20230315予算委員会[確定稿]

令和五年三月十五日(水曜日)


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子です。
 質問の時間を与えていただき、感謝申し上げます。
 三月三日の予算委員会で、民法の離婚後単独親権制度を共同親権に変えることで子供の貧困や虐待リスクを大きく減らす可能性があると岸田総理に提案させていただきました。具体的には、毎年二十万人もの子供が一人親を迫られております。二人親家庭に比べて一人親家庭の貧困率は八倍も高く、また、大変悲しいことですが、子供虐待による死亡のリスクは五、六倍も高いと推測されます。
 背景には、明治民法以来の協議離婚制度があります。未成年の子供がいる父母であっても養育費や親子交流の取決めなしに判こ一つで成立する協議離婚は、全離婚件数の九割を超え、そのうち九割以上が母親単独親権となります。
 二〇二〇年四月に、法務省が二十四か国の離婚後の子の養育に関する調査結果を公表しました。協議離婚制度が認められている国、認められていない国が圧倒的に多く、養育費や親子交流の取決めなしに子供を無法地帯に放置する日本の制度は極めて異例です。
 家族法の専門家は、明治民法作成時に、家制度を守り、跡取り確保のために女性が離婚、再婚しやすいように、言わば女の腹は借り物という思想の下で協議離婚制度をつくったんだと言っております。
 二十四か国調査では、離婚後に父母が共同して親権を行使する国が二十二か国、単独親権のみが認められているのは二か国だけです。資料一にまとめましたけれども、G7では日本だけです。

20230315【配付資料1】予算(嘉田由紀子)

 離婚をする夫婦、特に母親側が、共同親権は危険だ、DVから逃げられないという意見が強いですが、解決策はあります。離婚時、子供の生活、教育、あるいは精神の安定などを守るために共同養育計画合意書を作り、公正証書化して法的権限を持たせることです。
 私は、二〇二〇年五月二十六日の参議院の法務委員会で、資料二にありますように、少し長いんですが、六ページです、提案をいたしました。

20230315【配付資料2の1-6】予算(嘉田由紀子) 

