20230412資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会【確定稿】

令和五年四月十二日(水曜日)

 

○会長(宮沢洋一君)

【略】

本日は、「資源エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和」のうち、「資源エネルギーと持続可能社会をめぐる情勢」に関し、「エネルギーや気候変動などSDGsをめぐる日本の情勢」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授蟹江憲史君、特定非営利活動法人国際環境経済研究所理事・東北大学特任教授竹内純子君及び東京大学未来ビジョン研究センター教授高村ゆかり君でございます。

 

【略】
○参考人(蟹江憲史君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。慶應大学の蟹江と申します。(資料映写)
SDGsをめぐる世界と日本の現状ということでお話を進めさせていただきます。
まず、この一枚目なんですけれども、SDG達成、今一番大事だと考えられているのは変革ということです。今ちょうど、国連の事務総長に四年ほど前に指名された十五人の独立科学者という専門家がおりまして、私もその一名になっているんですけれども、で、今年九月に国連のSDGサミットというのがございます。そこに向けて、GSDRと我々呼んでいますけれども、グローバル・サステーナブル・ディベロップメント・レポートという四年に一度のSDGsの進捗を見る報告書をまとめています。その中でやっぱり一番大事だと強調している点は変革だということです。
これは、SDGsが中心を占めている国連の二〇三〇アジェンダというのがありますけれども、そのタイトルにも変革ということが書かれています。
じゃ、変革って一体どういうことなのかというので、少し今ある知識をまとめたのがこの皆さんの手前に示させていただいている図です。これ、ローマ字のSの形を描いていますけれども、下の方のこの緑の方を見ていただきますと、いろんな変革の萌芽があるということで、萌芽があるんだけれどもなかなかそれが伸びていかない、なかなか、抵抗勢力もあってなかなか伸びていかないということです。それが一気に加速期に入っていくと伸びていって、そして安定期に入っていくということです。
同時に、持続可能でないような経路を持つものも同じように、それが今、世の中に広がっているんだけれども、それがだんだん減退していって、それがフェーズアウト、廃止に向かっていくと。このクロスするSカーブをいかに描けるかということが勝負になっていくということです。
実際の事例で、例えばノルウェーの電気自動車がここ数年で急速に普及していますけれども、そういった例なんかを挙げながら、このS字カーブをつくっていくエッセンスはどうなのか。特にこの加速期でどういったことが必要なのか。そこでは、サプライチェーンへの影響であるとか標準化であるとか、あるいは政策の力が非常に重要な役割を果たしますけれども、こういったものが必要だという知見がまとまってまいりました。
まず最初に、この変革、トランスフォーメーションを起こすということが非常に大事だということを申し上げておきたいというふうに思っています。
その上で、今の世界の現状ですけれども、昨年の夏に報告されました事務総長が毎年出している報告書がございます。それを見ますと、SDG達成が大きな危機に陥っているということになっておりまして、特にコロナ禍、そして気候変動の影響、そして国際紛争、この三つのインパクトで、ただでさえ達成が困難であったSDGsの達成が非常に難しくなっていると。中には、例えば極度の貧困の状況というのは、今まで改善されてきていたんだけれども、ここに来てむしろ後退していると、二〇一五年当時よりも後ろに下がってしまっているということが書かれています。飢餓の状態なんかもそうです。それから、暴力紛争は、一九四五年、第二次世界大戦終了以来、最大の人口がこの暴力紛争の中にいるということが言われていまして、世界の状況、プラスチックの量も増えています、CO2の量も増加しています、かなり悪くなっているというのが全体的なニュアンスになっております。
先ほど申し上げましたGSDRというもので、今、二〇三〇年に向けて、ちょうど今、二〇一五年にできたSDGsが中間地点に差しかかっておりますけれども、その中間評価を見ています。まだこれ、今年の秋に出るものを、ちょっと出していいものだけをかいつまんで持ってきましたけれども、全体的に進捗速度は減退していると、しかも、幾つかの目標で進捗が反転、つまり進まなければいけないところが後退しているというグローバルな状況です。特に、環境関連、それから公平性関連の目標というのが後退している傾向であるということが分かってきました。それから、一時的なショックですね、コロナ禍、それから気候変動、毎年いろんな影響が出てきますけれども、そういった影響、そして紛争の影響など、こういった影響が非常に強く、そしていろんな分野に広がる形で出てしまっているというのが全般的な状況です。
その一方で、我々、目標ベースのガバナンスという言い方していますけれども、目標をつくって、中長期的な目標をつくって、そして仕組みを変えていこうという行動変容というのはいろんなところで萌芽は見えているということも分かってまいりました。例えば、プラスチックの利用をやめていこう、減らしていこうというようなこと、動きも、二〇一七年にSDGsの文脈で海洋プラスチックごみ汚染の問題が取り上げられてから世界的に広がっていったということもあって、そういった目標をつくって進むということがだんだん効果を及ぼしているような分野もあるということも分かってまいりました。
そういった中で、日本の現状ですけれども、既に御案内のように、SDGsという言葉を聞けば大体いろんな人が、あっ、あのことを言っているんだなと分かるぐらい認知度は非常に高いです。世界の中でも認知度は最高レベルと言っていいほど、八割近くの国民がSDGsという言葉は知っているというところまで来ています。一方で、その内容まで詳しく知っているとか人に説明できるという調査結果、まあ結果によってまちまちではありますけれども、非常にこれは低いということで、この聞いたことはあるんだけれども内容までは知らないというギャップが大きいというのが残念ながら今の日本の現状になってしまっております。
そういった中で、毎年、これは国連が発表しているわけではないんですけれども、国連と連携しているSDSNというところとドイツの財団と一緒に世界的なランキングを出しております。そこを見ていきますと、毎年順位を日本は落としてしまっているというのが現状です。順位を落としてしまっているということ自体もそうですけれども、日本は、経済力を見ると、やはり日本、まだ世界三位を維持しているということを考えますと、経済、社会、環境というこの三つのサステナビリティーを総合的に評価するSDGsがここまで下がってしまっているというのは、やはり社会、環境の分野の遅れというのが目立っていると言わざるを得ない状況かなと思います。そこをいかに経済の課題に統合していくか、それが非常に重要になってくるんだと思います。
で、SDGsをめぐる日本の制度枠組みですけれども、二〇一六年に、前回のG7の議長国になったときにこの枠組みができています。SDGsができた翌年という、ちょうどその年ですけれども、実施指針ができまして、SDGサミットのたびにこの実施指針が改定していますので、二〇一九年に改定されています。
その指針の下で、SDGs実施の推進本部というのが本部長、内閣総理大臣の下でできておりまして、その下に我々ステークホルダーの代表が集まったSDGs推進の円卓会議というものがございます。これ一応内閣官房が事務局ということですけれども、実質的には外務省地球規模課題審議官の組織が中心に運営されているという状況になっております。
