○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
予算委員会は今日が初めてでございます。総理とも直接、よろしくお願いいたします。また、本日、十四分という時間で大変欲張りなテーマをつくってしまいましたので、パネルがたくさんございますが、礒崎哲史オブザーバー理事にお願いをしております。
まず最初に、端的に円安の短期的あるいは長期的要因について総理にお伺いしたいんです。よろしくお願いします。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 円安の要因についてという御質問ですが、為替相場につきましては、もう従来から申し上げておりますが、様々な要因を背景に市場において決まる、これが原則であります。短期、中期にかかわらず、変動の要因、これを一概に申し上げることは困難であると考えております。
政府としましては、この投機による過度な変動、これは容認できません。為替市場の動向に高い緊張感を持って注視しつつ、過度なこの変動に対しては適切に対応するということを申し上げさせていただいております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
短期的にはそういうことだろうと思うんですが、私は今日、特に長期的に、日本が国際的信用を失っているのではないのかと少し懸念を持って質問させていただきます。
例えば、経済同友会の櫻田代表幹事は、日本の成長していく力、稼ぐ力、良い製品を作っていく力が弱いという印象を世界に与えてしまっているのではないか、それが円安が加速化しているのであれば深刻に受け止めなければいけないとおっしゃっておられます。
日本の国際競争力を上げるには、まずは何よりも人の力です。しかし、日本では少子化に歯止めが掛かっておりません。二〇二二年に出生する子供さんは八十万人を切るだろうと言われております。子供の数が減るだけではなく、子供の生きる力も弱まっているのではないのかと。特に、私自身は、それなりの子供も孫も、自ら産みながら、過去五十年の日本の家族と子育てを振り返って、子供の生きる力が弱くなっている、そして同時に、女性の稼ぐ力も十分活用できていない、ある意味で構造的な歴史的問題ではないかと。
実は、近江商人の商売道の中に三方よしという言い方があります。これを使いますと、この日本の状態は、子に悪く、親に悪く、世間に悪い、三方悪しではないかと、そこが大変心配なわけでございます。
特に、高度経済成長期以降、日本の政権与党は、一九七〇年代、八〇年代、日本型福祉政策、つまり女性を専業主婦として子育てに閉じ込めようとしてきました。また、雇用政策も女性の稼ぐ力を活用できていなかった。この辺の問題提起を今日はさせていただきたいと思います。
まず、資料一を御覧ください。
(資料提示)子供の幸せ度の国際比較です。ユニセフが発表しているんですが、精神的幸福度は三十八か国中三十七位と、ほぼ最低です。
一方、資料二は子供の貧困率です。これは調査対象国の中でも平均くらいです。ですから、子供の貧困だけではこの幸福度を説明できない。
そして一方で、子供たちというのは質の高い人間関係を求めている、そしてそれが将来への希望につながるのではないのかと、この辺りも大変複雑な構造があるんですけれども、時間がないのでちょっと走りますが、資料三に、将来への希望を持っている子供さんが少ない。
そして同時に、家族のサポートが大きい子供ほど精神的幸福度が高くなっている。これ資料四ですけれども、家族の幸福度、自分が親から愛されていると思う比率が日本の子供さんの場合少ないということです。
この四つの資料を一まとめにしましたけれども、日本の子供たちは自分が親から愛情を受けていると確信することができず、それが若者の自己肯定感を低くして将来に希望を持てなくしているのではないのかと懸念をするんですけれども、大変包括的な質問ですが、総理大臣、この結果を見てどう思われるでしょうか。お願いします。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 済みません、時間も限られておるんで、ちょっと私の方から申し上げさせていただきます。
子供政策については、これまで各般の施策に取り組み、着実に前に進めてきたと思っておりますが、御指摘のユニセフの調査によれば、我が国は三十八か国中、身体的健康は一位ですが、精神的幸福度は三十七位となっております。また、内閣府の調査によれば、子供や若者の自己肯定感等が諸外国に比べて低い状況にあります。こうした調査結果、これは正面から受け止めなければなりません。
こども基本法の趣旨にのっとり、全ての子供が自己肯定感を持ちながら幸せな状態で成長できるよう、社会全体で子供の成長をしっかり支えることが必要であると認識をしています。こういった認識でもって、来年四月からこども家庭庁をスタートするわけですが、この取組も今言った認識に立って展開するということの、認識に立って施策を展開することの重要性に鑑みたものであると考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。その基本認識、大いに期待をしております。
実は、子供や家族の意識というのは、かなり歴史的背景を背負っております。特に、一九七〇年代から八〇年代の政権与党は、日本型福祉政策、女性は子供を産み育て、専業主婦優先の政策をしてまいりました。
そこで、今、岸田総理、振り返っていただきました自民党の日本型福祉政策論、どう評価しておられるでしょうか。端的にお答えいただければと思います。
○国務大臣(小倉將信君) お答えをいたします。
