<10月27日の参議院国土交通委員会での質疑(その2)>。nなぜ、「命を守る」にこだわるのか、8月5日に滋賀県北部の高時川でおきた出水では流域治水条例での浸水警戒区域対象地では人的被害がゼロでした。条例の効果が現れたともいえるでしょう。一方、霞堤内では農地の浸水被害がおきました。ここについて、農水省もふくめて国の方針をただしました。10月29日。(長いです、1900文字すみません)。
河川法の目的になぜ「命を守る」と明示的にいれてほしいのか、それは、滋賀県の現場からの報告があるからです。昨日も紹介した2014年3月の「滋賀県流域治水推進条例」には200年確率の雨で3メートル以上浸水する住宅等がある地区は50か所あります。これらを「浸水警戒区域」に地域指定をして避難体制の整備をしようということで一集落ずつ県職員と市町職員が一緒に回っています。
ただ結構難しいのです。「わしらのとこ、そんな危ないなんて言うな、若い人が住まないじゃないか」「お嫁さんが来ないじゃないか」と厳しいのです。しかし、「命を守る」という具体的目的に合意すると、かなり皆さん分かってくれるという現場からの実践報告があります。
具体的に8月5日に滋賀県北部では豪雨がありました。ここにはかなり危険度の高い集落が複数ありました。すでに数年掛けて一軒一軒家屋の測量調査を行い、図上訓練、避難訓練してきていました。有り難いことに、8月5日の豪雨には全く人的被害が出ませんでした。「命を守る」という認識と行動が根付いていて、さっと避難実践ができたということです。そういうこともあるので、河川法そのものに明示的に「命を守る」ということを入れられたらどうでしょうかという提案をしました。
また氾濫原対策として、国でも滋賀県でも「霞堤」が位置付けられております。堤防のある区間に開口部を設けて本流の流れを減少させる仕組みですが、今年の8月5日の滋賀県の高時川でも、二か所の霞堤が洪水を受け止めて本流の水位低下に貢献をしてくれました。しかし、そこは農業をやっているので被害が出ているわけです。まず、霞堤の取扱いについて、滋賀県の三日月知事からも国がガイドラインを作ってくれないかという要望が出ているので、この点について、政府参考人の岡村水管理・国土保全局長が答弁下さいました。
「霞堤の機能や形成過程は河川ごとに異なり、また、背後の土地利用の状況ですとか水につかる頻度なども様々でありますので、地域における霞堤への認識も多様なものである。治水上の効果だけでなく、地域における認識や歴史的な経緯なども踏まえ検討する必要があり、国において画一的な取扱いを定めることはなじみにくく、地域ごとにその方針を議論することが適切ではないかと考えております。そのため、河川管理者ですとか農政部局あるいは流域の市町村等の関係者が一堂に会しまして、“流域治水協議会”などの場において、地域の流域における治水対策について、霞堤の取扱いも含めて情報共有を図り、議論を深めてまいりたいというふうに考えてございます」ということでした。
ただ、どうしても農家はそこで被害を受けています。当日の霞堤の浸水状態の航空写真と新聞資料を添付しました。長浜市の横田農場さんは、公共性を持って貢献できたのはいいけど、やっぱり米とそれから大豆と被害を受けた。どうにか補償をしてほしいと強く訴えています。私、嘉田も何度も現場に足を運びましたけれども、これじゃ経営が続かないということで、是非、農水省さんに収入保険というのがあるのですが、いざ災害が重なった場合にも経営が成り立つようなサポートの仕組みはないか尋ねました。
農水省の松尾浩則審議官は「収入保険は自然災害等による損害に備えて多数の者が掛金を出し合って、その資金によって事故が発生した者が保険が得られるという仕組みであり、補填の基準となる基準の収入につきましては、過去五年間の平均収入を基本として設定することで、毎年の収入の変動をならして農業者ごとの経営実態に即した補償を行うようにしております。今後とも引き続きいろんな御意見を聞きながら必要な対応を取ってまいりたいというふうに考えております」という答弁でした。
災害などで収入減少が複数年重なった場合に、基準収入を変更する特例の仕組みがあると事前レクでは言っていたのですが、答弁にはありませんでした。11月上旬には次の委員会がありますので、再度尋ねてみます。
この霞堤は、洪水に貢献するだけではなくて、最近「グリーンインフラ」と言っていましたけれども、大水のときに魚が逃げ込める生息場所も提供しています。生物多様性保全の場でもあります。次回の国土交通委員会でも継続して質問していきます。