20220610法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
刑法改正に関して、前半お願いいたします。また、後半は子供の離婚後共同親権に関してお伺いいたします。
まず、先日、川越の少年刑務所見学させていただきました。ありがとうございました。お世話になりました。そこで、関連するお話ではあるんですけれども、あそこでいろいろな資格を取るために勉強しているという方もおられました。
今日、資料一として出させていただきましたけれども、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律あるいは訓令がございまして、まず一点目なんですが、日本語が不自由な外国人受刑者に対して、再犯防止あるいは円滑な社会復帰促す観点から、日本語教育の実施など、どのように対応なさっておられるでしょうか。法務省さんにお願いします。
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
外国人受刑者のうち日本語を十分に理解できない人に対しましては、日本人受刑者と同様の処遇を実施するため、原則としまして府中刑務所など一部の刑事施設に集めて収容いたしまして、外国人受刑者に関する通訳、翻訳業務などを行う国際対策室を設置するなどして対応してございます。
こうした方々に対しまして、その文化であったり生活習慣等の違いに配慮した処遇を行うとともに、円滑な受刑生活や出所後の改善更生のために、外国人受刑者専用の日本語指導用ワークブックであったり、日本語教育の視聴覚教材などを用いた日本語教育、日本語会話に関するグループワークあるいはロールプレー等を実施しているところでございます。
また、欧州評議会の刑を言い渡された者の移送に関する条約、あるいは、タイ、ブラジル、イラン、ベトナムとの二国間条約に基づきまして、外国人受刑者をその本国に移送し、母国において受刑、服役させることによりまして改善更生や円滑な社会復帰を促進する取組を行っているところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。丁寧に対応していただいているということでございますが。
次に、受刑者の処遇の中で教科指導に関して、単なる教科指導ではなく学力向上あるいは上位の学位、資格を取得することができる可能性、どの程度認められているでしょうか。手短にお願いいたします。
○政府参考人(佐伯紀男君) 学力を欠くことにより、社会生活の基盤となる学力を欠く方に対しましては補習教科指導を行っておりますが、学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に資すると認められる受刑者に対しましても特別教科指導というものを行ってございます。そのほかに、教科指導以外にも、その被収容者の知的、教育的活動について援助をするという趣旨での取組も行っております。
これらの学力向上を図るための実施している取組といたしましては、盛岡少年刑務所それから松本少年刑務所におきまして、近隣の高等学校の協力の下、高等学校の教育を受けさせるための通信教育課程への編入、あるいは、文部科学省と連携した、全国の刑事施設を試験会場といたしまして高等学校卒業程度認定試験の受験機会の付与、こういったことのほか、希望する受刑者に対しましては大学レベルの通信教育の受講も認めているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実はこの問題は次の子供の養育あるいは教育条件ともつながってくるんですけれども、先日、滋賀県内東近江市内で三十六歳の藤井篤さんという方からかなり強い訴えをいただきました。それで、藤井さん自身は、自分のような子供を減らしてほしいので法務委員会で実名で紹介してもらって結構だということで、具体的に紹介させていただきます。
子供時代に親からの虐待を受け、家族の地獄から抜け出したんだけど、今度は社会の地獄に。それが、職場をいろいろ非正規で転々として大変だったと。その後半のことはこの場のテーマではないんですけど、その家族の地獄というのは、自分が物心付いたときに既に実の父親はコンタクトがなく、母親が同居していた義理の父親から大変な暴力、虐待を受け、そこから逃げ出すのが大変だったと。母親は自分と弟を守ってくれなかった。義理の父親に全く抵抗できず、そして、あと、小学校高学年では、義理の父親が母と離婚したそのときには、母が今度は食べ物を作ってくれず、本当にひもじい思いをしたと。これはずっと大阪での子供時代だった。
最近、滋賀県に引っ越しをしてきて、滋賀は御飯もおいしいし、うれしいということも言ってくださっていたんですけれども、その実の父親はとっても優しい人だったと後から彼が亡くなったときに知った。結婚していた妻という人から、息子に渡してとかなり大金を送ってもらって、ようやく専門学校に行けたと。父親も自分のことを気にしてくれていた。死後、父親が死んでから知ってつらかったと。
