Facebook 2022年10月16日 <日野原重明記念新老人「滋賀の会」>講演会無事終了しました。

<日野原重明記念新老人「滋賀の会」>講演会無事終了しました。ご準備いただいたスタッフの皆さん、ありがとうございました。ここ十数年、滋賀県では医師、看護師、薬剤師など、多職種連携の在宅看取りの仕組みづくりを進めてきました。専門的には「地域包括ケア」と言います。その成果を発表しあうために「家庭医療と在宅看取り」とテーマを決めました。先駆的な施設づくりと家庭医療の後継者育てを実践してこられた竜王町弓削メディカルクリニックの雨森正記さんの基調講演は圧巻でした。またコロナ渦での県の政策のとりまとめをしてきた角野文彦さん、複合施設「ひだまり」経営者の長浜市の永田かおりさん、多機能を集約する地域薬局経営の東近江市の大石和美さん、皆さんの地に足のついた報告も見事でした。最後には例年通り、瀬戸山元一さん指揮でコーラスさざなみの合唱で日野原イズムを改めて堪能させていただきました。10月16日。(長いです、2000文字、スミマセン)。
雨森さんの講演の中での最初の図を見てください。滋賀県の市町別「自宅死亡率」です。竜王町がダントツ一位、それも3年連続です。超長寿社会となり県民意識調査では「最後は自宅で」と望む方が6-8割ほどしめます。しかし実際は在宅で最期を迎えるには、医師や看護師の往診、薬剤師からの配達、そして生活ケアまでまさに住民(在宅利用者)を真ん中においた多職種連携の「地域包括ケア」が必要です。図2にそれを示しています。しかし実践が難しいのです。それゆえ、滋賀県平均で15%ですが、竜王町は23%、二番目は湖南市、長浜市、東近江市、米原市、高島市、大津市、近江八幡市と続きます。逆に最も低いのは甲良町、豊郷町、野洲市、愛荘町、多賀町、甲賀市、草津市、栗東市、と続きます。全国平均は13・7%(2018年)です。
なぜ竜王町では自宅での最期を迎えることができる比率が高いのか。そこには雨森さんが34年前に竜王診療所に派遣され、これまで一貫して地域の住民の皆さんの暮らしの間に分け入り、顔なじみになって、病を見るというよりは人生全体にかかわるという姿勢の結果が現れているといえます。弓削のクリニックには入院施設はないのに100名もの多職種のスタッフ、医師だけでも11名おり、患者を中心に情報共有をして、濃密な連携関係をつくってきたことがポイントです。専門医志向が強い日本の医師社会でよくぞここまで徹底して地域での包括ケアを実践してきた、と改めて感動でした。
そしてこの分野では50年、60年前から地域包括ケアの必要性を訴えてきた日野原重明氏の薫陶を受け、「患者さん中心の医療」を志す瀬戸山元一さんも雨森さんの実践に絶賛でした。医師であり同時に僧侶でもある医療福祉の大先人の奈倉道隆さんも、イギリスではかかりつけ医がまず最初で、そこから専門病院にいくのに日本はすぐに専門病院にいく、患者中心の仕組みができていない、雨森さんの方式はまさにイギリス式が日本で実現できているところにあると絶賛でした。
角野さんの「コロナとともに生きる」は大変重要な問題提起でした。コロナにかかわる「費用対効果分析」を考察してみると、コロナ死亡予防で緊急宣言後死者数は1300-3600人(ほとんど高齢者)減らすことができた。これが効果といえる。しかし一方で社会的コストはGDP2.7%減、300万人の大量失業、そして健康コストとしては自殺者の増大やうつ病、薬物中毒者の増加、そして免疫低下、運動不足、要介護悪化など、子どもや若者含めて大変な社会的、健康的コストがある。それゆえ「正しく恐れる」という方針を実践することが必要だと。実は角野さんはコロナ渦が始まった最初から、同じことを言っておられます。公衆衛生の専門家としての勇気ある発言です。
永田かおりさんの人生もまさに雨森さんと同じ軌跡をたどっております。看護師経験から30歳で、高齢者から子どもさんまで多世代を支援する包括ケアの施設を設立。今、スタッフは150名を超え、それも保育、学童保育まで自前で経営しているので子育て中のスタッフが多いという。それゆえ扶養手当も専業主婦用のものは廃止して子どもの扶養手当を厚くしているという。ご自身も施設経営をしながら3人の子どもさんを育て、まさに肝っ玉お母さん。数年前に糸賀一雄記念賞も受けておられます。そしてコロナ渦では接触禁止などしんどいところもあったが、遠隔で進める工夫など、新たな働き方も学べたということです。
大石和美さんは、永源寺の在宅看取りで活躍中の花戸貴司さんたちと連携をとり、在宅患者さんに薬やおむつなどを届けながら、その薬の効果や副作用まで、人と深くかかわることで全体が見えるというまさに薬剤師というより、生活ケアのプロです。以前永源寺で花戸さんの往診の現場に同行させてもらった時、在宅の患者さんの枕元に、薬カレンダーがつるされ、朝、昼、晩、とそれぞれに配置され、細やかなアドバイスも書かれていたことを思い起しました。雨森さんのところで研修を受けられたということで、ここでもつながっています。
都市化、近代化の中で、専門的な医療が進むことはそれはそれで社会の進歩にとってありがたいことです。でも人はいつかは死ぬ。いかに「幸せに死ぬか、死ねるか」という命題は、社会全体で追及していきたいテーマです。
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