Facebook 2024年2月2日 2024年1月30日に民法改正の要綱案が提示されました。

2021年2月に、当時の上川陽子法務大臣が「離婚後の子どもの養育のあり方」を法制審議会に諮問をしました。3年に及ぶ37回の会議を終えて、ようやく2024年1月30日に民法改正の要綱案が提示されました。関係者の皆さんのご尽力に感謝します。今年の通常国会中に法務省から民法改正案がだされるということですが、長い時間をかけて議論をしてきた割には、立法の効果がどこまででるのか、ほとんど見えません。共同親権はDVが続くから危険という論調ばかりが強いです。立法の効果とは、親の離婚で貧困や精神的困難に直面させられる子どもの状態をどこまで改善できるか、子どもの不安をどこまで解消できるか、その効果が見えるようにするべきです。しかしそのような内容になっていません。残念です。できるだけわかりやすく解説させてください。2月1日。長いです、すみません(2000文字)。
今、日本では毎年約20万人もの子どもが親の離婚に直面し、そのうち多くの子どもたちが、経済的支援や精神的支援をえられず、貧困や暮らしの困難に直面させられています。毎年80万人以下しか生まれないこどもです。単純計算ですが、クラスの中の子どものうち4人に1人が親の離婚に直面していることになります。離婚後の子どもは統計的にみても貧困に陥る率や虐待に合わされるリスクが高まっています。
なぜなのか?子どもが困難に直面させられる要因の一つが、離婚後の「単独親権制度」にあることを滋賀県知事時代に発見しました。子どもの貧困率はひとり親では50%をこえており、二人親の6%と比べると、8倍ほどになります。親からの虐待を受けるリスク(極端な場合には障害や死に至らされる)も一人親では二人親とくらべ圧倒的に高くなっています。私自身、アメリカやヨーロッパの家族制度も実地に勉強してきましたが先進国はどこも離婚後も「共同養育•共同親権」が多く、離婚後も両親が協力をして経済的、精神的に子どもを支えていくのが一般です。それを国家として家族法で担保している国が圧倒的に多いです。
ところが日本の場合、130年前の明治民法で決められたままの単独親権で、親は子どもの養育費や親子交流の約束もなく、親の都合だけでハンコひとつで離婚ができます。協議離婚です。今の日本では9割が協議離婚です。かつては家制度を守るために跡取りの確保が必要で、親権は父親以外もてませんでした。戦後の憲法改正で男女同権となり、女性が親権をとれるようになりましたが、戦後の都市化とサラリーマン化で、「仕事は男、子育ては女」という男女役割分担意識が強まり、昭和36年以降は、離婚後の単独親権をとるのは女性が多くなり、今は離婚後の親権の9割以上が女性に担われています。
しかも単独親権ということは、親権のない親(多くの場合父親)は、「あなたは親ではありません」ということになり、離婚後に養育費を子どもに払うという義務もなく、養育費を受け取る一人親は4人に1人しかありません。また離婚後は、親権のない親は子どもに会うこともできず、親子分離が強要されてしまいます。子どもと会えずに悲しみ、苦しむ父や母、また祖父母も多いです。
子どもの貧困や精神的不安、親との別離状態を少しでも改善したい、と離婚後も婚姻中と同じような「共同親権」を継続できるように民法をかえてほしい、と参議院法務委員会を中心に問題提起をして、2019年11月の法務委員会以来4年間で48回の質問をしてきました。その一番のポイントは、離婚時に「共同養育計画」を作ることを義務づけ、養育費の支払いや親子交流の具体的内容を文書として残し、法的に履行がされるような「公正証書化」です。
離婚に直面をした父と母ではそんな話しあいは無理だ、という意見も多いです。当然です。それゆえ、養育計画づくりを支援できるような予算措置も公的につくり、弁護士などの相談サポート体制をつくります。介護事業に「ケアマネ」というサポート体制がありますが、子育てや家族生活に関する「家族ケアマネ」のような制度をつくる必要もあります。
「共同養育計画づくり」が共同親権の肝なのですが、今回の要綱では完全に無視されています。何のための法政審議会だったのか、まったくわかりません。国費の無駄遣いです。今後法務省がだしてくる法案審議では、立法府として、このことを私たちは主張し続けます。離婚後の子どもの最善の利益がここにあるからです。
新聞記事を見てください。見出しは「共同親権 離婚後に選択可」「今国会に改正案」「対立時は家裁判断」「DV発覚なら単独に変更も」「父母合意で選択可能」「両親で子の成長守る制度に」「重要事項で争い多発の恐れ」「養育に責任」「DV続く」「要綱案に賛否」「共同親権強行しないで」「共同親権は現実離れ」「反対委員が会見」・・・。
24名の委員の中で3人の委員が反対し、そのうちふたりが記者会見しています。一人親支援のNPO代表と、ジェンダー学の法律学者です。女性に寄り添うはずの活動家や研究者がなぜ、一人親の子どもたちの経済的、精神的困難をサポートする制度づくりに反対するのか、残念ながらよくわかりません。
もちろん、DVにより苦しんでいる母(あるいは父)がいるでしょう。その場合には、裁判所などの判断で親権停止をできる仕組みを発動させたらいいのです。今の民法でも親権停止の条項はあり、発動もされています。「DVが継続するから共同親権は危険」という意見がなぜこんなに強いのか?マスコミの論調もその面が強いです。
皆さん、身近なところでの離婚のケースでDVばかりでしょうか?離婚原因は多様ですが、DVを主な理由で離婚をきめるケースは数パーセントです。長くなりました。もしよければご意見聞かせてください。
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