11月9日、東近江市で開催された「国営湖東平野農業水利事業完工記念式典」に参加。お祝いとお詫びとお礼の挨拶をさせていただく。この事業は、2013年に始まった永源寺第一ダムの堆積土砂掘削、調整池の新設・改善、新規井戸水確保など、282憶円をかけて完成した大規模利水事業です。近江八幡市、東近江市、愛荘町、豊郷町の農地、6877ヘクタールの受益面積があり、湖東地域の農業にとっては大変大事な基盤整備事業です。11月9日。長いです(1400文字)。
三日月知事や国会議員にまじって、参議院議員として挨拶の時間をいただきました。まず、湖東地域は1000年以上の水田開発の歴史の中で、山が浅く水源確保に苦労してきた地域であること。それゆえ例えば明治時代には豊郷町の龍ケ池地下水井戸を住民が独自につくるなどの努力があり、この龍ケ池は今年9月に世界かんがい施設遺跡に指定されました。
このような背景の中で、戦後永源寺ダムが計画され、10年以上の時間をかけて昭和48年に完成したが、まだまだ水不足が続き、平成にはいってから「永源寺第二ダム」が計画された。しかしこのダムは1000憶円以上の投資が必要と見込まれ、治水ダムは100%税金で賄われますが、農業用水のダムは利水者に1割の自己負担が求められます。
私自身は1970年代から滋賀県内の農村地域を訪問し、地域の水利用事情などの聴き取り調査をしていました。ここ湖東地域では、永源寺第二ダムについては地元の農家の方たちの「農業経営が大変な時代にこれ以上の利水費用の負担はつらい」という意見をたくさんききました。
そこで、2006年の滋賀県知事選挙では政策マニフェストに滋賀県内に計画されていた6つのダム事業の「見直し・凍結」をあげました。特にこの永源寺第二ダムについては地元の農家の方たちの「今以上の利水費用の負担はつらい」という意見をたくさんききました。そこで、知事マニフェストには「利水事業については永源寺第二ダム事業を見直し、地下水利用や水の循環的利用で利水をまかなう計画をつくる」ことを提案しました。
実は知事選挙前の2002年に大津地裁で、永源寺第二ダムについては、ダムの必要性、技術的可能性、経済性の3要件に問題があるとして住民訴訟が起こされましたが、原審の大津地方裁判所は住民の訴えを却下したため、住民側は大阪高等裁判所に控訴しました。2005年には大阪高裁で「計画は違法」の判決が出され、2007年10月に最高裁は国の上告を受理せず、大阪高裁判決が確定しました。建設費用が利水効果を上回るムダな公共事業が見直しをされたわけで、全国的にも利水ダム計画の取り消しは初めてでした。
そこで滋賀県知事に就任してから2007年以降、地下水利用や水の循環利用をすすめ、永源寺第2ダムに代わる利水事業を国に求めてきました。国との協議の結果、2013年からこの湖東地域の利水事業が始まり、11年の年月をかけて完成したわけです。
挨拶では、これまでの国と滋賀県担当者、そして地元の土地改良区の皆さんの努力に感謝を申し上げました。そしてこれからの農業水利事業は、生物多様性など、生き物への配慮を埋め込んだ「世界農業遺産」に指定された「琵琶湖システム」の流れにそって環境への配慮もお願いしました。夕方の懇親会では、県や国の関係者の皆さんに直接お礼やお詫びの挨拶をさせていただきました。