スキー場人気ランキング全国一位の「グランスノー奥伊吹スキー場」の草野丈太社長さんを訪問。12月上旬に草野丈太さんに初めて出会い、姉川最上流部の甲津原で昭和55年に生まれ育った42歳の丈太社長が「私の大きな目的は、“どう地域を残してくか”にかかっています」と明言。過疎化で子どもがゼロとなってしまった甲津原に今、子どもが産まれ育ち、雇用も復活。丈太社長を育てた草野家に興味をもち、お父さまの譲治さま、弟さまの丈治さまたちのお話を伺い、お客様目線を徹底させるきめ細やかな戦略を実現し、人気沸騰の奥伊吹スキー場は、「心が通じ合った信頼の家族経営の元、即決実践のたまもの!」と発見しました。そして、「2070年にも地域の子どもにスキーを」という長期目標のもと、温暖化で雪が減らないようスキー場内の流れを活用した水力発電所をつくり「再生可能エネルギーによるスキー場経営」を目指しています。「地域で考え実践」が結果として地球環境問題に貢献!すばらしい成果です。12月29日。また徹底長い、物語です(2500文字、スミマセン)。
琵琶湖に注ぐ姉川をたどり、伊吹山の山頂部に近い最奥部の甲津原に私自身が初めて訪問したのは昭和49年(1974年)。新婚直後の嘉田良平と一緒でした。当時は砂利道でようやく車が通る状態。昭和25年生まれの譲治お父さんの記憶では人力で引く荷車でなく車が通れるようになったのは昭和42年という。その後昭和45年(1970年)には、譲治さんのお父さまが「深い雪を資源に」と奥伊吹スキー場を開業。しかし初日のお客は7人、日本一遅いリフトだったという!
奥伊吹スキー場は草野家の家族経営で、丈太さんは「小学生の時代から、スキー場の厨房でフライドポテトを揚げたり、真夜中に父親といっしょにスキー場の側溝の工事をしたり・・・」とまさに子どもの手も借りて家族総出の経営だったようです。譲治お父さんのモットーは「なんでも現場で見て経験して自分で考えて行動」という。弟の丈治さんは「小学生時代、夜10時でも仕事にかり出された!」と記憶。家中が忙しい時子どもは親を手伝いたいものです。それが「家族が生きる糧(かて)」でしたから。そして、本日丈太さんの中1の息子さんは厨房でお手伝い!確実に世代がつながっています!
奥伊吹スキー場が大きくかわったのが、丈太さんが学校を終わり、民間での経験を経て、戻って来た2006年以降という。関西という降雪可能時間が短い立地的不利さをカバーするために人工降雪機を2007年に導入。2015年には降雪機の自動化を進め、現在はスキー場の27機ネットワークをスマホから操作可能としています。そして最良の雪をつくり、維持するのは、今も社長の丈太さんの役割ということです。「スキー場の命は降雪状態の維持」という。
スキー場のソフトは徹底的にIT技術を活用したお客様目線。米原駅から毎朝シャトルバスを走らせ、今日も8台が運行。バスをおりたところからは「歩く歩道=アルカンデ」でセンターハウスへ。衣服もスキー靴もレンタル可能。初心者にはスキースクール。リフト券はWEBで予約可能。予約キャンセルしてもキャンセル料は無料。子ども連れにはおむつとおしりふきセットを提供!レストランもグルメを備えて充実。自動販売機の飲み物はすべて100円!こういうアイディアも社長や社員が提案して、すぐに実現できるという。家族経営の信頼の上になりたつ実践の速さ!
草野家は、230年前の古民家に3世代が共に暮らしています。姉川下流部の春照生まれの奥様が「奥」にあがってきてくれて感謝。今日も奥様はスキー場のインフォメーションセンターで受け付け総括。丈太さんのお母さまは滋賀県蒲生郡の桜川から嫁いで来たという。今の東近江市です。丈太さんのお宅も訪問し、お母さまにご挨拶させていただきました。甲津原には草野家の子どもさん4人をふくめて、子どもが12人にふえたという。
冬のスキー場だけでなく、夏のグランピング、湖岸のキャンプサイトのOUMIWAVE、そして賤ケ岳リフトなど、湖北地域で通年の雇用を創出しているのも奥伊吹グループのねらいです。通年雇用の社員を確保できることが、一年を通じて接客クオリティの向上が可能という。通年雇用を確保することで家族もつくれ、子どもも産まれ育ち、地域が継続できるという。まさにその通りです。
考えたら、長い間、「京都の近くで何もない」と思われてきた滋賀県。スキー場は奥伊吹だけでなく、びわ湖バレイ、箱館山、マキノスキー場と昭和初期からの伝統的なスキー場もあります。真冬の雪と隣り合わせにある夏の湖水浴。真冬から真夏まで「森里湖」の豊かな自然が近接しているからこそ、同じ人がスキー場で仕事をして、湖水浴のキャンプ場やグランピングで仕事ができる。
「ないものねだりではなく、あるものさがし、あるものいかし」。滋賀県や琵琶湖の良いところを探して、その存在価値を自覚的に活かして、敬意を表して「もったいないから活かしていこう」と私自身地域政策を進めてきました。草野家も、お客が減ったゴルフ場をグランピングに改装し、漂着ゴミがたまる琵琶湖辺の砂浜を清掃してOUMIWAVEをつくり、止まっていた賤ケ岳リフトを再生し、まさに「もったいない」精神で湖北を元気にしてくれています。それも完全に民間の資本で!!
今日、最後には、水力発電施設を見学させていただきました。嘉田事務所の古谷秘書は水力発電会社を経営してきた経験があり、既存の砂防堰堤を活用した取水から、発電機の導入・維持、そして送電網へのつなぎ方など、草野社長たちと盛り上がっていました。スキー場の土地を草野家が保有し、そこから導水する道も基本的に私有地が多く、理想の小水力発電が実現しています。第二発電所も建設中で、ゆくゆくはスキー場内だけでなく、スキー場にこられる人たちの移動エネルギーも再生可能エネルギーで賄いたいという夢もおもちです。まさにSDGsのスキー場、観光事業です。応援していきたいです。