藤井さんがこう訴えてくれたんですけど、ただ、それは、藤井さん、実の父親とコンタクトできないのは、日本が片親親権ということで、元々の父親とやり取りできないのは本当に日本だけなのよと言ったら、えっ、そんなこと考えたこともなかった、私の周りには親が離婚して苦労した人がいっぱいいるということで、是非自分のことを紹介してほしいということでした。
今日、資料を、資料二のところに、離婚の後、子供が父親と過ごした一か月当たりの養育時間の量と青年期での父親との情緒的安定性というのを、これはアリゾナの州立大学のファブリシャス先生という方が千二百人を対象に調査したものがあります。資料二です。
ここ、資料一と二併せて法務大臣にお伺いしたいんですが、親とのやり取りの高い子供は情緒的安定性が高いんだということがこれほどきちんとデータで出されている。日本でももちろんあります。二〇一九年の十一月二十八日に、私、小田切先生の例をもって御質問させていただいたんですけど、このようなことに対して、法務大臣、どうお考えでしょうか。短くて結構ですので、お願いします。
○国務大臣(古川禎久君) 今委員からお示しいただきました資料二についてお答えを申し上げますと、父母の離婚後の父親による養育時間と子供の健全な成長との間に一定の関連性があるのではないかという、このような御意見があるということは承知をいたしております。
一般論として申し上げますと、子供が実の父あるいは実の母の愛情を受けて養育されるということは、その子の生活の安定ですとか心身の成長にとって大変重要なことであるのは、これはもう当然のことだと思うんですけれども、しかし、子供の養育をめぐる環境というのは各家庭様々な事情もあり得るところであって、例えばその御紹介をいただいたような虐待みたいなこともあるわけですね。ですから、一概に、その距離感を取ればいいのか悪いのか、一概になかなか難しい世の中にはケースもあろうかと思います。
いずれにしましても、こういう問題を考える上で、子の最善の利益を確保する観点から物事を考えていくということが一番大事なことではないかと存じます。
○嘉田由紀子君 多様であり一概に言えないと。ただ、これは児童心理学者が因果関係を示したものですので、多様なものがあるというだけで逃げられない。まして、法律あるいは社会の仕組みというのは最大多数の最大幸福を求めるわけですから、例外的なところあるいは一部だけを誇張するのは問題ではないかと思います。
実は、資料の三、四について、お時間もないので紹介させていただきますと、資料三は、既に五月のこの委員会でも御指摘させていただきましたが、昨年の二月に上川大臣が諮問をした法制審議会の中間報告、それがこの夏にまとまるということですけれども、ここでの部会資料の問題点ということを私、十項目に分けて質問させていただきました。
この資料三は前回五月にお出ししたものと一緒ですが、ここでは、もし今法制審でやっているような方向になると、本当に、男女共同参画ということではなく、性別による役割分業が固定化される、そして、別居、離婚後、夫婦間の対立がむしろ激しくなる、海外の国際的潮流にも逆行し、そして子どもの権利条約違反ではないかと、それから日本国憲法における両性の合意というところにも触れるのではないかという懸念を示させていただきました。
その後、最近同じような懸念を持つ方がおられて、資料の四ですけれども、民間法制審というところが、聞き知ることによりますと、資料四ですが、民間法制審が中間試案というのを出されたようでございます。これ、全体二十三ページほどで、読ませていただいて、私は、コンパクトですけれども、今の子供たちが抱えている問題、家族が抱えている問題に大変重要な試案ではないかと思います。
そして、そのことについて、資料五ですが、これも最近ですが、六月六日に櫻井よしこさんが、今法制審のまま進むと家族が解体するおそれがある、だから逆にこの民間法制審のような意見が大変重要ではないかということで、新聞記事を出されておりました。これもかなり驚いたんですけれども、本当に子供のためを、将来的に、また国際的にも日本が、家族を解体せずに、男女共同参画で、そして子供のための法制度改革をするには、櫻井よしこさんは民間法制審の案を大変積極的に紹介をしておられました。
ということで、通告の三と四、一緒なんですが、法務大臣、これを読まれて、ちょっと事前に資料は提示させていただいたと思うんですけれども、これを読まれて、民間法制審への意見、あるいは櫻井よしこさんのこの記事に対する意見、聞かせていただけたら幸いです。
○国務大臣(古川禎久君) 父母の離婚後の子の養育の在り方につきましては、ただいま委員から御紹介いただいた団体の御意見のように離婚後の共同親権制度の導入を求める意見もある一方で、そのような法改正に慎重な意見もあるなど、様々な意見があるものと承知をいたしております。
この課題について幅広く今調査中の法制審議会におきましては、本年夏頃に中間試案を取りまとめることを目指しているというように聞いております。この取りまとめのそのためには、法制審議会におきまして、これまでの議論の結果を踏まえて考え方を整理した上で更に議論を詰めるなどの作業が必要となって、この議論の先行きというのは、現時点で確定的な方向性が何か定まっているというような段階ではないというように聞いておりますけれども、今後パブリックコメントの手続によって、御紹介をいただいた団体の御意見に限らず、国民各層からの様々な御意見を幅広く聴取する機会が設けられることになろうというふうに存じます。
