20221106災害対策特別委員会[確定稿]

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。

 質問の時間十五分いただいておりますので、御配慮いただいた皆様に感謝を申し上げ、始めさせていただきます。

 皆様と一緒に、十月十三日に静岡の台風九号の被害を視察させていただきました。あのとき、最大時間雨量九十三ミリ、一日の総雨量五百ミリ近くという大変な豪雨だったんですけれども、静岡市内では一人も死者を出さなかった。その理由を尋ねますと、今から四十八年前の一九七四年七月七日の豪雨災害、七夕豪雨と地元で言われている、そこで死者二十七名もの大変な被害があり、その後、流域全体で雨水、雨水をため、遊水地を造り、情報伝達も確実にし、そして放水路を造りということで備えてきた結果ではないかという御意見が出されました。
 それで、十一月十三日に、私、改めてまた巴川、訪問させていただきました。今日、幸い、資料七に、足立敏之議員の資料七にきっちりとこのデータが示されておりますけれども、七夕豪雨のときには浸水戸数が二万六千、それが、言わば巴川流域総合治水対策で三千件に減ったということをデータ出していただいております。
 ここはまさに、今いう流域治水の先駆的なところだろうと思います。上流では水を保ち、そして中流で遊ばせて、下流で水害に強い町づくりをしてきたと。それから、放水路も効果的に造ったと。それから、流域全体の効果、特に、本日は遊水地のことをお話しさせていただきたいんですけれども、大変生き物も豊富で、まさに、国交省もこれから進めようとしているグリーンインフラの典型的な成功例にもなるのではないかと思います。
 昭和五十年代から、当時、総合治水として、今でいう流域治水の考え方を先取りしてきた流域ですけれども、まず、国交省さんとして、静岡市巴川の総合治水政策をどう評価しておられるでしょうか。そして、この対策、成功例とお考えかどうか。また、今後、国として流域治水政策を進める上でまだどういう課題があるか。その辺りをお願いいたします。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。

 巴川流域では、昭和四十九年の七夕豪雨により約二万六千戸の家屋が浸水する甚大な被害が発生したことを契機として総合治水対策が進められておりまして、自治体や地域が連携し、学校の校庭や住宅地、ため池などを活用し、約六十万立方メートルの雨水を一時的に、貯留施設の設置などが進められてきております。これらの対策により、今年九月の台風十五号の際には、七夕豪雨と同規模の降雨量があったにもかかわらず、家屋浸水が約九割減少するなど大きな効果が発現いたしました。 一方、依然として、巴川流域では三千戸を超える家屋浸水があったことから、河川管理者であります静岡県からは、現在整備中の麻機遊水地や河道掘削などを加速化するとともに、流域対策に取り組む静岡市とも連携し、ハード、ソフト一体となった対策の検討を行うというふうに伺っております。

 国土交通省といたしましても、ハード、ソフト一体となった対策は重要であるというふうに認識しておりまして、静岡県及び静岡市と連携し、技術的な助言を行うとともに、五か年加速化対策も活用しながら財政面の支援も実施してまいります。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今日実は、麻機遊水地のパンフレット、八ページございますけれども、皆さんにカラーでお配りをしております。この麻機遊水地、まさにちょうど私、日曜日、訪問したんですけど、家族連れがたくさん、子供さん連れて遊びに来ておりました。それで、このとき、約二百ヘクタール遊水地あるんですけれども、二百八十万トンもの水を台風十五号ではためたと。それから、学校のグラウンド、公園など八百か所も雨水貯留施設として八十六万トンためているということで、まさにためる機能、そして大谷放水路で流す機能、そして何よりもまた備える機能というのがセットで機能したと思います。
 このパンフレットを見ていただきますと、元々が水田だったところを遊水地にしますと、土の中に長い間埋もれていた種が改めてよみがえるんですね。大谷ハスなどは有名ですけれども、ここではミズアオイとかオニバスなどがよみがえってきています。植物がにぎやかに復活すると、そこに合わせてトンボや様々な昆虫、また魚も増えてきて、これを食べる鳥類が増えて、生態系がよみがえっているということを見てまいりました。
 また、中心部には生き物観察センターもありまして、専門の方が指導もしておられます。まさに生物多様性ですが、それに加えて、元々、柴揚げ漁という地元の伝統的な漁法、それも復活をし、そして水辺の伝統文化を支えていると。それと、特にここで特色があるのは、周辺の福祉施設、病院患者さんが水辺の風景を楽しみながら散策、レクリエーションなどで連携しているということでございます。遊水地の周囲にはこども病院、あるいはてんかん精神医療センター、特別支援学校もございまして、大変医療的にも福祉的にも良好な生活環境ができていると思っております。
 次に、ですから、質問なんですが、河川政策としてグリーンインフラを進めてきた結果として医療、福祉など町づくりで大変効果が上がっている、この巴川のような遊水地、日本各地どんなところにあるか、御紹介いただけますか。

