○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
前回に引き続きまして、災害対策、特に今国が取り組み始めております流域治水に関して、まずは前回の積み残しの質問からさせていただきます。
資料一と資料二をお出ししておりますが、ここでは、収入保険による収入減少への対応が資料一、資料二に図示されております。農水省の資料では、基準収入の計算に当たって、実質的に自然災害年の収入減少が影響しないようになる仕組みを準備とございます。具体的には収入上昇特例と言われますが、この準備はどこまで進んでいるでしょうか。
特に、先回も御指摘させていただきましたけれども、滋賀県の高時川というところで霞堤が機能を果たした、これ全国的にも関心を持っていただいた事例なんですけれども、そこの農家ではかなりな被害が被っておりますので、ここへの適用は可能かどうか、政府参考人の方にお願いいたします。
○政府参考人(松尾浩則君) お答えいたします。
先ほどございました収入保険、これの補填の基準となる基準収入につきましては、過去五年間の平均収入を基本として設定することで、毎年の収入の変動をならして農業者ごとの経営の実態に即した補償を行うようにしております。
その上で、御指摘ございました収入上昇特例ということで、過去五年間の単位面積当たりの収入が上昇傾向にある場合の特例として、例えば一時的に収入が大幅に減少し、その翌年の収入が平年並みに回復した場合などは基準収入の補正をすることも可能となっております。
本年八月の滋賀県高時川の霞堤における被害を受けた加入者におきましても、このような要件に合致する場合には特例を活用していただくことは可能となっております。
いずれにしても、収入保険制度につきましては、今後ともいろいろな意見を聞きながら必要な対応を取ってまいりたいと、こういうふうに思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
高時川の例もこの要件に適用できる条件があったら可能という答弁をいただきました。この後、今被害の積み上げをしておりますので、また相談させていただくことになると思います。
この農業保険でカバーしていただいても、やはり最後、一割は個人の負担ということになります。それで、私も流域治水を現場で進めてきた立場からいたしますと、やはり地域のために自分たちが犠牲になったのに、この一割の負担でもつらいという声が聞こえております。
今日は、資料提供として、熊本県が緑の流域治水を進めておりますが、この自己負担分を県が負担をするという制度をつくられました。資料三として、それを提案しております。熊本県、田んぼダム協力支援事業、農家収入補填事業。ここは、九割を農業保険でカバーして、残り一割のところも県として、市区町村を通じて、市町村通じてですが、カバーするという仕組みです。これは答弁をお求めするものでもなく、こういう事例があるということを全国で是非広げていただけたらと思います。
次に、公共事業の費用便益分析についてお伺いをしております。
税金で賄われる公共事業については計画段階で費用便益分析を行うことになっておりますが、この制度の法的根拠はどこにあるでしょうか。政府参考人の方にお願いいたします。
○政府参考人(佐藤寿延君) 国土交通省が行う個別公共事業評価につきましては、行政機関が行う政策評価に関する法律に基づき策定する国土交通省政策評価基本計画に位置付け実施しております。
当該基本計画に位置付ける個別公共事業の新規事業採択評価においては、費用便益分析も含め総合的に実施しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
文章としてはそういうことで、そういう、特に国交省では、その実施要綱に、目的として、公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図る、効率性、透明性の一層の向上を図るとあります。
さて、では具体的にお伺いしたいんですが、球磨川、熊本県の球磨川水系ですが、緑の流域治水事業を進めておりまして、これは二〇二〇年の七月四日に大変な水害がございました。溺死者だけでも五十人、二人がまだ行方不明です。
そういう状態を踏まえて、川辺川ダム建設事業が、今年の八月に制定された河川整備計画に位置付けられました。これは、ダムの高さ百七メートル、総貯水容量が一億三千万トン、大変、数字で分からないかもしれませんが、大変巨大なダムです。それも、流水型という、水を下部で、川の水を流しながらという治水専用ダムですが、ここでは、令和四年度第一回事業評価監視委員会、九州地方整備局が川辺川ダムの費用便益効果、つまりBバイCを策定しておりますけれども、どう位置付けておられるでしょうか、お願いいたします。
