令和五年四月十八日(火曜日)
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本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、富山大学客員教授・京都大学非常勤講師・前富山市長森雅志君、ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長吉田千秋君及び日本大学名誉教授桜井徹君でございます。
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○参考人(森雅志君) おはようございます。
こういう機会をいただきまして、まず冒頭、心からお礼を申し上げます。
富山大学客員教授などと御紹介いただきましたが、私は研究者ではございませんので、富山市長として十九年間、特にLRTを中心とした取組をしてきましたので、現場の実務者としての経験を基にお話をしていきたいというふうに思っております。
最初に、全国の地方都市あちこちで陥りがちなんですが、交通政策と都市政策というのは本来融合されるべきだと思っておりますけれども、しばしば交通担当セクションと都市、まちづくり担当セクションとの意思がなかなかきちっと交換されていないという例を見受けます。ここがすごく大事なポイントだと思っております。
先般、ニュースで知りましたが、北海道の北広島市の新しくできたエスコンフィールドという球場、何か試合が終わって札幌まで行くバスに乗るのに九十分掛かったとか、駐車場から出れなかったということなどもあって新駅を検討するなどという報道を見て、それは最初からやっておけばどうだったのかと、よその都市のことでちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうことがしばしば起きております。
どことは言いにくいんですが、昨年、呼ばれて静岡県のある市に行きましたが、そこへ行くときは東京から新幹線で三島駅に降りなきゃいけないわけですけれども、そこの都市マスタープランを読んでみますと、三島駅との交通アクセスの改善などというのは全く書かれていないんですね。そういう少し俯瞰した視座に立って交通を論ずることが大変大事です。
しかし、なぜそうならないかというと、一つは、明治以来、交通というのは本来民業で、更に単体で採算が合うことを求められ続けてきているわけです。右肩上がりの時代には奇跡的に日本の交通というのはそれでもっていましたけれども、人口減少、さらには様々な社会的要因の変化でもたなくなってきているというのが、もう二十年も前から分かっていたことだと思います。
したがいまして、大事なポイントは、都市政策を中心に考えていく、そして、交通というのは都市政策、まちづくりの重要なツールの一つなんだということにスタンスを置くことが大事だというふうに思っています。こうしないと、公費投入の妥当性をなかなか議論できないということになってきます。
私どもが最初に、JR西日本の富山港線という短い枝線ですが、これを引き受けて富山ライトレールというLRT化を最初にやったときには、まさにドン・キホーテみたいに言われていました。また三セクをつくって赤字の垂れ流しだという批判も大きかったわけです。
そもそも、当時は交通政策基本法もありませんし、地域公共交通活性化法もなかった時代ですので、市費を投入することの妥当性というのは議会で予算を議決してもらったことしか根拠がなかったわけですけれども、今、そういう環境も変わってきました。
今回の改正の中で、まず冒頭に、その共創という言葉などを使いながら、つまり、ステークホルダーがみんな集まっていい方向、最適化というものを模索しようという考え方が示されたことは大変重要な意味があるというふうに思っています。
例えば、先ほど申しました富山ライトレールの事業は総事業費五十八億でしたが、富山駅の連続立体交差事業の支障補償という側面もあって、市の単費の負担は七億円でした。有利な財源を様々に利用することができました。
国の制度として、当時はまち交ですとか今の社会資本整備総合交付金とか、使い勝手のいい制度がたくさんあります。問題は、基礎自治体が思い切って前へ出るかどうかということなんですね。多くの自治体はどうしても腰が引けています。
例えば、その路線を使わない地域に住んでいる市民の理解が得られない、否定的なことを言う方の論拠としてこれがしばしば使われます。僕は、しかし、子供のいない家庭であっても少子化対策に予算を使うことに誰も反対しません。それは社会の宝だからですね。交通というのはまさに公共財だというふうに思います。海の灯台ほどの公共性は強くありませんが、しかし、あえて言えば準公共財なので、なくすと復活はなかなか難しい、将来市民にとっても大切な公共財だというふうに思いますので、公費投入の妥当性ということをしっかり議論していくことが求められてきましたが、地域公共交通活性化法ができて、法定協議会その他、少しずつそのことについて制度が充実してきたと思っておりまして、そういう中で今回の再構築事業化というものは大変意味があると思います。
何となく腰が引いている自治体にとっても、こういったことを根拠に、交通事業者としっかりテーブルに着こうということを後押しできるというふうに思います。その結果どういう結論が出るかはケース・バイ・ケースだろうというふうに思います。しかし、まずテーブルに着くというところから始めないと、持続性というのは出てこないというふうに思っています。今まではそこのところが少し希薄で、何となく前に出にくいというところが多かったですね。
さらに、市町村をまたぐ交通については、それぞれ意見が違うということなどもあります。ですが、近江鉄道の滋賀県知事の三日月さんのおやりになったような例のように、やっぱり県も一緒になって旗を振ることによって、交通事業者と一緒に最適な道というのは探ることができるんだろうというふうに思っております。
その上で、様々な取組をしてきましたけれども、一つは、鶏と卵の議論にどうしてもなっていってしまうんですが、私どもは、思い切って最初に公費投入をする、運行頻度を上げる、あるいは始発も終電も時間を動かす、更に駅舎を直す、様々なことに取り組んできたわけですが、どれもしっかり結果が出ております。これは、二〇〇五年と二〇一八年の私鉄も含む地方鉄軌道の輸送密度の増加率を富山大学の中川先生がお調べいただきましたが、上位二十五の中に富山市が関わった路線が六線入っています。やっぱり手を掛けると人は乗るんですね。
