Facebook 2024年4月22日 滋賀県立美術館で「つくる冒険―日本のアール・ブリュット45人―たとえば「も」を何百回と書く」の展示会を訪問。

4月19日、滋賀県立美術館で「つくる冒険―日本のアール・ブリュット45人―たとえば「も」を何百回と書く」の展示会を訪問。2010年、滋賀県知事時代にパリ市立美術館で大好評をえた「ジャポネ展」45人の作品群に14年ぶりに再会し、感動の時間でした。当時、アール・ブリュット(生の芸術)は、日本の美術界では展示するべき価値があるとは評価されず、専門家からも無視されていました。その作品群がこうして県立美術館の企画展示として、堂々と正式展示会ができたこと、日本の公立美術館でアール・ブリュット作品の本格的収集と展示を滋賀県立美術館が挑戦してくれたこと、とってもうれしく思います。感無量の展示会です。滋賀県立美術館での展示会は6月23日までの長丁場です。遠方の方も連休などを利用して、滋賀県立美術館へどうぞおこしください。きっと「芸術とは?つくる冒険とは?つくる意欲とは?生きる力とは?障害とは?」と人間としての本質的な問いや思いにひたっていただけると思います。4月21日。また長いです。個人的な思い出日記のようなものですが、もし興味がありましたらお目を通してください。2000文字。
2006年に私自身が滋賀県知事選挙に挑戦をしたひとつのねらいは、「滋賀のチカラの発掘・発信」でした。埼玉県生まれのよそ者として滋賀県の地域社会、歴史、環境、文化などを1970年代以降実地に学び、その奥深さに感動し、1990年代には琵琶湖博物館の企画・展示・建設を仲間といっしょに行いました。しかしいつになっても地元滋賀県では「滋賀には何もない」と言われる人が多い。謙虚な奥ゆかしさなのか、それとも本当に何もないと思っているのか?潜在的な滋賀の「地と知のチカラ」を発掘して自覚・発信できるようにしたい。琵琶湖についてはすでに琵琶湖博物館の存在が大きな発信場所でした。
実は滋賀県の障がい者福祉は、全国的にも先駆的な活動が、昭和20年代以降、糸賀一雄さん、池田太郎さん、田村一二さんが「近江学園」「信楽青年寮」「びわこ学園」などを中心に蓄積されていました。信楽焼の芸術活動なども多く含まれていました。中でも信楽青年寮や滋賀県社会福祉事業団の中心となって障がい者アートを発掘・発信してきたのは北岡賢剛さんでした。北岡さんは、「障がいのある人の新たな自己実現の手立てや立つ瀬」としてアール・ブリュット作品を発掘し、映像をつくり展示会を行い発信していました。そして自らそれらの作品のいくつかをかかえて、スイスのアール・ブリュット美術館にもちこみ、それをきっかけにして2008年には「アール・ブリュットJapon展」がスイスで実現しました。そのスイス展示会をみたパリ市立美術館館長のリュザルディ館長が直接日本にこられ、日本各地の数千点の作品の中から63名800点の作品を選び、2010年にパリ市立美術館での展示が実現しました。
2010年の10月中旬、知事の激務の中で1週間だけ時間をいただき、スイスとパリにでかけました。パリ、モンマルトルの丘の上にたつパリ市立美術館の入口には滋賀県のトゲトゲ造形で迫力ある澤田真一さんの作品がイントロとなっている。内部の展示の配置や分類も見事だが、それ以上に作品を食い入るように見つめるフランス人の来館者の姿が感動的でした。若い美術志望の学生さん数名にインタビュー。くちぐちに「すばらしい!」「想像つかないかたちと色」「刺激的」など、絶賛でした。中でも澤田真一さんのトゲトゲ作品とすずきまりえさんの女性性器をモチーフとした点画は人気が高かったです。
もともと半年の予定ではじまった企画でしたが、高い人気におされ半年延長。リュザルディ館長もとても喜んでいました。モンマルトルの丘を降りて歩く、その場で私は思わず北岡さんと握手して「よくやってくれた!」と喜びあいました。思わず涙があふれました。藤本武志秘書課長もいっしょでした。さてこの反応と実績を滋賀県としてどう活かすか。議論をしていたら、パリ近郊のリール市現代美術館がアール・ブリュット作品をその9月に受け入れて評判がいいという。パリから列車で1時間あまり。すぐに予定変更してリールへ!
翌日リール市現代美術館へ。そこで確認したのは、ピカソなどの現代美術館がアロイーズやヘンリー・ダーガーなどのアール・ブリュット作品を受け入れ、いろいろ迷いはあったが、結果は評価が高いという担当学芸員の言葉。リール市美術館のその経緯を書いた英文冊子を入手。かなり分厚い冊子でしたが帰りの飛行機でじっくり読みこみました。そして「滋賀県立近代美術館でも、アール・ブリュット作品の受け入れに挑戦しよう!」と決意。帰国してすぐに文化政策と福祉政策をつなぐ重点施策としてアール・ブリュットを滋賀県立近代美術館が30周年をむかえる企画として検討する準備をはじめました。2010年の11月でした。「美の滋賀発信」プロジェクトの発足でした。
その後、2014年に私自身知事を引退して三日月大造知事にバトンを渡し、三日月知事や担当の皆さんがずいぶんご苦労なさったと思いますが、こうして、全国の公立美術館の中でも、福祉と美術をつなぐアール・ブリュット展示の核がみえてきたこと、うれしく思います。関係者の皆さんに深く感謝します。
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