御覧になっていただいて分かるように、実施指針ということで法的基盤が非常に弱いというのも一つの特徴になっています。それから、六月と十二月に基本的に推進本部の会合が二回開催されるということが毎年行われていますけれども、SDGsの扱う課題が非常に多い、それから、いろんな盛り上がりを見せている中で、なかなか政策の方向付けをするというところまで行っていないというのが現状のように見えます。
ということで、円卓会議の方では、二〇二〇年からは分科会というのをつくりまして、より頻繁にミーティングをするということをやってきています。それから、一方で、毎年政策を集めたリストとしてのアクションプランというのがございます。それから、ジャパンSDGsアワードというので、やり方が分からない、決まっていないので、SDGsの場合は褒めようということで、アワードをつくっているという状況になっております。
そういった中で、ただ、やっぱり実施指針による弱い法的基盤によって、本来、指針の中では司令塔の役割を推進本部が果たしていただきたいというふうになっていますけれども、なかなかそこまでの状況になっていないというのが現状でございます。それから、円卓会議と推進本部もリンクがほぼないという状況になっているところです。それから、アクションプランございますけれども、その進捗はどうであるのか、何を目指しているのか、SDGs、本来目標を定めて進めるべきところですけれども、その目標もよく分からない、それから指標がないので測れないということで、実際の政策実施というところではそれほど、まあ形は整っておりますけれども中身がまだ付いてきていないというのが実質的なところかと思います。
一方で、自治体であるとか、自治体はSDGs未来都市というのが内閣府の地方創生推進事務局の下に進んでいておりまして、今百五十四の自治体がSDGs未来都市ということで進めております。それから、金融関係も、ESG投資、サステナビリティー投資というのが次第に盛んになりつつあります。それから、企業も、経団連がソサエティー五・〇フォーSDGsということを言っていることを始めとして、大企業、中小企業、いろいろなチャレンジを進めていっています。これは、世界的な潮流がサステナビリティー当然だという中で、そこと競争していくためには、持続可能性しっかりと取り組まなければいけないという認識があるように思います。それから、教育分野、我々のところでもそうですけれども、教育の中にSDGsの考え方あるいはSDGsの目標を検討するということが取り込まれるなど、萌芽と言っていいようなことはいろいろなところで出てきているのが現状です。
この政策の現状、そして民間での動きということを見ながら、昨年二回ほどSDGs実施指針の改定に関するパートナーシップ会議というのを開催いたしました。これは、先ほど申し上げた円卓会議の民間構成員、我々が主催して進めていきました。まあ本来政府の方で主催していただければ大変有り難かったんですけれども、予算の関係等で我々民間の方で進めていったということで、オンラインベースでしたけれども二回ほどミーティングをして、国民全般のSDGsに関する課題認識というのを拾い上げることをやりました。
そこで出てきた様々な御意見まとめますと、一つは、総合的、横断的な政策実施の推進というのが非常に大事であると、だが、これはまだ十分なされていないということが言われました。
例えば、ジェンダー、少子化対策、日本政府の方でもいろいろやられていますけれども、もっともっと推進する、横断的なことをできることがあるんじゃないか。それから少子化、ジェンダー、かなり一緒に政策を推進した方がいいようなこともあるけれども、その調整というのもまだまだしていく余地があるんじゃないかというような考え方が出てきました。SDGsの文脈では、シナジーを強化する、そしてトレードオフを解消していくということをいいますけれども、そういったことをやっていく必要があるだろうと。本日の課題の一つでもあるこの気候変動であるとか、あるいは生物多様性、例えば気候変動対策で木をたくさん植えればいいんじゃないかという話を推進してそれだけを考えてしまうと、逆に同じような木ばっかりになってしまって、生物多様性が損なわれてしまうと。それは極端な話ですけれども、そういった課題間の調整というのが非常に重要になってきているということで、総合的、横断的な政策実施というのが非常に重要であるという認識が示されました。
それから二つ目ですけれども、環境それから社会政策を経済政策へ統合していく必要があるということで、SDGs、本来は、本質的にはこれ成長戦略であると。特にヨーロッパ諸国を中心として、サステナビリティーが今や国際競争力を決定していると言っても過言ではない状況になりつつあります。
電気自動車であるとか再生可能エネルギー、それから人権デューデリジェンスですね、ビジネスと人権、そういったものもしっかり守っていないと、なかなか経済政策も進まない、足下もすくわれがちであるということですけれども、この辺りをもっとしっかりと統合していく必要があるという御意見が出てきました。我々の円卓会議の構成員の中にも渋澤健委員がいらっしゃいますけれども、彼なんかも、人的資本へのインパクト投資を重要課題ということに考えるべきだということもおっしゃっています。この辺りの経済政策へのサステナビリティーの統合というのが非常に大事だと。
それから三点目ですけれども、これは、気候変動にしろパンデミックにしろ、これで終わりになればそれにこしたことないですけれども、これからますます災害、変化というのが多くなってしまう可能性が高いと言われています。そういうことで、次なる災害、変化にしっかりと備えておく、それがSDGsの推進とつながっているということが課題として出されました。
こういった点をまとめまして、我々円卓会議の方から提言をまとめて、先日、岸田総理大臣の方にお渡ししたところです。
まず、その軸として、一つ目は、実施指針を改定するとき、今年の年末に予定されていますけれども、これを是非基本法の制定へと持っていっていただきたいというのが一つ目です。
今、SDGsというと、皆さん、自分でできることを探してできることからやりましょうという形になっておりますけれども、サステナビリティーの問題、これはもう本当、成長する上でも待ったなしだということを発信する上でも、是非基本法を制定していただくということが大事だろうということです。それから、地方自治体、それから企業のレベル、いろんなところで、なかなかこの課題進めようとしても予算化が難しいという声が聞かれています。そういうこともありまして、予算化を着実に進めていくという力になるためにもこの基本法制定が大事だと。それから、何よりもG7、それから今年控えているSDGサミット、リーダーシップ発揮するためにもこういったものを考えていただきたいというのが一つ目です。
それから二つ目ですけれども、国としてターゲットを是非設定していただきたいということで、実は、SDGsが中心になっている国連のアジェンダでは、各国がこのSDGsのターゲット、より具体的な年限とか数値目標とかを含んだ目標、それを定めるということになっていますけれども、まだ日本でその全体がリスト化されたターゲットというのが設定されてございません。是非これをやっていただきたいというのが提言の二つの大きな柱となっております。
他国の状況を見ましても、例えばカナダでは、基本法を既に二〇〇八年に制定しておりまして、二〇二〇年にそれを改定しています。戦略を三年ごとに定めているということで、その中で目標、ターゲットを設定したり、ターゲットの所管官庁の設定、実施戦略を立てていったりということをなされています。ドイツも、ドイツは、全ての意思決定に持続可能な開発という考え方を適用するということで、同じく目標、ターゲット、それからそれを測る指標というのを具体的に定めまして、持続可能性の影響を評価する、これを義務化しているという状況でございます。それから、お隣の韓国も、昨年、持続可能な開発基本法というものを制定して、国内目標、それから指標を設定しています。そういった中で、国内、地域の目標を定めたり評価指標を策定するということなどが決まっております。
