Facebook 2022年11月18日 「参議院災害対策特別委員会」で国土交通省に見解を伺う。

「参議院災害対策特別委員会」で流域治水政策の先駆者ともいえる静岡市の巴川の視察結果に基づき、過去の災害被害をうけての流域治水は地元での合意形成が比較的得やすいが、予防的方針である流域治水は地元の自治体や住民などの間で合意形成がしにくい。その例として千葉県船橋市のメディカルタウン構想の問題を提起し、流域治水をすすめるための国土交通省の見解を伺いました。11月18日。(また長いす。2500文字)。
静岡市を襲った今年9月末の台風15号では、今から48年前の1974年7月7日の死者27名という大変な被害を受けた豪雨災害(七夕豪雨)に匹敵するような豪雨が降りました。それでも死者はゼロでした。浸水戸数も26000戸が3000戸に減少。七夕豪雨以降、流域全体で雨水をため、遊水地や放水路を造り、情報伝達も確実にし、「巴川総合治水政策」の効果が出たということです。流域治水の先駆的モデルとも言えます。
特に遊水地は大変生き物も豊富で、まさに、国交省もこれから進めようとしているグリーンインフラの典型的な成功例にもなるのではないかと思いました。台風15号では「あさはた遊水地」では280万トンの水を貯めたという。水田だったところを遊水地にすると、長い間土中に埋もれていた種がよみがえり、ミズアオイやオニバスなどの貴重種がよみがえってきました。植物が復活すると、トンボや様々な昆虫、また魚も増えてきて、これを食べる鳥類が増えて、生態系がよみがえってきました。
生物多様性の保全に加えて、「柴揚げ漁」という地元の伝統的な漁法も復活。加えて、周辺の福祉施設や病院患者さんが水辺の風景を楽しみながら散策、レクリエーションなどで連携しているという。河川政策としてグリーンインフラを進めてきた結果として医療、福祉など町づくりで大変効果が上がっている、この巴川のような遊水地のような例が、ほかにどこにあるか伺いました。
岡村次郎国土交通省国土保全局長は、「北海道の砂川遊水地に隣接する砂川市立病院や鶴見川多目的遊水地の横浜市総合保健医療センター等がピロティー形式で整備され、施設利用者が遊水地内において散策を通じてリハビリ等にも活用されている」と答弁下さいました。さらに「国土交通省としては、治水機能の向上を図る河川整備、遊水地整備に併せて、良好な自然環境を生かし、地域と連携を図りながら、医療・福祉分野に限らず、広く地域づくりにも取り組んでまいります」という。
自治体を経営する側からすると、多面的機能の実現は大変有り難いです。過去の大水害があった場合には、ハザードマップの公開、あるいは水田所有者からの土地買収、校庭などの雨水貯留、協力をしてもらいやすいのですが、問題は、被害が起きる前に予防的に流域治水政策を進める、そのときの社会的合意形成はかなり難しいです。私が滋賀県知事時代、流域治水条例を2期8年かけて作ってきたのですが、まずハザードマップを公表すると、「地価が下がる」「地域の開発ができない」ということで、針のむしろのような批判にさらされました。
河川から水があふれることは認めにくい。洪水を河川に閉じ込めてくれるのが一番いい。ダムを造ってくれたら、どんな大雨でも枕を高くして眠れるとこれまで行政も言ってきた。住民としての願いは分かるんですが、予防して手を打つということがこれから国の流域治水をひろげる正念場になると思います。それで、あらかじめ予防的に備えるという分野で、実は千葉県の船橋市の事例を紹介しました。新聞記事と地域の図を資料として出しました。
船橋市はかなり人口密集地です。町の中心部を海老川というとっても小さな川の上流部に、新聞記事にあるように、船橋市がメディカルタウンをつくる予定ということです。63万トンの土砂の盛土をするということで地元住民の方が、今ある遊水地のような湿地を開発したら下流に洪水の負担がいく、と大変心配しています。
ただ、この心配は市の行政にも、また千葉県にも届いていません。流域治水を推し進める国としては、自然災害に対応するための開発抑制、どう進めていくのか、船橋市のような事例の場合どのような指導あるいはアドバイスをお願いしました。岡村次郎局長は次のように答弁なさいました。
「流域治水の推進に当たりましては、被害対象、浸水被害の対象を減少させるための土地利用規制として、地方公共団体による取組として、建築基準法に基づく災害危険区域制度や特定都市河川浸水被害対策法に基づく浸水被害防止区域制度を活用して開発や建築を制限する方法ですとか、都市計画法に基づく市街化調整区域への編入により開発行為を規制するなどの方法がございます」
「船橋市の海老川上流地区で実施されている土地区画整理事業では、事業区域内に降った雨の河川への流出を抑制するため、時間70ミリの降雨に対応する調整池を設置するものというふうに承知してございます。いずれにしましても、流域治水の推進に当たっては河川行政や都市行政などの連携が重要でございまして、国としても、流域の関係自治体と連携を取ってまいります」
この時間70ミリへの対応は今後10年以上かかるようです。時間軸がずれています。そしてこれ以上の豪雨には対応でいない。最後に、谷防災大臣に質問しました。
地震は事前の予測はかなり無理なのですが、水害は事前に予測ができます。水害死者ゼロのために、是非住民連携会議をつくっていただきたいです。死者として亡くなるのは知事でも総理大臣でもないです。死ぬのは住民です。そういうことで、住民会議のような当事者参加の仕組みづくり、「水害死者ゼロ」を目指してお考えいただけないかお願いしました。
谷大臣は「地域の実情に応じて、御指摘の提言も受け止めながら、また防災意識向上のために取り組むことも意義はあるのではないかと思います」と答弁なさいました。
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