令和五年六月九日(金曜日)
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
本日、この質問の場をいただきまして、ありがとうございます。
今回の六月二日からの集中豪雨と、それから台風の影響、被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧復興をお祈りしております。
今回のこの被害を見ていますと、先ほど来、足立議員、そして下野議員も言及していられましたけれども、内水氾濫、これまで余り被害がなかったようなところでも意外と広がっていると、特に平野部ですね。それだけに、流域治水という考え方が大事なんだろうと思います。どこで被害が起きるか分からないという状態です。これも足立議員がお詳しいと思いますが、私もずっとこの水害対策をしてまいりまして、かつて水田だったところが住宅開発などされると一気に水が増える、データにもよるんですけど、三倍から五倍水が増えるということで、ただ、住んでいる人は新住民が多いので、意外と無防備なんですね。そういうところで含めて流域治水が必要だと思っております。
そこで、実は、最初に、前回聞き逃してしまった、時間がなくて聞き逃してしまったトイレの問題をお伺いできたらと思います。
先ほど下野議員も、避難所のTKBですね、トイレ、キッチン、ベッド、本当に暮らしを成り立たせる三点だと思いますが、トイレ問題、これは谷大臣も、阪神・淡路大震災の御経験がおありですから、直面なさったと思います。ちょうど私も、当時、滋賀県職員として被災地の支援に入らせていただきました。トイレの廃棄物がまあ積み重なっている状態。そうすると、ついつい水を飲まないようにする、逆に健康問題になるという悪循環に陥ってしまいます。
それで、最近、例えば一般社団法人助けあいジャパンでは、移動設置型トイレトレーラー、みんなが元気になるトイレのプロジェクトなどを始めております。被災者の目線に立った活動をなさっている民間団体、全国各地にありますけれども、この衛生環境を良好に維持するために平時から備えておくことが必要だと思いますが、民間団体の活動支援など、谷大臣のお考えございましたらお聞かせください。お願いします。
○国務大臣(谷公一君) 嘉田議員御指摘のとおり、私も、二十八年前、阪神・淡路大震災の復旧復興に従事しましたが、そのとき、正直な話、水、食料、また避難所、毛布、こういったことが最優先でございました。トイレまでなかなか目配りが私だけではなくて全体として十分できなかった、そして結果的に劣悪な衛生状態になったということは大いに反省しているところであります。
そうしたこと、またその後の様々な災害の教訓を踏まえて、災害時におけるトイレの確保の重要性をしっかり認識し、国においても、災害時におけるトイレの環境が改善されるよう、トイレの確保・管理ガイドラインを二〇一六年、平成二十八年に策定し、令和四年、昨年も改定をいたしました。その中で、平時から携帯トイレや簡易トイレの備蓄、マンホールトイレの整備等を進めるよう促しているところであります。
また、それだけではなくて、先ほど下野委員の質問にもございましたが、特に女性専用のトイレの設置、また安心して活用、利用できるような夜間照明をしっかりするというような、女性の視点に立ったトイレ環境の整備にも最近は意を用いているところであります。
昨年七月にはその全国各地の先進的な取組をまとめた事例集を作成して周知するなど、横展開を図っているところであり、この中には委員御指摘のトイレトレーラーの取組についても紹介しているところであります。
国としても、今までの様々な災害の経験を踏まえて、確かに委員御指摘のようにトイレがないと健康な生活も維持できませんので、引き続き、関係省庁や自治体、また民間団体とも連携をしながら、災害時におけるトイレの確保に関する取組をしっかりと進めてまいりたいと思います。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
今日は、後半、流域治水とグリーンインフラについてより詳しくお伺いしたいと思います。
国土交通省の水管理・国土保全局長の岡村局長様にお越しいただいておりますけれども、今の国土強靱化基本計画では、災害リスク軽減に寄与するための生態系の機能を積極的に保全、再生すると、生態系ネットワークの形成に貢献するという記述がございますけれども、このグリーンインフラの考え方で災害リスクの軽減、具体的にどう寄与するか、御説明いただけますでしょうか。
○大臣政務官(古川康君) お答え申し上げます。
流域治水を進めるに当たって、グリーンインフラの取組がどのように寄与をするのかというお尋ねかと存じます。
この流域治水を推進するに当たりましては、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能な魅力ある国土、都市、地域づくりを進めていくグリーンインフラの概念を取り入れることは極めて重要だと考えています。
例えば、貯留浸透機能を有する都市部の緑地を保全することによりまして、地域に降った雨の河川への流出を抑制する効果が期待できます。また、洪水調節施設である遊水地を整備する際に多様な自然環境をつくり出されることができるように工夫をすることで、治水機能に加えて流域の生態系ネットワークの確保など、グリーンインフラとしての多面的な機能が発揮されることが期待できます。
国土交通省といたしましては、このようなグリーンインフラの取組について、地域と連携をいたしながら流域治水を推進してまいります。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。古川政務官にお詳しく御説明いただきました。
実は、古川政務官の地元の佐賀は、まさに江戸時代、成富兵庫茂安が今私たちが言っている流域治水を実践をしたんですよね。いろいろと私も佐賀県で、古川元知事の時代から学ばせていただいておりますけれども、御丁寧な答弁、ありがとうございます。
そこで、具体的に、私も八年掛けて流域治水の条例作りをしてきたんですが、多重防護、ためて、流して、とどめて、備える、そこのところは一生懸命やりながら、なかなかこのグリーンインフラまで手が回らなかったんですね。それで、今具体的にこのグリーンインフラでうまく生態系ネットワークを活用している事例などが全国にありましたらお教えいただけるでしょうか。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
