二日続きの琵琶湖源流の森林保全の会合参加です。6月23日には、高島市の「高島の森―未来につなぐ山守を考える会」が主催、高島市が共催の『びわ湖源流の里山づくり〜小さな林業の可能性〜』に参加。この会合は、高島市が住民参加ですすめている協賛事業の一環としてはじまったようです。ようやく「自伐型」という考え方が高島市でもはじまった!大変感動的な会合でした。短めに紹介と思いながらまた長くなってしまいました(1800文字です)。6月24日。
九州大学大学院教授 佐藤宣子さんが基調講演。佐藤さんのご活躍は各地でうかがっていたので、是非とも直接お話をしたかった方です。「住民による里山森林整備で地域活性化」として、包括的な現状と今後の方向を紹介してくださいました。特に、自伐林家(自営林業)の継承を三つに分類していただき、それぞれの家族や地域の将来をわかりやすく分析。高齢化して、孫世代につなぐVターンは大事な視点です。(人類学では祖父母と孫の関係を冗談関係と言って家族継承の望ましい形としています)。
第一世代=昭和一桁生まれの農家兼林家(85歳以上)
第二世代=第一世代の子+移住Uターン者(50歳代後半〜70歳代前半)
第三世代=第二世代の子+移住Iターン者主流&Uターン者(20〜40歳代)
佐藤さんの全国の個別林家の聴き取り結果は、フィールドワーカーとしての説得力がありました。また、林業での100年という生きる木を育てる未来を、人間の人生の日常的な時間軸で考えること、その関係性を佐藤さん自身楽しんでいるようです。人間の世代交代、特に、今の時代の時間感覚自体を樹木の時間にあわせる、その哲学が必要なのだ、と改めて学びました。そして自伐型に挑戦している人たちに、「生態系レベルから自然を整える手助けをして森が変わっていくことに浪漫を感じる」と応援をしておられました。
高知県佐川町で自伐型林業をしている滝川景伍さんによる「自伐型で歩んだ十年 林業X○○」と題する体験談も説得力ありました。もともと京都市岩倉で生まれ育ち、「私も琵琶湖の水で育ちました」という発見があるという第一声は印象的です。高知県佐川町では行政主導で自伐型林業の支援が充実している、その実態を教えていただきました。高島市や長浜市、滋賀県内の自治体でも、首長や職員がその気になればできそうです。ポイントは、「行政・施業者・山主が一緒になって地域で共有するビジョンを作ることが大切」ということ。
滝川さんは、「半農・半X」の塩見さんのアイディアを林業にとりいれ、「半林・半X」が説得的でした。佐川町では、林業+チェンソーアート/木工/特殊伐採/町議会議員/鍼師/農家/花火師などが挙げられました。滝川さん自身は、出版社に勤めていた編集者の経験を活かして、たとえばお隣の徳島県の自伐型林業の達人といわれる橋本光治さんの本を編集中ということ。
最後に高島市内の当事者の皆さんのお話も希望がもてました。代表の廣清正直さんは8年前に朽木に住み着き、全く素人で林業にかかわりはじめた、という。奥様の乙葉さんと民宿をしながら自動車整備の資格も活かしているという。山本稔さん、村田秀樹さん、上原巧嗣さんもそれぞれの職業経験を活かしながら、家の継承、あるいは地域のつなぎ役を目指してくれています。
長浜市やお隣の福井県からも熱心な参加者があり、会場は140名をこえる人であふれていました。福井の風土舎の皆さん、ありがとうございました。とくに若い人、女性が多かったのも心強いです。
振り返ると、風力発電事業の進行に危機感をもった人たちが、2年前の8月4日・5日の豪雨でずたずたにされた源流森林部の破壊に直面しての危機感が共通体験としてあるようです。災害は来てほしくないですが、逆に災害が目にみえるからこそ、当事者意識が育っていく・・・日本は古来から国際的にみても災害が多い国です。それだけに先人たちはそれぞれの災害に直面して、今まで森や水田、村や町を守る知恵と工夫を生み出してきてくれたのだ、と改めて「災害歴史学」の重要性を教えてもらいました。
主催者の「高島の森―未来につなぐ山守を考える会」の皆さん、サポートしてくれた高島市の行政担当の皆さん、ありがとうございました。