こういった事例を踏まえて、提言の中に基本法の構成案というのが出されております。お手元にもこの提言を配付させていただいておりますので御参照いただければというふうに思いますけれども、ターゲットを含む基本方針を定めていただきたいということであるとか、施策におけるSDGsの影響を評価する、あるいはSDGs達成推進戦略本部を設置して、事務局を置いていただき、定常的に政策を推進できるようにすると、そしてその上で、現行の推進本部と円卓会議、政治的な意思決定とステークホルダーの意思決定が今必ずしも一体化していないので、是非一体化していただきたいというようなことを書かせていただいております。
例えば、二〇〇〇年代初め、インターネットの推進ということが言われていましたけれども、そういったことも基本法ができて初めて政策として推進されたというふうに聞いておりますので、是非こういったことを皆さんで考えていただければなというふうに思っております。
最後になりますけれども、SDGsに関する今後のプロセス、大きなものを申し上げますと、今年の九月にSDGサミットというのが開かれます。そして、今年G7の広島サミットが行われますけれども、実は次に日本がサミットの議長国になるということになるのは二〇三〇年、このSDGsの目標達成期限の年になります。
是非、そこに向けて、このSDG達成に向けた加速をするべく変革を促進するというような勢いを付けていただきたいと。そういったことが実は大阪万博にも効いてくると思いますし、それから先、二〇三〇年以降の目標の議論というものも開始されると思います。そういったところでも、日本の考え方をSDGsの次の目標にも入れていくためにも、政治的なイニシアチブを取っていただきたいというふうに考えているところです。
以上です。
○会長(宮沢洋一君) ありがとうございました。
次に、竹内参考人にお願いいたします。竹内参考人。
○参考人(竹内純子君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。私の専門は、エネルギー、特に電力政策ということで、この問題についての難しさをまず述べたいというふうに思います。(資料映写)
この委員会の先生方には釈迦に説法でございますが、エネルギー政策はSプラス3Eというもののバランスをどう取るか、重心をどこに定めるかといったところが要諦ということになります。政府としてはSプラス3Eの同時達成というようなことを言いたくなるところではございますが、本質的に、まああちらを立てるとこちらが立たないというようなジレンマ、トリレンマの中で、どこに重心を定めるかといったようなところになります。また、昔より変化のスピードが上がっているとは申しましても、インフラの置き換え、これを必要としますし、供給側だけではなくて、需要側、使う側の取組も必要とするので、政策を描いてからそれが実現されるまでの期間が非常に長期掛かるといったようなところが特徴でございます。
これまでの歴史、簡単に振り返らせていただきますと、こちら、一九五二年、九電力体制と言われるような体制ができてからの、棒の高さが電力の需要、一年間で使った量、そして色分けがその電源構成なんですが、量の確保が最重要視された終戦直後、そして、オイルショックによってエネルギー安全保障の重要性を痛感して脱石油、脱中東のためにあらゆる取組を行った一九七〇年代、八〇年代、エネルギーの内外価格差が日本の産業の競争力をそいでいるとして発電事業の自由化に端を発して経済性を追求した一九九〇年代後半から二〇〇〇年代、そして、二〇〇〇年代以降は環境性への関心が急速に高まったと、重心も徐々に動いていたというところでございます。
今、各国のエネルギー政策、まあ我が国含めてですけれども、大きな影響を与えているのが、蟹江先生からもございました、一つの気候変動政策といったようなところでございます。ただ、この二つの政策の思考回路の違いというところをちょっとお話を申し上げたいというふうに思います。
エネルギーは究極の生活財、生産財と、極めて現実的に考えなければならない財でございます。その計画はフォワードルッキング、ある意味、足下の現実を見て策定する必要がある。一方で、気候変動政策というのは十八世紀の産業革命をも上回る社会変革です。その解決にはイノベーションが必要であるということはもうパリ協定でも認識をされており、その政策は、今お話にもありましたとおり、あるべき姿からバックキャストで考えるということが基本とされております。
この二つの思考方法はどちらがいい悪いというわけではないわけですが、全く異なる。しかも、これを非常に短い時間軸、今お示ししているグラフの中でも二〇二〇から二〇五〇という、ある意味、三十年弱の中でつなごうとすると、今大きな段差が生じがちになっているといったところが現状だというふうに思います。
こうした現状に直面する場として、気候変動をめぐる国際交渉、こちら私も長年拝見しておりますけれども、ここでは、直近のCOP27に参加したときに諸外国の産業界との情報で得た所感というところを一つにまとめさせていただいております。
ポイントだけ申し上げれば、先ほどの気候変動政策のあるべき姿とエネルギーの現実とのギャップといったようなものが、ウクライナ危機やエネルギー価格の高騰、こういったものによって鮮明にはなっているものの、COPの場ではあるべき姿を追求するという議論になるという状況になっております。ただし、新興国や途上国、こうした国々が排出の大宗を占めるようになっている。もう中国とインドが約世界の排出量の四割を占めようという勢いになっている中で、これまで欧州がリードしてきた規制強化や再エネだけを推進するといったようなこと、これでは達成が難しいということが明らかになりつつあるというふうに言えるかと思います。
少しそれますけれども、G7の議長国として日本が果たすべき役割といったようなものは、G7に参加する国を合意に導くということだけでは決してなく、G20あるいはそれ以外の国との懸け橋を果たすということではないかというふうに考えております。
国際交渉という場を離れて、各国がこの気候変動政策、どういうふうに施策として取り込んでいるのかといったようなところを見ていきたいというふうに存じます。
各国の政策を見ると、気候変動、これを産業、雇用政策として明確化している事例が出てきております。特に、米国で二〇二二年八月に成立したインフレ抑制法、略称でIRAとも言われますけれども、こちらが各国に与えたインパクトは非常に大きなものだったということでございます。
詳細は御説明できかねますけれども、まず二〇二二年から二〇三一年の十年間で約三千億ドルの財政赤字を削減する。要は現世代から捻出した原資で重点分野に将来投資をするというものですが、投資分野の八五%がエネルギー安全保障と気候変動の分野です。化石燃料を豊富に持つ、原子力も再エネもたくさん持っているアメリカにとって、エネルギー安全保障というのはそれほど重要な目指すべきターゲットではないということになると、要は気候変動への投資ということになります。投資する原資を現世代の財政見直しによって捻出しているという点に加えて、投資の振り向け方、お金の使い方についても、社会実装を確実にする税額控除を多用している点や、技術ごとの支援のガイダンスを、これ多分相当産業界と政府側がコミュニケーションを持って策定しているなど、参考にすべき点が多々ございます。
そして、米国という世界最大の経済大国が、カーボンプライシング、これ後で御説明申し上げますが、これを導入、基本的にせずにこうした多額の支援をする。ある意味、北風と太陽でいえば、太陽方式でこの分野をリードしているという点は、欧州など規制型でこの問題に対処しようとしていた国に大きな衝撃を与えました。製造拠点をアメリカに移そうという産業界の動きも多発して、他国から米国を保護主義として批判するという向きも出ておりますが、欧州が先に言い出しておりました国境調整といったようなものも、中国やインド等からは緑の皮をかぶった保護主義と批判をされてきたところでございます。