とりわけ高山本線の富山駅と越中八尾に関して、JR西日本さんと協力をしてかなり思い切った増発実験をやりました。五年間の社会実験をやりました。それまでは一日三十四本走っていたものを最大六十本にまで増やしました。この費用は全て富山市が負担しました。五年終わった後、現在、ずっとそれ以降四十一本で抑えていますけれども、平成十七年と比べると三一%利用者が伸びています。六十本、五十九本だった時代から五年だけ増やして、四十一本まで落としたんですけど、利用者はまだ伸びているんです。
したがって、例えば通学に母親に車で送ってもらっていたというような高校生活を送っていた高校生たちが、通学時間帯に何便も出るということになるとやっぱり電車で行こうということに変わってくる。それは高校生自体の生活に変化をもたらしますので、引き継がれていくということだろうと思います。
何よりも、公共交通を使うことに慣れて、東京や都会の人は当たり前のことですけど、地方都市に住んでいる者は一人一台の車で、それもドア・ツー・ドアの暮らしをしていますから、いろんなことで仕掛けて、公共交通を使うことの心地よさとか、例えば飲食を伴うときに便利だとか、コンサートへ行くときにはマイカーで行くよりも公共交通で行くことによって幕間でワインも楽しめるとか、そういう生活の質を上げる大変大事なツールだと位置付けることが大事です。
あちこちで、交通への支援というのは赤字補填だと、後ろ向きの支援という発想ばっかりが議論されていますけれども、もっと積極的に、ポジティブに社会資本の質を上げるために公費投入するという論理でこの交通への公費投入を議論していくことが大事だろうというふうに思っております。全国に、あちこちに、質を上げると利用者がそのまま推移する、あるいは増えるという実例、事例は幾つもあるわけですので、後ろ向きな議論ばっかりに終始しないで、思い切ってまずは前に出てみるということを各自治体が思い切ってやれるような環境づくりをしてもらうことが大事だというふうに思っています。
そういう意味で、今の改正に伴って社会資本整備総合交付金についても新しい制度をつくってもらったり、使い勝手のいいものとなってきたように思っております。予算の限度があるんだろうと思いますけど、やっぱりこれ、先ほども言いましたが、公共財である交通がこれ以上衰退しないように、更にブラッシュアップするように、先生方にもしっかり力を入れていただいて、様々な形での予算確保ということについてお願いをしたいというふうに思っております。
関西大学の宇都宮先生とかよくお話しですが、ヨーロッパでは当たり前のことですし、三日月知事も交通税というようなことをお話を始められました。そこまでいかないにしても、基礎自治体、そもそもほとんどは限度額目いっぱいの課税していますね。上限に達しているわけです。ですから、そこのところも少し制度を触って、目的をはっきりさせることによって新しい歳入を得るという方法というものについて総務省とも御議論いただきながらやっていただくことが大変大事だというふうに思います。
去年、国土交通省鉄道局の検討会に参加させてもらいました。あのとき、最後に局の次長さんの御挨拶で私はこれはすばらしいなと思ったのは、独り鉄道局だけではなくて、道路局も都市局も総合政策局も挙げてみんなでやるんだという御発言がありました。それをもう一歩越えて各省庁も一緒になって、関係する皆さんが協力をしていただいて交通の持続性というものをしっかり上げてほしいというふうに強くお願いしたいと思います。
そのためにも、今回のこの改正、大変有意義なものになったというふうに思っております。エリア一括というのは、議論としては私も何度も議論に参加してきましたが、実現するとなるとかなり難しいと思いますが、方向としてはしかしこれしかないのかなというふうに思います。福祉の輸送、運送事業であれ、高齢者の移送であれ、様々なことを極端に小規模な事業者がやっているところを、一つのサービスにとどまらず一括である事業者が責任を持つというやり方は、まさに、零細な人たちをどうするかという問題は残りますけれども、そういうことが実現するとすれば、まさに持続性を発揮できるだろうというふうに思っております。
早口で分かりにくい説明になったかとも思いますが、申し上げたかったことをもう一度申し上げますと、交通政策と都市政策というものが連携しなきゃいけない。そして、民業だから公費投入ということに尻込みするということを変えていかないといけない。あくまで交通は公共財なのだから公費を妥当な範囲で投入するのは当たり前で、それは交通の赤字補填ではなくて、交通の質を変えて、都市生活そのものの質を変えて、QOLを上げて市民のシビックプライドを上げる、そういうための大変大事な出発点となるツールだということをもう一度申し上げて、意見の陳述とさせていただきます。
ありがとうございました。
○委員長(蓮舫君) ありがとうございました。
次に、吉田参考人にお願いいたします。吉田参考人。
○参考人(吉田千秋君) よろしくお願いいたします。
まず、こういう場、設けていただきまして本当にありがとうございます。ちょっと慣れない感じなので聞きづらいところがあるかもしれませんけれども、ちょっとお聞きいただければと思います。
今、森前市長さんのお話で半分ぐらい終わったかなという気持ちになっちゃっているんですけれども、今のお話も含めて現実問題として鉄道事業者がどういう形で取り組んできたかというお話をさせていただきたいと思います。
お手元の資料、一枚めくっていただきますと、基礎情報があります。このひたちなか海浜鉄道、おかげさまで全路線がひたちなか市内に入っているというちょっと特殊な路線でして、それだけちょっとお含みおきいただければと思います。第三セクターでして、ひたちなか市が五一%、それから経営引き継いだ茨城交通さんが四九%という形になっております。
三ページ目になりますけれども、存続の背景としてはどちらも一緒なんですけれども、お客様が減って、当時の事業者がこれ以上鉄道をやっていけなくなったということが始まりです。最盛期の昭和四十年には三百五十万人、これが二〇〇七年に七十万人まで減っちゃったということで、ただ、廃線に対してひたちなか市民がどうしてもこの鉄道は残したいということで、官民一体で湊線の活性化に取り組むということで始まったという路線でございます。その際、当時の市長さんがおっしゃったのが、行政の力は限界があるだろうということで、社長は公募して、第三セクターとはいえ市長が社長になっていたら駄目だという話から始まったという路線になっています。
