「離婚後の子どもの養育に関する民法改正」(その2)。2006年から2014年まで滋賀県知事時代に私が直面してきた子どもの問題で、①貧困、②虐待、③精神的苦悩 ④社会的不適応が大きな課題でした。しかも自治体として根本解決できないのは家族のあり方を決める民法改正や女性の給与を決める雇用政策です。そこで家族法制の改善を提案してきました。今日は具体的に説明させてください。12月9日。また長いです(1600文字、スミマセン)
一人親家庭で子どもが貧困に陥るリスクは、二人親に比べると8倍ほど高くなります。総務省の全国消費実態調査では、大人二人以上の家庭での貧困率は6.6%ですが、大人一人の家族の場合、47.7%です。背景には「離婚後の養育費確保」ができる一人親家庭の比率が低いこと(24%)と、女性の賃金の低さの問題があります。離婚後単独親権制度の元では、「あなたは親ではない」と言われる別居親としては養育費を支払う動機(インセンティブ)も低くならざるを得ないでしょう。共同養育•共同親権制度に変えることで、養育費確保の安定性があがるでしょう。特に離婚時に「共同養育計画づくり」を、公正証書化して義務化することで養育費の支払い率を高めることができます。
深刻なのは子供の虐待です。最悪の子ども虐待は、親による子ども殺人です。厚生労働省の調査によると、親により殺された子どもの数を家族形態別にみると、1人親家庭が27%、1人親の同居人による殺人が8%、両方を足すと35%です。子どもをもつ家庭の家族形態の全体の中での1人親の比率は7%です。両親がそろっている家族と比べて5倍以上のリスクといえるでしょう。大変つらい数値です。親に殺される子ども、と言葉に出すのもつらいですが、社会的事実です。この背景には、経済的にも、また精神的にも孤立しがちな一人親の苦しさ、厳しさがあるといえるでしょう。
子どもたちの③精神的苦悩 ④社会的不適応が家族形態によってどう異なるのか、日本では研究データは不十分ですが、日本の子どもは、「親から愛されている」という思いが、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンと比べてかなり低くなっています。
また共同親権反対を主張する人たちの最大の主張は、「共同親権になったら配偶者のDV(家庭内暴力)から逃げられないので危険」ということです。これは女性からの主張が強いです。確かに警視庁の統計データで、配偶者間による「障害」「暴行」の訴えは、9割以上が夫側から妻側への加害です。ただ、配偶者殺人となりますと、夫が妻を殺すのが約56%、妻が夫を殺すのが約44%です。これもつらいデータです。でも社会的現実として逃げられません。政治は、これらの実態を見極めて、改善方向を探り、具体化する役割があります。
これまで、上のようなデータを参議院法務委員会で示して、子どもの貧困対策を担当する厚労省の部局、また男女共同参画をめざす内閣府の担当部局に、この実態を改善する方向をさまざま質問してきました。対処療法というか、対策としては30も40も個別事業を提案してきます。しかし、この根本にある家族制度の改善を提案しても、「私たちの担当ではない」と本気で議論する部局はありませんでした。一方で、法務省の民事担当者は「私たちは子どもや家族問題の専門家ではない」と逃げます。