5月17日に民法改正法案が国会を通過してから6月末には通常国会も終わり、7月に入ってから、共同親権の実効性を高めるための全国行脚を始めました。私が「子ども目線で考える離婚後共同親権―民法改正で“縁切り”ではない“縁つなぎ”の家族文化を目指して」という講演を行い、それぞれの地域の連れ去られた当事者のお父さん、お母さん、祖父母の方や連れ去られた子ども当事者も参加くださったところもあります。また各地とも地元の県議、市議など地元自治体議員にも声をかけさせていただき、地域としての「共同養育計画づくりの重要性」など訴えさせていただきました。福井市、岐阜市、富山市、札幌市、東京、などで講演を行い、8月23日大阪市で、24日鹿児島県で、25日沖縄県那覇市でいったん全国行脚を終了しました。8月27日。また長いです(2700文字)。
また各地を訪問しながら、別居・離婚に直面して子どもを連れ去られた親ごさんや祖父母の方、また子ども当事者の方がたの聴き取りも行ってきました。連れ去りにあって3歳の息子を残して自殺をしてしまった息子さんの母親、婚家から追い出され2歳の娘さんを残して自殺してしまった娘さんの母親の方のお話も伺いました。合計で27名の方のインタビュー、50時間をこえています。お話を下さる方も苦しい出来事を思いだしながら、言葉をしぼりだしてくださいましたが、涙なしに聞けない話ばかりでした。今、その皆さんのこれまで社会的に発信しにくかった「声なき声」を書籍にまとめる準備をしています。仮題は『共同親権:女の言い分、男の言い分、そして子どもは? 縁切り文化から縁つなぎ文化へ』(2024年12月頃出版予定)です。
8月23日夜の大阪での講演会は「おやこハピネス」が主催で、私の70枚のパワポによる講演に加えて、名古屋の森智雄弁護士といっしょに、「共同親権は蜜な親子交流が胆である」ということを訴えさせていただきました。大阪には「親子ハピネス」をはじめられた当事者の方たちや、アメリカでの先行的事例を科学的に研究しつくした医師の方もおられ、当事者の層も厚いです。また大東市や門真市の市議会議員の方たちや、日本維新の会衆議院議員で法務委員会での部会長をなさっている池下卓さんも参加くださいました。神奈川県や石川県からの当事者の方も遠路参加くださいました。お世話をいただいた皆さん、ありがとうございました。
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8月24日朝には大阪から鹿児島県に飛び(桜島が白雲をあげていました)、そこで「鹿児島子どもの権利を守る会」が主催なさった「チルドレンファースト勉強会」に参加し、まず地元活動家の瀬戸隆寛さんの問題提起をうけて、私のほうで講演をさせていただきました。鹿児島県姶良市では市議会議員の方たちと協力をして「片親のみによる子の居所指定兼の濫用禁止」「親子交流の拡充」「フレンドリーペアレント(友好親原則)の導入」「養育計画作成の制度化」等をふくむ意見書を市議会として提出しています。
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またこの勉強会では「原則共同親権」運動の当事者の子どもさんも、勉強会で皆さんの前で自分の言葉で発言してくれました。学期途中で母親に突然連れ去られ、知らない町につれていかれ、食事もまともに準備してもらえなかったとても苦しかった経験を話してくれました。「子どもの連れ去りは鬼畜のようなもので、被害者の子どもをこれ以上増やさないようにしてほしい」「家庭裁判所が、同居親から言われたことを、『こういいなさい』と仕向けるので、子どもの声をそのまま信じないでほしい」と、苦しい現場を経験した子どもさんが勇気をだして発言してくだいました。鹿児島の代表的料理、キビナゴの刺身は絶品でした!
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8月25日には鹿児島から沖縄県那覇市に飛び(那覇空港は巨大客船が数艘)、「ハイビスカスの会」が主催する「おきなわから子ども目線で考える共同親権シンポジウム」に参加しました。代表の新城永人さんが、自分が突然子どもを連れ去られて途方にくれていた中で、どうしても子どもたちに会いたい、と那覇の地元の当事者に呼びかけて「ハイビスカスの会」をつくり、沖縄県庁の前でマイクを握って街宣運動をはじめたところから問題提起をしてくださいました。連れ去られ当事者の声が沖縄の地元TVがとりあげてくれたということです。このような取材は首都圏や関西圏ではほぼ不可能です。民―民の家庭内問題なので、連れ去った同居親の取材がとれないとバランスをとるべきマスコミとしてはとりあげない、というのが定番です。沖縄マスコミの社会的風土は少し異なるようです。
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会合には、女性側の、追い出され当事者の方や、当事者の友人や家族・親族などに加えて、沖縄県議会議員、那覇市議会議長、浦添市議会議員、石垣市議会議員など地元の政治家が参加してくださり、大変心強い会合になりました。新城さんたちにとって、このような対外的なシンポジウムはこれが初めてということ。今後、第二陣と続けて、よりひろくよびかける活動をすすめる、というご決意をしてくださいました。いろいろなご準備ありがとうございました。ぷるぷるテビチ入りの沖縄ソバと本場ゴーヤチャンプルは絶品でした!
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連れ去った同居親にもいろいろな言い分があると思います。「離婚するにはそれだけの理由がある。妻を殴る蹴る、子どもを虐待する、子育てに関わらない、養育費を支払わない、・・・日本の男に共同親権は百年早い」(上野千鶴子さん、社会学者)。東大名誉教授の社会学者の上野千鶴子さんのこの文は、今年の5月31日に出版された『別居・離婚後の「共同親権」を考える:子どもと同居親の視点から』(熊上崇・赤石千衣子編、明石書店)のカバー帯の推薦文です。また2024年2月26日の国会内での院内集会で、上野千鶴子さんが「『子どものため』といいながら、共同親権派の背後には、家父長的な父権復活派がいるような気がしてならない」と、メッセージを寄せています。
確かに日本社会の政治経済場面での女性参画は国際的に大きく遅れております。ここには、男尊女卑の家父長制度思考が隠れているでしょう。そのことをもって、日本の男を十パひとからげに子育てに参加するべきではない、と非難するのは学者とはいえない発言です。同時に、同居親が自ら声をあげる場面はほとんどなく、抽象的に「家庭内暴力から逃げる」という声しか聞こえてきません。弁護士や裁判関係者や学者の代弁ばかりです。「同居配偶者に無断で、どうしても子どもを連れ出さないといけなかった」という急迫した事情を同居親が具体的に声をあげる社会的場面づくりも必要と思います。