WTOが十分機能しない中で、各国が気候変動、言わば盾といいますか、みのといいますか、表現難しいところでございますけれども、保護主義を強める動きがある中で、我が国がこれはどう動くのかといったようなところは相当の戦略が必要になるかというふうに思います。
さて、ここで、我が国の戦略を議論する場として設定されたGX実行会議、私も委員を拝命して参加をさせていただきましたが、こちらで示された基本方針及び本国会で審議されている束ね法案、GX束ね法案に対する私なりの評価と課題を整理したいというふうに思います。
政府が、CO2を減らすと、脱炭素という言葉にとどまるカーボンニュートラルではなくて、成長戦略としてGXに取り組むというふうに明確化したことはまず評価を申し上げたいというふうに思います。GXというのは、基本方針では省エネですとか再エネ、水素などを含めて網羅的に書かれているわけですけれども、主要な論点であったと私が認識をしているこの緑に囲まれた三つの点について補足を申し上げたいというふうに思います。
まず一点目、電力システム改革、自由化の修正でございますけれども、今、エネルギー供給側が投資判断を非常にしづらい状況にございます。
その理由、まず四点申し上げますが、一つ、一点目申し上げると、電力需要というのは、今までほぼ人口や経済成長、要はGDPとリンクをしてきました。今後、人口減少が進めば、二〇五〇年には一三年比で八割程度の電力需要になるというような可能性がございます。しかし一方で、温暖化対策を進めるということになりますと、大きな柱は需要の電化、例えば、ガソリン車を電気自動車に乗り換えるといったようなことと電源の脱炭素化、これを同時に進めるということになります。電化が進むということになると、電力需要は増えるということになる。ここに加えて、デジタル化が加わりますので、二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するには現状比一・五倍の電力需要になるという試算もございます。
〇・八か一・五になるというのが非常に不透明な中で、設備が余るのか不足するのか分からない、非常に長期の投資回収を必要にするといったようなところもあり、投資判断が付きづらいというところがございます。
加えて、気候変動、これに真剣に取り組むという日本の方針は変わらないと考えられるわけですが、ただ、目標年限が前倒しにされる、例えば、今二〇五〇年カーボンニュートラルって言っているけど、四五年にしよう、四〇年にしようとなったときに、今投資をした、例えば石炭火力からLNG火力に投資をしてCO2を減らすという投資、これの投資回収がおぼつかなくなってしまうということが起き得ます。
こうした中で、エネルギーをめぐる国際動向も非常に激しく変化をしているといった中で、CO2の価値、あるいはエネルギー安定供給や安全保障といった市場で、マーケットで可視化することが非常に難しい価値、この実現を市場任せにするということが果たして日本という特にエネルギーの安定確保が難しい国において適切であったのかという議論が必要であるかというふうに思います。
需要側も投資が必要で、それの投資判断が難しいということをスライド十の方で補足をしておりますが、ここは割愛させていただきます。
スライド十一において、もう少し解像度高く、電力安定供給に必要な要素を見てまいります。
電力安定供給には、発電設備、言わば工場です、燃料確保、言わば原材料、そして送配電網、ロジスティクス、この三つがそろう必要がございますが、設備投資が確保される規制料金制度、この下では、発電、①ですね、発電設備あるいは送配電設備といった設備投資が問題になるということは基本的には余りなかったので、長年我が国にとってのエネルギー政策というのは、②の燃料確保に向けた資源外交や多角化、多様化といったようなところでございました。
それが今どういう状況かと申しますと、発電設備は原子力が長期を停止している、加えて火力発電、これが再エネの増加や自由化市場に置かれているといったようなことで休廃止が増加をしております。そして、燃料の契約といったようなものも長期契約が難しくなってきている。送配電網といったようなところも、再エネ大量導入に向けた投資も必要ですけれども、人口減少、過疎化によってネットワーク型のインフラの維持が既に難しくなっているという状況がございます。
スライド十二は、先ほど申し上げた供給力が減少しているといったような点。右下にお示しをしているように、再生可能エネルギーは相当の勢いで増えています。この十年間、我が国が増やした太陽光のスピードというのは世界に類を見ないスピードでございましたが、一方で、原子力や火力が減っている供給力の減少というようなところを補足したのがスライド十二。
そして、スライド十三は、燃料調達の長期契約が自由化や再エネ大量導入等によって減ってきてしまっているといったようなところをお示ししたものでございます。インフラ中のインフラといったような電力、かつ、ためることができずに同時同量を果たさなければいけないといったようなものの電力システムの在り方、これを考え直す必要があるといったようなところでございます。
スライド十四、十五は、ちょっと補足のスライドでございますので割愛をいたしますが、今申し上げた、スライド十六であるべき電力システムの姿とは何かといったところを申し上げたいというふうに思います。
我が国の電力システムが確保すべきやっぱり要件というものを最初に三つ定義をさせていただいております。やはり、一つのエリア、特に小さく、北海道、本州、本州も幾つかの島、そして九州といったように分断された状況の中で、かつ国内に化石燃料資源を持たないといったようなところも踏まえ、一定の冗長性を持った供給力の確保。そして、電力を安価にするのであれば、電力コストの大宗を占める資源市場、ここでバーゲニングパワーを持つといったようなこと。そして、リスク分散をする投資が可能であるといったようなこと。こうしたところのあるべき要件から、あるべき姿、ここを導き出していくことが極めて今求められているといったようなところ、ここを書かせていただいております。後で御覧をいただければと思います。
次いで、大きな論点となりましたのが、原子力の立て直しでございます。
GX実行会議では、ほとんどの委員から、原子力の必要性や事業の立て直しを迅速に進めるべきとの指摘がございました。しかし、原子力というのは、次のスライドに行っておりますが、発電事業の一つと技術として扱うには余りに特殊性が高い。初期投資が巨大で、事業期間、投資回収期間が長期にわたるということと、事故時の賠償やバックエンド事業などの不確実性、資金調達コストの抑制や高い稼働率を維持すれば安価な電力を供給するポテンシャルを持ちますけれども、それらが十分でないと高コストになってしまうと。
私が損益分岐点となる設備稼働率を試算すると約七割というふうに出ました。粗い試算でございますが、海外では九五%を超える原発稼働率というのは全く珍しくないわけですが、日本では何かあれば止めるといったようなことになりがちで、民間事業者のリスクで対処すべきリスクを超えるリスクが大きく存在するという技術でございます。
スライド二十では、原子力事業といったものの健全性を確保するには、制度、政策、安全の規制、そして社会及び立地地域の理解などが、事業のフェーズ、それこそフロント、バック、リスク対応、ここにおいて面的にそろっていないとどこかで事業が行き詰まってしまうということをお示しをしております。
原子力事業の立て直しについて持つべき視点につきましてはスライド二十一でお示しをしておりますが、規制の最適化や体制整備に向けて、補足のスライドをスライド二十二、二十三に添付をさせていただいておりますので、後で御覧をいただければというふうに存じます。
最後に、重要な点として成長志向型カーボンプライシングについて触れたいというふうに思います。
スライド二十四、二十五は、政府が提示された案の図なので詳細は割愛いたしますが、将来的な制度導入を前もってアナウンスすることで前倒しの投資を促す、負担が増えないように再エネ賦課金等のピークがアウトに沿う形で導入をする、また、電力など多排出産業には排出量取引を、その他の化石燃料には賦課金をといったような案が示されております。
