Facebook 2024年8月3日 球磨川水害からまる4年 球磨川上流部の川辺川、五木村まで訪問してきました。

2020年7月4日の球磨川水害からまる4年、水系全体で50名もの死者が出てしまいました。毎年7月には溺死者50名の住宅やご遺族を訪問してお悔やみをさせていただきました。今回は、2008年から、熊本県参与•副知事として、蒲島県政を支えてこられた、現在「日本維新の会」の東京選出の衆議院議員の小野泰輔さんをお誘いして、球磨川上流部の川辺川、五木村まで訪問してきました。各地で小野さんを慕う方たちがたくさんおられました。同行・案内下さったつる詳子さん、木本雅巳さん、田副雄一さん、寺嶋悠さん、森明香さん、小鶴隆一郎さん、黒田弘行さん、松本佳久さん、土森武友さん、緒方雅子さん、本田進さん、皆さん、ありがとうございました。水害から蘇った人吉旅館さんの堀尾ご夫妻、女将の里美さんたちにもお世話になりました。8月2日。また長いです(スミマセン2500文字)。
熊本県の蒲島知事は、2008年9月11日に「球磨川そのものが地域の守るべき宝」として球磨川上流部に1960年代から計画されていた川辺川ダム計画を白紙撤回し、「住民独自の価値観を尊重することによって、人や地域が輝き、真に豊かな社会が形づくられる」「ダムによらない治水を極限まで追求すると同時に、川とともに生きるまちづくりを目指す」と宣言されました。
ちょうどその頃、私は2006年の滋賀県知事選挙を経て、滋賀県知事として下流の橋下徹大阪府知事、山田啓二京都府知事と滋賀県内で計画されていた大戸川ダムや丹生ダムの必要性が低いと真剣な議論をしておりました。まさに同時代のダム・河川問題を塾考する同志でした。滋賀県では二期八年の知事職を経て、2014年3月にダムだけに頼らない「滋賀県流域治水推進条例」を日本として初めて制定し、私は知事を退任しました。
この後、熊本県では、12年にわたり、放水路や遊水地などを計画してきました。この時の宣言を蒲島知事と共に練り上げ、樺島県政を2020年6月の東京都知事選挙出馬まで支えてきたのが小野泰輔さんです。2020年7月4日の球磨川水害の被害を、小野さんは東京都知事選挙の最終日の早朝の街頭演説中に知り、涙ながらに演説をしていたということ。さぞかし衝撃的な時間だったことでしょう。翌日7月5日が投票日でした。結果的には、たった1ケ月弱の地盤のない東京都知事選挙に61万票を超える支持を得ました。その後、東京都内での選挙活動を経て、現在東京選出の、「日本維新の会」の衆議院議員です。
蒲島知事は、2020年7月4日の水害に襲われ、2020年11月には「流水型ダム」により「命と環境を両方守る」という方向を決めました。その後、国や地元自治体との協議などをへて、2022年には1億3000万㌧の貯水量をもつ九州地域で最大の「川辺川ダム」を含む「球磨川水系河川整備計画」が策定されました。2024年3月末には、蒲島知事は退任し、川辺川ダム推進の意向を後任の木村知事に託しました。そして2024年4月21日にはダム上流部の五木村村長が村民集会でダムの受け入れを表明しました。しかしダム建設地の相良村村長はまだダムの受け入れを表明しておりません。そんな中での今回の小野衆議院議員と一緒の五木村、人吉市訪問となりました。
私たちは、2020年7月4日の水害直後から、つるさん、木本さんや市花さんたちといっしょに「何が生死を分けたのか?」という問題を設定して、1年あまりをかけて、50名の溺死者一人ひとりを亡くなられた自宅や流された場所を訪問し、溺死条件を見極めてきました。そこでわかったのは、球磨川本流が溢れる前に、山からのシカ害などによる森林破壊の濁流や、山田川、万江川、小川など、球磨川に流入する支流の氾濫が早く、それにより命を落とした人たちが圧倒的に多かったということを究明し、『流域治水がひらく川と人との関係―2020年球磨川水害の経験に学ぶ』(2021年、嘉田由紀子編、農文協)として出版しました。
今回も、小野泰輔さんを、球磨川からはるか離れた、街中の住宅地で御溝川という昔の農業用水路が住宅地内にながれ、その水路で亡くなったIさんの家などをご案内しました。御溝川の取り入れ口は、人吉市の上流、山江村にあります。7月4日早朝6時すぎに、御溝川の取り入れ口で溢れる動画を撮影しておられた松本佳久さんに現地を案内いただき、その時の動画も見せていただきました。
今回の小野さんの訪問で、最も大事なところは、「瀬戸石ダム」です。球磨川中流部に、河川を半分ほどせき止めて、発電をしている昭和33年建設の瀬戸石ダムは、上流部10キロあまりに亘り、水位上昇を招き、その部分での溺死を発生させた原因になっているのでは、と今年6月13日の参議院国土交通委員会で質問しました。斎藤国土交通大臣は、「瀬戸石ダムの運営者のJパワーは、ダムによる水位上昇はないと言っている」という一点ばりでした。Jパワーは国政的には、経済産業省管轄であり、小野さんは、今後の経済産業委員会で、この件を問いただしてくださる、ということです。
今回の球磨川・川辺川訪問で最もショックだったのは、田副さん、小鶴さんたちが直面している「アユ漁の壊滅」です。6月1日に解禁されてから8月1日まで、まる2ケ月間、アユが1匹も獲れていないという。水害対策での河川改修などで流れ出てくる土砂により、アユのエサである珪藻が育たず、アユ、ヤマメ、全く捕獲できず、生業がなりたたないという。高温の影響もあるのでは、という。
実は琵琶湖でも、琵琶湖の水温があがり、産卵条件やエサ条件が悪くて、今年のアユ漁は、平年と比べて1-2割という惨状です。日々のこの激暑、「地球温暖化」どころか「地球沸騰化」の時代、河川のコンクリート化やダム化を少しでも避けて、生き物の命を守れるようなグリーンインフラの維持を本気で実現しないと、日本からアユやビワマス、淡水魚が消えてしまうのではないでしょうか。他の河川のことも情報がほしいです。心配です。
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