Facebook 2018年3月9日

今日3月8日は「国際女性デイ」、日本の男女格差を示すジェンダーギャップ指数でみると日本は「144カ国中114位」(世界経済フォーラム、2017年)。この機会に、以前からこのFB上でも紹介をさせてもらっている「元なでしこジャパン」の澤穂希さんの女性としての人生計画、紹介させて下さい。「サッカーのために低用量ピル」(朝日新聞)、「低用量ピル服用と検温は欠かさず実践」(日経ウーマンオンライン)。3月8日(また長いです:微笑)。

女性が仕事や学業と子産み・子育てを両立しにくいことが、この国の少子化のひとつの原因であることがようやく社会的に問題になりはじめました。1970年代に日本では少子化がすでにはじまり、その時代から「両立できる社会的支援を!」と叫んできた私自身、今の世の中の動きを歓迎しています。保育園、学童保育、育児・介護休業法(本当は育児・介護参画法とすべき)、など制度は整ってきました。しかし、そこで圧倒的に欠けているのが、女性の体や性のあり方に対する知識・情報の欠如です。

確かに子どもの命は人間として神から「授かる」ものかもしれません。人為的に操作するべきものではないでしょう。神聖な領域の、神秘的な出来事。とはいえ、正式に結婚していない、あるいは子どもを育てる心理的・経済的・社会的環境が整っていない、などの理由で、希望せぬ妊娠による中絶が日本では今でも年間20万件近くあります。

統計にのらない中絶はもっと多いかもしれません。年間の出生数が97万人という数字とくらべるとほぼ5分の1。女性の身体的・心理的ダメージもはかりしれない。またもし出産しても、望まない妊娠や出産・子育てはその後の虐待やニグレクトなど、子どもの生活破壊や、深刻な場合には命の危険にもつながりかねない。

仕事と子育ての両立を図るには、いわゆる「家族計画」が必要です。しかし今の日本で、女性の生理の仕組みや性的関係のありかたなど、確実に教え、伝える教育制度は極めて限られています。スポ大大学長として、保健体育の教科書をチェックしましたが、そこでは、人体的仕組みは説明されているが、その実践的な工夫や方法、まして具体的な家族計画はほとんどふれられていない。

そんな中で、私自身は、妊娠・出産を人生プランにあわせて「家族計画」をすすめるための、医学的知識、特に「低用量ピル」の使用をもっともっと女性たちの間に広めたいと思い、スポーツ大学の学長としても、この方針を示してきた。そんな折、澤さんの「告白」は大変インパクトがある。

澤さんいわく、20歳の頃から基礎体温をつけていたことや、定期的に婦人科を受診していたこと、試合でパフォーマンスを低下させないよう、低用量ピルを使って月経周期をコントロールしていた経験を語っています。大学を中退して渡米した時、米国のチームメートたちが10代の頃から婦人科で健診を受け、ピルを使用し、そういうことを恥ずかしがることなくオープンに話している姿を見て、驚いたと言っています。

低用量ピルは、排卵を抑え卵巣を休ませるメリットがあります。女性の体にある卵子の数は一生で2万粒ほどに限られています。排卵をおさえることで、たとえば20代から10年間ピルを服用することで、30代になっても20代の時代の若い卵子を体に保っておくことができる、というわけです。「妊娠の予定のない排卵はもったいない!」ということですね。若い卵子の冷凍保存などより、予算的にもまた効果としても確実でしょう。

澤さんは、選手を引退して即座にピルをやめすぐに妊娠し、無事に出産できました。澤さんは、実は10年近くピルを使い、37歳の時の妊娠卵子は20代の卵子だった、ということです。

実は私自身も43年ほど前ですが、新婚直後の留学先のアメリカで長男を身ごもり、学業を続けるべきか専業主婦になるべきか、とても悩みました。その時大学の心理学の先生がアドバイスを下さいました。「あなたのようにアチーブメント意識の高い女性は専業主婦で母親になったら子どもにもあなたにも不幸です。あなたは仕事をして社会貢献をして納税者になりなさい。その納税で、子どもは社会的に専門家に育ててもらいなさい。1日のうち23時間は自分の研究と社会貢献に使いなさい。でも1日1時間は子どもに愛情をそそぎない」というアドバイス。その後の私の人生を大きく支えてくれたアドバイスでした。

今40代の日本人の私の友人は次のように語っています。「カナダ留学中に、産婦人科医からピルを勧められました。このままだと、望まない時期の出産と育児になるし、日本人は、簡単に中絶するが、カナダではそうではない。どういう避妊で、大学卒業まで過ごすつもりか?と問い詰められた・・・ここまで、プライベートなことを聞かれるとは驚きましたが、女性の妊娠、キャリアはどうするのか?社会で真剣に考えてくれるんですね」と。

日本の低用量ピルの利用状況を調べると、順天堂大学が数年前に調べた女子アスリートの調査でも700人のうちたった2人しか利用していない。「低栄養」「無月経」「疲労骨折」が女性アスリートの三大課題として問題となっているが、低用量ピルの活用で、最初から月経を起こさないことで、貧血や疲労骨折などをふせぐことができ、アスリートとしての成果にもつながるという。

皆さんの回りには、お子さん、お孫さんなど、仕事や学業あるいはスポーツと子産み・子育てを両立したいと思っている女性がたくさんおられると思います。またそのような女性を人生の伴侶として、共稼ぎをのぞむ男性も多いと思います。そのような若い男女が今よりもっと自分たちらしく生きられる社会を目指す企画のためにも、「家族計画」をまさに計画的に進めるためにも、産婦人科医師の力をかりて、「低用量ピル」の普及をはかれたら、と思います。

性や妊娠・出産をめぐるタブーを破り、もっともっと合理的に、家族のあり方、人生のあり方を語れる日本にしたいですね。日本全体としては、政策転換が必要です。厚労省以外に、家族の最善の利益を目的とする「家族省」が必要です。少子化が「国難」というなら、このような場面にも、安倍政権は意識を広げてほしいです。そのためには社会運動が必要でしょうか?

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