○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
 遊水地を含めました河川の空間は、生物の生息、生育の場となるなど多様な自然環境を有しており、医療・福祉分野との連携についても意義深いものであると考えております。
 例えば、北海道の砂川遊水地に隣接する砂川市立病院は、患者のリハビリや治療へ役立てることも考慮し、病院から直接遊水地へ行けるよう整備されており、この整備に当たっては、国土交通省も検討会のメンバーとして参画したところでございます。
 また、横浜市にございます鶴見川多目的遊水地の中には、横浜市の総合保健医療センターや総合リハビリテーションセンター、障害者スポーツ文化センターがピロティー形式で整備され、施設利用者が遊水地内において散策を通じてリハビリ等にも活用されているというふうに伺っております。
 国土交通省としましては、治水機能の向上を図る河川整備、遊水地整備に併せて、良好な自然環境を生かし、地域と連携を図りながら、医療・福祉分野に限らず、広く地域づくりにも取り組んでまいります。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 自治体を経営する側からすると、そういう多面的な機能というのが大変有り難いことでございます。北海道の砂川、また横浜の鶴見川のところですね。
 それから、また巴川に戻りますけれども、子供たちの防災学習、先ほど来下野さんもおっしゃっておられましたけれども、子供たちの防災学習では、静岡市立治水交流資料館、かわなびというのを造りまして、そこに巴川シアター、これ見事に、立体地形図があるんですけど、そこに光が入って、そして七夕豪雨のときにはどこまで水が入ったのかということを地図で示しながら被害者の声を直接映像で届けると。そして、その空間そのものは、まさに住宅をモデル化して、三メートル浸水、四メートル浸水というのはどこまで来るのかというようなことを造っております。
 言わばミニ博物館なんですが、大変工夫をされておりまして、ここは静岡市内の子供たちが、小学校四年生、必ず遠足に来るというようなことで、私も博物館を自ら造ってきた立場からすると、ああ、こういうのはとっても効果的だなと思っております。それから、巴川の探検隊、「わたしたちの巴川」など、大変教材も分かりやすく、冊子にもなっております。
 それから、自主防災会の方も、備える活動をより広く、ふだんから町を事前に知る、そして人を知る、事前の準備、あわせて、災害時の初動、避難所運営、ふだんからの近所付き合いやお祭り、先ほどもお祭りってありましたけど、私も滋賀県内でいろいろ調べると、防災機能が高い地域はお祭りと運動会です。こういうことが日常大変大事だと思っております。それで、静岡、巴川でもその辺りが実践されておりました。
 それから、実は、こうやって流域治水のモデルとして、過去の大水害があった場合には、ハザードマップの公開、あるいは水田所有者からの土地買収、あるいは校庭などの雨水貯留、協力をしやすいんですが、問題は、被害が起きる前に予防的に流域治水政策を進める、そのときの社会的合意形成はかなり難しいです。多分、局長もよく御存じだと思いますけれども、私が流域治水の条例を知事時代、二期八年掛けて作ってきたんですが、まず、ハザードマップを出すこと自身が、地価が下がる、地域の開発ができないじゃないかということで、大変針のむしろのような状態でもございました。
 そういうところから、河川から水があふれること、もう閉じ込めてくれるのが一番いい、ダムを造ってくれたら、堤防造ってくれたらと願うのは分かるんですが、やはり予防して手を打つということ、ここがこれから国の流域治水も正念場になるんだろうと思います。
 それで、あらかじめ予防的に備えるという分野で、実は千葉県の船橋市の事例を紹介したいと思います。資料二に新聞記事がございます。