ここで、カーボンプライシングのあるべき姿を考えてみたいと思います。このカーボンプライシング、国民の生活、経済に与える影響というのは極めて大きいと考えられるんですけれども、このあるべき姿といったところから考えてみたい。
カーボンプライシングというものが論理上うまくやれば、このカーボンニュートラルを費用対効果高く進めることに貢献する制度であるということは議論の余地はほぼないと考えております。しかし、この制度は様々なところに悪魔が潜みがちな制度でもあります。このポイントを五つ指摘しております。
まず、エネルギー間中立であるということと、国際的な公平性、負担の適切性、五つ書かせていただいておりますが、ここではポイントを絞って一と三について補足をさせていただきます。
エネルギー間で中立であるということなんですが、スライド二十七、お目通しください。
これから脱炭素化を進めていく上でのセオリーは、先ほども申し上げたとおり、需要の電化と電源の脱炭素化です。ただ、事業者の数のコントロールのしやすさ等から、電気は電気で排出量取引を導入し、その他の化石燃料は別の賦課金を導入するということになりますと、この負担の違いが出てきてしまって公正な電化を阻害するおそれがある。
実は今、再エネ発電賦課金といったようなものは、あれは再生可能エネルギーを導入してCO2削減をするという点におきましてある意味カーボンプライシングなんですが、電気にだけ賦課をされているということで、電化を阻害する要因になっているといったようなところで我が国では最初の一歩が進まないということになりかねないというところでございます。
もう一つの、補足すると申し上げました負担の適切性でございます。
消費者の行動変容を起こさなければいけませんので、負担に気が付かないような金額、小さな負担では意味がないわけですが、代替手段を確保せずにエネルギーという究極の必需品にカーボンプライスを掛けると生活に大き過ぎる痛手ということになります。二〇五〇年のカーボンニュートラルをこうしたカーボンプライシングだけで実現しようとすると天文学的コストが必要とされる。SDGsもそうした面を、負担という面を極めて小さくしていく努力が必要ではありますが、カーボンニュートラルといったようなところも投資、負担、痛みを全く伴わないというわけでは決してないといったところ、これを政治がまず認識する必要があるかと思います。
カーボンプライシング、これは制度、様々な方法がございまして、我が国はオイルショック以降、様々な規制等で対応してまいりました。ただ、これは、欧州が言うような明示的、すなわち法目的にCO2排出量に見合うコスト負担になるといったような要件を満たすとか、法目的にCO2削減をうたっているといったようなカーボンプライシングではないというところでございます。
ちょっと飛ばさせていただきますが、我が国のカーボンプライシング、我が国の特徴というのは、暗示的なカーボンプライシングの負担といったようなものが極めて大きいということです。再エネ発電賦課金と自動車関係燃料諸税だけで七兆円程度の負担をさせている。これを国際的にカーボンプライシングとして認めていただくということは非常にハードルも高いというふうに認識をいたしますけれども、ただ、こうした負担を国民、産業界がしていることを前提として制度設計しないと負担が非常に大きくなるといったようなことを私は懸念をしております。
こうしたところから、こうした制度設計をするに当たっての提案といったようなところをスライド三十三に最後にお示しをさせていただいて、私のお話をこちらで終えさせていただきたいと思います。
御清聴いただきまして、ありがとうございました。
○会長(宮沢洋一君) ありがとうございました。
次に、高村参考人にお願いいたします。高村参考人。
○参考人(高村ゆかり君) ありがとうございます。本日は、調査会にお招きをいただきましたこと、この場を借りて、この場でお礼を申し上げたいと思います。(資料映写)
私は法学を専門にしておりまして、特に国際的な法律、条約、国際条約などを専門にしておりますが、その中でも特に環境分野の法を専門にしております。あわせて、二〇一四年頃からだと思いますけれども、国のエネルギー政策、特に再生可能エネルギーの政策に関わらせていただいております。先生方の御承認を受けて買取り制度の運用の委員会を務めさせていただいております。
本日、また限られた時間ではございますけれども、とりわけ昨今の資源エネルギー、そして持続可能な社会をめぐる情勢について、本日は四点大きくお話をしたいと思っております。私、いろいろな資料をたくさん付けてしまう悪い癖がございまして、適宜飛ばして、省略してお話をさせていただこうと思います。
お二人の参考人からもございましたけれども、二〇二〇年に日本が二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すという目標を表明して以降、特に気候変動対策、大きく動いてきていると思います。二〇二一年に先生方の御審議を経て改正をされました地球温暖化対策推進法の基本理念の中にこの長期目標は既に盛り込まれております。国、自治体、事業者、国民が対策を取る際の基本理念として位置付いております。
最初にお話を申し上げたいと思いますのは、この気候の分野は、御存じのとおり、気候変動に関する政府間パネルという、IPCCという、科学者が研究成果をお互いにレビューをし合って報告書をまとめていく、そうした母体を持っております。ちょうど最新の報告書の、取りまとめた報告書が三月に出ておりますが、その中で私が重要と思いましたメッセージ、二つございます。
一つが、決定的な十年というメッセージであります。
先生方もお気付きのように、ここ数年を見ましても、特に日本の場合は雨あるいは台風などによる被害が地域で起きております。例えば、二〇一八年は西日本豪雨、七月にございました。岡山県、広島県あるいは九州地方、四国、そして岐阜県などでも大きな被害をもたらしましたが、実に二百名を超える方が命を落とされた水害、豪雨ではございます。
気候の科学の分野で気候変動がこうした異常な気象現象にどれだけ寄与しているのかということを定量的に示すことができるようになってきております。こうした西日本豪雨に関して言いますと、こちらにお書きしていますように、我々の過去の排出によって雨の降る量が上乗せされているという評価をしています。六・七%という、これは気象研究所のグループが中心になったものですが、この六・七%の上乗せが史上最高の降雨を降らせた、四十八時間雨量、七十二時間雨量ですね、史上最高の記録を、雨を記録をした地点を大きく増やしているという評価をしております。
こちらの翌年には、二〇一九年にこちらの首都圏に参りました台風十九号ございました。こちら、実に東日本で百四十六か所の河川の決壊を招いた台風でございます。スライドの七枚目にお示ししていますが、この年、世界で最も大きな経済損失をもたらした自然災害でもございます。二〇一八年、一九年は損害保険会社が一兆円を超える自然災害、気象災害による支払を行った年でもございます。
今お話をいたしましたのは、スライド四に戻りますけれども、気候変動のリスクがかなり現実的な経済損失として生じてきているという認識であります。ちょうどこの三月二十日はアメリカのバイデン大統領が経済報告書を議会に提出をしましたけれども、そのアメリカ経済に与えるリスクの一つとしても気候変動というのが挙がっております。
このIPCCの報告書がなぜ決定的な十年というメッセージを私出してきたかといいますと、パリ協定の掲げる目標の達成には、遅くても二〇二五年までには世界の温室効果ガスの排出量を頭打ちにするような対策が必要だということを記しております。こちらにその一・五度目標、二度目標、これはパリ協定で合意をされた目標ですが、三五年、四〇年、五〇年と、どれぐらいの規模感で排出を減らしていく必要があるのかということを示唆している科学の知見をまとめたものでございます。
