結果になっておるということで承知をしております。

○嘉田由紀子君

なかなか、時間外あるいは休日労働を余儀なくされる科では、もちろん、目の前に赤ちゃんが生まれる、あるいは緊急手術、救急体制ということで必要なんですけれども、全国知事会で女性医師をサポートするという仕組みなどをつくってまいりましたけれども、今もう三割を超えております。これはこれで女性医師が増えてくれることは大事なんですが、現場で見るとなかなか組めないんですね。子育て中の女性だったり、あるいは結構女性医師の連れ合いは医師だったりというカップルが多いものですから。
それで、これが、もうあってはならないことですけれども、社会的な問題として、医学部の入学で女性差別につながってしまったという事例がございました。女性の入学を制限して、働きやすいというか、働いてもらえる男性をという、これ自身がいびつなんですけれども、この入試制度、今どうなっているでしょうか。文部科学省さんからの答弁お願いいたします。

○政府参考人(森友浩史君)

お答え申し上げます。
文部科学省におきましては、医学部医学科の入学者選抜における不適切な取扱いが明らかになったことを受けまして、平成三十年度に国公私全ての医学部医学科の入学者選抜を調査をしました。その結果、不適切な事案又は不適切である可能性が高い事案と指摘した大学につきましては、令和元年度に訪問調査を含めたフォローアップ調査を実施をした上で、入試の改善がなされたことを確認をしているところでございます。
また、その後の状況につきましては、毎年度文部科学省におきまして、医学部医学科の男女別の受験者数ですとか合格者数について調査をして公表しております。
文科省として、合理的な理由がある場合を除き、性別や年齢等の属性を理由として一律に取扱いの差異を設けることは不適切であると考えております。引き続き、フォローアップを行うことなどにより入学者選抜の公正確保に努めてまいります。

○委員長(片山さつき君)

時間が来ておりますので、おまとめください。

○嘉田由紀子君

はい。ありがとうございます。
最後に、厚労大臣に、今女性医師が拡大する中で、診療科別、地域別の見通しの確保、どうでしょうか。

○委員長(片山さつき君)

お時間が来ております。

○嘉田由紀子君

一言で結構です。

○委員長(片山さつき君)

では、お時間が来ておりますので手短にお願いします。

○国務大臣(福岡資麿君)

はい。地域における医師確保のため、子育て世代の医師に対する取組は性別問わず大変重要だと思っています。
厚生労働省では、病院内保育所の設置、運営に対する財政支援であったり、女性医師の就業支援等を進めております。また、医師確保に向けましては、医師の働き方改革、医師養成課程を通じた取組、医師確保計画に基づく取組を進めさせていただいています。
こうした取組を通じまして、女性医師の増加する状況においても、地域の医師確保を進めてまいりたいと思います。

○嘉田由紀子君

ありがとうございます。以上です。

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