○嘉田由紀子君 国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子でございます。
国土交通委員会では初めての質問に立たせていただきます。御準備いただきました皆さん、ありがとうございます。
十五分という時間をいただいておりますが、近年の自然災害の激甚化、頻発化、ここは斉藤国土交通大臣も所信のところで述べておられました。このことについて本日集中して質問させていただきます。特に、流域治水という概念とその具体的な実装化について質問させていただきます。
まず、長期的な視点から、戦後の日本の水害被害での死者数、資料一として出させていただきました。昭和二十年代の水害多発時代を経て、昭和三十四年、伊勢湾台風では五千名を超える被害がございました。
その後、様々な、国土交通省、その前の建設省さん、皆さんの御努力もあり大分減っているんですが、ただ、二〇〇〇年を過ぎると、百名以上の死者を出した年が二〇〇四年、二〇一一年、二〇一四年、二〇一八年、二〇一九年と続いております。資料二でございます。
そういう中で、明治以降の治水政策振り返りますと、明治二十九年、最初の河川法では、洪水を川の中に高い連続堤防で閉じ込めるという方針、これが、昭和に入っても多目的ダムで積極的に閉じ込め政策がなされましたが、それだけでは洪水閉じ込め切れないということが近年分かり、そして、資料三に示されておりますように、流域治水という方法が取り入れられたわけでございます。
ずっと現場で河川政策なり災害対策やってきた立場からすると、閉じ込めるというところからあふれることを織り込み済みでというのは、百八十度の転換なんですね。私は、コペルニクス的転換と、それも、現実的にはあふれざるを得ないので、流域治水の方針転換には大変評価をさせていただいております。
改めて、国土交通大臣に、流域治水関連法の目的はどうなっているでしょうか。質問させていただきます。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 昔は五十年に一度、百年に一度といった雨が毎年降るようになった、そういう状況の地球環境上の変化ということで抜本的に治水対策を見直そうというもの、これが今回の流域治水でございます。
国、自治体、企業、住民等、あらゆる関係者が協働、協力して働く、協働して、流域全体でハード、ソフトの治水対策に取り組む、これが流域治水の考え方でございます。
この流域治水の実効性を高めるため、流域治水関連法として特定都市河川法等の関係法律を改正いたしまして、一つは氾濫をできるだけ防ぐための対策、それから二つ目に被害対象を減少させるための対策、三つ目に被害の軽減、早期復旧復興のための対策の、この三つの柱から成る法的枠組みを整備したものでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
その三つの目的ということは繰り返し繰り返し自治体でも国の方から伝わってきますけれども、実はこの三つとも、どちらかというとサービスを提供する側の視点なんですね。それで、私自身は、過去四十年、五十年、水害被害者の立場から、何が生死を分けたのかということで、伊勢湾台風もそうですけど、その前の昭和二十八年も、そして近年は、例えば球磨川の被害者お一人ずつ現場訪問して、そして、なぜ亡くなってしまったのかということを調べてまいりました。となると、実は今までの法体系を、がらっと考え方を変える必要があるのではないかと。
例えば、河川法では、もう繰り返し言うこともないんでしょうが、河川について、洪水、津波、高波の災害発生が防止され、河川が適正に利用され、正常な機能が維持され、そして河川環境の整備と保全がされるように総合的に管理をし、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、公共の福祉を増進することを目的とするとあるんですけど、具体的にこの河川法の中にもっと明確に、大臣も所信で言っておられました、災害により犠牲となる方少しでも減らすということを言っていられますので、河川法に人命が失われることを避けるという目的を明示的に書き込むというようなことが考えられないでしょうか。
これについては議論が必要だと思います。例えば、河川法を治水、利水、三番目の環境を入れるのに十年も審議会で議論しました。ですから、議論が必要だと思いますけど、今、国土形成法の見直しの時期にも入っておりますので、サービスを提供する側よりも、その被害を受ける住民当事者、生活者目線で河川法を加筆していただいて、命を守るということを明示的に入れられないでしょうか。多分こういう質問今まで受けたことないと思うんですけれども、今のお考え、お願いします。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 河川法の中に、命を守るということを明示的に目的の項に書いたらどうかという御質問でございます。
河川法第一条ではこの法律の目的が規定されておりまして、その中では、災害の発生が防止されるように河川を管理することにより公共の安全を保持することというふうに規定されております。御指摘の命を守るという趣旨につきましては、この災害の発生を防止し公共の安全を保持する、そういう旨に当然のことながら含まれていると、このように認識しているところでございます。
委員御指摘のとおり、国土交通省といたしましては、災害を防ぎ、国民の生命、財産を守ることは極めて重要であると考えております。このため、河川整備等の事前防災対策を加速化するとともに、流域治水の取組を強力に推進してまいりたいと、このように考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
この質問のなかなか趣旨が伝わらないと思うんですが、実は私、滋賀県知事のときに流域治水推進条例というのを進めさせていただきました。そして、詳しくは説明しませんが、時間がないので、資料の四には全体のイメージ図、資料五は、流す、ためる、とどめる、備えるという多重防護の仕組みを図にしております。