○政府参考人(岡村次郎君) お答え申し上げます。
川辺川ダム建設事業につきましては、昭和四十四年に建設事業として採択されているということから、現在、事業再評価の対象として事業評価を実施しているところでございます。
直近では、令和四年の六月に、川辺川ダム建設事業について、学識経験者等から構成される球磨川水系学識者懇談会において継続との審議結果を得ており、八月に事業継続の対応方針として個別公共事業評価書を公表しているところでございます。
費用便益分析の扱いにつきましては、公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針においては、事業全体の投資効率性が基準値未満であっても残事業の投資効率性が基準値以上であれば、基本的に事業継続とされているところでございます。
具体的に、川辺川ダム建設事業につきましては、昭和四十四年に事業着手してからのこれまでの費用も含めた事業全体に対するBバイC、これは〇・四でございますけれども、これから先の費用、残事業に関するBバイCは一・九でございます。
この費用便益分析を含めた総合的な評価を行い、事業継続となったものでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今、今までの投資は〇・四、残事業が一・九。全体として事業というのは捉えるのが国民感覚だと思います。
ですから、具体的には、昭和四十一年から計画されて、そして、私ももうかなり、平成初期から川辺川何度も通っておりますけれども、道路ができて、そして五百戸の五木村の世帯が高台移転をして、その事業に二千二百億円掛かっているわけです。この後ダムの本体工事に二千七百、両方で四千九百億円掛かる。その全体が〇・四であるということは変わりはないのに、なぜ残事業で一・九だからこれは必要性があるんですというのかどうか。
今日は国土交通大臣には質問出しておりませんが、私は、これは税金の使い方という意味では予算委員会マターだと思っております。財務大臣なり総理大臣、内閣としてお返事いただきたいと思っておりますので、今日国交大臣には質問出しておりませんが、まずは事実関係をここで共有させていただきたいと思います。
さらに、流水型ダムで、川辺川については蒲島知事が、命と、緑と命と環境を守るということで、水をためないから環境が守られるんだということで、日本一の清流川辺川を守り、そしてアユなどの魚類を守る、それがこの流水型ダムの目的ということなんですが、ここは事前通告させていただいております。国土交通大臣、この流水型ダムでいかにアユを含めて河川生態系を守ることができるんでしょうか。もちろん、これからの事業ですけれども、見通しを聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 球磨川の治水対策につきましては、令和二年の豪雨災害を踏まえ、熊本県や流域市町村からの命と環境を両立する流水型ダムの要望を受けました。川辺川の流水型ダムを整備することとしております。
一般的に、流水型ダムは、通常時はダムに水をためず通常の川が流れている状態となることから、水質や魚類等の遡上や土砂の流下などの河川の連続性があり、貯留型ダムと比べて環境負荷が少ない特徴がございます。
川辺川の流水型ダムについては、環境影響評価法に基づくものと同等の環境影響評価を実施しており、その手続の中で有識者に助言を受けながら環境への影響をできる限り軽減する環境保全措置について決定していきたいと思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、私もちょくちょく川辺川に、あるいは球磨川に行っておりますが、既に今年の九月十八日の台風十四号で上流の砂防ダムから大変な土砂が継続して出ております。それから、それ以前にも、二〇〇五年にも土砂流出がずっと止まらず、地元のアユの漁師さんは本当に困っております。そういうこともまたよく知っていただきたいと思います。
最後の質問なんですが、実は、ダムを造ったら命が守れるということをよく言われるんですが、それはダムの雨量の条件なりあるいは気象条件ですね、地形によって全然違うんです。
川辺川から球磨川というのは、渓流河川といって、本流が一番下を流れているわけです。ですから、しかも、人吉から下流が山岳地帯になっておりますので、言うまでもなく最上流の川辺川にダムを造っても、まずは下流の山の渓谷部分の災害は防げません。それから、中流の人吉のところも、やはり本流は町の一番下を流れております。
