2020年7月4日の球磨川大洪水からまる2年。「もう2年」なのか「まだ2年」なのか?流域での溺死者だけで50名もの方たちが命を落とされてしまいました。亡くなられた方たちのご冥福をお祈りさせていただきながら、球磨川流域を訪問し、溺死者すべての方のお宅や避難途中で亡くなられた方の現場を地元の「手渡す会」の皆さんといっしょに訪問させていただきました。つらい訪問ですが、「皆さんの犠牲は忘れません!」と訪問し続けることが大切と思います。7月23日(また長いです、1500文字)
今、国土交通省と熊本県が「球磨川水系河川整備計画」の策定作業にはいっていますが、そこでは「命と環境を守るために川辺川ダムが必要」と記述しながら、2年前の溺死者のことは一行も、というか一文字もふれておりません。犠牲になられた人たちの無念の思いを、河川整備計画策定者の国と熊本県に届け続けるためにも、私たちは訪問・発信しつづけます。
人吉市内での20名の溺死者のお宅は更地になっているところが15軒でした。昨年の訪問でもすでに更地になっているところが多かったですが今回は一層進んでいました。4軒のうち2軒は、犠牲者の奥様、姉妹の方が新たな家をつくっておられました。1件は住宅の建設途上でしたが建築主は不明でした。あと一軒は、球磨川沿いの景勝地ということもあり、7階だてのマンション(賃貸)が完成していました。1階はすべて駐車場でピロティ方式となっていました。氾濫折り込む済の建築となります。通勤途上に亡くなられたAさんの自宅は不明でした。
球磨村の25名の溺死者のうち14名は高齢者施設の千寿園ですが、園は、昨年はまだ建物が残っていましたが、今年はすべて更地になっていました。ただ、村としては施設が必要なので別のところに千寿園は再建しているようです。球磨村の11名の方の住宅地はすべて更地のままです。芦北町のお一人のお宅も更地になっていました。また坂本町の4名の住宅もすべて更地でした。
球磨村や八代市坂本地区の球磨川沿いの被災地は今後嵩上げ計画もあり、今の時点で新しい家をつくることが困難ということです。嵩上げの高さも上流に川辺川ダムができるとしたら、その計画により水位が異なりますので、ここも議論が進みにくい、とうことです。
私たちが、球磨川上流の川辺川ダムが建設されていたとしても、2020年7月豪雨のようなパターンの場合、50名の溺死者のほとんどの命を救えなかったのではという理由は二点あります。一点は、梅雨末期のような、東シナ海から球磨川を東進するパターンの豪雨では、下流の山岳地帯で多くの雨を降らせてしまい、川辺川ダム上流部の雨量は比較的少ないということです。
また二点目は、人口密集地の人吉市はダム建設地から40キロ下流で、球磨村から八代市まで溺死者がでたところは50-80キロ下流で水位低下効果が発現するには時間差があるということです。2020年10月6日に国が公表した川辺川ダム建設による水害減少効果は水位のデータしか示してありません。時間差については全くふれておりません。
今回下流の八代坂本地区から球磨村、人吉市まで上下流関係なく、午前7時から8時頃に溺死者が集中しています。現場で詳しく聞き取りをしてわかったのは、今回の死者を出した洪水は山田川、万江川、小川などの支流やそれにつながる町中水路の御溝川が氾濫した影響が大きいということです。国は本流からのバックウオーターの影響と言いますが、それならそのようなデータを出してくださいとお願いしていますが、データは出さず一方的に「溺死者無視」です。