引き続き、子の最善の利益を確保するという観点から、充実した調査審議が行われていくことを期待しております。
○嘉田由紀子君 想定していたとおりの答弁でございました。つまり、様々な意見をということでございます。
それから、子供の最善の利益、その子供の最善の利益というときに、先ほど藤井篤さんの例をあえて出させていただきましたけど、本当に子供たちは自分が置かれている状態に対して、日本だけが単独親権なんだと。私は藤井さんに、あなたがフランスで生まれたら、こんなにお父さんと引き離されて、そして食べる物もなく、苦労はなかったのよ、スウェーデンで生まれたらってお話ししたんですけど、えっ、そんなこと考えたことない、僕は自分が日本に生まれたいとか思わなくてももう生まれていたんだからということで、本当に、子どもの権利条約もそうです。それから、ハーグ条約もそうです。それから、既にEUあるいは海外からも日本が拉致国家と言われているその根本は、単独親権制度の問題なんですね。
そこのところを変えられるのはもうこの立法府しかないんです。こうやっている間にも、法制審、去年の二月に諮問して、三月からもう一年半、その間に片親を奪われる子供、毎年二十万人ですから、三十万人ほどがこの一年半で片親を奪われているんです。という意味で、大変時間は迫っております。子供は日々生まれ、育っておりますので、この法制審の中間報告及びその後のパブリックコメント、最終報告のスケジュール、特にそこで多様な意見を聞くということでしたら、例えばこの民間法制審、この意見は既に自民党の法制部会に議論していただいているということですけれども、こういう意見も対等に扱っていただけるんでしょうか。最後にお願いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) 法制審議会におきましては、そのパブコメ等を通じまして、あるいは様々なその審議の過程において幅広く国民の御意見を聞くということでございます。特定の団体に限らず、幅広く様々な国民の声を集めた上で調査審議を進めていくということになります。
○嘉田由紀子君 幅広くということでございますので、何よりも当事者の子供たちがなかなか声を上げられない。既に去年調査はしていただき、また、今インタビュー調査もしていただいているということでございますけれども、そこを是非、子供たちの声を前向きにリアルに聞いていただいて、そして、国際的に、二十四か国調査でも、単独親権はもう日本しかないんだと、海外ではインドあるいはトルコはありますけど、宗教的にも違いますので、先進国では日本しか単独親権がないと。しかも、アジア地域でも、台湾、韓国、中国も共同親権を基本にしております。
この辺り、国際基準、そして、日本の子供たちが何よりも今自己肯定感を失い、そして、少年刑務所の皆さん、日本では余りデータ取っていないんですけど、アメリカでは片親を失った状態で犯罪に手を染めざるを得ない子供の比率が大変高くなっております。前半の刑法の話とこの共同親権の話はつながっているんだと、社会の根本で。そこのところを是非、法務大臣始め、また政治の皆さんにも理解していただきたいと思います。
以上です。私の方、時間来ましたので終わります。

【略】
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
入管に関する、特にウィシュマ・サンダマリさんのような事件を二度と起こさないということで、私は、少し遠回りのようですが、上官命令の抗弁、その組織なりあるいは施設で上官の命令にどう対応しなきゃいけないのかということの質問をさせていただきます。
その前に一言、これは通告していませんので感想だけ述べさせていただきます。
先ほど来、刑法の問題やってきたんですけれども、私たちの社会の目的というのは、いかに犯罪に手を染める国民なり人々を減らすかということが社会の大事な方向だろうと思います。
私がここまで子供時代の言わば家庭の育ち方を問題としておりますのは、日本ではなかなかここまで因果関係取れていないんですけど、アメリカやヨーロッパでは、随分児童心理学、家族心理学で調査研究がなされております。
例えば、これはアメリカの例ですけれども、離婚後、父母一方の単独監護下で育った子供は、そうでない子供に比べ、不登校になる確率が二倍、感情や行動に問題が生じる確率が四倍、結果、そのような子が、若者の自殺者の六三%、服役する若者の八五%、高校中退者の七一%を占めているとのアメリカのデータです。日本では類似の調査はしているんですが、ここまではっきりと因果関係は出しておりません。