こういう形で、二〇〇八年の四月一日、十五年前ですけれども、茨城交通から鉄道部門を分社化という形でこの会社が出ております。これが、今回の法改正でありました従来の事業者から行政の支援を受けて引継ぎという一つの例になっておるかと思いますので、こういうことを一応お含みおきいただければ。
その中で、市民とそれから行政が協働という形でやってきたということの一つの例としまして、まず、おらが湊鐵道応援団。市民の皆さんなんですけれども、本当に市民の皆さんです、自治会の皆さんなんですけれども、この方々がやっぱり自分たちの鉄道を守らなきゃいけないということで、ここにありますように、まず駅にサービスステーションというものをつくって、外からのお客様にお出迎えをすると。それから、鉄道ではなかなか気が付かなかったんですけれども、地元の商工会とかに声を掛けて、住民ならではのことですけれども、鉄道の御利用のお客様に特典をあげようと。例えば鉄道で来たらお酒が一本ただになりますよとか、そういうことをやるというようなことで、鉄道と町を市民の力で結び付けるということで、鉄道と町と再活性化を図るということをやってくれる。
そうやっているうちに、あっ、あそこはこんなことをやっているんだということで、大学生さんがアートイベントをやってくれたりとか、それから掃除をやってくれたりとか、また、これはもう鉄道会社は思い付かなかったんですけれども、正月、海まで鉄道で行って初詣をしようという、こういうのが、がらがらの列車が、毎年、最近、四百人ぐらいのイベントに今年なりまして、こういう形で市民の皆さんのアイデアを取り入れて頑張っていく。
それから、応援団の皆さん、応援団報というものを作って、鉄道がこんなことをやっていますよとかいうことを広くアピール。これの強みは、自治会組織が通じているということで、市の方がこれをちゃんと市の広報誌、それから回覧板なんかに載せていただいて、月に一遍は全市民の目に通るということで、市民一体で鉄道を守っていこうということを行政の立場、それから市民の立場から一生懸命やっていただく。
五ページ目になりますけれども、その象徴として、鉄道の存続が決まったときに、こうやって市長さんと応援団長さん、お二人で、守っていこうということで誓いを立てたという形になっています。
そういう形でやっていくうちに、行政さんの方でやっていただいたことということで幾つか言うんですけれども、まず、市民感情の醸成。ひたちなか市、日立製作所の城下町になっているんですけれども、高い自治会組織率ということで、こちらの自治会に声を掛けたらあの人たちはやってくれるだろうという、市民の感情をすごく理解されていて、行政がそういう働きかけをした。それから、当時の市長さん、これはもう徹底して鉄道は守るんだということでリードしてきた。さらには、鉄道と行政は一体化してやっていかなきゃいけないということで、今もそうなんですけれども、市の方から一人、行政から派遣をいただきまして、常に行政と鉄道がスクラムを組みながら鉄道の行政をやっていくということをやっています。
七ページ目、ソフト面になるんですけれども、これについてはどちらでもやっていらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、例えば市の広報誌、これで鉄道のイベントを宣伝するとか、それから教育委員会なんかに、うちから定期券をまた買ってくださいね、中学三年生が高校生になったらというときに、市の関係機関で橋渡しをしていただくとか、それから鉄道を使ったまちづくりということで様々なことをやっていただく。さらには、先ほどの市の派遣の方が三年置きに替わっていくんですけれども、十五年たちますとその方々がある程度地位があって、例えば観光の部門とかそれから秘書課とか、そういうところの要所要所に行っていただいて、市全体で、あっ、湊線のことだったら分かるよみたいな行政まで動きになっていて、非常に鉄道会社としてはやりやすいということになっています。
さらに、これは八ページになりますけれども、国、県、市の助成ということで、これは非常に茨城県さんも目を開いていただいているんですけれども、安全施設の設備投資、かなり何度も名前が変わるんでいつも旧近代化の補助制度とは呼んでいるんですけれども、これについて、国の制度で国が三分の一出していただく、これに対して、協調補助として茨城県が三分の一、そして、従来事業者負担でやるべきひたちなか海浜鉄道部分については市が負担ということで、鉄道の安全、それから施設の部分については行政の方で任せてくださいよという形ができている。
それから、しばらくは赤字が出るだろうということで、固定資産分、これについては、固定資産税を払っていただいて、ただ、赤字が出た場合は固定資産税に係る部分はお返ししますよという補助制度、これが上下分離の考え方のちょっと流用かなというところ。
それから、開業から十年、これについてはしばらくは赤字が出るだろうということで、八年目までは修繕費についても県と市が赤字の部分を補助しますよということでやらせていただいている。これが、先ほどいただいた資料ではひたちなか海浜鉄道はみなし上下分離型というところに分類されていたんですけれども、あっ、こういうところなのかなと。自分たちとしては、正直、上下分離という考え方は余りなかったんですけれども、こういうところで活用されているのかなと。
その流れでやっていきますと、いろんなところでつながりができてきまして、例えば九ページ目、地域と連携した活性化施策ということで、行政、鉄道のお祭りとそれから商店街のお祭りを一緒にやるということで、ふだんほとんど人がいない商店街にこれだけの人があふれる。やっぱり、商店街の人にしても鉄道があってよかったなということ、それからお互いプラスになるということ。
さらには、十ページ目になりますけれども、地域との連携ということで、おらが湊鐵道応援団、自治会組織です。それから、商店街との連携、それから那珂湊焼きそば、これはB―1グルメなんですけれども、これも方向性は、焼きそばを売ってもうけようじゃなくて焼きそばでまちづくりをしようという考え方らしいので、その辺との連携をしたりとか、あとは、第一日曜日に朝市、これはちょっと一枚めくっていただいて写真があるんですけれども、せっかく広い駅だからもったいないからということで、JAさんとJFさん一緒になって月に一遍、駅で朝市をやっちゃおうと。
プラスの面としては、ふだん鉄道に縁のない主婦の方に来ていただける。それから、JAさん、JFさんにしてもいい宣伝になる。それから、商店街の活性化というよりも、衰退化がひどくなっていまして、今とうとう商店街で野菜売るお店がなくなっちゃったというところ、そこのフォローになったりとか、いろんな面で鉄道があってよかったなということを見ていただく。