二つ目のこの報告書のメッセージとして申し上げたいのは、二〇一四年の先立つ報告書から数年の間で、目標の引上げ、政策、法令というのは、極めて大きく日本だけでなく拡大をいたしました。課題は、それを本当に効果のあるものとして実施ができるかどうか、実施ができているかどうかというところに課題があると評価をしています。
こうした中で、スライド飛ばさせていただきますけれども、今、それではどこが課題かということで、スライドの十三枚目のところを御覧いただければと思います。
今の我々の社会のありようそのままで参りますと、二一〇〇年には二度を超える気温の上昇がもたらされるおそれがある。本日、資料飛ばしましたけれども、気温が上がっていきますと、先ほど申し上げた気候の変化が更に大きくなるという予測も報告書は示しております。
日本も二〇三〇年の目標を大きく引き上げたことで、これは世界も大きく引き上げたわけですけれども、世界各国も引き上げたわけですが、世界の排出量は下方に転じる、減少に転じる機会を今直面をしております。そういう意味では、今の掲げている対策をしっかり取っていくということがまず第一に重要であるということであります。先ほど言いました、目標は出た、これをどうやって魂の入ったものにするかということが課題であります。
しかし、もう一つの課題は、一・五度といった目標と照らしますと、それでもなお三〇年に世界が必要とする排出量を実現できる目標にはなっていないということです。五〇年、六〇年時点の長期の目標はかなり整合したものになっているわけですが、三〇年の時点で見ると、その目指したい気候変動のリスクができるだけ抑えられた社会の実現ということが難しい道筋に我々の三〇年辺りの政策の水準があるということです。
それゆえに、この十年ほどの間に、このまま推移をしますと、三〇年、それを越えた頃には一・五度を超えてしまうおそれがあるということでもあります。それゆえに、決定的に重要な十年というメッセージです。
じゃ、これをどうやって埋めるかということでありますが、当然、あと数年、まあ十年ほどの間ですと、今手元にある実は技術でその足りない部分を埋めることができるという分析が、エネルギー分野について少なくとも国際エネルギー機関から出されています。他方で、将来を見たとき、更に大きく削減をしていくためには新しい技術も必要です。
したがって、私たちは、これは私たち研究者もそうですし、同時に、まさに政策をおつくりになる政策決定者のところで必要だとお願いをいたしたいと思いますのは、今、二足のわらじを履いていただく必要がございまして、足下でいかに将来の持続可能な社会実現のために対策を強化できるか、そして、更にその先のより良い持続可能な社会づくりのためにどういう仕込みが、新しい技術の開発も含めてどういう仕込みができるか。少し時間軸が違う、しかし今まさにやらなければいけないことが二つあるということであります。
二点目でございますけれども、先ほど申し上げましたように、先生方のこの国会におきましても、日本でも多くの実は法令をこのために制定をしていただいております。
スライドの十九枚目でございます。
特に、二一年、二二年の通常国会見ていただきますと、プラスチック新法を始めとして、多くの脱炭素あるいは持続可能な社会実現のための、まさに魂を込める法改正が行われております。
その具体的なやはり狙い目といいましょうか、焦点が二つあると思っていまして、一つは地域であります。まさに、その人々が住んでいる、スライドの二十一辺り御覧いただければと思いますが、自分たちの地域を排出をできるだけ抑えた持続可能な地域にしていきたいという取組が先行的に動いてきております。見ていただきますと、それぞれの自治体に加えて、企業、金融機関も協力をしてその地域の取組を進めています。
その中で、スライドの二十四でございますけれども、もちろん脱炭素化のためではあるわけですが、この脱炭素化を進める中で地域の諸課題を解決する取組というのが進み始めています。
これは千葉県の睦沢町の取組ですが、ちょうど台風十五号で千葉県房総域で停電が起きたときに、再生可能エネルギーとコジェネレーションをちょうど直前に入れて、これが停電期間中の住民の生活を守ったという取組の御紹介であります。
さらに、今、農業人口が極めて大きく減ってきている、高齢化も併せて直面しているわけでありますけれども、こちらは千葉県の取組、千葉県匝瑳市の取組ですけれども、発電事業をしながら、そこで得られた収益で、例えば不法投棄、農地に不法投棄をされた廃棄物の撤去ですとか、あるいは若手の農業者の育成支援といった形でこうした収益を充てていく取組が進んできております。
ここで申し上げたいのは、カーボンニュートラル、脱炭素の取組というのは、うまく設計をするとこうした地域が抱える課題についても対処ができる可能性を持っているという例としてここで御紹介をいたしました。
もう一つ焦点が当たっているところというのは企業でございます。日本の気候変動政策も大きく変わってきていると思っておりまして、一つは、もちろんこれは環境対策なのでありますけれども、大きく脱炭素に向けて変わる日本と社会のマーケットに対応した産業の競争力強化、産業政策として行われているという点であります。それは同時に、民間ベースでも気候変動を中心にサステナビリティー、持続可能性を考慮した企業経営に着目をして、金融市場、金融機関や、まとめて言えば金融市場、資本市場がそれを評価し始めているという点であります。
皆様御存じのとおり、ESG投資という言葉、耳にされている、環境あるいは人権など、こうした環境、社会配慮を考慮をした投資というのが元々二〇一五年辺りから世界的に進み始めていたわけですけれども、それを大きく、民間ベースで行われてきたこうした取組を大きく拡大するためには、企業自身がそのサステナビリティーを考慮をした取組を情報開示していただかないといけない。この情報開示、ディスクロージャーを政策で支えるという動きであります。
これはスライドの三十一でございますけれども、金融機関自身が既に、自身の排出削減はもちろんでありますが、例えば今、三つのメガバンクさん、フィナンシャルグループは二〇三〇年までに自社の排出をゼロという目標を掲げていらっしゃいます。今、その目先、目線といいますのは、世界的には、投融資をしている先の企業や団体の排出量を五〇年頃には全体としてゼロにするという目標であります。こちらに、機関投資家ですとかアセットマネジメント会社、資産運用会社、そして、今申し上げました銀行、保険会社でこうした取組を世界的に協力して進めている日本企業のお名前を紹介をしております。
今、ディスクロージャー、情報開示というお話を申し上げました。スライドの三十四でございます。
民間ベースで進んできたこの取組が、今、国際的に統一した情報開示の基準を設定をして、それを使ってもらうという動きに変わってきております。今まではばらばらと民間の企業が、民間の団体がですね、この情報開示の指針を作ってきていたわけでありますけれども、それを国際的に統合した基準を設定するようになってきています。
日本におきましても、これに対応する形で日本版の基準を設定をすることが始まっております。さらには、金融庁を中心に審議をし、審議会で審議をして、有価証券報告書の中に、ですから、上場企業については、こうしたサステナビリティー情報の開示の義務化がこの三月末以降に有価証券報告書を出す企業に対して求められるようになっております。こうした動きは、先ほど申し上げました自社の排出量だけでなく、自社のビジネスに関わるサプライチェーン、バリューチェーン全体の排出を削減をし、まず把握をし、管理をし、削減をし、そして将来的にはゼロにしていくという、こうした取組と結び付いているものであります。
スライドの三十六。
御紹介しておりますけれども、日立製作所、ソニーグループ、先ほど三つのメガバンク、フィナンシャルグループ御紹介いたしましたが、日立製作所は五〇年まで、ソニーグループは四〇年までにこれを取り組んでいく、自分たちのビジネスに関わるサプライチェーン、バリューチェーンの排出量をゼロにしていくという動きです。