先ほど父親との面会交流の図を出しましたけど、あれは、多様なことがあるというのではなくて、因果関係なりあるいは相関関係を出したときに、やはり親との交流がきちんとある方が自己肯定感なりあるいは信頼性が高まるということなので、多様なものがあるから、だからいろいろ考えなきゃいけないと法務大臣のおっしゃることは一見正しそうですが、社会科学あるいはいろいろなサイエンスというのは、そこの関係性を問うて、そして研究がなされているわけです。そのことを是非御理解いただけたらと思います。それで私は単独親権の問題を、本当に子供たちが苦しんでいるんだということを知っていただきたいと思います。今のは意見です。
質問としては、上官命令の抗弁についてということで、ウクライナ侵攻でも、凄惨な戦争犯罪が日々報道されて、非人道的な行為を行った兵士がウクライナの国内法廷で裁かれている様子も報じられています。ロシア軍による国際法を無視したような軍事戦略は厳しく非難されるべきだと思います。前線の兵士による非人道的な行為を止めさせるためにも、国際社会はあらゆる措置を講じなければならないのは当然です。
そういう中で、自己の意思に反して過酷な状況に置かれてしまった善良な兵士の立場についても冷静に考えなければなりません。そこには上官命令の抗弁というテーマが出てきます。上官命令の抗弁は、ニュルンベルク憲章や、あるいは極東国際軍事裁判所憲章、あるいは旧ユーゴ国際刑事裁判所規程などで議論されております。
今日、資料一として幾つか事例を出させていただいておりますけれども、国際法上、上官命令の抗弁は集団殺人罪や人道に対する罪については認められないと解釈でき、また、平成十六年の五月二十八日の参議院のイラク人道復興支援活動武力攻撃事態対処特別委員会での林政府参考人の御答弁でも、上官命令の抗弁の効力には相当制限があるのが国際的な流れだと答弁されておられます。
しかし、例えば、命令に従わなければ生命の危険にさらされていた、非人道的な命令を撤回させたために抵抗したというような事実が証明された場合であっても、そのような事情を考慮し、上官の命令に従って集団殺人罪やあるいは人道に対する罪の実行に関与してしまった兵士の刑罰を軽くすることは認められないと解釈することは、正義に反することは一切ないとお考えになりますでしょうか。ちょっと、大変持って回った言い方で申し訳ないんですが、法務大臣の御意見を聞かせていただけたらと思います。
○国務大臣(古川禎久君) 大変恐縮でございますが、国際法の解釈や適用に関わる事柄でございますから、お尋ねに法務大臣としてお答えをすることは差し控えたいと存じます。

○嘉田由紀子君 今日、外務省さんにお願いしたらよかったんですけれども、そういう状況ではなかったので法務大臣にお伺いしました。
ただ一方で、今回、ウィシュマさんの問題、そしてビデオを見せていただいておりまして、あそこの入管施設で勤務する職員さん、先日も川越の少年刑務所を見せていただきましたけれども、刑事施設などで、戦場のような過酷な状況には置かれていませんが、上司が非人道的な指示や振る舞いを行った場合には部下である職員は、収容者の個人の尊厳を守り普遍的人権を尊重することが求められ、事後に問題が明るみになって責任追及がなされた際に、上官命令の抗弁によって責任が阻却される余地はないと考えます。
つまり、ウィシュマさんのあの大変状態悪い中であそこにおられた勤務する職員が何もできなかったのかということも含めて、法務大臣の御認識をお聞かせください。
○国務大臣(古川禎久君) ただいま御質問をいただきましたが、委員からは、その先立って引かれました、引用されました上官命令の抗弁の考え方を引いた上でただいまの御質問をいただいたというふうに受け止めさせていただいた上でお答えをするのですが、そもそも入管収容施設におきまして職員が上司から何か非人道的な指示を受けるということは、これはおよそ考え難いことでありまして、また同時に、その部下がこれに従うということも想定し難いことだというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 となると、ウィシュマさんが置かれたあの状態というのを、本当にもう命からがら訴えていらっしゃるわけですよね。そこのことを入管職員は何も感じず、手を出せずということになってしまうんでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) お答えします。
あの名古屋事案を受けましてこの調査報告書というものがございます。その中では、この医療体制の体制整備に欠けている点でありますとか、その運用において不十分であることですとか、あるいは職員の意識の問題ですね、意識が不十分であるというようなことを指摘を受けております。
そういう指摘を受けた入管においては、これを重く受け止めておりまして、外部の方の御意見も踏まえた上で、伺いながら、使命と心得というものを策定をいたしております。こういう職員自身が自ら意識を高めると、改めるべきは改めるというような意識改革を進めていくこと、こういうことが非常に重要だというふうに思っております。
