Facebook 2023年7月19日 「被害がおきる前に事前にリスクを査定して、あらかじめ手をうつ予防的措置」について、病院施設を例に紹介します。

秋田県や岩手県ではまだ梅雨末期の豪雨に見舞われています。被害に遭われた皆さまに心からお見舞いを申し上げます。国会は現在閉会中ですが、明後日7月20日には、衆議院と参議院で「災害対策特別委員会」の理事会を開催し、6月末から7月にかけての全国での水害被害からの復旧のための緊急対応の提案・要求をしていきます。今日は、流域治水で一番むずかしい問題、「被害がおきる前に事前にリスクを査定して、あらかじめ手をうつ予防的措置」について、病院施設を例に紹介します。7月18日。(また2000文字をこえてしまいました。スミマセン)
今回の秋田豪雨では、秋田市中心部にある中通総合病院は大雨の影響で大量の水が流れ込んで水浸しとなり、16日と17日、救急も含めてすべての診療を中止せざるを得ませんでした。医療資材の保管や食事調理などを行う施設が地下にあり、大量の水で機能破壊されてしまったということ。水につかった建物にいたおよそ30人の入院患者は自衛隊の協力で別の病院に搬送したという。18日以降も新たな患者の受け入れはできず、病院機能が大幅に低下してしまっています。災害の時こそ、病院は機能を維持してほしい。それが市民、県民、国民の願いでしょうが、今の病院関係者が努力しても、そもそも浸水対応していない地下施設に電源や食堂機能をおく施設設計をしていたら甚大な被害は防げません。病院の立地条件と建物条件にあらかじめ配慮ができていない、まさに「流域治水政策」の欠如で、浸水への予防措置ができていない課題です。水は低いところに流れる、単純な原理です。
一方で、新潟大学名誉教授の大熊孝さんから、「今、建設中の新潟市三条市の済生会中央基幹病院は流域治水の精神を活かして水害対策ができているということ、調べてみたら」と昨日教えていただきました。新潟県中央基幹病院では、19年前の2004年7月の水害豪雨の被害をふまえ、地震や水害に強い病院建設を計画し、来年2024年3月に開院するという。電気系統や主要施設は二階以上に計画をして、いざという時の浸水時にも、基幹病院としての機能が果たせるように設計をしているということ。災害時こそ、病院入院患者、利用者を守るだけでなく、負傷をした人たちを守るための災害対策の拠点となります。三条市では過去の痛い記憶が新しい病院建設での施設計画に活かされているようです。ただ、そのための計画づくり、予算措置など具体的にどうなっているのか、この夏の間に、三条市に調査にいきたいと思います。
というのも、今、私たちが病院建設と町づくりでとっても心配しているのが、千葉県船橋市のメディカルタウン構想です。船橋市は昭和30年代までは水田農業と浜辺での東京湾漁業とまさに一次産業が主体でした。そこに経済発展につれて大幅な都市化が進み、1960年(昭和35年)には13万人だった人口が2020年には64万人と5倍近くになっています。当然農地が都市化をしたら水害被害が増えます。その中で最後に遺された海老川中流部の水田と湿地帯に盛り土をして、今、「メディカルタウン構想」として、現存の市民病院を移転して新駅をつくり都市開発をしようとしています。市民にとっては一見歓迎すべき開発でしょう。直近の市長選挙でも問題は不問にされたようです。
船橋市も千葉県も、調整池や調節池をつくって、水害被害を増やさないと言っていますが、現在の農地所有者が主体の区画整理事業では、水害被害についてはほとんど無視されています。42haの開発地に33万~45万トンの盛り土をして病院と駅を造る計画です。当然土地所有者の土地販売利益は大きいでしょう。そこで調節池を6個つくるといいますが、その水量は5.3万トン、つまり盛り土する容量の8分の1程度しかありません。残りは下流に流れ出ます。下流部には千葉県が55万トンの容量がある海老川調節池をつくる、ということですがで、完成するには30年かかるということです。海老川下流部は船橋駅を中心に15万人以上が住んでいてこの人たちが水害被害に直面することになりますが、まだまだ関心は高まっていません。海老川の出口はすぐに東京湾でいくら川を掘り下げても高潮時には河川洪水は溜まってしまいます。
昨年、「船橋流域治水の会」の江川さんと山田さんが嘉田由紀子の参議院事務所に来てくれて、この実態を教えていただきました。ここは流域治水を広め、水害で命を失い暮らしを破壊される国民を一人でも減らしたいという国会議員の責務で、船橋のメディカルタウン建設予定地現場を視察し、また以前から知り合いの熊谷俊人千葉県知事にも訴えながら、船橋市のメディカルタウン構想の課題を社会的に発信し、命を失わない流域治水政策の実現の支援を行いたいと思っております。それにはまずは市民の自覚、そして社会的発信、そして何よりも船橋市や千葉県の行政責任者の自覚が必要です。
「流域治水の会 船橋」のHPをごらんください。大変丁寧にわかりやすく背景がかかれています。2023年5月27日には、シンポジウムも開催しました。私も講演をさせていただきました。講演動画も掲載されています。お時間があるときにご覧いただき、今、これだけ日本中に水害がひろがっている時、特に船橋市での潜在的な被害者の皆さんに、自分たちの命、孫子の命を守るための流域治水政策を、船橋市や千葉県に求めていただきたいと思います。千葉県船橋市、流域治水の会のホームページです。
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