琵琶湖淀川水系の源流の高時川水源地域、長浜市余呉町小原での「トチノキ巨木ツアー」に参加。2013年11月の知事現職の時以来9年ぶりに同じトチノキ巨木を訪問しました。まさに巨木の足元や気口(きこう)から湧き出る場面は昔のままです。うれしかったです。琵琶湖淀川水系1450万人の命の水が生まれる無数の水源のひとつです。巨木標識にはクマさんが噛んだと思われる傷がついていました!ツアーをご準備いただいた滋賀県琵琶湖環境部自然環境保全課の皆さん、「高時川源流の森と文化を継承する会」の皆さん、ありがとうございました。10月30日。(1400文字、長いです)
2016年に正式に国が丹生ダム計画を中止とし、国の管理地だったダム関連の土地と森林は滋賀県の所有・管理となりました。かつてここで日々の暮らしを成り立たせてきた皆さんのわびしい、さびしい思いは、私たちの想像を絶するものと思います。この春に出版された、吉田一郎さんの過去の写真と、その展示会に来られたかつての住民の皆さんのお姿をおさめた写真集、『地図から消えた村―琵琶湖源流七集落の記憶と記録』(サンライズ出版)には離村者の皆さんの記憶が具体的に記録されています。
それだけに、ダム計画跡地の自然環境保全と、暮らしの跡を、心をこめて丁寧にお守りさせていただくことが後世の人間の責任と思います。今日はまず小原集落のかつての生活用水であったショウズ(清水)の水を一杯いただき、一時間ほどかけて、トチノキ巨木群を訪問しました。それが冒頭の写真です。村の裏斜面にトチノキ巨木を遺したのは、トチノミを高蛋白質の食用に活用するだけでなく、斜面雪崩(なだれ、あわと呼んでいました)を防ぐ防災の意図もあったようです。
ツアー案内をしてくれた元滋賀県職員の水田有夏志さんからは、食用になった3種類のクルミや、バイの実をならせる低灌木、小原かごの材料となるウチワカエデの樹木、など植物・樹木の具体的な活用について歩きながら指南いただきました。また集落の裏には、炭焼き窯をつくった跡もあり、巨木信仰でもある野神や村を開いた人を讃える聖地とされる「ダンジュク」や、かつて疱瘡神をまつった巨木の叉木などもお参りすることができました。
国立公園などでの純粋な自然環境を愛でるエコツアーの価値に加えて、この高時川流域では人びとが暮らしの中で活用してきた樹木や植物、そして自然信仰の跡をたどることができます。その上に山菜の採取や冬ごもりのための保存というような食文化の伝統も辿ることができます。塩と醤油以外はすべて自給できた、という山の自然資源に寄り添った生活の知恵と伝統は、今後も若い人たちに受けついでいきたい文化でもあります。
特に石油文明に頼らずに、薪つくりや炭焼きも体験できるような、自然資源まるごと活用のエコツーリズムが実現出来たら楽しいだろうな、と妄想のような企画を頭の中に描いています。確かに実現にはいろいろな壁があるでしょう。「できない理由」がいろいろ聞こえてきそうです(微笑)。だれがどのような思いで責任をもって実行できるのか、ここは人と人びとの実行力ですね。若い皆さんに期待したいです。