Facebook 2024年4月30日 東京の草月ホールで『別日本があったっていい』という400頁を超える書籍が完成し、そのお披露目がありました。

松岡 正剛(まつおかせいごう)さんは、古今東西の書籍や歴史・文化を「編集する」という「語り」の概念で社会を解釈し、社会的発信をなさってこられました。今年80歳。近年ガンをわずらう中で、自分の人生の原点をたどったらそこは近江だったという。ご自身は京都生まれだけど、お父さんが長浜出身、最初に泳ぎをしたのは近江舞子であり、「私の記憶の最初の印画紙には、長浜の醬油屋の庭先、江若鉄道のレールの光、…瀬田川で食べた蜆の味噌汁・・・」と松岡さんらしい感性でその思い出が語られます。そして改めて近江の奥深さに目を向けてくださいました。その松岡さんが中心となって「世界の語り方を近江から変えてみる」という決意のもと、「近江ARS」(Another Real Style)いう地域毎の「個性をさがす」「別の日本発見」プロジェクトを2017年に構想開始。2021年の12月にはびわ湖ホールでキックオフイベント。昨日2024年4月29日には、東京の草月ホールで『別日本があったっていい』という400頁を超える書籍が完成し、そのお披露目がありました。私自身、2021年12月のびわ湖ホールのキックオフイベントに参加をし、その後の発展を期待していたので、東京でのイベントはまる半日どっぷり堪能させていただきました。草月ホールには滋賀県では出会うことのない、私が顔を知らない若い人たちが溢れていました。「近江語り」というきわめてローカルな話題に関心をもつ若い人が東京界隈にはこんなにたくさんおられるのだ、と驚くと同時に力強く思いました。4月30日。できるだけ短くと思いながら、スミマセン2000文字をこえてしまいました(微笑)。
松岡さんにこのテーマを呼びかけたのは、中山倉庫社長の中山雅文さん、2017年ということ。その後松岡事務所の和泉佳奈子さんと中山さんがエディトリアルシートをつくり、近江の歴史・文化の基底にある仏教への関心から三井寺の福家俊彦長吏さんに呼びかけたということ。2019年9月の最初の出会いで8時間もの対話が展開。松岡さんは「近江チーム」の立ち上げを提案。叶匠寿庵社長の芝田冬樹さん、金子博美さん、村木康弘さん、横谷賢一郎さん、三宅貴江さん、加藤賢治さん、中村裕一郎さんたちが参加。2020年には三井寺や石山寺の建物、歴史、比叡山の延暦寺訪問などをへて「いのりとみのり」「漂白と定住」「まねびとまなび」をめぐってグループ対話が進む。石山寺では鷲尾龍華さんが参加。2021年には湖北長浜の観音ガール対馬佳菜子さん、富田酒造の富田泰伸さん、絹の琴糸製造の橋本英宗さん、長浜まちづくりの竹村光雄さん、という長浜組が結成・参加。
2021年には専門家をまじえての「百閒サロン」を複数会開催。どんなテーマでもたくさんの「間」がある。そこに対話をかさね、組み合わせ、近江一体の新しい関係線をつくるという。歴史家の熊倉功夫さん、陶芸家の楽直人さん、三味線奏者の本郷秀太さん、建築家の隈研吾さん、歴史家の田中優子さん、芸術家の森村泰伸さん、茶道家の小堀宗実さん、舞踊家の森山未来さんなどとつないでいく。そしていよいよびわ湖ホールでのキックオフイベント、大ホールが満席になるほどの盛況でした。
2022年には仏教学者の末木文美士と日本仏教を語る会「環生の会」をたちあげ、全8回シリーズを開催。今回の書籍『別日本があったっていい』の柱となっています。また隈研吾さんとの近江めぐりでは大津プリンスホテルの最上階から大津市内をながめ、「ハイカルチャーとローカルチャーがこんなに混ざっているところはほかにない」と隈さんからの感想を引き出します。また世話役に元琵琶湖汽船社長の川戸良幸さんがはいっていることで湖上からのびわ湖ツアーも実現できています。そしてシンボルは「いないいないばぁ」という意味を埋め込んだ黒い雲のもよう。「見えない地域を見えるように!」わかりやすい「つかみの概念です」。
4月29日の草月ホールでは、午後1時すぎから7時近くまで、これまでの7年あまりにわたる近江地元での世話役と、松岡さんがつないできた全国からの専門家のつぎつぎと展開する語り。そこに琴や歌のパーフォーマンス、また会場まわりでの、叶匠寿庵さん特製の「黒い雲模様」をイメージした和菓子や三井寺さんのお茶、富田酒造さんの甘酒など、おもてなし精神いっぱいの企画でした。松岡さんは午後いっぱい舞台上で、また舞台まわりで行方を見守りながらMCとしても発言・・・さぞかしお疲れではなかったかと心配です。
松岡さんの今回の企て、歴史と文化では申し分ない近江の発掘をしてくださっています。ここにまさに琵琶湖博物館づくりで1980年代から「近江を編集・企画・発信」してきた私の立場から新規に提案をしたくなりました。「琵琶湖は日本のウツワだ」と言ってくれたその琵琶湖を縦に発掘。①琵琶湖の大地と水の成り立ち、生き物進化の数百万年の歴史、②縄文弥生時代からの数万年の自然と暮らしの歴史、そして③琵琶湖の生物多様性と今の暮らしと未来の環境保全につながる可能性について提案したくなりました。まとめてみます。
松岡正剛事務所の皆さん、特にプロデュースの和泉佳奈子さんの貢献は大きいようです。また地元の賛同者の皆さん、池田典子さんお菓子のおもてなしありがとうございました。このあとも「近江ARS」の展開、期待しています。
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