離婚するほど仲の悪い父母がこんな相談できないという声も聞こえてきますけれども、弁護士などが仲介をして、言わばADR、裁判外調整制度を活用することで共同養育計画を作ることができます。計画には、養育費の支払金額、支払方法、それぞれのTPOによる年間の親子面会交流などを具体的に決めます。葛藤が高い夫婦ほど、実は子供の立場に立って、子供の暮らしと精神の安定のためには共同養育計画は必須であり、有効です。共同養育計画を作る予算は公費で支えるべきです。資料三として添付しております。是非、子供予算の中に入れていただきたいと思います。
 そこで、質問でございます。
 齋藤法務大臣にお願いいたします。今回、パブコメの中に共同養育計画作りのような提案はなかったでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 家族法制の見直しにつきましては、昨年十二月六日から今年の二月十七日までの間、パブリックコメントの手続が実施され、非常に多くの団体、個人から様々な御意見をいただいたところであります。
 これらの意見の内容については担当部局において今精査中でありまして、寄せられた意見の一部だけ紹介するというのは、ちょっと現時点においてお答えすることは差し控えたいと思っていますけど、きちんとまとまった時点でお答えさせていただきたいと思います。
○嘉田由紀子君 できるだけ早くおまとめいただきたいと思います。
 離婚後共同親権制を採用している国でも、DVは当然存在しております。DV被害が守られないとの理由で単独親権制度に戻そうという国はあるでしょうか。法務省にお願いいたします。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 法務省が調査した限りにおきましては、DV被害者が守られないとの理由によるかどうかということは分かりませんが、いずれにしましても、いわゆる離婚後共同親権制度からいわゆる離婚後単独親権制度への法改正をした国があるということは承知しておりません。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。実は、単独親権に戻したというような発表も一部あるものですから、確認をさせていただきました。
 離婚後共同親権制を採用している国では、DV事案にどのように対応しているのでしょうか。ここも法務省さんにお願いします。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 いわゆる離婚後共同親権制度を採用している諸外国におきましても、その具体的な規律の内容は様々であり、網羅的にお答えすることは困難でございますが、例えばフランスでは、家庭内暴力や虐待がある場合は、裁判所が父母の一方の親権を取り上げることができるような仕組みがあると承知しております。また、ドイツにおきましても、子の福祉に最もよく適合すると期待される場合には、裁判所の判断により離婚後の父母の一方のみに親権を帰属させることができる仕組みがあると承知しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 では、厚労省さんにお伺いしたいんですが、令和三年度の全国ひとり親世帯調査によりますと、母子世帯の半数以上が養育費の取決めをしておりませんが、理由として相手から身体的、精神的暴力を受けたことを挙げているのは何%でしょうか。また、一番多い理由は何でしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 令和三年度に行いました全国ひとり親世帯等調査においては、母子世帯のうち養育費の取決めをしていない最も大きな理由として相手から身体的、精神的暴力を受けたと回答している割合は四・四%となっております。また、最も多く挙げられている理由は相手と関わりたくないという選択肢であり、回答割合は三四・五%となっております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今の数値、大変大切です。DVを理由としているのは四・四%、百分の四・四です。ごく一部でありまして、共同養育計画の作成や執行に当たりDV被害者に対して適切に配慮することにより課題は改善されます。
 また法務省さんにお願いしたいんですが、昨年の十二月二十日の法制審議会に北村晴男弁護士たちの民間法制審案が提出されました。法案は法務省のホームページ上にあります。逐条解説までアップされておりますが、その案では、DV事案、どのような対応が書かれているでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 法制審議会家族法制部会におけます御指摘のヒアリングの際に北村晴男参考人から提出された資料におきましては、例えば、父母間に暴力の事実があった場合であっても当該父母は共同して親権を行使しなければならない、父母の一方が他の一方に対し配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の規定により保護命令を裁判所に申し立てたときは、裁判所が保護命令を発しない決定をするまでの間及び裁判所が保護命令を発したときは保護命令が失効するまでの間、家庭裁判所は婦人相談所及び婦人相談員による子の監護に関する父母間の連絡調整及び子の受渡しの援助を利用して父母が共同監護計画等を定めること及び遵守を命じなければならない、また、夫婦の一方が子を連れて別居しようとする場合又は夫婦の一方が子と同居しつつ他の一方を住居から退去させようとする場合には、他の一方の合意又は家庭裁判所の許可を得なければならない、ただし急迫の事情があるときはこの限りでないといった規律が提案されているものと承知しています。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 先ほどのドイツやフランスの例、また、実は今の日本の民法でも八百三十四条にはDV事案における親権剥奪の条項がございます。
 法務大臣にお伺いしたいんですが、DV被害者を保護しながら離婚後共同親権制を実現する民法改正法案、今すぐにでも国会に提出できる状態と理解しております。政府の動きは大変に遅いと言えます。
 理由として、最近、共同親権制度に賛成すると、DV被害者に冷たいと批判され、選挙に不利になるからとの声が聞こえます。実は私も、二〇一九年の七月、参議院選挙で離婚後共同親権を選挙公約に入れたことで、ネット上で落選運動をされました。今もネット上には批判が残っております。落選運動をされるつらさは当事者として大変よく分かりますが、選挙を目の前にする政治家の弱みに付け込んで政争の具にするのは大変悲しいです。この問題は、日本の子供の命運を懸ける大問題です。政争の具にしてはいけません。
 DV被害者を保護しながら共同親権を心から望む親や子供たち、全国にたくさんおられます。そういう希望をかなえる法制度の整備が今こそ求められております。齋藤法務大臣に提案ですが、各種広報などでDV被害者保護と離婚後共同親権制は両立するという正しい情報を国民に広げていただくこと可能でしょうか。お願いいたします。
○国務大臣(齋藤健君) 父母の離婚後の親権制度の在り方につきましては、国民の間に様々な御意見がありまして、幅広くその御意見に耳を傾けながらしっかりと議論を重ねるということが大事であると考えています。
 この問題については、DVや虐待への懸念の点も含めて、今、法制審議会において調査審議中であることから、委員が今御指摘されたような特定の見解の是非について、法制審議会に諮問をお願いしている立場の私が個別にコメントすることは差し控えたいと思っていますが、その上で、一般論として申し上げれば、国民に対して正しい情報を丁寧に発信していくということは重要でありますので、法務省でも、法制審議会における調査審議の状況ですとか外国法制調査の結果などをホームページで公開するなどの取組をしているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 実は、これは外交問題も関わっているということで、本日、ありがとうございます、林外務大臣、お越しいただいておりますが。
 昨年の十月二十八日、国際自由権規約の規約委員会は日本政府に最終見解を採択しました。そこでは、親による子の連れ去り事件に対して適切な対応がなされるように必要な措置を講じなければならない、また、子の監護に関する決定に関しては、国内的な事件であっても国際的な事件であっても、子供の最善の利益が考慮され、実務上、完全に実施されるよう確保しなければならないと勧告がされております。
 林外務大臣、この勧告に対してどのような対応を行う必要があるでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今御指摘がありましたように、昨年十一月に自由権規約委員会が我が国の第七回政府報告審査を踏まえた総括所見を公表しております。
 この総括所見の中では、今御指摘のあった点も含めて、多岐にわたる事項に関して同委員会としての見解及び勧告が含まれております。御案内のとおりでございますが、この総括所見、法的拘束力を有するものではございませんが、同委員会の勧告等について、関係府省庁とともに内容を十分に検討していきたいと思っております。
 また、国際社会において、日本の考え方、これが正しく理解されるように引き続き力を尽くしてまいりたいと考えております。