それから、十二ページ目になりますけれども、そうこうしているうちに、やっぱり地元の高校生さん、高校生さんも一緒になって頑張っていこうということで、高校生発案のゆるキャラというものができまして、これが、やっぱり一緒に鉄道も活性化していこうということで、常に沿線の高校生さんとも連携していくと。
こういうことをやって周りの皆さんに助けていただいたところにもってきて、一応鉄道も何かやっていますよという話をちょっとさせていただきたいんですけれども、十三ページ目になります。
先ほど森前市長さんからいろいろお話があったんですけれども、金上という途中の駅で、うちは単線なので擦れ違い設備を造って、これによって四十分間隔でしか動けなかった列車を二十分間隔で動かせるようにする。これは、国のコミュニティ・レール化の補助制度を使わせていただいてということで、非常に効果的になっております。それから、お客様の声を聞いて、終電、これはかつては二十二時七分だったんですけれども、これじゃ東京から帰ってきてもなかなか帰れないということで、二十三時二十二分まで落とす。
それから、地元の皆さんの要望を聞いて高田の鉄橋という駅を造る。それから、美乃浜学園、これは後で申し上げますけれども、新設校のところに駅を造るということを順次、コミュニティ・レール化の補助制度とか、それから行政の皆さんの力借りながらやってきた。
それから、通学定期券、高いと言われたんで、一年まとめて買ったら安いですよというのを作る。これで通学制度の足を固める。さらには、これは今回の改正のところにも出ていましたけれども、今、実験的ですけれども、ひたちなか市内のバスと鉄道の共通一日乗車券、これをスマホのMaaSの形で作っています。これはまだちょっと実験段階で実績はなかなか上がらないんですけれども、こういう形で徐々に皆さんと一緒に頑張っていこうという試みがある。
それから、十四ページ目、いろんなところとの連携ということになっていくんですけれども、例えばJR東日本さんとの連携、週末パスというものをやっていますけれども、これにうちも入れていただいてということで連携する。それから、大手旅行社さんとは、ツアーの誘致、それから共同で地元の干し芋を使って鉄道と地域を開発して、なおかつ旅行業者さんをそこに送客してということでまちづくりを図ろうということでやる。
さらには、国営ひたち海浜公園、国営の公園なんですけれども、こちらにかなり無理を言いまして、入園券付きの乗車券を発売する。それから、今ちょうど時期なんですけれども、最盛期に一番たくさんお客さんがいらっしゃいますので、うちの鉄道と海浜公園を結ぶシャトルバスを運行すると、こういうことをやってみたり、それから、まちづくり団体、応援団も含めていろんなところがあるんですけれども、こちらのところとの、まあ法と公序良俗に反しなければ連携ということで。
例えば、そういうことで連携すると、うちの廃車になった車両なんかは、じゃ、するかなと思っていましたら、やっぱり目の開きがあって、これは本当に長いこと頑張って走って、無事故で走ってきたんだからもったいないということで、無事故の神社にしたいということで、鉄道そのものを御神体にする鉄道神社というのをつくるとか、いろんなことを考えていらっしゃって、それをそのまま取り入れるようなことをやっております。
加えてということで、十五ページ目になりますけれども、観光誘致ということで、海浜公園へのアクセス、これが潜在需要がすごく増えまして、今、バス一台で始めたのが、今年なんかはバス三台でも足りないぐらいかなというところで、しかも有り難いのが、そのお客様が大体三割ぐらい途中の那珂湊で降りていただいておさかな市場へ寄っていただくということで、鉄道だけじゃなくてやっぱり地域も発展しますよというところの礎になっている。
そんな感じでやっていた結果が、十六ページはちょっとちっちゃな表なのであれなんですけれども、十七ページちょっと見ていただいて、でっかく字を書いているんですけれども、一応開業十年目で、七十万人だったお客様が百万人を突破するところまで行った。それから、本当は八年でやっておかなきゃいけなかったんですが、十年掛かりましたが、どうにか単年度黒字二万五千円達成したと。ただ、これが令和二年度以降、ちょっとコロナのおかげでちょっと厳しい状況になっているかなという話を聞いております。
十八ページ目の表を見て、グラフ見ていただいたら分かるんですけれども、順調に増えていって、平成二十三年度はこれ震災でちょっと止まりましたので落ちたんですけれども、その後順調に増えていって百万突破してということで、ただ、今、令和二年は一気にちょっとコロナの影響で今落ちているかなという状況ではあります。
ただ、そんな中で、やっぱり地域と一緒に、それから行政、都市機能としてということで、これ、十九ページ目になるんですけれども、沿線の少子化が進んで小学校、中学校を統合するという話になりまして、沿線の三つの小学校、二つの中学校、これを統合して、沿線に駅を造って、学校を造って、そこに鉄道で通ってもらおうと。状況的にも良かったんです、鉄道の沿線に人が住んでいましたので。ですけど、これをやったおかげで子供たちは自転車とか危なくなく鉄道で通うことができる。それから、鉄道としても、希望者全員に市の方からパスが出ますので、大体八百万ぐらいの収入増になる。
あと、行政としても有り難いと言われていたのが、これがもし統合してスクールバスを運行するということになると八百万どころじゃ済まないと、億を超えるお金が年間掛かるということで、行政としても非常に有り難いということで、こういう面でも鉄道の使い方ということ、それから、誰が見てもこれはいいねという使い方ということが分かってきたということがちょっと見えるかなと。
おかげさまで年間の輸送人員は昨年度また百万人を戻しているんですけれども、ただ観光客の五百円のお客様と小学生の何十円ですから、まだ赤字はちょっときついんですけど、そういう状況になっている。
そんな中で、こちらにあるピーク時の深刻な渋滞、今、先ほどちらっと国営海浜公園のことを申し上げましたけれども、自動車でこれだけ渋滞で動かない状況になっている、その下をうちの鉄道が悠々とがらがらの電車が走っていると。この状況をやっぱり市民の皆さんが何とかしてくれという話になりまして、シャトルバスを出したところが二十一ページ目ですけれども、これだけのお客様に御利用いただけるようになったということで、これもなかなか鉄道では思い付かなくて、市民の皆さんとか行政の考え方を取り入れたということでなっているのかなと。