それで、私どもは地元の皆さんと二〇二〇年の七月四日直後から二百人に聞き取りをしました。そして、五十名の溺死者の方が何時何分頃どういう状態で、二階家だったのか一階家だったのか、独り住まいだったのか、お年はどうだったのか、それを全部調べさせていただいて、そして、当時、今もそうですけれども、川辺川ダムができていたときの浸水減少の地図を出していただいておりますけれども、それには六割浸水面積が減るとあるんです。それで、浸水面積が減る時間と五十人の溺死した一人ずつを調べさせていただき、本一冊にまとめております。二千枚の資料を、写真とやらせていただきました。
今のところの推定ですが、五十人の溺死者のうち本流の直横で亡くなった方は二人です。残り四十八人は山懐あるいは支流ですね。人吉市のかなり浅いところ、それこそ五十センチの水量でも水路に流されて亡くなった方がおられます。先ほど三上さんが、広島で内水氾濫が大事だと。本当に内水氾濫で亡くなる方が結構多いんです。ということで、川辺川ダムがもしできていたとしても、二〇二〇年七月四日の降雨パターンでは、直接水位低下効果のダムによる効果が出て亡くなられたと推測できる方は二名だろうと、残り四十八名はダムができていても命は救えなかっただろうというデータを出して、本にも出しました。それで、国土交通省さんにも熊本県さんにも出しました。
その回答は特にはないんですけれども、ここは是非国土交通大臣に、ダムを造っても命を救う効果が少ない場合に、例えばBバイC〇・四のダムを造ることの説明ですね、これ、納税者、皆さん、本当に額に汗して苦労して税金納めているんです。その納税者、国民にどう説明をしていただけるんでしょうか。これを通告させていただいておりますので、国土交通大臣、お願いいたします。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 令和二年七月の豪雨、これは、先ほどおっしゃいましたように、内水氾濫というものが非常に大きな要因になっております。
ダムがあった場合は、今回の内水氾濫は、本川の水位が上がりますからバックウオーターを防止するために門を閉める、そういう、また本川の水位が上がっているからいわゆる内水氾濫が起こるということでございました。今回、もしダムがあれば、本川の水位が下がりますのでバックウオーターそのものがないということで、非常に定性的に申し上げますと、死者は減るものと我々は考えております。
この災害を受けて、令和二年七月に国と熊本県が合同で被害状況や治水対策の効果の検証を行い、仮に川辺川ダムが整備されていた場合、浸水面積が約六割減少し、さらに浸水の深さが家屋の二階の高さに相当する三・〇メートルを超えることとなる浸水面積は約九割程度減少するなどの大きな効果があったと推計しております。
その後、今年八月に公表した球磨川水系河川整備計画の策定に当たって、想定死者数の軽減効果を一定の条件で算定したところ、百二十人から一人に減少することに加え、残事業の費用便益効果が一・九となったことから、事業再評価において事業継続とされたところでございます。この費用便益効果、この便益の中には人命は入っておりません、お金に換算できるものだけでございますが、お金に換算できるものでも一・九ということになったところでございます。
国土交通省としては、引き続き、令和二年七月豪雨災害からの復旧と創造的復興に向けて、流水型ダムを含めた流域治水の取組を熊本県とともに全力で進めてまいりたいと思っております。
○嘉田由紀子君 お時間が来ましたので。
その川辺川ダムができていたら百二十人の命、そのうち一人だけはどうしても失ってしまうけれども、じゃ百十九人が助かったということを公表なさっていられるんですか。そこをまた後からでも、今日もう時間がないので。一人ずつの死者の状況というのはもう今更申し上げませんが、私専門的にずっとやってまいりましたので、降雨のパターン、住居の状態、それからそれぞれの人の体の移動能力、そして家族の状態、それからまさにマイ・タイムラインのような防災体制がどうできているかですごく複雑な社会的な要素があります。
そこのところも含めて、この議論、もう時間がありませんので、また次に続けさせていただき、本当に、もちろんダムは一定程度必要ですが、この時代、まだこれ以上、BバイCが〇・四でも巨大なダムを造る必要があるのか、ほかに方法を探すこと、それが流域治水の本来の目的ではなかったかと思っております。グリーンインフラ、あるいは地球温暖化の問題もございます。総合的に是非判断できるように、この後も議論を続けさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。