Facebook 2022年10月10日 近江八幡市西の湖の水辺に、「ヴォーリズ記念病院」が移転新築され竣工しました。

近江八幡市西の湖の水辺に、「ヴォーリズ記念病院」が移転新築され竣工しました。建築家で宗教家、また事業経営者でもあったウイリアム・メリル・ヴォーリズを創設者とする病院で、今から104年前の1918年(大正7年)に、当時不治の病として多くの人びとを苦しめていた結核専門の病院として開院されました。資金はツッカーさんという方からの寄付で賄い、建物全体を「ツッカーハウス」と呼びヴオーリスさん自身が設計しました。病院からご招待をいただき、竣工式に参加し、お祝いを述べるとともに、内覧会で内部をみせていただきました。まさに日本の医療福祉について「未来先取り型の医療福祉コンプレックス」です。少し長くなりますが紹介させてください。10月10日。(また長いです。1600文字)。
未来先取り型と私が強く感じたのは、次の3点です。
(1) 手術等を伴う急性期疾病治療後の患者や、長期治療や療養を必要とする患者を受け入れ、社会復帰や在宅復帰を目指すための検査やリハビリが大変充実していること。
(2) そして死を迎える患者の生活の質を高めるための「緩和ケア」(ホスピス)まで切れ目なく同一施設でケアでき、建物の中心部にチャペルを配置し、生と死の魂のつなぎをめざしていること。
(3) 建物の立地はヨシ帯と内湖がひろがる「重要文化的景観」「ラムサール湿地」に面しており、水辺・山辺植栽も固有種を基に生物多様性への配慮が効いていること。またヨシ帯の向こうには安土山や遠方には伊吹山など風景の魅力が意図的に取り入れられていること。まさに人と自然、人と歴史が風景の中でつながっていること。
私自身は挨拶でふたつの事をお伝えしました。まず知事時代から「死の問題をタブーにしない」というねらいで医療と福祉をつなぎ、県民の皆さんの希望が高い在宅看取りの仕組みをサポートする体制をつくりはじめたこと。その点からみると、ホスピスと在宅の連携は大変重要な視点であり、その先駆的な施設でありすでに立地していた「ホスピス希望館」の理念をさらに発展させて、今回は病院とホスピスをつなぐ仕組みを実現させ大変先駆的であり、患者や家族の願いにかなっていること。
個人的なことだが、昭和20年代に私を産んでから母が結核にかかり、また自分も1999年に結核になり、ヴぉ―リズ記念病院でお世話になった。結核患者当事者であった。その時に改めてヴォーリズさんのお仕事について詳しく学ばせていただいた。そこでツッカーハウスの建物について知り、キリスト者としての隣人愛に加えて、「科学的データに基づく合理的な思考」がツッカーハウスには存分に活かされていること。特に「五葉館」は患者当事者のプライバシーを守りながら、治癒に必要な太陽光や新鮮な風を取り入れる個別ユニットを葉っぱのように広げ、同時に真ん中に共同スペースをつくり、コミュニケーションをはかる、見事な設計意図に感動したとお伝えしました。
10月10日は雨模様で、テラスからの西の湖は霧にけむり安土山の姿もうっすらとしか望めず、伊吹山や到底見えませんでしたが、水郷めぐりの舟も動いていました。水辺にたたずむこの施設は患者だけでなく、働く人たちにとっても大変快適な場をなることでしょう。そしてヴォーリズが愛した近江八幡市の近江兄弟社の教育施設と一体となって、八幡の新しい誇りの場となることを期待します。

立地調整から施設計画には数年以上の大変な議論のなかで財源を確保してご苦労いただいたことも伺いました。竣工までこぎつけた関係の皆さまのご努力に感謝です。11月には開院し、同時に104年前のツッカーハウスも、クラウドファンディングの支援で再生するということ、次の100年にむけて動きだしたヴォール図記念病院の未来に栄光を、とお祈りさせていただきます。
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