実は今、国の方に許可をいただいて、これ三年になるんですけれども、終点の阿字ケ浦から新駅、海浜公園まで延伸という話出ております。これについて今話を進めているところであります。
これについて、二十三ページ目になりますけれども、多分もっと掛かるとは思うんですけれども、今のところの試算では、二十三ページ目、工費が三・一キロ七十八億円。ただ、七十八億円というところでどうかなというときに、二百万人のお客様が年間いらっしゃいますので、二百万人のお客様のうち一割だけが鉄道を使っていただいたとしても、千円いただいたら二億円。それから、そのうち三割の方が沿線で買物していただけますので経済効果もでっかいということで、これは延伸が何とかできないかなということで、これについては今回の試案であります路線等の編成の変更というところにつながるのかなと思うんですけれども、こういうことも考えていると。
最後のページ、ちょっと大きく書かせていただいたんですけれども、今のところ行政の支援ということで市が考えていますのが、三分の二までは何とか国、県、市で出せないかなと。行政の負担が三分の二、事業者の負担が三分の一の二十六億円だとしたら、先ほど、二億の収入がありますので、初年度から償却前の黒、それから地域経済に大きな効果があるということで、恐らくこれで鉄道というものをちゃんと、今の森前市長さんのお話なんですけど、投資したということになると、今までの考え方と違って恐らく湊線も、どうして維持しようかなじゃなくて、これを都市機能としてどうやって使っていこうかな、鉄道にも地域にももうかるよという話になるものですから、こういうことをやっていきたいなということで、このことを全部含みますとやっぱり今回の法改正というのは非常に期待することが大きくて、特に社総交、こんなふうに鉄道を入れていただいたということがありますので、何とかそのところをやって、湊線自体が全国の地域鉄道の活性化の見本にならないかなということで今仕事をさせております。
含めて、ちょっと冗長な話になったと思いますけれども、事例紹介だけになりましたけれども、御紹介させていただきました。
ありがとうございました。
○委員長(蓮舫君) ありがとうございました。
次に、桜井参考人にお願いいたします。桜井参考人。
○参考人(桜井徹君) 日本大学の桜井です。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。
私が述べることは、まず目次を御覧ください。大学の講義でも滑舌が悪いということで学生の評判が非常に良くない、そういう人間が今日こういう晴れの舞台で内容を説明する上で皆さんに御迷惑掛けるかもしれませんが、三十枚のスライドです、急いでやりますが、付いてきてください。
目次です。まず、「はじめに」では、私の立場を説明いたします。その後、ローカル鉄道危機の一般的背景、それから特殊的背景、その後、ヨーロッパ、特にドイツにおけるローカル線維持方策の特徴から見た我が国の、今回法案でも上下分離の導入が言われてますけど、その問題点について述べたい。最後に、結びであります。
三枚目です。初めに、本法律案に対する参考人の視点です。いろいろ書いてありますけど、三つです。ローカル鉄道問題はローカルだけの問題ではない。確かにローカルの問題ではありますけど、ローカルだけの問題ではないんですということを言いたい。二番目には、鉄道事業は公益事業として理解する必要がある。社会資本とも呼ばれますが。三番目、その際に、ヨーロッパ、特にドイツの経験に学ぶ必要がある。私は、長い間、日本とドイツの鉄道改革の比較をしてきました。
それではまず、ローカル鉄道危機の一般的背景について、外部要因、内部要因、相互連関、三つについてお話しします。
五枚目です。外部要因というのは、いろんなところでも、国土交通省及び今回のモビリティ刷新検討会議でも述べられていますけれども、人口減少、マイカーの増加、高速道路の普及が挙げられています。しかし、それらはあくまでも与件です。ギブンとして言われているだけであって、その政策そのものを転換しないと、人口減少やマイカーの増加、高速道路の普及そのものがそのまま進んでしまうわけです。それに対して受け身で、パッシブにやっていたら問題が解決しないと。
じゃ、この外部要因を促進した要因は何かと、原因は何かというと、それは自然現象じゃなくて政策だと私は思います。グローバリゼーションによる産業空洞化、東京一極集中の国土・産業政策、道路偏重のインフラ投資政策、そういう、まちづくりでも道路中心のまちづくり、そういうものを転換する必要があるわけです。その際に、特に強調したいのは、総合的なインフラ投資政策が、計画が日本では必要じゃないかと。
その際に、参考としてドイツの連邦交通路計画二〇三〇を六枚目に挙げておきましたので、参考にしてください。ドイツ語ばかりですが、ちょっと日本語にも翻訳してあります。
それでは次に、内部要因について言います。七枚目です。内部要因というのは、負のスパイラル、悪循環とも言われます。これは私が言っているんじゃなくて、国土交通省も言っていますし、モビリティ刷新検討会議も言っているわけです。経営努力としての列車の減便、減車、優等列車の削減、廃止、駅の無人化等の経費削減政策、あるいは投資の抑制、そういうものが結果として路線の廃止につながっていく、そういうものが負のスパイラルです。
問題は、この負のスパイラルがなぜ起こっているかということで、企業の独立採算制に問題があるんじゃないかと思います。確かに国鉄分割・民営化で、日本の鉄道はほとんど私企業として経営されてきます。じゃ、私企業だから負のスパイラルは許されるか、そうじゃありません。あくまでも公益事業ですので、政府が、いわゆる、アメリカでもそうですが、公益事業統制をしなけりゃいけないんです。ところが、日本では、御存じのように、一九九九年に審議され、二〇〇〇年に公布されたと思いますが、鉄道事業法の改正で、休廃止がそれまでの許可制から届出制になって規制緩和されたんですね。いや、規制緩和されても大丈夫だというんですけども。
次のページ、八ページに、ある研究が書いてあります、載せてあります。需給調整廃止前後における新設延長と廃線延長ということで、二〇〇〇年を境に、大手私鉄、第三セクターを中心にどしどし廃止の申請があって行われたと。
その次、私鉄、大手私鉄や第三セクターの廃線が進んだ後、その後、二〇一五年頃からですね、九枚目ですけども、今度はJRが路線廃止をするわけです。それもこれもと言ったら語弊がありますが、やはり鉄道事業法の改正が影響しているんじゃないかと思うわけです。ですから、今回鉄道事業法を見直すわけですけども、こういう方向で見直していただきたいと思っております。
