Facebook 2023年9月29日 「水俣病の救済漏れ」原告の訴え128名全員の訴えを認める判決を大阪地裁(遠野ゆき裁判長)が決定。

2023年9月27日、「水俣病の救済漏れ」原告の訴え128名全員の訴えを認める判決を大阪地裁(遠野ゆき裁判長)が決定。国などに賠償命令をだした「画期的判決」です。昭和20年代から30年代に、チッソ水俣工場から排出されたメチル水銀で汚染された魚類を食した人びとの生活地域や時代について、これまで制限をくわえていた認定基準を覆し、水俣病の認定基準をひろげたことになります。不知火湾の中を魚は自由に泳ぎまわります。また水俣市に隣接する芦北町や人吉市まで、水俣の魚は行商人の肩にかつがれ、貴重なたんぱく減として山中深く運ばれていました。私自身も芦北町などで直接聞き取りをしたこともあります。魚も人も移動します。これまでの裁判官が認める範囲にはとどまっていませんでした。ちなみに不知火湾のサイズはほぼ琵琶湖と同じです。想像ください!9月28日。(また長いです。1800文字です)。
水俣病の歴史は、チッソ水俣工場からのメチル水銀汚染水の排出責任とその水銀を体に溜め込んだ魚類の水銀濃度と、汚染された魚を食した住民の神経系被害、それぞれの出来事間の因果関係を証明する科学・疫学論争であり、その責任回避を求める加害企業チッソとその後ろ盾となってきた自民党政権与党の隠蔽体質という政治問題がからみ、極めて複雑な様相となってきました。本来、食中毒問題であったのが、チッソ企業とそれを支える熊本県や日本国の政治的権力の中で、巨大な差別構造を内在した公害問題になってしまいました。
私自身が、1990年代から水俣病の被害者の直接聞き取りに、熊本県水俣市とその周辺だけでなく、新潟水俣病の被害者の魚食慣習のききとりをへて、患者さんの生活実態を考慮して、「水銀汚染された魚食実態に即した水俣病の発症する合理性」を認めるべきと判断していました。そのような被害生活者目線に寄り添った、大阪地裁の遠野ゆき裁判長の判断に敬意を表します。
遠野ゆき裁判長は、これまでの水俣病裁判としては異例で、不知火湾にまで現地調査に出たということです(現場を見るのは当然とフィールドワーカーの私は思いますが)。現場見ずに判断をしてきたこれまでの裁判長の姿勢も疑問ですが、不知火湾のサイズはちょうど琵琶湖と同じです。40年以上琵琶湖研究をしてきた私自身、湖西で汚染された魚が湖東や湖南にはいかない、などと到底想像できません。遠野裁判長の現場主義には敬意を評します。ただ遠野裁判長は今後の自らの出世の道をとざしたことになるかもしれません。
というのは、一般論ですが、日本の裁判官(総勢3500人)の人事はすべて最高裁判所の事務総局が握っていて、政権与党の判断に反する判決をだした裁判長は、自らの出世の道をとざしたことになりかねません。今後、東京、新潟、熊本の地方裁判所でも一連の裁判の判決がだされる予定です。それぞれの地方裁判所での裁判官の判断がどうなるか、そこを今後は注視していきたいと思います。裁判官も人間です。皆さん、それぞれの地方裁判所の裁判官を応援しましょう!
そして、今回の大阪地裁の判決を不服として、政府が今後上訴をして、最高裁まで判断がのばされるかもしれません。最高裁までのばされると、残念ながら日本の司法は「三権分立度」が低いので、政権中枢からの影響により逆転敗訴となる可能性が高いです。
私自身2019年に国会に送り込んでいただき、法務委員会で48回質問を重ねてきました。その途中で見えてきたのは法務官僚やそのバックにいる最高裁判所の事務総局(裁判官の人事判断中枢)の政権与党へのすりより姿勢の強さと、前例踏襲主義です。この点については、また次回展開させてください。問題は判事が検事になって裁判官が霞ヶ関に出向する「判検交流」という人事制度です。
健康被害に苦しむ患者の皆さんをこれ以上おいこんでほしくないと切に願います。皆さん、すでに高齢化しておられます。生きている間に救済の手をさしのべてほしいです。今度の臨時国会の予算委員会などで環境問題の解決を求める国会議員として、質問したいと思います。
9月28日の主要新聞での扱いをチェックしました。扱いの濃淡は3種類みえました。朝日新聞、毎日新聞は一面見出し横抜き3分の2、京都新聞(共同通信配信)、読売新聞、産経新聞は一面縦書き半分、そして日経新聞は一面で扱わず、環境被害問題に対するそれぞれの新聞社の姿勢がここに現れているようです。マスコミ報道も冷静に、客観化しましょう!
患者がますます高齢化するなかでの司法判断は大変重要で、水俣現地を何度も訪問し、被害者の聞き取りをしてきた私自身も納得できる妥当な地裁判断と思います。
(後ろの二枚の写真は2020年の、水俣での「命をつなぐ政治をもとめて」という講演会の様子です。
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