 船橋市は、皆さん御存じと思いますが、かなり人口密集地でございます。そして、町の中心部を海老川という、とっても小さな川です。この上流部には、新聞記事が資料二ですけど、資料三に地図を出していますけど、たくさん川が集まって、そして海老川という川一本になるんですね。もう川の流れ見ただけで、あっ、海老川大変だな、上流の川を皆集めなきゃいけないんだなと理解できると思うんですけれども。
 この今青く塗っているところがちょうど遊水地になっておりまして、田んぼが放棄された状態なんですけど、ここに船橋市がメディカルタウンというのを造る予定ということです。六十三万トンの土砂の盛土をするということで、地元の住民の方が大変心配しているんですが、ただ、この心配は市の行政にも、また県にも届いていないんですね。
 ですから、事前予防的に進めるということの難しさ、ここを是非局長さんにお伺いしたいんですが、流域治水推し進める国としては、自然災害に対応するための開発抑制、どう進めていくのか、船橋市のような事例の場合どのような指導あるいはアドバイスが可能か、お願いできますか。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
 委員の御指摘のとおり、流域治水の推進に当たりましては、河川整備や流域における貯留浸透対策に加えまして、氾濫が発生した場合も想定し、被害対象を減少させる、あるいは被害を軽減するなどの対策により、流域全体で安全性を高めていくということとしてございます。
 被害対象、浸水被害の対象を減少させるための土地利用規制としては、地方公共団体による取組として、建築基準法に基づく災害危険区域制度や特定都市河川浸水被害対策法に基づく浸水被害防止区域制度を活用して開発や建築を制限する方法ですとか、都市計画法に基づく市街化調整区域への編入により開発行為を規制するなどの方法がございます。
 河川管理者といたしましては、これらの取組を支援するために、新たに浸水頻度ごとの浸水範囲を示した水害リスクマップ、これを整備することによって、流域の関係者に提示することで土地の危険性や対策の必要性の理解を促進していくということとしてございます。
 御指摘の船橋市の海老川上流地区で実施されている土地区画整理事業では、事業区域内に降った雨の河川への流出を抑制するため、時間七十ミリの降雨に対応する調整池を設置するものというふうに承知してございます。
 いずれにしましても、流域治水の推進に当たっては河川行政や都市行政などの連携が重要でございまして、国としても、流域の関係自治体と連携を取ってまいります。
○委員長(三浦信祐君) 時間が来ておりますので、おまとめ願います。
○嘉田由紀子君 はい。
 ありがとうございます。国としても是非連携していただきたいと思います。
 最後に、谷大臣に一問お願いをしていたので、地震はある程度事前に予測無理なんですが、水害は事前に予測ができます。水害死者ゼロのために、是非、死者として亡くなるのは知事でも総理大臣でもないんですね。そういうことで……
○委員長(三浦信祐君) 時間が来ておりますので、おまとめ願います。
○嘉田由紀子君 はい。
 住民会議のようなこと、死者ゼロ目指してお考えいただけないか、一言だけお願いいたします。
○委員長(三浦信祐君) いや、時間が来ておりますので。じゃ、大臣、一言だけで御答弁願います。
○国務大臣(谷公一君) 今御指摘を、国交省の方でも流域治水協議会を組織して様々な取組が進められるというふうに伺っておりますので、地域の実情に応じて、御指摘の提言も受け止めながら、また防災意識向上のために取り組むことも意義はあるのではないかと思います。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。

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