いや、大臣指針があるじゃないかと、完全民営化した後、きちんとそういう路線の廃止を進めないようにするための大臣指針があるじゃないかと言われるんですけども、あくまで指針であります、あくまでガイドラインであります。
次に、相互連関行きます。
外部要因と内部要因それぞれを促進した政策、そのための政策転換が必要なんですけど、更に問題は、外部要因と内部要因が相互連関しているということです。ここを見なければいけないわけです。つまり、負のスパイラルという内部要因と、人口の減少、マイカーの増加、そういうのは連関しているんですね。
鉄道事業が廃止、それは、済みません、十一枚目、連関を示しているのが資料一です。駅の廃止、運行本数の低下ということと沿線人口の減少が関係あるんじゃないかという研究が幾つかあります。そういう駅の廃止あるいは鉄道の廃止がそういう人口減をするんですけど、鉄道の廃止の後、バス転換がよく出てきます。今回の法案でもそうですが。
資料二を御覧ください。バス転換をしたらうまくいくか。いかない、あくまで利用者減。aからeまでいろいろ書いてあります。BRTになっても駄目。十二枚目の右側の方に、利用者減は鉄道よりバスの方が大きいと書いてあります。これは、今回の参考人の質疑のために送っていただいた資料の中にあったものです。鉄道よりバスの利用者の方が減少が大きいんですよ。ですから、バスになったから、ああ、大丈夫だということには決してならない。
そういうような内部要因、外部要因、そして相互連関、そういうのを全部ひっくるめて解決しないとローカル鉄道の危機はそのまま進行してしまう、それを図に表したのが十三枚目の図一です。お読みください。私、一生懸命頑張って書いたんですからね。結構、パワポでこういうの書くの結構しんどいんですけど、まあ何とか頑張りました。
次行きます。
一般的背景はそういうことです。でも、一般的背景だけではないんですよ。特殊的な背景がある。コロナ禍で、多くの公共事業者、JRも含めて赤字になっている。特に、一九八七年以降、分割・民営化以降初の上場JR三社が赤字になって、あっ、大変だと、新幹線、都市圏輸送による地方線の内部補助が崩壊すると、あっ、大変だということで、特に二〇二一年五月頃からJR西日本なんかが、いや、内部補助が崩壊しているので何とかできませんかということで今回こういうようになってきていると思うんですけども。
内部補助の問題、これから入るんですけども、内部補助崩壊が問題なのかどうか。先ほども言いましたように、JRを含め多くの公共交通機関が赤字なんです。ですから、そのとき政府がコロナ支援を大々的にやるべきだった。
資料三を御覧ください。十五枚目です。ドイツにおけるコロナ禍での公共交通への財政支援です。ドイツ鉄道に対しても、公共近距離旅客輸送、まあ日本の公営事業者あるいは私鉄事業者全てが入ったものですけど、そういうものに対して全体で一兆円ぐらい、日本円にして一兆円をばっとやっている。日本でもGoToトラベルとかいろいろやっていましたけれどもですね、まあそれ、もうそれ以上言いません。
次行きます。
そういうようなわけで、コロナ禍で大変だから、じゃ、内部補助が崩壊したから今回分離をお願いしたいね、自治体が関与してくださいよねということが今回の法案です。
じゃ、その内部補助の崩壊の問題で、次、三番目ですが、先ほど、済みません、十四枚目に戻ってください。その中で、いろいろ内部補助の崩壊って、内部補助の問題は非常に難しい問題です。衆議院の参考人質疑でも山内さんが一生懸命、それ難しいと言っています。モビリティ刷新会議の委員の中でも六名中三名が内部補助を維持するべきだという意見もあったりして、なかなか割れております。
その中で注目されるのは、湯崎広島県知事です。内部補助をするということで、そういう約束で国鉄分割・民営化したんじゃないの、今更何を言ってくれるんだということで、そうであれば国鉄分割・民営化に遡って検討してほしいというのが湯崎広島県知事の意見です。それは資料五を御覧ください。資料五にあるので見てください。
問題は、じゃ、こっち、国鉄分割・民営化のときに地方交通線の取扱い、どうやったか。図二を御覧ください。十九枚目です。ピンク色の部分が最終的に国鉄再建監理委員会がJRから分離すると言ったわけです。ところが、その一年前に国鉄再建監理委員会の緊急答申、第一次緊急答申、第二次緊急答申ありました。そのときには、上のダイダイ色といいますか、ちょっとダイダイ色じゃないな、黄土色といいますか、薄い黄土色の部分がありますが、百七十五線、約一万百六十キロを全部新会社が継承しないというように緊急提言で言ったんです。ところが、国民の反対があったのか、法案を通りやすくするためか、どちらか分かりませんが、とにかくこのピンク色の部分だけになってしまった。だが、今回、そうでないならば、いや、分割・民営化に遡れという議論も、湯崎さんの議論もむべなるかなと思っております。
二十枚目に行ってください。二十枚目の下、JR東日本の元会長、住田さんが著書で、旧国鉄から引き継いだ七千五百キロの路線を使い、いかに良いサービスを提供するかということがJR東日本の追求すべき公共性だったとちゃんと述べています。今はその、まあもうこれ以上やめておきます。
次行きます。
で、そういうこともあるんですけど、じゃ、内部補助の崩壊について実際どうかということで、次の二十一枚目の表二を見てください。これはJR東日本とJR西日本のものを表したものです。もう時間がないのですが、要するに、収支差額、二千人未満の収支差額と、特にJR西日本がそうですが、株主還元額がほぼ同じなんですよ。赤字になっているのに、内部補助をやりながら、助けてねって言っているのに株主に還元こんなにするのはどうかと思っております。
関連事業もやっているんですけれども、それはもう省略いたします。
最後、もう四十五分、二十四枚目を見てください。ここでは、要するにドイツでは、もう宇都宮参考人とかが衆議院でも言われていますけれども、ドイツでは公共サービスだと、上下分離していますよと。で、近距離旅客輸送は地方政府が供給責任を持ちなさいと言っています。で、その際に、連邦政府が地域化資金ということで、赤字の六〇%以上を補填できるような資金を鉱油税から、まあガソリン税ですね、そこからいっているということを書いてあります。特に最近は、この廃止路線、やはり民営化ですから廃止路線もありました。それがだんだん復活しているということが書かれてあります。私、ドイツを研究してきて、やっぱり、ドイツの人はなぜこれだけ気候変動問題、温暖化防止に熱心かなというのは、一九八七年に初めてドイツに、八九年に、までにドイツに行ったときに感じました。
