Facebook 2022年11月26日 『水と生きる地域の力―琵琶湖・太湖の比較から』(楊平・嘉田由紀子著、サンライズ出版、2022年11月1日発行)

「人類のコミュニティは水場からはじまった」という推薦文を元日本社会学会会長の鳥越晧之さんからいただきました。『水と生きる地域の力―琵琶湖・太湖の比較から』(楊平・嘉田由紀子著、サンライズ出版、2022年11月1日発行)の書籍を、地元当事者である高島市針江地区でお世話になった皆さんにお届けすることができました。
家の中に湧き水が湧く「カバタ」の存在で日本国内だけでなく、国際的にも「持続的地域づくり」で注目されている針江は中世からの長い伝統のある、琵琶湖に面した半農半漁の集落です。外からの訪問者を案内する地元の「針江生水(しょうず)の郷委員会」(海東英和会長)の皆さんが、「秋の収穫に感謝する祭り」を日吉神社で開催。地元の湖西中学校の生徒さんの「棚田とカバタ調査結果」の発表を伺いながら、地域の皆さんとの歓談の場となりました。楊さんとふたりで中学生を含め地元の皆さんに本を届けることができたうれしい日でもありました。皆さん、ありがとうございました。11月26日。(文字は少なめに写真をたくさんいれました)。
楊平さんは中国生まれ、中国育ちで日本語を学ぶために日本に留学し、筑波大学の鳥越晧之教授の元、太湖の水辺環境についての博士論文をまとめました。2007年から琵琶湖博物館の環境社会学系の学芸員として、滋賀県に移り住み、太湖周辺の水田と漁業が複合的になりたっている「魚米の郷」の生業複合の研究をすすめ、琵琶湖博物館の企画展示も担当しました。同時に高島市の針江でも、やはり水と大地に根ざした生業複合が成り立っていることに感動し、100回近く針江に伺い、地元の皆さんからの徹底的な聴き取り調査を進め、今回の書籍の柱を執筆しました。
一方、嘉田は1970年代から琵琶湖辺の水田農村の集落調査をすすめながら、1980年代には太湖周辺の水郷地帯で、水田稲作と水田漁業、時には養蚕を包み込んだ資源循環型の複合的生業に感動をし、聴き取り調査をすすめてきました。養蚕によって出る糞や食べ残しを水田に入れ、増えたプランクトンを魚の餌にし、そこで米も育てるという徹底的な資源循環を2000年近くすすめてきた仕組みを研究してきました。太湖周辺のこの仕組みは近年、「世界農業遺産」にも指定されました。今年2022年7月に森・川・里・湖の連携を示す「琵琶湖システム」が世界農業遺産に指定された、まさにその先輩が太湖辺の水辺の暮らしです。
今、地球規模で環境破壊が問題となっています。私たちは1980年代からかねがね、「地球規模で考え、地域で活動」という考え方は逆だと主張してきました。「地域で考え、地球規模で活動」と、居住者、住民の立場から環境問題を考え、解決策を提案する「生活環境主義」という政策と哲学を鳥越晧之さんたちと発信してきました。
母と娘のような世代の違いと、中国と日本という文化の違いをこえて、生態文化的な書籍を地球環境問題の現場に届けられたらと願いました。皆さんからのご批判をお願いします。
まさに今日は、1000年以上の水との共生社会をつくりだしてきた針江の皆さんと、「地域で考える」という原点を教えていただい再会の場でした。針江で育った焼き芋やイモご飯、豚汁もご馳走になりました。ありがとうございました。
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