「美浜原発」で福島並みの事故がおきたら、琵琶湖の魚には、国の食品基準値の1.65倍の放射性セシウムが蓄積、基準値に戻るまで5年ほどかかる、という県独自の予測結果を滋賀県が公表。おりしも国の原子力規制委員会が、老朽原発は「40年廃炉」という原則を破り「美浜原発の40年超稼働」の審査合格を出した同じ日でした。10月6日。(長いです)
2011年3月11日の福島原発事故直後から、滋賀県では、原発事故の影響予測データ(SPEEDI:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の提供を国に求めてきました。しかし国は「立地自治体ではない」という理由でデータ提供をしてくれませんでした。そこで滋賀県では県立の琵琶湖環境科学研究センターの専門家の協力を得て、まず大気汚染の予測シミュレーションを行い、2011年11月25日に公表しました。
この拡散予測に基づいて避難計画をつくりました。ちなみに今、私自身が暮らす大津市北比良地域は、美浜原発から直線距離で50キロほど離れていますが、「屋内退避」が求められる汚染予測地域(図の中の緑部分)に入っています。あえて、自ら選んで汚染予測地区に引越してきました。当事者としての覚悟をするべき、と考えたからです。
びわこ成蹊スポーツ大学も、この「屋内退避」範囲にあります。スポーツを楽しみ、学べるのも、環境が正常であればこそ!福島では、サッカーの聖地、Jビレッジは、フクイチから20キロ。今、福島原発の汚染対策の最前線、となっています。
大気汚染予測の次に、大気により運ばれた放射性物質の琵琶湖水質への影響を、2013年11月18日に公表しました。ここでは、琵琶湖表層のうち飲料水基準を超過する面積比率が事故直後には最大20%程度となること、またこうした水域が長い場合で10日間前後残る可能性が示されました。取水制限が長引くと関西全体の水道水供給に大きな影響が出ます。
今回の滋賀県の公表は滋賀県独自の汚染予測結果の第三弾目です。県民はじめ多くの皆さんが心配している琵琶湖の生き物、生態系への影響、その中でも、日常的に琵琶湖の食文化を形成している3種類の魚についての予測結果を公表しました。
汚染物は一般には、「食物連鎖」の中で移動・蓄積していきます。今回は、アユなどの「プランクトン食」の魚類、フナなどの「雑食性」の魚類、ビワマスなどの「魚食性魚」の3種類の魚類で、体内に蓄積される放射性セシウムの濃度を試算しました。
その結果、一般食品の基準値(一キロあたり100ベクレル)を超えるケースは、「雑食性」と「魚食性」で見られ、雑食性は半年ほどで基準値を下回るが、「魚食性魚」は基準値を下回るには約5年必要であることがわかりました。
古代湖琵琶湖内での進化の過程で、海のビワマスが「陸封化」されて琵琶湖水域に適応してきた固有種のビワマス。夏の脂身ののったビワマスのおつくり、そして秋口のマスメシ、季節を問わずにさっぱりおいしい塩焼きや醤油炊き、琵琶湖の食文化への影響は深刻です。
また今回は、発表はありませんでしたが、湖底の底泥には、かなり濃度の高いセシウムの蓄積も予測されます。福島県内での湖沼やため池では数万ベクレルの濃度の底泥汚染が指摘されています。
琵琶湖は昨年制定された「琵琶湖保全再生法」で「国民的資産」と価値づけていただきました。そのかけがえのない国民の宝、その生態系への底しれぬ影響を知りながら、老朽原発を再稼働する理由と意味、どこにあるのでしょうか。国の再稼働審査許可をだした当事者の方がたに説明していただきたいです。皆さん、どう思われますか?