Facebook 2022年10月28日 <10月27日の参議院国土交通委員会での質疑(その1)>

<10月27日の参議院国土交通委員会での質疑(その1)>。斎藤国土交通大臣への自然災害への対応、特に水害で死者を出さない流域治水の考え方とその具体的な方法について当日使った7点の資料、添付します。まずは(その1)です。8月5日に滋賀県北部の高時川でおきた出水にかかわる霞堤内の農地の浸水被害について、国の方針をただしましたがこれは(その2)で報告します。10月28日。(長いです、1800文字、すみません)。
明治の河川法以来、国の治水政策は、河川の流量管理という数値計算を柱に、川の中に洪水を閉じ込める河川施設対応型でした。しかし、過去50年近く、各地での水害溺死者調査をしてきた私の経験から、またかつての水害常襲地に新興住宅地や福祉施設などができて、いくらダム建設や堤防強化をしても死亡被害をゼロにできない近年の傾向をみて、滋賀県では2006年に私が知事に就任してからまる8年かけて、2014年に川から洪水が溢れても人が死なない、また生活再建が困難な水害被害をあらかじめ防ぐために「流域治水推進条例」をつくりました。もちろんダムや堤防の効果は大きいですが、そこだけに依存すると「死者ゼロ」という社会としての望ましい目的が達成できないのではと懸念するからです。
まず、長期的な視点から、戦後の日本の水害被害での死者数を資料1、資料2として示しました。
昭和20年代の水害多発時代を経て、昭和34年伊勢湾台風では5000名を超える被害がありました。その後、ダムや堤防建設、河川改修などハード整備がすすみ、水害溺死者は大きく減りました。しかし2000年を過ぎると、温暖化の影響などもあり100人以上の死者を出した年が2004年、2011年、2014年、2018年、2019年と続きました。このような流れに対応して、河川から溢れることを織り込み済とする滋賀県方式の流域治水政策を2020年以降、国も採用し、2021年には関連法案が国会を通過しました。国の流域治水の方向は資料3として示しましたが、人間目線の方向が見えません。
資料4、資料5,資料6,資料7には滋賀県の流域治水のエッセンスを図示しました。「命を守る」を最大目的に、「河川施設中心から人びとが住む流域へ」「流域治水政策は全ての浸水源を一体化、生活者目線の“地先の安全度マップ”で」「サービス供給側ではなく、被害を受ける被災者、生活者、事業者目線からの防災・減災視点」「個別省庁•部局の縦割りではなく、横ぐし政策」「しかし川から溢れる対策は地元住民、市町長、県議会での抵抗が大きく、8年もかかる“難産”だった」「最後は滋賀県議会での政治的取引で条例を通す」
今回の質問の最大の目的は、「河川法に、“命を守る”という目的を明示化できないか」という斎藤大臣への質問です。過去40年、50年、水害被害者の立場から、「何が生死を分けたのか」ということを一人ずつ調べてまいりました。そこで見えてきたのは今までの法体系をがらっと変える必要があるのではないかということです。
河川法では、「洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、正常な機能が維持され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする」とありますが、災害により犠牲となる方に寄り添っていません。河川法に「人命が失われることを避ける」という目的を明示的に書き込むことで政策の方向も変わると思われます。サービスを提供する側よりも、その被害を受ける住民当事者、生活者目線で河川法を加筆していただいて、命を守るということを明示的に入れられないでしょうか、と質問しました。
斎藤大臣の答弁は以下でした。「河川法第一条ではこの法律の目的が規定されておりまして、その中では、災害の発生が防止されるように河川を管理することにより公共の安全を保持することというふうに規定されております。御指摘の命を守るという趣旨につきましては、この災害の発生を防止し公共の安全を保持する、そういう旨に当然のことながら含まれていると、このように認識しているところでございます。委員御指摘のとおり、国土交通省といたしましては、災害を防ぎ、国民の生命、財産を守ることは極めて重要であると考えております。このため、河川整備等の事前防災対策を加速化するとともに、流域治水の取組を強力に推進してまいりたいと、このように考えております」。
「公共の安全を保持」に「命を守る」は含まれている、皆さんはどうおもわれますか?
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