これ、グローバルな動きになっておりまして、マイクロソフトの例、サプライヤー選定の際にこの排出量の取組を見てサプライヤーを決める取組、アップルでありますけれども、再生可能エネルギー一〇〇%でアップル製品を作ってくれるようにサプライヤーに働きかける取組、こうしたグローバル企業の取組に対応するものでもございます。
こうした機会は日本企業はむしろ先駆けてビジネスチャンスとして動いている企業もあるという御紹介がスライドの三十九でございます。
データ処理というのは当然ビジネスの場面で排出の源になる、排出源にもなり得るわけですけれども、それを再生可能エネルギーでゼロエミッションのデータセンターを、データ処理を提供するというのを、北海道、再生可能エネルギーのポテンシャルの大きな北海道石狩市と協力して行われているものであります。これは、先ほどありました脱炭素のモデル地域としても選定をされている地域であります。
さて、三つ目に申し上げたい点といいますのは、今、カーボンニュートラルを中心にお話を申し上げましたけれども、この問題が、資源循環、サーキュラーエコノミー、そして生態系の保全、自然の再興といった問題と結び付いたものとして認識をされ始めたということであります。
もう先生方には当たり前のことと思われるところがあるかと思いますけれども、元々、ここ、プラスチック見ていただくと、海洋汚染、海ごみの問題として認識されたわけですが、汚染の問題、健康の問題、そしてさらには、それを焼却をしたときの温室効果ガス、気候変動の問題とも連関している典型的な問題です。
生物多様性の悪化がここ数十年の大きな減少を、ここ数十年、生物多様性が大きく減少してきていますが、その原因の一つとして科学者が評価をしていますのは、我々の土地や海の利用に加えて、気候変動というのが入っています。
また、気候変動に本当に対処をしていくとすると、バイオマス、バイオ資源をうまく使っていくことも必要です。こうした気候変動、自然生態系の保全との連携に加えて、昨今、スライド四十六でございますけれど、注目されていますのが、気候変動とサーキュラーエコノミー、循環経済との関係であります。
世界の排出量に占めるマテリアル生産に由来する排出量がかなり大きなものにこの数十年でなってきている。しかも、バージン材ではなく再生材をうまく利用していくとCO2の削減効果があるということも、環境省あるいは経産省の報告、調査の中でも分かってきています。
日本は3Rといった形で、こうした資源循環には非常に熱心な、もったいないという言葉に象徴されるように非常に熱心な国民性と政策があるわけですけれども、まさにこうした資源循環、循環経済の実現が排出削減にも気候変動の問題にも貢献し得るという問題であります。
ただ、もう一つ、先生方へのメッセージとしてもう一つ申し上げたいのは、この問題は国の経済安全保障、資源安全保障の点からも重要だという点であります。
今、大きくエネルギー転換をしていこうと、カーボンニュートラルに向けてしていこうとしていますけれども、それに伴って必要な鉱物が、スライドの五十一でございますが、大きく変わります。
必要な鉱物の所在というのは、いずれも鉱物はどこかに集中して偏在しているケースが多くございますけれども、資源に乏しい日本としては、獲得をした資源をできるだけ丁寧に使い尽くす戦略、あるいは偏在している資源に依拠しないために新しい素材を作り出している技術政策、こうしたものとともに進めていく必要があるというふうに思っております。
最後でございます。二〇二二年の二月、ウクライナ侵攻を経てなおその状況の中で、とりわけエネルギー、食料、様々な分野で影響が出ています。ここでお示ししているのは、特に化石燃料価格の上昇を見ていただきますと、二〇二二年から約半年の間で石炭の価格上昇、大変顕著であり、原油、天然ガスについても同様であります。
円安の傾向も、円安の理由もございますけれども、輸入量は変わらないけれども、日本が輸入し対外的に払うお金というのはこの一年で三倍以上になっております。世界的に見ますと、エネルギー消費をできるだけ減らすエネルギー需要側の対策、そしてエネルギー供給をできるだけ国産化、内製化していく、そうした取組というものが進んできています。
これはお金のレベルでスライド御覧に入れていますが、まさにこうした中でこそと言えるかもしれません、再生可能エネルギーの投資は史上最高の五千億米ドルに近づいておりますし、同時に、先ほど言いましたエネルギー需要側の投資というもの、こちらは熱の電化、交通の電化、そして新しい持続可能な、例えばバイオマスを使った燃料の創出、こうしたところに大きなお金の流れが生まれております。
その結果、二〇二二年、大変懸念をしておりましたけれども、経済成長三・二%、世界的にGDP三・二%増えたのに対して、全体としての排出量の伸びは大変幸運なことに〇・九%増になっています。しかし、史上最高の排出量を記録したということでもございます。
企業の取組は、このウクライナ侵攻下の様々な状況の中でも、特にネットゼロを掲げる大排出企業の取組は進んできております。いかにこうした素材価格やエネルギー価格の高騰に対処をしながら、しかし将来的にはエネルギーの内製化、資源の内製化がより強靱なエネルギーシステムと資源システムを日本にもたらすとすると、私はここに政策の大きな役割と期待を感じております。
最後でございます。今日、お二人の参考人もおっしゃった一つのキーワードは、変化だというふうに思います。大きく変化をしている、しかも持続可能な社会に向けては大きく変化しなければならないという課題の中で、私は政策に大きな期待をいたします。それは、先ほど申し上げましたように、単に一つの課題だけではなく、うまく政策を設計できるとすると社会が掲げるそのほかの課題にも貢献することができるという点であります。まさにそうした政策の構想力というのが今問われているというふうに思っております。
先ほど、短期的な視点と、今行っていただく対策として今何をするかと同時に、更にその先を見据えた二つの時間軸の違う対策を考えていただきたいというお話をいたしました。これ、今、短期をなぜと申し上げますのは、まさに決定的な十年という気候変動対策や生物多様性の保全の観点からもそうですが、企業にとってみますと、今まさに事業の中で収益が上がって投資を振り向けることが、将来の新しい技術を生み出していく、将来の新しいビジネスモデルをつくっていくために必要だからです。
今申し上げましたのは、いかにこうした民間主体の取組、地域の主体を後押しをしていく政策というのが非常に重要であること、そしてこうした政策の中で、経済安全保障や資源の安全保障、エネルギーの安全保障をいかに実現していくか、こうした観点から、先生方に大きな期待をし、今日の議論を楽しみにしております。
どうも御清聴ありがとうございました。

【略】
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
私も、順番を変えて高村さんからお願いしたいと思います。
私自身は、一九七〇年代初頭から、アフリカのフィールドワーク、そして水環境問題、世界中で五十年やってきて、ここまで言わばローマ・クラブの予測が本当にそうなってしまったんだということで、大変ライフワークとしてもショックを受けている今なんですね。
それで、やはり、今何が起きているのかというときに、確かに、技術の問題あるいは制度の問題、環境保全というのが世界的な問題になってきたのは有り難いんですが、そこで過剰に反応して見失われている価値があるんじゃないのかということで、特に高村さんには、それこそ災害が今増大している、水害が増大している、だからすぐにダムだとか川をコンクリートにしようということで国土強靱化と、ざっと動いているんですけど、元々日本はいっぱい水害、津波あったわけです。五百年、千年、その中で生き抜いてきた人々の伝統的な力というのがあったわけで、それはどの地域社会にもあったんですけど、そこを少し光を当てて、そしてやはり、生物多様性という言葉はなかったですけど、やっぱり生き物の命が大事だ、蛍やアユの命が大事、そして、余り川は固め過ぎないようにしようという柔らかな関係性づくりがもう何百年とあったと思うんですね。その辺のところに少し光が当てられないでしょうかというのを是非高村さんにお伺いしたいと思います。そこがあると、今、地域社会、それこそ五百年、千年生きてきた、水田耕作から森林を守り、川を守ってきた人たちの伝統的な力が発揮できて、もう丸ごと地域社会、関わっていただけるんじゃないのかという希望もあるんですけど、その辺り、いかがでしょうか。
