Facebook 2023年11月20日 11月18日、19日と二日間、「大戸川ダム問題の土砂堆積問題を考えるー最上小国川の穴あきダムから学ぶ」

11月18日、19日と二日間、「大戸川ダム問題の土砂堆積問題を考えるー最上小国川の穴あきダムから学ぶ」として、18日は大津市瀬田川洗堰から大戸川ダム建設予定地を経て、信楽町から大戸川を最上部までたどり、多羅尾地区で今から70年前の昭和23年8月15日の44名の死者をだした山津波水害の被害者の経験を聴かせていただきました。竜谷大学里山研究所の皆さんや旧琵琶湖博物館メンバーなど多様な方が参加下さいました。水害被害の皆さんの経験話には、大変な被害場面ばかりで今でも胸がつまります・・・。また長いです(2500文字)。写真も多いです。もしよかったらおつきあいください。
11月19日は、9月に訪問した「山形県最上小国ダムの穴あきダムの土砂堆積問題」を川辺孝幸さん(山形大学名誉教授)、「穴あき小国川ダムに潜ってみました」と岸野底さん(アユ研究者)、「流水型ダムに関する覚書」と大熊孝さん(新潟大学名誉教授)、「大戸川復活の論拠を突く」と今本博健さん(京都大学名誉教授)の皆さんが熱のこもった講演をしてくださいました。そして全体議論では、元国土交通省の宮本博司さん等をまじえて、「学者のデータを行政や政治とどうつなぐのか?」とかなり切実な議論となりました。
70年前の多羅尾水害での44名の水害被害者については、大戸川ダム建設の理由のひとつとしてしばしば語られます。2001年に始まった淀川水系流域委員会で国土交通省がその説明をしていたので、私自身、国土交通省がいかに現場をみていないか、大変驚き委員として、多羅尾水害は大戸川ダムでは防げないと修正をお願いしました。最上流部の山津波による水害を中流部のダム建設で防ぐことはできません。当たり前のことですが、しかしいまだに時々マスコミ報道などが同じことを伝えています。
2003年に私たちが多羅尾で聴き取りをした時は悲惨な状況ばかりが記憶に残っていました。しかし今回、改めて地質構造など、崩壊しやすい大地との意味がみえてきました。周囲の山は炭焼きなどで広葉樹が多く、また燃料の芝刈りにも利用され、いわば人の手入れが行き届いた里山であったこともわかりました。それでも、まさに木々が立ったままカーペットのように流れ落ちてきたということ。この年は6月の梅雨頃から雨が多かった、ということで、水分をたくさん含んだ花崗岩質の風化したまさ土の表土が、400ミリを超える豪雨で山ごと流されてきたことが改めて確認されました。水害時の写真に山がそのまま崩れていることが分かってもらえると思います。
19日の研究会の最後に、竜谷大学の中川晃成さんが、「多羅尾集落の山津波による土砂崩壊は、まさに大戸川ダムが建設されたら予想される土砂堆砂問題を暗示しているのではないか」と指摘してくださいました。そうなのです。この、大戸川流域は、まさに数百万年の古琵琶湖層群の歴史とともに、風化した花崗岩質の大地の成り立ちを反映して、河川政策をつみあげるべきと思います。地域環境のアセスは数百万年という地質、地層の影響、そして植生や生態系などの数万年の歴史、そして今の歴史、多重に蓄積された大地の歴史への綱領が必要です。今後の大戸川ダムの環境アセスに強く申し上げたいと思います。
11月19日 の竜谷大学での勉強会、最初の川辺さんの小国川ダム報告は、前例が少ない日本の穴あきダム環境影響について大変貴重なものです。川辺さんは、砂、石、泥のうち何が一番河川に堆積しやすいのかという問いに対してその答えは、泥が一番堆積しやすい、ということでした。泥はシルトとなってシートを作って堆積して河川でのアユや生物の生息状況に影響を与えやすいという。小国川ダムの場合、ダムができる前の河川の濁水回復のデータが全くない、今後の穴あきダムについては、事前のデータづくりをしてほしい、というアドバイスは大戸川ダムや川辺川ダムの今後のアセスメントに重要な項目と思います。
大熊さんの指摘は、小国川ダム、大戸川ダム、川辺川ダムの堆砂容量が、全体容量の1%だったり10%だったり、その触れ幅の広さは、国土交通省としても説明すべきと言っています。私の方は、国会議員として、国の国土交通委員会として、堆砂容量をきめる基本的な科学的データの判断基準を質問します、とお約束をしました。
今本さんの、「大戸川復活の論拠を突く」の発表は、これまでの今本さんの研究者人生、淀川水系流域委員会での委員長としての経験をふまえた、まさに総括的な発表でした。感動しました。その一番のポイントは、国土交通省の計画論は現場の川の流れ、川の状態を無視した「全くの机上のフィクション」という言葉でした。
たとえば、大戸川ダムができたら大阪府域で10兆円の被害が防げる、京都府域で3兆円の被害が防げるというのは机上のフィクションである。実態に対す対策なしに、机上のフィクションで大戸川ダムの必要性を主張する国土交通省の論理展開への疑問がはっきりしめされていました。国土交通省の官僚の皆さんに伝えたい内容です。ここは国会議員として、国土交通委員会などで堂々と糺していきたいと思います。
淀川水系流域委員会の設置を国の機関としてきめた宮本博司さんが、発言なさました。なぜ今こんな勉強会が必要なのか?国土交通省の役人は、今さらダムの必要性など、ひっくり返す力はもっていない。それでは政治の力としてできるのか、2009年の政権交代時に民主党政権時にダム建設を批判した人が、ダム推進に行ってしまった。ここは大変重たい問題だ。嘉田さんが「政治の力で変えられる」と言っているが本当に変えられるのか? 政権交代できるか? 河川のあり方、おかしいと勉強している人がどれだけいるのか?という問提起をいただきました。
嘉田由紀子としては、今日の宮本さんの質問に、今日はフルには応えられませんしたが、これからの嘉田由紀子の政治的活動をみてください、とお応えました。
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