自民党の日本型福祉社会論というものの意味を正確に理解をしておるわけではありませんが、委員が御指摘のとおり、現代家族像は多様化しておりまして、核家族化や地域の関わりの希薄化などによって子育てに困難を感じる保護者が増えている状況にあるというのは私どもも認識しております。
このため、こども基本法の趣旨に踏まえて、子育てに対する負担や不安、孤立感を和らげることを通じて保護者が自己肯定感を持ちながら子供と向き合える環境を整えるとともに、家庭での養育が困難な子供には家庭と同様の養育環境を確保することが子供のより良い成長の実現につながるという認識を持っております。
こども家庭庁、来年に発足しますので、しっかり実践をしてまいりたいと思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今まさにその方向を目指そうとしているときに、実は国際的にかなり課題を、私たち直面しております。
資料五を御覧くださいませ。私も実は五十年前に子産み、子育て、直面しました。仕事か家庭か、そのときに、仕事に女性が就くから子供が生まれにくいんだと言われておりましたけれども、最近の傾向ですと、ここを御覧くださいませ、資料五です。
女性が二者択一を迫られる、仕事か子育てか。女性の労働参加率が低い国は出生率が低いんです。あらっと思われますよね。労働参加率が低い国は出生率が低い。労働参加率が低いということは子育てにエネルギーが入れられるはずだと思いがちですが、結果は逆です。逆に、労働参加率が高いところが出生率が高い。具体的には、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、オランダなど。そして、この出生率が高いところは、男女平等、共働き社会、共にフルタイムで、そして財政もいいという右肩上がり。
この右のところ、このグラフを見て、岸田総理、総論で結構なんですが、どう感じられるでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のデータを見ても分かりますように、女性が仕事に出るから子供が生まれにくいといったことはなく、女性活躍と少子化対策は両立して進めることができるものであるということが示されているんだと理解いたします。
我が国のこの女性活躍が子供を産み育てる希望の実現を阻む要因の一つとして、例えば家事、育児などの負担が男性と比較して女性に大きく偏っている、こうした現状があります。
女性活躍や少子化対策を更に進めるためには、男性の育児休業の取得促進や長時間労働慣行の是正などを通じて、男性の家事、育児への参画を進め、男女共に仕事と子育てを両立できる環境を整備していく、こういった必要があると認識をいたします。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、今日あえて二〇一二年のデータをお持ちしました。これは、ちょうど当時、私、滋賀県知事で、男女共同参画の委員長をしておりまして、このデータを知事会でお出ししたら、ほとんど男性知事です、おかしいと、こんなはずないと、女性が参加率が、労働参加率が高かったら出生率低いだろうと、これ逆だと言われたんですけれども、それはある意味で男性の認識なんですね。
で、知事たちに、次は資料六です、じゃ、あなたの府県どうですかと言ってこのデータを出しました。そうしたら、知事たちは皆さん一生懸命自分のところを見て、福井の知事、西川知事ですけど、あっ、うちは右上だ。で、石川県の谷本知事、あっ、うちも右腕だ、右上。そして、下が、東京都などが左下です。あっ、これだったら、共稼ぎをきちんと進めてサポートしたら出生率上がるんだと、二〇一二年、十年前の知事会も認識を変えていただきました。
というようなことで、今日申し上げたいのは、あと二分しかないんですけれども、二者択一を迫られる、だから、それで、実は私の尊敬する社会学の仲間なんですけれども、立命館大学の筒井淳也さんは、政権与党が長い間強調してきた家族主義が家族を壊した、かなり逆説的なことを言っていますが、家族主義が家族を壊した。じゃ、この良妻賢母、子育ては母親にと言っていた、これをどうしたらいいのか。筒井さんはかなり分かりやすく、気楽に家族をつくれるようになったらいいと。気楽に結婚して、そして気楽に子供を産めて、そして子供をいざというときには社会が面倒見てもらえる、セーフティーネットが張られる、そういう社会をということを筒井淳也さんは言っておられます。
で、実はこの予算委員会で国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵さんが、なぜフランスが出生率が回復したのか、シラク三原則と言っておられましたけど、岸田三原則をどうですかと提案をしておられました。そのとき、もう時間がないので、岸田三原則、給料をきちんと上げて、教育費を国がカバーして、そして女性のエンパワーメントする、この三原則をと言っておられましたけれども、岸田総理、どうでしょうか、その思いは今も変わらないでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 現実は、一遍にそれを実現するということについて様々な課題はありますが、是非こうした方向性にらみながら、今の政権においても努力を続けたいと考えています。要は、今も思いは変わっておりません。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
その後、資料七、八、九、十とお出ししているんですが、特に女性が継続、仕事継続すると生涯賃金が二億円も差があるということは是非新しく知っていただき、そしてGDPの効果も大変大きいということ、この点についてはまた次回、より深めていきたいと思います。
皆さん、どうもありがとうございました。