それで、最後、もう二十八枚目、鉄道事業再構築事業としての上下分離の問題点と書いてあります。自治体保有にするということですけれども、一定進歩ですけれども、やはり自治体の財政力に限界がある、やはり国が前面に出さないと、出ないといけないのです。自治体が保有して各鉄道が上下分離をしたときにネットワークが失われるんですね。そういう点も重視、そういう点も考えてもらいたいと思っております。
じゃ、おまえは日本の鉄道改革をどうするんかという質問があったときのために、二十九枚目に一応大胆にも書いておきました。なかなか私も苦労しながら図を作っているわけですけど、まあそういうことであります。でも私は、ヘーゲルが、合理的なものは現実的であり、現実的なものは合理的と言いましたけれども、頭の中で考えて合理的なものはやっぱり現実的になるんだと私は信じております。
次に、最後はもう①から②、③と書いておりますので、読んでおいてください。
最後に、ゲーテの言葉を引用したい。外国語を知らぬ者は自国語については何も知らない。外国の鉄道を知らないと日本の鉄道も知らないんじゃないかということであります。手前みそでありますけど、ドイツの鉄道を研究してきた、七十五歳にはまだならないんですけど、それに近い人間の箴言として述べておきたいと思います。
ありがとうございました。
【略】
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
実は、ちょうど四月十二日に本会議でこの問題取り上げさせていただきました。そして、まずはヨーロッパで、それこそ今、富山大学の特別教授の中川先生が、まず、この交通というのは公共財なんだと、だから、事業者だけではなくて、全体の移動性だけではなくて、福祉や教育やあるいは環境問題というところとセットで考えなければいけないと。で、ヨーロッパの例を出させていただいて、それと比べると日本は余りに負のスパイラルに陥っていると、地域に任せ過ぎ、民間に任せ過ぎだったと。私自身もドイツのフライブルクとか見せてもらいまして、それから富山も実は視察に行かせていただいたことがあります、知事の時代に。で、本当にドイツモデルもそうですけれども、ヨーロッパ型の公共交通の考え方大事だろうということをまず最初に言わせていただいて。
で、実は私、知事時代に信楽高原鉄道を上下分離でさせていただいたんです。そこも教育と環境とそれから観光とセットで上下分離、ちょうど十年たつんですけれども、今公共の負担が二十五億円になって十年たってどうなるのかという見直しも始まっております。もう一つ、近江鉄道、ここも県がかなり旗を振って、十の市町があるんです。そこがようやく合意形成できて、この後、上下分離なりを今年と来年でプランを作ろうという段階になっております。
それで、十二日の本会議では、国の方から、まずは総務省、総務大臣、三日月知事は本当に全国で初めて交通税を提案をしました。この交通税を提案したバックは、県民の意識調査をすると、滋賀県、かつては私が知事をしていた時代は医療とか福祉系の要望が高かったんですけど、一番、今かなりそこがもう安定して長寿化社会に対応できているので、県民のアンケートの一番の不満が公共交通なんです。
そういうこともあって、三日月知事が去年の知事選挙で交通税というのを提案したんですが、実は、今回の県議会の統一地方選、六十五人候補者がおりまして、そのうち、新聞社がアンケートしたんですけれども、三割は反対なんです。それで、一割は賛成。あとはどちらでもないと、まだこれから議論をするということで。
実は今日、済みません、前置きが長くなりました。お三方それぞれの立場から、交通税を導入するときに、かなりこの後、県議会あるいは県民の間で意見が分かれると思うんです。その合意形成するときの、言うたら論点ですね、合意形成のときにこういう論点を考えた方がいいですよということ、お三方それぞれの立場から教えていただいて、この後、滋賀県では県民意識調査も必要でしょうし、まず県議会がかなりもめると思います。
それは、実は森林税を入れたときも同じ議論したんです。かなり増税というのはみんな嫌がります。ですけれども、最終的には琵琶湖は森に守られているんだからというので、琵琶湖一体論で県民が賛成してくれたんですけど、この交通税はそういうふうにはなかなかいきにくい。特に都市部と農村部の対立も大きいんですね。
というようなことで、合意形成のための論点、それぞれの御経験から教えていただけたらと、お三方それぞれにお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。
○参考人(森雅志君) 税のこともそうなんですが、私が最初に取り組んだのは、道路上の一車線を潰して軌道を入れるということをやったわけです。したがって、車だけで暮らしている人から見ると大反対なわけです。しかし、そういう人たちに対しても、でも高齢化によって車に頼れなくなる人、ベビーカーを押しているママさん、特に今の時代は仕事で来ている人もキャリアーを引っ張って動いていますから、なるべく垂直移動がない町をつくる、そして公共交通をブラッシュアップさせる、これは将来市民のためにどうしても避けて通れないんだということをひたすら説得して回りました。最初の年は二時間の説明会百二十回やったこともあります、一年に。一日に二時間を四回やったこともあります。説得のコツは、相手が疲れるまで言い続けるということ。そういうことが大事なんです。
ですが、その県議会の人たちも、自分の選挙というものに目をさらすときに、どうしてもぶれるんですね。ですから、制度として、私が、交通計画についても都市計画法のような法定計画にするということが前提として必要ではないかと思います。そうしないと、首長が替わると方針がぶれてしまうということになります。やっぱり長期にわたる計画を作って、飽かず説得を続けていくということだろうというふうに思います。
法定外目的税みたいなやり方をこれから地方もやっていく時代になるんだろうと思いますが、それもやっぱり、しっかりとしたリーダーシップで説得をすることだろうと思います。目の前にあるものについて負担が増えればみんな反対です。しかし、消極的な理解者にまでしていくことは十分可能だと思いますので、結論から言うと反対運動は一度も起きませんでした。説得できると思います。