あの名古屋事案という決してあってはならないこの出来事を踏まえて、強烈な反省の下に、やはり、改める、あるべき姿に近づけていくという不断の努力が必要だというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 十二項目の改善項目、着手していただいているということですけれども、ここは本当に命に関わる問題ですので、是非一日も早く最善の努力をしていただけたらと思います。
警察庁さんに質問をお出ししていたんですが、ちょっと今のような流れですと不適切ですので、飛ばさせていただきます。
実は、次に資料二として、ウィシュマさんが仮放免を求めていらしたということですが、この仮放免の許可及び不許可についての決裁プロセスについて資料二を見ていただけたら有り難いんですが、この審査は、審判部門担当者から主任審査官まで出入国管理当局内部で完結しております。
そこで、仮放免の許可及び不許可についての決裁プロセスの中に、出入国管理当局から中立の立場にある司法府や、あるいは出入国管理当局から独立した行政機関による審査を導入することを検討するべきではないかと考えますが、法務大臣の御見解、お尋ねします。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
入管法上、仮放免の請求があったときは、収容を執行する入国警備官ではなく、別の官職であります主任審査官等において審査をすることとされております。
実際の運用に当たりましては、個別の事案ごとに様々な事情を総合的に考慮して仮放免の許否を適切に判断をしておりますが、その判断の適正さを確保するために、入管庁では仮放免取扱要領等の各種運用に係る指針を定めておりまして、統一的な運用を図っているところです。また、主任審査官等の仮放免に関する処分に不服があれば、行政訴訟を提起して、事後的に司法審査を受けることも可能であります。
このように、現行法下でも仮放免の判断については適正性を確保する仕組みが十分に設けられており、司法府あるいは入管庁から独立した行政機関による審査の導入は必要ないと考えてきたところでございます。
現在、法務省では、長期収容問題及びその根本的な原因である送還忌避問題等の現行入管法下の課題を一体的に解決するための法整備を検討しておりますけれども、いずれにしても、適正な運用が図られるべく努力をしてまいります。
○嘉田由紀子君 外部からの中立の立場の判断は不要だという御答弁だと思いますけれども、やはり組織というのは内部論理の中で動きがちなんですね。ですから、それが今回のウィシュマさんの悲劇につながっているわけですから、ここのところはより中立そして第三者性を持った方々が意思決定に関わっていただくこと、これは大変大事な方向だろうと思います。今日はここで答弁はもう求めませんが、御検討いただけたらと思います。
次なんですが、仮に仮放免が適用対象となったとしても、資料を出させていただきましたけれども、本当に社会的に生活ができないんですね。そこのところを、事実を私たちは押さえる必要があると思います。
仮放免者が利用することができる社会保障制度はかなり限られております。仮に人道上の観点などから仮放免が許可されたとしても、幸運にも支援してくださる方が見付からなければ、たとえ短期間であっても日本で人間としての尊厳を保ちながら生活できる状況にはないのではないかと。ウィシュマさんのような不幸な出来事を繰り返さないためには、仮放免された方々の状況について実態を把握し、そして適切な対応を行うことが重要だと思います。
資料三に、在留資格のない方はこういう状態で、生活保護も健康保険も本当に何もないと。先ほど来高良議員が技能実習生のことを質問しておられますけれども、かなり同じような状態ではないでしょうか。法務大臣の御認識をお願いいたします。
○委員長(矢倉克夫君) 時間ですので、お答えは簡潔にお願いします。
○国務大臣(古川禎久君) 法令に従い手続を進めた結果、退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することが原則であり、仮放免中の外国人については、退去強制手続中という立場に鑑み、基本的に就労を認めておりませんで、また、入管行政の一環として、国費による支援を行うことも困難だというふうに考えております。
もっとも、生活や健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援というのは必要であるということはもう当然のことでありますので、仮放免中の方から連絡や相談があった場合に個別に対応をしてきているところでございます。
いずれにしても、仮放免の在り方につきましては、現行法下で生じております送還忌避、長期収容問題と一体的に検討することが不可欠であると思っておりまして、そういう全体的な姿に対しても目配り、気配りをしながらその在り方というものを考えていかなければならないし、より良い行政にするためには、その視点を忘れずに着実に不断の努力をするということが肝腎だと思っております。
○委員長(矢倉克夫君) 時間です。
○嘉田由紀子君 お時間ですので、ありがとうございました。これで終わります。

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