それから、資料六は、いわゆる国でいうハザードマップですけど、ハザードマップって分かりにくいんですね、何でも英語にしてしまう。先ほどの石井さんのお話ではないですけど、本当に英語を多用すると住民に伝わりません。それで、地先の安全度マップ。つまり、自分が住んでいる家の前がどこまで安全なのかというマップ。これは行政の管理する施設ごとのリスクではないんです。一級河川があり、農業用水路があり、下水道があり、そして小さな三十センチの水路でも亡くなることがあります。私は、球磨川の五十名の溺死者、何が生死を分けたのかを調べました。たった三十センチの水路で八十一歳のおじいちゃんが流されて亡くなっています。というようなことも含めて、生活者目線での横串を刺した安全度を示すマップ。
資料七は、言わばこの条例を作るのに丸八年掛かった、大変難産でした。二〇一四年ですけど、難産でした。当時はまだあふれるということを認められなかったんですけど、こういう中でようやく八年掛けて二〇一四年に推進条例ができて、そして今、県職員が、二百年以上確率の雨で三メートル以上家が沈むというところは五十か所あるんです、滋賀県に、そこを警戒区域指定をしようということで一集落ずつ回っているんですけど、これもまた難しいんです。わしらのとこ、そんな危ないなんて言うな、若い人が住まないじゃないかと、お嫁さんが来ないじゃないかと結構厳しいんですけど、でも、そこで職員が汗をかいているときに、命を守るという目的に合意するとかなり皆さん分かってくれるという現場での実践があります。
例えば、この間、具体的に八月五日ですね、滋賀県北部では豪雨があったんですけど、ここでかなり危険度の高い集落、複数ありました。ここは、数年掛けて一軒一軒家屋の測量調査を行い、図上訓練、避難訓練してきて、有り難いことに、この八月五日の豪雨には全く人的被害が出ませんでした。命を守るということで、さっと地域で避難体制ができたということです。そういうこともあるので、この河川法そのものに明示的に命を守るということを入れられたらどうでしょうかという提案です。今後検討していただけたら有り難いです。
時間迫っておりますので、氾濫原対策として、国でも滋賀県でも霞堤というのが位置付けられております。堤防のある区間に開口部を設けて本流の流れを減少させる仕組みなんですが、今年の八月五日の滋賀県の高時川でも、二か所の霞堤が洪水を受け止めて、本流の水位低下に貢献をしてくれました。しかし、そこは農業をやっているので被害が出ているわけです。
まず、霞堤の取扱いについて、滋賀県の三日月知事からも国がガイドラインを作ってくれないかという要望が出ていると思うんですが、この点について、政府参考人の方、お願いいたします。
○政府参考人(岡村次郎君) 霞堤の取扱いについてお答え申し上げます。
霞堤は急流河川に比較的多い不連続の堤防でございまして、主に洪水時に上流で氾濫した水を河道内に戻すために過去から伝統的に活用されてきたものでございます。勾配ですとか地形によっては洪水の一部を霞堤の部分に一時的に貯留すると、こういう機能も有する場合もございます。これらの霞堤の機能や形成過程は河川ごとに異なり、また、背後の土地利用の状況ですとか水につかる頻度なども様々でありますので、地域における霞堤への認識も多様なものとなってございます。
このため、霞堤の取扱いについては、治水上の効果だけでなく、地域における認識や歴史的な経緯なども踏まえ検討する必要があり、国において画一的な取扱いを定めることはなじみにくく、地域ごとにその方針を議論することが適切ではないかと考えております。
そのため、河川管理者ですとか農政部局あるいは流域の市町村等の関係者が一堂に会しまして、流域治水協議会などの場において、地域の流域における治水対策について、霞堤の取扱いも含めて情報共有を図り、議論を深めてまいりたいというふうに考えてございます。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。次の次の質問のお答えも既にいただいたような感じですけれども、ありがとうございます。
協議会をつくって地域ごとに確実に事情をしんしゃくして対応を取るようにということですね。それはそれでまた県にも伝えるようにいたします。
ただ、どうしても農家はそこで被害を受けているんですね。新聞の資料を資料八として、もうお名前が出ていますけれども、横田農場さんというところは、公共性を持って貢献できたのはいいけど、やっぱり米とそれから大豆と被害を受けた。私、現場に何度も足を運びましたけれども、これじゃ経営が続かないということで、是非、農水省さんにこういう、収入保険というのがあるんですけど、いざ災害がつながったときに経営が成り立つような、そういう言わばサポートの仕組みというのはないでしょうか。
農水省さん、お願いします。
○政府参考人(松尾浩則君) お答えいたします。
収入保険でございます。自然災害等による損害に備えて多数の者が掛金を出し合って、その資金によって事故が発生した者が保険が得られると、こういった保険の仕組みを基本として措置しております。
そのうち、先ほどございました補填の基準となる基準の収入につきましては、過去五年間の平均収入を基本として設定することで、毎年の収入の変動をならして農業者ごとの経営実態に即した補償を行うようにしております。
こういった収入保険につきましては、制度開始以降、保険料の安いタイプの創設など随時改善を行いながら実施してきておりまして、今後とも引き続きいろんな御意見を聞きながら必要な対応を取ってまいりたいというふうに考えております。
○委員長(蓮舫君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。
○嘉田由紀子君 はい。
ありがとうございます。
収入保険の中に特例というのがあるということも伺っているんですけど、そこはまた、過去五年を、ぐっと減ってしまったところはそこを除いて平均を上げるという収入特例というのがあるということも伺っているんですけど、これはまた後ほどお願いします。
時間が来てしまいましたので、この霞堤は、洪水に貢献するだけではなくて、先ほどグリーンインフラと言っていましたけれども、大水のときに魚が本当に逃げ込んでいるんです、元気に逃げ込んでいるんです。ですから、グリーンインフラの貢献もできますし、その辺り、また地域の協議会の方で方法を考えていけるようにしていただけたらと思います。
どうも、少し時間過ぎてしまいました。ありがとうございました。