○参考人(吉田千秋君) ストレートな答えにはならないとは思うんですけれども、やっぱりこの湊線の存続問題が出たときも、最終的には議会では満場一致だったという話は聞いたんですが、ただ、その前段階では多分六〇対四〇ぐらいで反対の人もいたよと。ただ、そのときに、やっぱり市長の方がきちんと説明したということでいったのもあるでしょうし、あとは、実際に運行してみると、ああ、やっぱりよかったねということがあったので、こういう事例がありますよという話とか、あとは、新駅ができたときに、当然新駅造るときに市の税金が入るんですけれども、それについては特に反対が起こらなかったというのが、やっぱり本当に利用者の方が、自分たちが年を取ってきて、ここに駅がなかったら免許返納したらどうしようみたいな話になってきたので、そういうせっぱ詰まった話とか、具体的に皆さんのプラスになるということが説得できるとそんなに反対は起こらないのかなというのも体感しています。
その後はもう事業者、特に今、近江鉄道さんとか頑張っていらっしゃると思うんですけれども、もうちゃんとここまで頑張っていますよと、実際頑張っていると思います、という話もちゃんとアピールすることで、やっぱり交通税というのは必要だなというふうに認識を統一していくのは可能なんじゃないかなというふうに、事業者から見たら思うんですけれども。
ちょっと答えになっているかどうか分からないんですけれども、こんな感じで思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、この県議会議員六十五人のアンケートを見ると、反対の人は都市部に住んでいる若い人なんです、傾向として。自分たち不便していないから。でも、農村部の高齢者は、あっ、交通税必要ですねと。もうここの県議会議員の候補者アンケートでももう傾向が見えていまして、そういう意味では、いろいろな社会層に、先ほど森委員が言われたように、もう繰り返し繰り返し、すごいですね、二時間を、百二十分、それくらい理解をしてもらう努力というのが政策を作る側に必要だということですね。また、運営する側からも理解をしてもらうということの必要性ですね。
ありがとうございます。桜井委員はどうでしょう。
○参考人(桜井徹君) なかなか難しいんですけれども、一つは、理詰めで車中心から公共交通中心にするとこういう点がプラスですよということを、三日月さんなんかは早くからクロスセクター分析に取り組んでおられますよね、近江鉄道なんかで。そういうところの数値をもう少し細かく分析するということは必要です。
もう一つは、マイカーの利用者の意識を変えるということはどうしても必要です。マイカーを利用しているとこれだけ費用が掛かっているんですよと。費用掛かっているんですよ。私、運転はしませんけど、聞くところでは結構いろんな、自動車重量税も含めまして掛かっているわけで。
また、御存じのように、高齢になってくると免許を返さなきゃいけない人が出てきている、そういうときに地域の公共交通、地域の移動をどうするかということを、その地域ごとに綿密にやるということが重要です。
それからもう一つは、やっぱりマイカーを捨てて公共交通を利用するとこういう点がいいんですよということを言う必要があって、例えば岡山では電車の乗り放題とか無料デーですね、無料デーをつくったり、あるいはドイツでも、この間、去年の夏に三か月間、一か月で九ユーロ、九百円払えば全国どこの近距離輸送、都市交通を乗り放題、そういうことで、自動車で通勤やっていた人が、ああ、やっぱり公共交通はこういうところがいいんだということをですね。
やっぱり個人主義がこれだけはやっていますから、はやっているというのも、個人主義に固まっているこの日本を変えていくことも必要だというような意識も持ってこの公共交通への転換を図っていくときになっているんじゃないかとちょっと思っております。
以上です。
○嘉田由紀子君 ありがとうございました。
あと少し時間があるので、実は先ほど、今の一つ、若い人で車も乗れて、そして都市部にいる人たちはどうしてもそんな税金払うのは嫌だと。それから、逆に、同じ路線、さっき卵と鶏の関係ということを言われましたけど、人口が減ったから不便になるのか、交通が不便になってしまうから人口が流出するのか、この辺のところもかなりデータで議論する必要があると思うんですけれども、その辺りで、モータリゼーションをずっと進めてきて、今の社会、それを今後三十年、四十年どうするのかという全体のビジョンですね、ここはもう世代間対立、地域間対立がたくさんあると思うんですが、その辺はデータ的に例えばいろんなところから提供していただくということは可能でしょうか。そこを少し森委員にお伺いしたいんですが。
○参考人(森雅志君)脱車と言っているわけじゃないんですね。車も使うんですけど公共交通も使うと、そういうライフスタイルに変えていこうというふうに市民に説得をするということをしてきたわけですけれども、様々なデータは二十年もやってきましたので今あります。様々な、ガソリンの消費量がどうなったとか、渋滞解消はどうなったとか、路面電車の利用者がどう推移したか、さらに、京都大学の先生と協力して、千二百人ぐらいの人を対象に三年ごとに生の医療費を調査させてもらっているデータもあります。去年三回目をやりました。したがって九年目になるんですが、同じ対象者について一年間の医療費が幾らだったかということを同意を取って調べてきて、そして、よく路面電車を利用する、よくバスを利用する、公共交通を利用する人とそうじゃないカテゴリーとでどう変化するかということについても、統計学的にきちっと評価してもらえるほどのサンプルでやって、したデータなどもあります。
そういうものについて、どの地域からでも御希望があれば幾らでも提供はできるので、お互いにそういうことを交換しながら市民に理解を求める説得をする際の資料にしていくということは大事だと思いますので、逆にどこか国の機関でまとめてもらうということも大事なのかもしれません。データはすごく大事です。で、変化が起きる前のデータから収集しないと比較できないので、そこのところが行政はしばしば怠っているので、質のいいデータをお互いに交換することは十分可能だと思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
まさに長寿社会で、滋賀県は実は男性が長寿日本一になったんですけど、活動量、社会的活動と長寿化、かなりポジティブに相関しているんですね。ですから、先ほど来、外出が多いと健康寿命も長くなるよというようなところで、それを国がやってほしいと、富山さんのデータとかあちこちの、そういうデータブックみたいなものが、あるいは基があるといいですね。それは今回も求めていきたいと思います。それでまた滋賀県の交通税の方もサポートいただけたらと思います。議論していきたいと思います。
ありがとうございました。終わります。