○参考人(高村ゆかり君) ありがとうございます。
嘉田先生が冒頭にまずおっしゃった、私、今日、新しい科学の、最新の科学が伝えることを申し上げましたけれども、振り返ってみますと、三十年前に気候変動の分野で科学が示していたことが残念ながら当たっているというのが気候科学の分野の共通した認識になっていると思います。
その上で、先生が御指摘になった点、私、今日スライドを飛ばしてしまったところでございますけど、スライドの四十四、四十五のところで書かせていただいております。
気候変動とそれから生物多様性、サーキュラーエコノミー、循環経済のこの連関の中で、気候変動の問題と生物多様性の問題がリンクをしている、その中で、気候変動対策を取るにしても何をするにしても、生態系の力とそして地域の伝統的な知恵を生かした政策というものが地域の中で実際に対策を進めていく上で大きな役割を果たすということであります。それは、幾つか今日、千葉の睦沢あるいは匝瑳市の例を御紹介しましたが、この十二月、昨年の十二月にモントリオールで開催されました生物多様性条約のCOP15でも、三〇年に向けた戦略枠組みの中の一つの重要な点としてその点指摘をされております。
自然を活用した解決策、それから地域の伝統的な知恵、知識を生かした解決策というものをこうした持続可能な社会構築に使っていくという、これが国際的にも合意をされた科学に基づく合意であるというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
その辺り、日本は環境社会学者の人たちが、また環境法もそうですけど、随分蓄積しておりますので、これも国際的に発信していただけたらと思います。(発言する者あり)ありがとうございます。
お二人目で、時間がもうないですか。よろしいですか。時間が……
○会長(宮沢洋一君) いや、まだ今日は大丈夫ですよ。
○嘉田由紀子君 行けますか。はい。
実は、竹内様にお伺いしたいんですけど、私も今のエネルギーの価格の高騰、そしてウクライナの問題考えると、原子力は使わざるを得ないのかというようなことも考えながら、ただ、やっぱり若狭のあの原発銀座、万一のことがあったら琵琶湖が、生き物、水が駄目になると。これ、もう滋賀県中の人たちが、あるいは関西一千五百万人の人たちがいつも突き付けてくるわけですね、政治家としてあなたはどうするんだと。
そして、この万一の事故の問題、それからバックエンド問題、廃棄物、この辺りについて、そういう質問されたときに竹内参考人だったらどうお答えになられますか。難しいことでごめんなさい。
○参考人(竹内純子君) 大変難しい御質問をいただきまして、ありがとうございます。ただ、これは私も常々いただく御質問でもございます。
やはり、原子力を使うリスクというようなもの、これは福島の事故によってみんなが目にしたわけでございます。一方で、原子力を使わないリスクというようなことがじわじわと今我々の生活を圧迫したりしているといったような中で、本当に、じゃ原子力を使うリスクはどこまで抑えられるのか、そして、それでも万が一事故が起きたときにどういう対処を取ってくれるのか。この防災計画辺りの実現性といったようなところは、地域の方たちは特に、そして広く広域の皆様もお気になるといったような、お気になる、気になるレベルではなくてですね、そこを政治家の方に問いたいといったような御質問が出るというのは、これは極めて当然のことであろうというふうに思います。
こうした中で、私自身がどうお答えしているかということについて申し上げれば、一点目、やはりその使うリスクと使わないリスク、こういったところを比較考量するといったようなところと原子力を使うリスクをゼロにすることは、これはもちろんどんな技術でもできないわけですけれども、一方で、事故が起きたときの防災計画等を、これは国と地方が極めて綿密に策定をするといったようなところが必要であるといったようなところを申し上げるということ。
そして、どんな国民の方も気にされるのが、実はバックエンドの問題というところがございます。ただ、バックエンドの問題、特にこの問題、多分皆様おっしゃっているのは、廃棄物の最終処分のことをおっしゃっていると思うんですけれども、これは技術的な問題か政治的な問題かでいえば、私は政治的な問題だというふうに理解をしております。技術的に、この廃棄物というようなものを地層深くに埋めて最終処分するということは、これはもう国際的にコンセンサスを得ているといったようなお話になるわけですけれども、じゃ、これが日本の国内に一か所しかない、発電所はあちこちにあるにもかかわらず、一か所しかない最終処分場というようなものに自分の自治体がなるといったようなところに対する政治的なある意味抵抗感といったようなところがあろうかと思います。
ただ、ここにつきましては、北海道の二自治体が文献調査に応募するなど進展も見られる。これは、最終処分をするまでの時間が長い分、ある意味時間を掛けて議論をしているところも政治としてはあるんだろうと思いますけれども、こうしたところに対して、国がしっかり取り組んでいるといったことを見せるということが極めて重要ではないかというふうに考えております。
お答えになっていれば幸いでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます、大変難しい質問を。
もう時間終わっていますか。いいですか。
○会長(宮沢洋一君) もうちょっとならあるけど、ほぼなくなりつつあります。
○嘉田由紀子君 申し訳ございません。では、最後に一言、蟹江様に。
先ほど教育の問題もあったんですけど、地域社会でずっと昔からの知恵を見ていると、まさにもったいないとか、あるいはおかげさまで、程々にと、SDGsという言葉ではないんですけど、お互いが相互扶助の中で生き抜いてきた知恵、これは特に国際的に見て日本の農山村は強いんですね。
そういう知恵もこのSDGsとつなぐようなことができると、地域の方たちが、あっ、単に国連で外から来た話じゃないんやと、私らが今まで気を付けてきたことを続けたらいいんだというような地域の自信にもつながると思うので、その辺りどうでしょうか。
○参考人(蟹江憲史君) おっしゃるとおりで、SDGs、グローバルな目標なんですけれども、やり方が、SDGsのやり方が国連で書かれていないというのは、全てその地域あるいは国で責任を持って考えてくださいと、実施に関しては、ということです。ということは、今おっしゃられたように、もったいないであるとか、そういう日本に元からあるコンセプトをうまく生かしながら実施をしていくということが非常に大事だと思います。
したがって、一見、長期的でグローバルな目標、我々の生活と離れているような感じがしますけれども、でも実は解決方法は我々身近に持っていたりとか、それをするので、もう一度棚卸ししていくということが大事だと思いますし、ただ、それでは解決し切れないグローバルな話というのもあります。気候変動の問題というのはその極端な一つの例だと思いますけれども、そこに関しては、やっぱり新しい技術であるとか新しい考え方とかを加えて今あるものをより良くしていく、そこで一気に変えていくというところが必要だと思います。
伝統的な考え方がいいというと、戻ってしまうのかというふうに考える方もいらっしゃるところもありますので、伝統的な考え方大事にしつつ新しいものを取り入れていく、そのための道しるべがSDGsということなのかなというふうに思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございました。以上です。お三方、ありがとうございます。

先頭に戻る