河川管理者として、流域治水とともに流域の生態系ネットワークの形成に貢献する様々な取組を実施しているところでございます。例えば、兵庫県を流れます円山川では、コウノトリの野生復帰を目指して、例えば河道掘削時に川の中に湿地を形成しながら高水が流れる断面を確保、拡大すると、あるいは湿地機能を有する遊水地の整備を行う、このようなことをしてございます。また、北海道の石狩川におきましては、タンチョウもすめる町づくりを目指して、タンチョウの生息、繁殖場となるような遊水地の整備を行っているということもございます。
引き続き、専門家ですとか地域の方々、あるいは関係機関と連携をして、グリーンインフラの概念も取り入れながら流域治水を推進してまいります。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
コウノトリは、御存じのように、もう福井から、滋賀から、四国の徳島までコウノトリが行っておりまして、私の地元の人でも、コウノトリが来たといって電話で連絡してくれるようなところがございますので、鳥は広がるからいいですね、みんな、地域での関心が高いと思います。
三点目に、具体的に、自然環境の保全、再生で、どういうふうにしたら、結果的には社会の自然再生と、それから地域社会のレジリエンス、再生力を高めることになると思うんですけれども、この生態系機能、なかなか口で言うだけで分かりにくいので、ここを見える化する、可視化する技術、あるいは生態系機能の評価の手法と、これを残してどんな得なことがあるのかと地域で言われるときに、より説明がしやすい、そのような事例などがございましたら教えていただけますか。
○政府参考人(松本啓朗君) お答えいたします。
近年、気候変動に伴う災害の激甚化などに直面している中で、自然を活用した解決策、こうした取組を拡大していくことが重要だと考えておりまして、そのためにも、生物多様性保全機能、そして防災・減災機能、これを併せ持った場所を可視化することによってまた評価する取組、これが大変重要であると考えてございます。
お尋ねのありました可視化方法についてですけれども、有識者による検討を経まして、例えば現地の土地利用の状況、地形、また土壌の質など様々な情報を重ね合わせて、先ほど申し上げた二つの機能を併せ持つ場所を表示した地図、私ども、生態系保全・再生ポテンシャルマップと呼んでいますけれども、そうしたマップを作成いたしました。そして、この活用方策を示した手引書とともに、今年の三月、公表したところでございます。こうしたものを活用しまして、今後、自治体などに対する伴走支援を行ってまいりたいと考えております。
また、生態機能の、生態系機能の評価方法についてですけれども、私どもの、環境研究総合推進費というものを持っていまして、それを通じまして、生態系を活用した防災・減災機能の評価実施方法に関する研究、これを後押ししてございまして、例えば、研究の中では、生物多様性が豊かな谷合いの水田又は湿地のようなところの雨水の貯留機能の高さ、こうしたものがその研究の中で評価されるというような取組が進められているところでございます。
こうした取組をベースに、関係省庁や自治体ともよく連携しながら、地域の自然環境が有する多様な機能、これを生かした防災、減災の取組を推進してまいりたい、このように考えてございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
様々なマップ、オーバーレイをしながら、地元の人たちも何となく気付いているんだけど見える化ができていない、それを地域の人に見せていただくと、見ていただくと、本当にそれぞれ盛り上がっていくと思います。是非とも評価の結果を地域に広げていただけたらと思います。
少し海外の事例をお伺いしたいと思っているんですけれども、二〇〇四年のスマトラ地震のときにインドネシア沿岸部で大変な被害がありましたけど、あのときに、マングローブの林があるところは被害が大変緩和されたということも言われております。それから、二〇一一年の東日本大震災でも沿岸域の松林が津波の力を吸収したというような報告もありまして、これを、昔からの人は役割を知っていた、トラディショナルナレッジ、伝統的な知識と言っていたんですけど、そこを今に合わせて、より、英語で申し訳ないんですけれども、生態系を活用した防災・減災、エコシステム・ベースド・ディザスター・リスク・リダクションということで、海外でも広がりつつあります。
本日はJICAの小野寺理事にお越しいただいておりますので、ちょっと時間が、あっ、確かにあと一分ぐらいしかないので、申し訳ありません、まとめて、JICAの貢献の事例、あるいは課題、そして人材育成など、まとめて御答弁いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
○委員長(三浦信祐君) 時間が来ておりますので、参考人の方は端的に御答弁お願いします。
○参考人(小野寺誠一君) お答え申し上げます。
JICAにおきましては戦略を策定いたしまして、その戦略の中で、森林、土壌劣化対策や、気候変動に起因する自然災害に脆弱な地域に対しまして、先ほど委員が申し上げられましたEco―DRRの導入を取り組むことを定めております。
そういった中で、各地、各地ですね、インドですとか、また西バルカン地域、そういったところでも、現在、技術協力なり植林事業なりを行っているというところでございます。
課題といたしましては、こういった植林を行いました森林、これに対しまして、やはり途上国といたしましては、まきを取るとか、そういった形で短期に伐採するといったようなことがございまして、そういったことに対しまして、地域住民に対しまして、Eco―DRRの重要性なり、そういったことを、知識の普及を図っているところでございます。また、人材育成につきましても、技術協力におきまして、日本人専門家による先方の行政官の人材育成なり、また日本での研修を行って人材育成を取り組んでいるところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
済みません、時間過ぎてしまいました。失礼します。ありがとうございました。