Facebook 2023年9月18日 「山形県最上小国川ダム、穴あきダム訪問調査報告」(その2)「アユの生態系への影響」

「山形県最上小国川ダム、穴あきダム訪問調査報告」(その2)「アユの生態系への影響」、9月18日。(長いです、1500文字です)
小国川は、日本海から最上川を経て小国川に到達する天然アユの遡上の多さに加え、人工産アユの放流も行っていることから、全国でも有数のアユ漁場となっており、県内外から年間3万人もの遊漁者が訪れています。私たちが訪問した9月14日も宮城県から来ているというアユ遊漁者に出逢いました。アユ遊漁者による地元経済への貢献は年間約22億円という研究もあります。さらに、小国川を含め支流の上流域にはヤマメ、イワナなどの好漁場があり県内外から多くの釣り人が訪れています。赤倉温泉や瀬見温泉などの誘客も釣り人が多くをしめています。
もし小国川ダムによりアユ資源に影響があると地域経済的にも大きな問題です。ダム建設への最大の反対は小国川漁業協同組合でした。そこで2009年から「最上小国川流域環境保全協議会」が設置され、2023年まで21回の会議がなされ、結果は山形県のHPで公表されています。メンバーは、鳥類や魚類などの学識経験者、地域代表者、行政関係者で、2023年は合計13名です。
先日の9月13日の現地調査時の山形県河川部局への聴き取りでは、「ダム建設による河川環境や水質、生態系への影響はほとんどない」ということでした。「最上小国川流域環境保全協議会」の各年度の公開資料をみて、「影響はほとんどない」という結論を出すにはまだまだデータが不足していると思いました。ポイントは2点です。
ダム建設前後での時系列的に比較可能なデータ取得ができていないということです。「ダム供用前後のモニタリング結果の総括」(平成10年―令和4年)をみると調査項目が工事前、工事期間中、ダム供用後と時系列的にみて系統的に企画されていないので、ダム建設前後の比較がそもそも不可能です。たとえばアユの生息条件調査で最も大切なアユのはみ跡調査は平成19,20,21年の3年しかとっておりません。またアユの餌となる付着藻類データは平成15年と平成19年以降令和4年まで継続的にとられていますが、平成27-令和元年は早瀬と平瀬の二か所で6月と10月の2季節でなされていますが、令和2-4年は早瀬だけで6月だけで、全体比較ができません。
二点目は調査対象項目の問題です。アユの生息条件で最も重要な要素である河床状況調査は、平成25年以降令和4年までありますが、「浮石」か「はまり石」か「砂」かの分類はなされていますが、石の大きさデータがなく、アユ研究者は30センチ以上の石の数を把握するべしと言います。つまり「石のサイズ」が重要です。またダム建設後、数年以上、10年20年と継続的モニタリングが必要で、ダム供用後3年で、「影響は軽微」と結論づけるのは時期尚早ではないでしょうか。
日本中の川を調査し回っているアユ研究者の高橋勇夫さんは、『最上小国川ダム建設差し止め住民訴訟の記録』(2021年)の中で、「私は強固なダム反対論者ではなく、ダムのある川でアユ資源を保全することを主な仕事としている」「ここまで首をかしげるような検討がなされている事例を知らない。山形県の言う「アユへの影響は軽微」という結論は相当にゆがんだ検討結果となっている可能性を秘めている」(同上報告書、91頁)。
小国川漁協との過去のダム問題をめぐる経緯をみると、「影響は軽微」と言わざるを得ない山形県の立場があるのかもしれませんが、「自然界の真実」をまげてまで行政がメンツを保つことは地域の自然資源の持続的保全にはマイナスです。惜しいことです。もったいないことです。専門家の意見に耳をかたむけ今後の調査項目の改善に役立ててほしいものです。
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