20230315【配付資料4】予算(嘉田由紀子)○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 林外務大臣の御答弁を受けて、齋藤法務大臣、どう御所見をお持ちでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 令和四年十月に我が国が提出をした第七回政府報告につきまして、自由権規約委員会による審査が行われて、同年十一月に我が国に対する勧告を含む総括所見が公表をされたわけであります。また、令和二年七月には、欧州議会が共同親権の可能性に向けた国内法令改正を我が国に促す旨を含む決議を採択したことも承知をいたしております。
 このように、我が国における父母の離婚に伴う法制度については、これらの勧告や決議も含め、海外からも様々な御意見が示されています。もっとも、そのような御意見の中には、我が国の法制度についての誤解や事実誤認に基づくものも含まれているため、そのような誤解等を解消することができるよう我が国の制度を丁寧に説明していくことも重要と認識しています。
 いずれにしましても、父母の離婚後の親権制度の在り方については、先ほども申し上げましたように、現在、法制審議会において調査審議が進められていることですので、私から具体的な意見を述べることは差し控えたいと思いますが、国内外の様々な意見に幅広く耳を傾けながらしっかりと議論することが重要であると認識しています。
 法制審議会においては、こうした様々な意見を踏まえながら充実した調査審議がスピード感を持って行われることを期待しておりますし、事務方としてその作業に積極的に協力をしていきたいと考えています。
○嘉田由紀子君 私が繰り返しこの問題を申し上げておりますのは、子供たちの命が関わっているからです。毎年二十人もの子供が、片親あるいはその同居人から殺されたりしております。大変悲しいです。
 G7では、日本だけがこの単独親権、残っております。資料一にお出ししましたけれども、五月に日本で開かれるG7会合の議長国として、国際標準の日本にするために共同親権の法案を国会に提出したという実績をつくれるよう、大変出過ぎたお願いですが、林外務大臣から岸田総理に働きかけていただけないでしょうか。手短にお願いいたします。
○理事(片山さつき君) 申合せの時間が既に経過しておりますので、林大臣、短くお願いいたします。
○国務大臣(林芳正君) 今お話のあった点は所管外でございまして、外務大臣として申し上げる立場にはないと思いますが、国内外に様々な御意見があることを踏まえまして、現在、法務大臣の諮問機関である法制審議会において必要な検討が行われているというふうに承知をしております。
○理事(片山さつき君) おまとめください。
○嘉田由紀子君 はい。
 ありがとうございました。
 繰り返しになりますが……
○理事(片山さつき君) お時間が来ております。嘉田由紀子さん、お時間が来ております。
○嘉田由紀子君 子供の命と幸せが懸かっております。どうかよろしく、スピード感を持ってお願いいたします。

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