Facebook 2016年11月17日

「近江の湖は海ならず,天台薬師の池ぞかし」と,平安時代末期の『梁塵秘抄』にうたわれた琵琶湖。比叡山のご本尊の薬師如来は、東方浄瑠璃世界の教主と言われ、早朝、琵琶湖から上がるご来光の瑠璃光を受け、衆生を救うそのお力を高めるという。伝教大師の荘大な歴史的企てを、加藤登紀子さんと追体験させていただきました。11月15日。(また長いです^_^)。

「琵琶湖周航の歌」が1917年6月28日に琵琶湖畔の今津で生まれて2017年の来年は100周年。1971年以来、この歌を広めてくださった加藤登紀子さんご自身がプロデュース・出演する企画の「水の音楽祭」をまさに100周年の2017年6月末に開催しようと企画を始めています。

その打ち合わせを兼ねて、登紀子さんが、「比叡山から早朝の琵琶湖を見てみたい」ということで、14日の「十六夜スーパームーン」と、15日早朝の「琵琶湖水面に輝く瑠璃光のご来光」を拝ませていただこうと合流させていただきました。スーパームーンは、厚い雲間での微かな光しかのぞめませんでしたが、15日早朝のご来光は見事でした!

早朝6時前、まだ夜景が残る中に一筋の朝焼けが浮かびはじめる。手前の琵琶湖は鏡のごとく静かににぶく輝く。対岸の草津市の志那の平湖あたりの上空から、キラっと朝日が顔を出す。一刻一刻、灰色の雲を赤く染めながら、お日さまがあがってくる。じっとじっと見つめ続けて10分ほど。

6時32分。お日さまが鈴鹿の山の上にあがると、琵琶湖面をまさに瑠璃光に照らし出す。この琵琶湖水面に反射する光こそ東方の水の教主・薬師如来の力の源泉、伝教大師が求めた光だったのだろう。言葉にならず、ただただ、染まりゆく湖面と染まりゆく天空を拝み続ける・・・・。

瑠璃光のご来光を存分に受け止めさせていただいた後、朝のお勤めがなされる「根本中堂」でご本尊のお参りをさせていただく。初冬のひんやりとした朝の「冷気」はまさに「霊気」!千年の法灯に照らしだされるはずのご本尊は秘仏で、御隠れになっている。厨子のむこうに、ご本尊のお姿を想像し、お参りをさせていただく。孫たちの暮らしの安寧をねがうお守りを求める。

根本中堂の外に出ると、日があがり、紅葉を染め抜くお日さまは、杉木立の間に、差し込むような反射光を照らす。手水で手口をすすぎ清め、鐘をつかせていただく。鐘の付き口にも「瑠璃光」の文字。天につきさす巨木の杉、朽ちゆく巨木の中から新たな命が育つ、まさに万葉集に歌われる山神をまつるための「とぶさ」の力を想像する。色づいたもみじの透明感を楽しみ、代々皇室の皆さまのご滞在の建物である「書院」の庭を訪問。

「今上両陛下行幸啓御座所」の石柱。平成十九年(二〇〇七年)十一月十三日の記録。そう思いおこします。「豊かな海づくり大会」の折、三泊四日の湖国ご行幸に、知事として全行程を同行させていただきました。その情景を思いおこし、心が熱くなる。皇后さまは、「宝物殿」の「千手観音」さまのお前で、じっとたたずまれ、祈りをささげておられました。

琵琶湖のヨシ笛をご所望下さったのもこの場でした。近江八幡の菊井さんお手製のヨシ笛を二本、後ほどお送りいたしました。「ヨシ笛を練習をして、琵琶湖周航の歌を奏でられるようになりました」とご報告を後ほどいただきました。天皇・皇后両陛下さまが、仲むつまじく、ヨシ笛で琵琶湖周航の歌を奏でておられるお姿を想像し、心あつくなりました。まさに、水を命を、そして自然を愛して下さる両陛下のお健やかなることお祈りいたしました。平成十九年(二〇〇七年)の出来事でした。

先頭に戻る